一条莉々華の幼馴染   作:倉崎あるちゅ

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ReGLOSSがねぇ! 書かねぇとなぁ!!!!


一話

 

 

 とあるマンションの前で、俺は車を停めた。

 

「着きましたよ、社長」

 

 バックミラーでちらりと後ろを確認すると、呼びかけたその人は目を瞑っている。

 

「社長、着きましたよ」

「……」

 

 少し大きめの声で再度声を掛ける。

 しかし、目を開けない。それどころか微かな寝息が聞こえてきた。

 ……寝てやがる。

 ……いや、仕事も大変だし仕方ねぇんだが。

 俺はガシガシと頭を掻き、溜息をつく。

 

「社長」

 

 今度は後ろに振り返りながら。

 

「……社長!」

「すぅ……」

 

 返ってくるのは寝息のみ。

 すー、と息を吸った俺は口を開いた。

 

「起きろ莉々華(りりか)ァ!!」

「ぴゃっ、は、はいぃ!?」

 

 ビクゥゥ! と居眠りしていたその人──一条(いちじょう)莉々華(りりか)の体が跳ねた。

 彼女の寝ぼけた目が俺と合う。

 

「あれ、りっくん……?」

「家に着いたぞ」

「家……? あ、莉々華寝ちゃってたのかぁ」

 

 そんな彼女の少し鼻にかかるような高めの声が耳を撫でる。

 ……こりゃいつものかな。

 ……残業したら毎回こうだし。

 車をパーキングからドライブへ変えて動かす。

 

「少し待ってろ。駐車場行く」

「はーい」

 

 寝ぼけた彼女をそのままマンションのエントランスに放り出すのは気が引ける。そもそも、こんな可愛らしい成りでも社長だ。いくらマンション前とはいえ、夜にそんなことはさせられない。

 少し移動したところで駐車場に進入し綺麗に停めてみせる。

 

「寝てたら抱っこしてくれてもいいのにー」

「知るか」

 

 寝ぼけが抜けていないのか、彼女は恥ずかしげもなくそう言った。俺は軽く流し、車から降りて後部座席のドアを開けた。

 

「んーっ! 風が気持ちいい〜♪」

 

 腕をいっぱいに伸ばす彼女は、清々しいと言った雰囲気だ。

 ……抜けてんなぁ。

 ……裏表がねぇ、ってことなんだが。

 彼女の今の格好は、いつものノースリーブのピンク色のブラウスとロゴマークが入ったミニスカートだ。当然、腕を上へ伸ばせば、その輝かしい脇が見えるわけだ。

 俺は二度目の溜息をつく。

 彼女の肩に預かっていた彼女自身の上着を掛けた。

 

「ん、ありがと」

「さっさと中に入るぞ」

「んふふ、はーい♪」

 

 俺は礼を言う彼女から背を向け、荷物を全部持ってマンションのエントランスへ歩き始める。ニヤニヤした笑みを浮かべる彼女が隣に並んだ。

 

「もうちょっと冷たくしてくれてもいいんだよ?」

「は?」

 

 きゃー! と顔を覆う彼女に冷ややかな目をくれてやる。

 ……こいつ頭おかしいんじゃね。

 ……昔からそうか。

 好きな人のタイプは普段は優しいけど、二人きりになると冷たくなる人。そう宣うのが隣にいる一条莉々華だ。

 いや、逆ではと俺は思う。いや、ホントに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は〜、いいお湯だったぁ」

 

 入浴を終えた彼女が無防備な格好でリビングに入ってきた。

 俺はキッチンで夜食を作っており、ちらりとその姿を見てすぐに目線を調理しているものへ戻す。

 

「莉々華、俺いんだけど」

「えー、別にりっくんに見られても莉々華は良いよ?」

「せめてパーカーなりカーディガンなり着てくれ」

 

 やだやだー! と駄々をこねる彼女に辟易しながらも、俺は出来上がった料理をテーブルに置いた。

 

「おまち」

「おおー! さっすがりっくん! 料理上手〜♪」

 

 出来上がったものは、ラーメン風春雨。夜食でラーメンも食べたいけど体重が……と気にする我らが社長に用意したものだ。

 ぱぁ、と顔を綻ばせる彼女は()()()を手に取り、手を合わせた。

 

「いただきまーす!」

「……おう」

 

 作った俺は彼女の手にある物を見て顔を引き攣らせる。

 ……いつも思うけど、なんで割り箸なんだよ。

 ……そのラーメンのどんぶりだってこの間やっと買ったばかりだし。

 洗い物もしたくない。掃除だってあまりしたくない彼女はテーブルやデスクにゴミが重なることも度々ある。

 果てにはベッドの上には飲みかけの飲料水が入ったペットボトルがちらほら。

 以前に注意した時には、〝えー、水だよ? 腐らないし良くない? 〟である。

 

 

──カビるんだよボケェ!!! 

 

 

 これが幼馴染の生活習慣だと思うと恥ずかしくて他の社員にも言えない。というより他の社員に絶対言えない。

 好奇心で始めた会社運営は、何故かわからないが好調で海外への仕事を受けるほどになっている。そんな仕事ができる会社の社長がこんな有様では士気も下がるというものだ。

 

「りっくんも一緒に食べよ?」

「いや、いい」

 

 どんぶりをこちらに向ける彼女を手で制する。

 

「えー? あ、もしかして間接キス気にしてんの〜?」

 

 しかし、なにを勘違いしているのか、彼女は小馬鹿にしたような表情を浮かべ始めた。

 

「は? 有り得ないが?」

 

 座っていた椅子から立ち上がり、俺はゴミ袋を持って彼女をジトリと見る。

 

「今更そんなこと気にするかよ」

「じゃあなんでよ」

 

 二十三にもなって頬を膨らませるな。

 俺はゴミ袋をわかるようにぷらぷらと揺らして、彼女の寝室を指さした。

 

「俺はこれからお前の部屋のゴミを回収する。安心しろ、グッズ関係はまとめてデスクの上に置いといてやる」

 

 テニスの王子様やら何やら色々なグッズが部屋にあるが、たまに落ちてたりする。

 俺もまた莉々華の影響でアニメを見ていたので知識もあるしグッズへの対応も良しだ。

 

「……へ?」

「適当に食ってろ」

 

 ぽけ、と呆然とする莉々華を置いて、俺はリビングのドアを閉めた。

 すると、

 

「ちょ、ちょぉぉぉっと待ったァァ!!!」

 

 そんな大声をあげながらドアが急に開き、莉々華が背中から抱きついてきた。

 

「おい、邪魔だ」

「待って! 今莉々華の部屋やばいから見ないで!」

「今更すぎる。さっさと離れろ」

「やぁだ! 自分で片付けるから止まって!」

「自分で片付けられねぇからペットボトルと一緒に寝てんだろうが」

「今回はそうじゃないの! ねぇぇ、りっくんんんんん!!」

「どうせ下着あたりだろ?」

「そうだけど!! 乙女的には恥ずかしいからぁぁ!」

 

 部屋に下着が散らかってようがどうだろうが関係ない、という意志で進もうとするが、彼女が必死に抵抗して背中で首を振っている。

 彼女の髪が首に触り少しくすぐったく感じる。

 

「お前、いくらマンション(ここ)が防音だからって大声出し過ぎだろ……」

「りっくんのせいじゃん! 莉々華が悪いの!?」

「元凶はお前のズボラのせいだ」

 

 図星を突かれた彼女はぐぬ、と声を漏らす。

 

「でも!」

「デモもヘチマもねぇ」

「ううう! りっくんってばぁぁ!」

「おい……!」

 

 ぐい、と子供が駄々をこねるように大きく揺すぶられ、俺はバランスを崩された。そのまま彼女は俺を押し倒すように体重をかけてくる。

 ……まずい。

 ……このままだと俺の正面に手を回してる莉々華の手が床にぶつかる。

 一瞬でそう判断した俺は即座に彼女の腕を外し、体を回転。莉々華と互いに正面を向くように体勢を変えて、俺は衝撃への準備をした。

 

 当然、俺は頭を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一条莉々華は床に後頭部をぶつけて気絶した、幼馴染である艶島(あでしま)リクをズルズルと引き摺って寝室へ運んだ。

 

「ふぅ」

 

 いつ目覚めてもいいように急いでベッド上のペットボトルを片付け、下着類をしまい込む。流石に成人男性をベッドへ運ぶことはできないため、床に寝せて膝枕をしてあげた。

 ……りっくん、莉々華のこと庇ってくれたんだよね。

 ……昔から変わんないなぁ。

 まぁ、乙女が嫌だということをしたのだから気絶して当然なのだが。

 彼のピンク色のメッシュが入った黒髪を梳く。

 なんだかんだ言いながらも世話を焼くこの幼馴染は、莉々華の中ではとても大きな存在だ。

 好奇心で始めた起業も、色々調べて必要なものもなにもかも用意してくれたのも彼だ。正式な役職は副社長だが、他の社員──社員を疑いたくないが──の問題行動、または不利益になるような人を調べるため普段は秘書見習いとして働いている。

 一条コーポレーションの縁の下の力持ちとして、幼馴染として、艶島リクは一条莉々華にとってこれからも必要な人間なのだ。

 

「大好きだよ、りっくん」

 

 そうか細く囁いた。

 きゅう、と胸が締め付けられる。頬も、耳も、熱くなってくる。

 酒を飲んで本人に直接何度か言った覚えがある。ことごとくサラリと流されてしまうのだが、今回は素面で口にした。そのせいで火を噴くような恥ずかしさを覚えた。

 

「ん……」

 

 莉々華が顔を両手で覆って悶えてしばらく経って、リクが目を覚ました。

 

「おはよ、りっくん。まだ夜中だけどね」

「……わり、運んでくれたのか」

「重かったよー」

 

 ふん、と彼は鼻を鳴らした。

 

「……で、起きたいんだが」

「このままでもいいよ?」

「……流石にちょっと」

 

 脚もまだ痺れていない莉々華は彼に膝枕できて嬉しい。しかしまだし足りない。

 

「……なぁ、楽しいか?」

「そうだね」

「……そうか」

 

 頭を撫でられる彼は落ち着かないのか身じろぐ。

 

「……そろそろいいか?」

「えー、なんでー?」

「……いや、落ち着かないし。それに──」

「それに?」

 

 言い淀む彼に莉々華が首を傾げた。

 あー、んー、と唸る彼は少ししてから溜息をつく。

 

「……莉々華のおっぱいが邪魔」

「おっ──!? ってどういうことさ!?」

「ホントだって。お前からどう見えてんのかわからんが、俺から見ればおっぱいが近いわ、スカートから下着見えそうだわで落ち着かん」

「──っ!」

 

 そう言われた彼女は急いでリクの頭を退かし、立ち上がった。

 

「いで!? おま、退けるならもう少しな……!」

「りっくんのばぁぁか! ノンデリめ!」

「今更だろうが。つか、やるなら着替えてからやれ」

「なにおう!」

 

 彼はぶつけた頭を押さえ、ぷりぷりと怒る莉々華を見上げる。

 少しぶりに見た彼女の顔は真っ赤に染まっており、耳まで朱に染まっていた。怒り、というよりも羞恥心が勝っているように見えた。

 

「着替えるから出てって!」

「あいよ。悪かった」

 

 少し配慮に欠けたか、と思い彼は素直に謝罪し部屋から出ていく。荷物まとめて帰るか、と軽く思っていると先ほどまでいた部屋の扉が少し開かれる。

 その隙間から、莉々華が可愛らしく顔を少しだけ出していた。

 

「………………泊まってくよね?」

 

 不安そうに問われ、彼ははぁ、と深く息をつく。

 

「酒用意しておく」

「──うんっ」

 

 ぱぁ、と表情を明るくさせて、彼女は部屋へ戻って行った。

 リクは小さく笑い、つまみのメニューを考えながらリビングへ戻る。

 

 

 

「──俺も好きだよ、莉々華」

 

 

 ……本人には言わないけど、と日本酒を手に取りながら小さく呟いた。

 

 

 

 




 クリスマスの歌枠リレーから莉々華社長を追ってます。
 ビジュ、声、性格めっちゃ好きで、Xくんに二次書こうかなって言ったら本人からいいね飛んできて舞い上がりました。その勢いで書いてます。

 ここの社長は限界飯の頻度低そう。

 感想、評価お待ちしてます!

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