JpnII、JBCレディスプレリュード。その名の通り、JBCレディスクラシックの前哨戦であり、多くのメンバーがここからレディスクラシックに参加する。ハルノナナクサ達は、次の目標をここにすることにした。
「よーし、目指せプレリュード制覇!」
あれから勝利を重ね、クラスもB2まで上がっており、プレリュードに参加出来るだけの下積みも十分に出来上がっていた。
「そうだな。制覇の為にメンバーの確認をしようか」
前哨戦という事もあり、そこまで強いメンバーは入って来ていない。それもあってか、ハルノナナクサは珍しく人気上位に入っていた。
「しかし二番人気か。注目されてるじゃないか」
「ホントだ。ここは負けられないね」
「だな。人気に応えて制覇しよう」
今回は14人のメンバーが入ってきているが、その中での二番人気。凄まじく強いメンバーがいる訳では無いが、参加者の誰もが重賞に出られる程の猛者だ。気を抜けば一瞬でひっくり返されるだろう。
「一番人気は中央から参戦したウォークライか。気を付けるべきは彼女だろう。しっかりマークしとけよ」
「うん!」
重賞ということもあってか、地方や中央からもメンバーが参加する。ウォークライは中央の選手であり、ダート戦線で結果を出している格上のウマ娘だ。
「中央の選手かぁ…私で勝てるかな」
「勝てるさ。今の君は強い。中央のウマ娘だってぶっ飛ばせるはずだ!」
「トレーナー…うん、そうだよね!今の私ならきっと…!」
様々なヒントを学び、B2にまで上り詰めたのだ。今更、中央の選手一人に怯えている訳にはいかない。カチカチに固まった緊張をなんとかほぐしながら、彼女はパドックへと向かった。
『二番人気はこの子です。ハルノナナクサ!』
歓声に包まれながら、パドックに降り立つ。果たして、一番人気のウォークライを抜く事は出来るのだろうか。そんな期待を背負っていた。
「重賞となると空気が違うね…ビリビリ伝わって来る……」
『続いて一番人気を紹介しましょう。中央からの刺客、ウォークライ!』
更に大きな歓声を浴びつつ、ウォークライが出てくる。特徴的な流星をさらりと靡かせ、準備万端な事を示すかのようにパドックに降りた。
「……ナナクサさん。今日は負けませんよ」
「あ、うん!私だって負けるつもりは無いよ。お互い、精一杯頑張ろうね」
「……はい。宜しくお願いします」
軽く握手を交わし、それぞれ準備運動を開始する。今回のレースは、大井1800m右回り。ハルノナナクサが得意なロングスパートをかけるには十分な長さがある。直線も長く取られており、後方であっても勝てる可能性の高いレースだ。
「(ここを勝って、GIに挑戦する!)」
ファンファーレが鳴り響く。パドックでの準備運動も終わり、ゲートに入っていくウマ娘達。ハルノナナクサも準備万端と言わんばかりに落ち着いてゲートに入っていった。
『さあ、全員が収まりました態勢完了。係員が離れます……ゲートが開いた!』
「ふっ!」
好調な出だし。ハルノナナクサはそのまま後方に付けると、前を行くウォークライの動きに注目し始める。彼女は先行策。逃げ同士の競り合いには参加せず、好位につけて機を窺っている。
「(やっぱり先行策だよね……置いてかれないようにしなきゃ)」
最初のコーナーを抜ける頃には、ウマ娘達の走りもそれぞれのペースになっていた。先頭を駆け抜ける逃げのウマ娘。それに続く先行のウォークライ。それを後ろから狙うハルノナナクサ。誰もが一位を目指して自分のペースで駆け抜けていく。
「(……逃げが競り合わない分、スローペースになっている。ならばこのまま前方維持が良いか……)」
ウォークライの読み通り、かなりゆったりとしたペース。中盤になっても誰も仕掛ける事は無く、流れるように展開が進んでいく。
「(ウォークライちゃんが動かない……って事は、前が有利な展開になってるのかな?)」
ハルノナナクサも、彼女の動きに注目していた事で展開を知る。スローペースになれば、先行勢が有利になる。後ろにいては不利になることを察し、仕掛けを早める事にした。
残り800m地点。ハルノナナクサはマークを強めるため、ロングスパートをかけ始めた。
「(私も早めに前に出ないとね…!)」
「(……来ましたね、ナナクサさん)」
他のウマ娘を抜かしながら、マークしていたウォークライの横まで加速していく。ロングスパートの最中にコーナーに差し掛かる。外側を回りながら、最後の直線に向かって駆け抜けていく。
「(……抜かさせない。先にゴールをするのは私だ!)」
前を行くウォークライもスパートを入れ始め、ゴール板に向かって加速し始める。その走りは他のメンバーとは桁違いであり、逃げのウマ娘を抜き去ると、あっという間に先頭へ躍り出た。
「(凄いスパート……でも、私だって負けない!)」
ハルノナナクサもラストスパートに入り、速度が上がっていく。先頭を駆けるウォークライの横に並び、競り合っていく。
『さあ最後の直線!ウォークライ先頭!しかしハルノナナクサも迫っている!栄光は誰の手に!』
「はああああああああっ!」
「やあああああああっ!」
二人は競り合いながら、長い直線を駆け抜けていく。二人が地面を踏む度に砂煙が舞い上がり、風に流されていく。
ラスト300m。200m。100m。
ロングスパートの効果が出たか。最後の最後でスピードの伸びが足りなかったウォークライを、ハルノナナクサが抜き去っていく。
「勝つのは私だああああっ!!」
『ハルノナナクサだ!ハルノナナクサ!ウォークライは二番手!ハルノナナクサ一着でゴールイン!』
「「「ワァァァァァッ!!」」」
夜空に歓声が上がる。彼女を応援していた者の声。彼女の活躍に驚いた声。さまざまな声が混ざりあっている。
「はぁ……はぁ……勝てた…!」
「……はぁ…はぁ…おめでとうございます。完璧に差しきられました」
「ありがとう!ウォークライちゃん、とっても強くて驚いたよ」
「……ありがとうございます。ナナクサさんも強かったですよ」
感謝の握手を行い、お互いを称え合う。ターフの上で芽生えた友情。レディスクラシックはこうして幕を下ろして行くのだった。