ウマ娘 ハルノナナクサ   作:ウマ侍

10 / 19
第10話 レディスプレリュード

JpnII、JBCレディスプレリュード。その名の通り、JBCレディスクラシックの前哨戦であり、多くのメンバーがここからレディスクラシックに参加する。ハルノナナクサ達は、次の目標をここにすることにした。

「よーし、目指せプレリュード制覇!」

あれから勝利を重ね、クラスもB2まで上がっており、プレリュードに参加出来るだけの下積みも十分に出来上がっていた。

「そうだな。制覇の為にメンバーの確認をしようか」

前哨戦という事もあり、そこまで強いメンバーは入って来ていない。それもあってか、ハルノナナクサは珍しく人気上位に入っていた。

「しかし二番人気か。注目されてるじゃないか」

「ホントだ。ここは負けられないね」

「だな。人気に応えて制覇しよう」

今回は14人のメンバーが入ってきているが、その中での二番人気。凄まじく強いメンバーがいる訳では無いが、参加者の誰もが重賞に出られる程の猛者だ。気を抜けば一瞬でひっくり返されるだろう。

「一番人気は中央から参戦したウォークライか。気を付けるべきは彼女だろう。しっかりマークしとけよ」

「うん!」

重賞ということもあってか、地方や中央からもメンバーが参加する。ウォークライは中央の選手であり、ダート戦線で結果を出している格上のウマ娘だ。

「中央の選手かぁ…私で勝てるかな」

「勝てるさ。今の君は強い。中央のウマ娘だってぶっ飛ばせるはずだ!」

「トレーナー…うん、そうだよね!今の私ならきっと…!」

様々なヒントを学び、B2にまで上り詰めたのだ。今更、中央の選手一人に怯えている訳にはいかない。カチカチに固まった緊張をなんとかほぐしながら、彼女はパドックへと向かった。

『二番人気はこの子です。ハルノナナクサ!』

歓声に包まれながら、パドックに降り立つ。果たして、一番人気のウォークライを抜く事は出来るのだろうか。そんな期待を背負っていた。

「重賞となると空気が違うね…ビリビリ伝わって来る……」

『続いて一番人気を紹介しましょう。中央からの刺客、ウォークライ!』

更に大きな歓声を浴びつつ、ウォークライが出てくる。特徴的な流星をさらりと靡かせ、準備万端な事を示すかのようにパドックに降りた。

「……ナナクサさん。今日は負けませんよ」

「あ、うん!私だって負けるつもりは無いよ。お互い、精一杯頑張ろうね」

「……はい。宜しくお願いします」

軽く握手を交わし、それぞれ準備運動を開始する。今回のレースは、大井1800m右回り。ハルノナナクサが得意なロングスパートをかけるには十分な長さがある。直線も長く取られており、後方であっても勝てる可能性の高いレースだ。

「(‎ここを勝って、GIに挑戦する!)」

ファンファーレが鳴り響く。パドックでの準備運動も終わり、ゲートに入っていくウマ娘達。ハルノナナクサも準備万端と言わんばかりに落ち着いてゲートに入っていった。

『さあ、全員が収まりました態勢完了。係員が離れます……ゲートが開いた!』

「ふっ!」

好調な出だし。ハルノナナクサはそのまま後方に付けると、前を行くウォークライの動きに注目し始める。彼女は先行策。逃げ同士の競り合いには参加せず、好位につけて機を窺っている。

「(やっぱり先行策だよね……置いてかれないようにしなきゃ)」

最初のコーナーを抜ける頃には、ウマ娘達の走りもそれぞれのペースになっていた。先頭を駆け抜ける逃げのウマ娘。それに続く先行のウォークライ。それを後ろから狙うハルノナナクサ。誰もが一位を目指して自分のペースで駆け抜けていく。

「(……逃げが競り合わない分、スローペースになっている。ならばこのまま前方維持が良いか……)」

ウォークライの読み通り、かなりゆったりとしたペース。中盤になっても誰も仕掛ける事は無く、流れるように展開が進んでいく。

「(ウォークライちゃんが動かない……って事は、前が有利な展開になってるのかな?)」

ハルノナナクサも、彼女の動きに注目していた事で展開を知る。スローペースになれば、先行勢が有利になる。後ろにいては不利になることを察し、仕掛けを早める事にした。

残り800m地点。ハルノナナクサはマークを強めるため、ロングスパートをかけ始めた。

「(私も早めに前に出ないとね…!)」

「(……来ましたね、ナナクサさん)」

他のウマ娘を抜かしながら、マークしていたウォークライの横まで加速していく。ロングスパートの最中にコーナーに差し掛かる。外側を回りながら、最後の直線に向かって駆け抜けていく。

「(……抜かさせない。先にゴールをするのは私だ!)」

前を行くウォークライもスパートを入れ始め、ゴール板に向かって加速し始める。その走りは他のメンバーとは桁違いであり、逃げのウマ娘を抜き去ると、あっという間に先頭へ躍り出た。

「(凄いスパート……でも、私だって負けない!)」

ハルノナナクサもラストスパートに入り、速度が上がっていく。先頭を駆けるウォークライの横に並び、競り合っていく。

『さあ最後の直線!ウォークライ先頭!しかしハルノナナクサも迫っている!栄光は誰の手に!』

「はああああああああっ!」

「やあああああああっ!」

二人は競り合いながら、長い直線を駆け抜けていく。二人が地面を踏む度に砂煙が舞い上がり、風に流されていく。

ラスト300m。200m。100m。

ロングスパートの効果が出たか。最後の最後でスピードの伸びが足りなかったウォークライを、ハルノナナクサが抜き去っていく。

「勝つのは私だああああっ!!」

『ハルノナナクサだ!ハルノナナクサ!ウォークライは二番手!ハルノナナクサ一着でゴールイン!』

「「「ワァァァァァッ!!」」」

夜空に歓声が上がる。彼女を応援していた者の声。彼女の活躍に驚いた声。さまざまな声が混ざりあっている。

「はぁ……はぁ……勝てた…!」

「……はぁ…はぁ…おめでとうございます。完璧に差しきられました」

「ありがとう!ウォークライちゃん、とっても強くて驚いたよ」

「……ありがとうございます。ナナクサさんも強かったですよ」

感謝の握手を行い、お互いを称え合う。ターフの上で芽生えた友情。レディスクラシックはこうして幕を下ろして行くのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。