ウマ娘 ハルノナナクサ   作:ウマ侍

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第12話 帝王賞

ハルノナナクサの復帰初戦。重賞レースのブリリアントカップを制覇して復活。脚部不安からの復帰をものともしない走りは、ファン達を大いに湧かせた。勢いそのままに、大井記念を制覇すると、目標レースの帝王賞の優先出走権が与えられた。この頃になると、ナナクサのクラスもA1組相当になり、大井トレセンの代表クラスの実力を持っているという判定になった。

「いよいよ帝王賞だねトレーナー!」

「ああ、そうだな。久々に勝負服の出番だが、ちゃんと着れるか?」

「大丈夫!ばっちり着れるよ!」

今回の帝王賞は12人立て。ハルノナナクサはうなぎ登りの成績を加味されてか、人気も高く5番人気。上位には中央勢のメンバーが並び、3番人気にはライバルのカスタードも名を連ねていた。

「カスタードちゃんも出てきてるね…絶対負けないぞ!」

「そうだな。とはいえ、今回マークするのは一番人気のスマートファルコンだ」

「スマートファルコンちゃん……」

思い返すのは、去年のジャパンダートダービー。自分が後ろでへとへとになっているその前で、一着をかっさらって行った砂のハヤブサ。その圧倒的な走りは、誰もが驚き称えるような力強い走りだった。

「去年のように、自由に逃げ切られたら間違いなく追い付けなくなる。彼女を注視して、自分のタイミングでスパートをかけて追い付くんだ」

「うん…!やってみるよ!」

去年の自分とは格が違うという事を証明してみせよう。勝負服に袖を通し、耳飾りをしっかり付けて、戦う準備は万端だ。

空はどんよりとした曇り空。先日まで雨が降り続いていた為、バ場状態はドロドロの重バ場。タイムがかかるバ場状態は差し込むのは難しく、ハルノナナクサには不利な状態になっていた。

『今年もダートの最前線を駆け抜ける優駿達が集いました、大井レース場!熱き戦いを制し、帝王の名を冠するのはどのウマ娘か!』

GIレース、帝王賞。右回り、距離は2000m。地方では最も直線の距離が長く、差しも決まりやすい。スマートファルコンが逃げ切るのか。或いは地方の面子が差し切るのか。ファン達の熱も最高潮に高まる。

「……おい、ナナクサ」

「あっ、カスタードちゃん。ついに来たね」

「ああ。人気こそ中央のヤツに譲ったが、負ける気は無い。お互い、本気でぶつかろう」

「うん!全力で勝負しよう!」

軽く握手をして、ライバルとの挨拶も済ませる。パドックの準備運動も終わり、ついにレースが始まろうとしていた。

『今年は12人で争われます帝王賞!ウマ娘達も、落ち着いた様子で続々とゲートに収まっていきます!』

「(必ず勝ってファンを喜ばせてみせるよ!☆)」

スマートファルコンも落ち着いた様子でゲートに収まる。それから、カスタードやハルノナナクサらもゲートに入っていく。そして、全員の準備が完了した。

『さあ12人態勢完了!……スタートしました!』

────ガコンッ!

好スタートを切ったのは、中央の猛者スマートファルコン。カスタードらもまずまずの出だしで飛び出し、先頭を行くスマートファルコンをマークしていく。

「(私は私のポジションで……!)」

ハルノナナクサは自分の得意とする後方待機の位置に着く。スマートファルコンに勝つには、自分の最高をぶつけなければならない。焦ってマークして潰れる訳にはいかない。

『さあ先頭はやはりスマートファルコン!カスタードが二番手で追っている!三番手は……』

最初のカーブが終わり、直線を駆け抜けていく。スマートファルコンが先頭となり、後ろの11人を引っ張っていく。

「(簡単に行かさせはしない。勝つのは私だ!)」

カスタードはスマートファルコンにピッタリと付け、番手を駆け抜けていく。ハルノナナクサはそれから大きく離された5〜6番手を走っていく。

「(前にはまだ追いつける……ロングスパートの準備!)」

残り1000mを通過して、先頭は変わらずスマートファルコン。外回りのコーナーを駆け抜けながら、いよいよ最後の攻防に向けて脚を溜め始める。

「(ここから追い付いてみせる!)」

────ダンッ!

ハルノナナクサは得意のロングスパート体勢に入る。中団から近くを走っていたメンツを抜き去り、先頭付近で争っているカスタード達の近くへと迫る。

「(来たなナナクサ。だがお前にも負けるつもりは無い!)」

カスタードもスパートに入る。大井の最強が走り出し、ついにスマートファルコンを捉える程のスピードを繰り出していく。

だが。

「(凄い気迫……でも、ファル子が一番なのは譲らないよ!)」

だが、スマートファルコンは簡単には抜かさせなかった。最終コーナーを終える頃には、カスタード達が詰めた距離をあっという間に取り返してしまった。

『さあ最終直線!やはり先頭はスマートファルコン!後ろを突き放しにかかる!』

残る直線400m。猛追を繰り出すカスタードとハルノナナクサだが、スマートファルコンはそれさえも上回る程のスピードで二人を振り払っていく。

「(行かせない!絶対追い付いてみせる!)」

「(行かせるか!帝王賞を取るのは私だ……!)」

思いとは裏腹に、スマートファルコンの背中は更に小さくなっていく。気付けば5バ身ほどのリードを作られており、完全にスマートファルコンのペースに染められていた。

『これは決まったか!スマートファルコン!先頭で一着ゴール!』

結局そのまま、スマートファルコンの勝利に終わってしまった。先頭から大きく離された2着に、ハルノナナクサが入り、3着に入ったのがカスタードという結果に終わった。

「はぁ……はぁ……全然届かなかった……!」

「はぁ…はぁ…クソっ……負けたか…」

大井代表の二人が全力でぶつかってなお、中央代表のスマートファルコンには届かなかった。悔しがる二人を尻目に、スマートファルコンは感謝の気持ちをファンに伝えた。

「みんな応援ありがとう!これからも勝ち続けるからね!」

歓声と拍手に包まれながら、彼女は帝王の座に堂々と座り込んだ。なんという強さであろうか。ハルノナナクサは彼女の強さに驚愕していた。

「すごいな……私もあれくらい強くならないと…!」

今日付けられた着差は、GI制覇までに必要な距離と考えても良い。この差を埋め切るだけのなにかを掴まなければ、次のGIレースも中央勢に蹂躙されるだけだ。今日の敗北を糧にハルノナナクサは更に上のステージを目指して成長するのだった。

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