バルクアップを始めてから、数ヶ月の時が流れた。その途中、帝王賞とJBCクラシックに参加して、どちらも好成績を収めた。それでもハルノナナクサは満足していなかった。
というのも、帝王賞ではスマートファルコンに敗れ、ハルノナナクサが勝利したJBCクラシックには、スマートファルコンが参加していなかったからだ。
「チャンピオンズカップにはファル子ちゃん出てくるよね」
「登録はしてるみたいだな。勝つならここが一番のチャンスだ」
「よし。そうだよね。今度こそ勝利してみせるよ!」
「その意気だ。今度こそ砂のハヤブサを撃ち落とそう」
GIレース、チャンピオンズカップ。中京レース場、ダート1800m、左回り。天候は曇り。バ場は良。15人で行われる。ハルノナナクサは実績を考慮されての二番人気。相変わらず一番人気はスマートファルコンだ。
「みんな応援ありがとー!今日も勝つからね☆」
パドックで笑顔を振りまくスマートファルコン。
「ファル子ちゃん!」
「ナナクサちゃん!今日もライバルだね!」
「そうだね。今日こそファル子ちゃんに勝つつもりだよ!」
「そっか!ファル子は今日も負けないつもりだよ!一位が欲しかったら奪い取りに来てね☆」
「もちろん、奪わせて貰うよ!今日はよろしくね」
「うん、よろしく!」
握手をかわして、それぞれが運動の為にパドックを移動する。今回の作戦はひとつだ。スマートファルコンをマークし、得意のロングスパートでゴールする。いつもの手口だ。
「(成長した私を見せ付けてやる!)」
ウマ娘達は落ち着いた様子で、ゲートに収まっていく。ダートに揃った15人の精鋭達。彼女達の中から優勝できるのはたったの一人。多くのファンがその瞬間を待ちわびながら応援する。
『最後に大外のポップンシャワー収まりまして態勢完了!果たしてチャンピオンの座に着くのは誰か!チャンピオンズカップ!』
────ガコン!
『スタートしました!まずまず揃ったスタート!さあ先頭を主張するのはやはりスマートファルコン!他の逃げウマ娘と競り合っていきます』
「(ファル子のペースに持ち込んでいくよ!)」
競り合いを制し、自分のペースで逃げ始めるスマートファルコン。予想通りの展開となる。ハルノナナクサは後方に控え、マークを外さないようにしながら脚を温存しておく。
「(逃げ切らせたら勝ち目が無くなっちゃう。簡単には逃がさないよ!)」
序盤から激しい競り合いが起こっていたためか、かなりのハイペースでレースは流れていく。後方に控えたナナクサ的にはチャンスだが、スマートファルコンがこれで沈むとは思えない。むしろこのハイペースこそがスマートファルコンのリズムとも言えるだろう。
「(多分ハイペース…でも、私は私の走り方で!)」
ハルノナナクサは狙い通り、ロングスパートの体勢に入る。前を行くスマートファルコンとの差は6バ身。この差を埋め切り、必ず差し切ってみせる。覚悟を決め、力強くダートを踏み込んだ。
『おっとハルノナナクサ!仕掛け始めました!得意のロングスパートです!』
4バ身、3バ身。距離は少しずつ縮まっていく。けれど、スマートファルコンがそれを簡単に許してくれるはずもなく。
「(来たねナナクサちゃん。でもファル子も負けないよ!)」
────ダンッ!
と力強い足音。それと同時にスマートファルコンは加速していく。あれだけのハイペースで逃げながら、最後に使う脚を残していたのだ。こんな化物にどう勝てば良いのか。去年のナナクサならそう思っていただろう。
『さあ最終コーナーを抜けていよいよ最後の直線!先頭はスマートファルコン!ハルノナナクサ外から追い縋る!』
今回は力負けしていない。置いていかれる事もなく、競り合っている。その力強い姿に、ファン達も思わず声援を送り続ける。
「頑張れー!ナナクサー!」
「追い付けー!」
ファン達の声援を受けたナナクサの瞳に炎が宿る。まだ負けていない。差し切って勝ってみせる。情熱の炎が燃え盛っていく。その力が、彼女の脚を更に動かしていく。
『更に伸びるハルノナナクサ!いよいよ横に並んだぞ!スマートファルコンは苦しいか!』
「はああああああああああっ!」
「(負けない……ファル子もファンの期待に応えたいから!)……やああああああああああっ!!」
交わすかと思われたその瞬間、スマートファルコンがもう一度伸びる。どちらも一歩も譲らない。まさに砂上のチャンピオンを決める為の戦い。私が。いや私が。最高の栄誉に向かって、二人は突き進んでいく。
「「はあああああああああっ!!」」
『二人並んでゴールイン!ほとんど同時に入りました!これは写真判定でしょう!』
掲示板には、写真判定の文字が浮かぶ。後ろに5バ身ほどの差を付けた信じられない程の競り合い。どちらが勝ってもおかしくない。
そして、判定が終了した。
1着 2番 ハルノナナクサ
2着 4番 スマートファルコン
その瞬間、歓声がワッと盛り上がった。ハルノナナクサは、目標としていたスマートファルコンに勝利した事で大喜び。
「やったー!私の勝ちだー!」
「おめでとう。ナナクサちゃん。ファル子の負けだよ」
「ありがとう。でも、ファル子ちゃんもとっても強かったよ!」
「えへへ、ありがとう!また一緒に走ろうね!」
「もちろん!何度でも勝負しよう!」
ライバルと固い握手を交わす。かつては全然追いつけなかった砂のハヤブサ。それに追いついて勝つことができたのだから、見事なものだ。
それからナナクサは、ウイニングライブを行い、ファン達に感謝の気持ちを精一杯送り届けたのであった。