ウマ娘 ハルノナナクサ   作:ウマ侍

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第7話 高知のレベル

『さあ始まりました!JpnIレース!ジャパンダートダービー!高知からはこのウマ娘!ハルノナナクサ!』

クラシックの7月。歓声と拍手を浴びながら、高知優駿を制覇したハルノナナクサは、目標通りGIの舞台に立った。

 

 

 

「GIに出るなら、勝負服を考えないとな」

「勝負服?えっちなやつ?」

「違うわい!GIのレースに出る時に着る特別な服だ。ジャパンダートダービーはGIだからな。君だけの服を着てレースをするんだ」

「そうなんだ!……私だけの服……」

「どんなデザインにする?君の名前に合わせた服でも良いし……」

「うーん……私にレースのこととか、色々教えてくれた、皆の要素も入れたいな!そうだ!せっかくだから、皆で考えようよ!」

彼女の提案に、チームメイトのサマーローズ達も大賛成。トレーナーも含めた五人でデザインを考えて行き、彼女の勝負服のデザインが決まった。春の七草を模したような緑色のツルのデザインを、オータムコードが。純粋な彼女の心を表すような純白の白を、フユノシラユキが。そして他の誰にも真似出来ないような両耳の耳飾りを、サマーローズがそれぞれデザインした。

「わぁ〜……可愛い!こんなに綺麗な服を貰っても良いの!?」

「ああ。GIを走れる娘の特権だ。それを着て、高知代表も強いんだぞって所を全国に知らしめて来い!」

「はい!私、むくんでいきます!」

「頑張れよ!私達も応援してるからな!」

「東京の土産も頼みますだな」

「私達も、いずれ高知から羽ばたいて見せますからね」

「ありがとう皆!お土産も忘れずに買ってくるからね!」

ジャパンダートダービーの開催地は大井レース場。つまり、東京で開催されることになる。ハルノナナクサとトレーナーは飛行機を乗り継ぎ、一時的にお世話になる、大井ウマ娘トレーニングセンター学園に入寮した。歓迎こそ受けたが、レースの人気は最低人気。無理もない。ジャパンダートダービーは、地方で最強の大井からはもちろん、中央からも刺客が登場し、そこに全国の強豪ウマ娘達が参戦する。いかに高知のダービーウマ娘と言えど、このメンツ相手に勝てるとは、とても思われないのが妥当な所だ。

 

『先頭はスマートファルコン!後ろは届かないか!後方勢も追い込んでくるが!変わらない!やはりスマートファルコンだ!』

やはり、と言うべきか。ハルノナナクサはジャパンダートダービーに出走するも、先頭から大きく離された11着。全力全開でダッシュしたにも関わらずだ。

「……はぁ……はぁ……全然……届かなかった……」

遥か彼方でゴールしたであろう、優勝したスマートファルコン。そしてその手前で競り合っていたライバル達。誰も彼もが遥か遠くで、自分だけが後方にポツンと残される形での決着となった。

「皆から……勝負服の力も貰ったのになぁ……」

ギュッと拳を握り、悔しそうに下を向く。瞳からは、ポツポツと雫が溢れてダートに染み込んでいく。これが高知のレベルか。これが、自分のレベルなのか。

もっと速くなりたい。

もっと強くなりたい。

そう思うには、十分すぎるほどの経験であった。泣いてなんかいられない。早速帰ってトレーニングだ。ぐしぐしと涙を拭うと、ハルノナナクサは砂で汚れた勝負服のまま歩き始めた。

「ナナクサ!」

「トレーナー……私、もっと強くなりたい……!次は勝ちたい……!」

「……そうか…分かった!次こそ勝てるように強くなろう。君を必ず優勝まで連れてってやる!」

「……トレーナー……!」

高知の施設で厳しい事は分かっている。高知育ちの彼女では厳しい事も分かっている。それでも、彼女は黒潮ダービーウマ娘だ。絶対に才能を咲かせてみせる。そう誓った帰り道での出来事だった。

 

 

 

 

「おうおう、ちょっと待ちな!」

帰り支度をしていた時のこと。いなせな声に呼び止められて、ハルノナナクサは後ろを振り返る。そこに立っていたのは、狐のお面が特徴的な、ちんまりとしたウマ娘。

「はえ?私に何か用ですか?」

「おうともよ。アンタ、高知から来たハルノナナクサだろう?」

「はいそうです!……えっと、貴方は誰?」

「あたしはイナリワン!大井の粋な江戸っ子娘!覚えといてくんな!」

「覚えておきます!それで、私に何か用ですか?」

「おう。アンタの走りを見ていて気になってな。アンタ、良かったら大井トレセンに来ねえかい?」

「なるほど、私を大井トレセンに……ええええええええっ!?」

ちょっとトレーナーと話して来ます!と脱ぎ掛けのスカートをそのまま履いて、トレーナーの元へと向かう。スパッツ丸出しで出てきたのをしっかりと怒られてから、トレーナーも彼女の話を聞くことになった。

「……それで、どうして11着のコイツを大井にスカウトに来たんだ?」

「そいつの走り方とその心意気が気に入った。どんなにビリッけつでも、最後まで決して諦めなかった。そこが気にいった!」

「なるほどな。こちらとしても魅力的な提案だが……」

大井と言えば、地方でも最強と名高い南関東の強豪。そこに移籍するということは、相応の施設でトレーニングする事が出来る。それでも、問題点は多いだろう。いきなりの東京への移籍。高知の仲間達とは別れることになるし、田舎から一気に東京に慣れる必要がある。

「うーん……私はどうしたら……」

「……なんにしても急だな。そのスカウト、一度持ち帰らせて貰っても構わないか?」

「あだぼうよ!返事が決まったら手紙送ってくんな!もちろん、直接来てくれても構わねぇからよ!」

そう言って、いなせなウマ娘は去っていった。ハルノナナクサ達も一旦高知へと戻ることにした。

 

 

 

 

高知に戻ってから、チームいも天のメンバーでスカウトについて話し合っていた。と言っても、ハルノナナクサはもちろん、他の三人もおおむね心持ちは決まっていた。

『大井には行くべき』

であった。お別れこそ辛いが、後生の別れという訳でも無し。高知ではほとんど敵無しの彼女なら、大井でも十分にやって行けるだろう。ただやはりというか、ハルノナナクサ本人は未だに迷っていた。

「(私、大井で一人になってもやって行けるかなぁ)」

頼れるトレーナーこそ、一緒に来てくれるが、朝の支度は家でやってもらっていたし、友達のサポートもあってレースに熱中出来ていた。

「……不安ですか?ナナクサ」

「あ、シラユキ……うん。皆と一緒にやってきたから、一人で大丈夫かなぁって」

「大丈夫ですよ。貴方はこの一年で成長しました。私達の誰よりも」

「ありがとう……でも……」

「でも、メンタル面は成長出来ているか不安ってか」

「ローズ!……うん。私だけで恥ずかしい真似とかしちゃわないか心配で……」

「大丈夫ですだな。私たちがどれだけナナクサに色んなことを仕込んだと思ってるんですだな」

「コード……皆………」

「「「大丈夫。ナナクサは強い」」」

「……えへへ、うん!」

仲間達に背中を押されて、彼女は歩き始めた。高知から遥か離れた南の地、大井トレセン学園へ。

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