ウマ娘 ハルノナナクサ   作:ウマ侍

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第8話 ようこそ 大井トレセンへ

「わぁー!ここが大井ウマ娘トレーニングセンター学園かぁー!」

少々クセのある桃色の髪。スラリと伸びたロングヘアの頭頂からは、アホ毛の束が一本ぴょこんと飛び出ている。小さな耳には両方に草を結んだような髪飾りを付けている。瞳の色は綺麗な桃色で、髪の毛と見事なコントラストを奏でていた。背丈はやや小さく、歳相応の雰囲気が感じられた。

「よし…頑張るぞ!目指せGI制覇!」

彼女の名前はハルノナナクサ。元気いっぱい、明るい田舎娘。目標はGIウマ娘になること。

脚部に不安がある関係で、当初は普通の学校に通っていたが、それを解消。ジャパンダートダービーの走りをあるウマ娘に見初められ、晴れて大井トレセン学園の生徒になったのだった!

「よう!やっと来たみてえだな」

「イナリワンさん!」

イナリワン。かつて平成3強としてスーパークリーク、オグリキャップらと競い合った強豪ウマ娘。現在は大井トレセンのOBとして、様々なサポートを行っている。今回、ハルノナナクサを大井に呼んだのも彼女である。

「ここに来たってえ事は、覚悟は決まったみてえだな」

「……はい。大井所属のウマ娘として走らせて頂きます」

「……分かった。アンタの部屋は用意してある。まずはそこは行こうか。あたしに着いてきな!」

「はいっ!」

色々と準備があり、トレーナーはいないので、頼れる人はイナリワンのみ。彼女から離れないように、必死に後ろを走っていった。

「ここがアンタの部屋だ。ここでは基本的に二人でひと組だ。同室の奴とは仲良くしてやんな」

「はいっ!……ええと、し、失礼します!」

バタン、と扉を開けると、そこにいたのは如何にも気難しそうな黒鹿毛のウマ娘。一瞥こそしたが、興味なさげにそっぽを向いた。

「今日からお世話になるハルノナナクサです!よろしくね!」

「………ああ」

そう言って、興味なさげーにそっぽを向く。彼女の名はカスタード。大井でも最高クラスの、Aランクで鎬を削っている猛者だ。彼女からすれば、ハルノナナクサは「よく来て、よく去っていく」者の一人にしか見えないのだろう。そんな威圧感に押されるかと思ったが。

「ねえねえ!お名前くらい教えてくれても良いでしょ!」

「……分かった。カスタードだ。甘いお菓子のやつ。覚えとけ」

「うん!よろしくね!カスタードちゃん!」

肝っ玉の座った奴だ、と関心しつつも、やはり興味無さげに寝転ぶ。せっせと荷解きをしていくと、なにやら持ってきた覚えの無い代物が鞄の中から出てきた。

『大井へ行くのでしょう。田舎者丸出しだと困りますから、せめて恥ずかしく無いように、このブローチを貴方に差し上げます。お好きな所にお付けなさい』

カミノイブキからの手紙だった。手紙と一緒に、可愛らしい高級なプローチまで用意してくれていた。彼女はそれを嬉しそうに付けると、ギュッと手の中で握りしめた。

「ありがとうイブキちゃん。私、大井でも頑張るからね……!」

黒潮ダービー以降、お互いを気遣ったせいであまり会えず、しっかりとしたお別れが出来なかっただけに、とても嬉しい贈り物だった。

「おーい、荷物は降ろせたかい?次は学園を案内するよ!」

「あ、はいっ!すぐ行きます!」

ドタバタと慌ただしく去っていくハルノナナクサ。カスタードはふんっと軽く鼻を鳴らすと、再びゴロンと布団に横になった。

 

 

 

 

「と、まあ。大井トレセンってえのは、こんな所だ。わかったかい?」

「押忍!よく分かりました!師匠!」

「良い返事だ。良いかナナクサ、アンタはここの、Cクラスからレースをしていく。強くなればBクラスに…って、これは高知も同じか」

「ですね。高知だとAクラス相当って言われてました!」

「なぁるほどねぇ。だが、大井は魔境だ。言っちゃ悪いが、今のアンタはただのC3ウマ娘でしかない。ここでは過去の栄光は忘れな」

「え?…分かりました!」

それはどうしてだろうか。幸か不幸か、ハルノナナクサはその意図には突っ込まなかった。彼女は高知ダービーウマ娘などの栄光にはそんなに興味が無かったからである。

「あたしからは以上だな。もう自由にして良いんだが……その前にトレーナーと合流させてやるか」

「ありがとうございます!そういえばトレーナーってどうしてるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで移籍の書類提出は完了と」

大井ウマ娘トレーニングセンター学園、トレーナールーム。彼は移籍の書類提出に追われていたが、ちょうど今書き終わった所である。

「(…あいつらは大丈夫かな)」

思い返すのは、高知に置いてきた残りのメンバー達。チームの要である自分が一緒に移籍する事になったため、チームいも天のメンバーが浮ついた状態になってしまった。

『では、彼女達は私が預かりましょうか?』

そう言ってくれたのは、高知最強チーム、黒潮龍磨のチームトレーナーである安藤しずく。本来、最強クラスのウマ娘でなければ参加の出来ないチームなのだが、惟屋が育てた三人は既にAクラス並の力を身に付けていた。同期の馴染みという事もあって、預かってくれる約束を取り付けたのである。

「あいつらなら上手くやれるか。俺はナナクサに集中しないとな」

書類をまとめておく。大井トレセンで上手くやっていけるだろうか。そんな不安と期待とを胸に秘めながらトレーナーは部屋の扉を開けた。

「あっ!トレーナー!」

「ナナクサ。それにイナリワン」

「おう。連れて来てやったぜ。案内も終わったから、後は好きにしな」

「そうか、ありがとう。色々と世話になったな」

「良いってことよ。大井を盛り上げてくれそうなやつを招待したんだ。これくらいもてなさねえとな」

そう言って笑うイナリワンの顔は屈託がなかった。トレーナーは彼女への感謝の気持ちを抱きながら、大井での活動に胸を弾ませた。

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