一ヶ月ほどが過ぎ、俺とシドは例の肉塊に自分の体じゃないから好きにいじれる、ということでひたすら魔力を調節しながら流し込み、実験していた。そのおかげか、魔力の制御は二人ともとてもうまくなった。そしてシドが完璧に肉塊の魔力暴走を食い止めた瞬間、肉塊が一瞬にしてエルフの少女になった。金髪、青目、色白、そして美人という典型的なエルフだった。
「......助けてくれて、ありがとうございます!」
自分の体が戻っているのを見て、俺たちが助けたと思っているらしい。......実験しまくった結果の偶然の産物だけど。
「お礼なんていいよ。」
「ああ、礼はいらない。正しいことをしたまでだ。君はもう自由だから故郷に帰りな、
俺の言葉に続くようにシドがさわやかに送り出そうとしたが、
「私は悪魔憑きとして追い出されてしまったので、もう故郷には帰れません。助けてもらった恩は返します!」
とか言い始めた。おい、シド。メンドッって顔すんな、わかるけど。窓をちらちら見るな。
しばらくすると、シドが口を開いた
「...そうか、じゃあ今日から君はアルファだ」
「分かったわ」
分かっちゃうんだ。
「そして君の仕事は...」
シドの言葉が途切れた。っていうか、こいつこの子を配下Aにするつもりだな。それにしてもどんなストーリーで納得させるんだ?
「魔人ディアボロスの復活を陰ながら阻止することだ」
………おまえなに言ってんの?
「魔人ディアボロス......?」
アルファは小首をかしげた。
「君も知っているだろう。魔人ディアボロスによって世界は崩壊の危機にさらされていた。しかし、人間、エルフ、獣人から立ち上がった三人の勇者によってディアボロスは倒され、世界は守られた」
いや、知ってはいるだろうがあれは...
「知っているわ、でもあれっておとぎ話じゃない?」
そう、こっちの世界ではとても有名なおとぎ話だ。
「いいや、本当にあったことさ。もっとも、事実はおとぎ話よりずっと複雑だが...」
そしてフッとシドが苦笑し、さらに告げた。
ディアボロスは死ぬ前に三人の勇者に呪いをかけた。それが今の悪魔付きの正体であること。そして治療法を隠し、歴史をねじ曲げ、強い昔の勇者の先祖返りたちを始末していると。
......もう作家になれそうなレベルじゃん。某白髪眼帯の魔王様並みに扇動とかできそう。
「......陰に潜み、陰を狩るんだ」
「......なると敵は権力者ってことね」
そんなことを考えているうちにすでにだいぶ話が進んでいた。
「困難な道のりだろう。だが、僕らが成し遂げなければならない。協力してくれるね?」
「あなたが望むならこの命を懸けましょう。そして咎人には、死の制裁を...」
どうやら、話し合いは無事に終わったらしいが、絶対にシド『このエルフちょっろ』って思っているだろ。だって背中の裏でガッツポーズしてるもん。俺はふと気になり、シドに聞いた。
「なぁ、組織名は何にするんだ?」
少しの間をおいて
「我らは『シャドーガーデン』......陰に潜み、陰を狩るものだ...」
この日、シャドーガーデンがここにいる三人で結成された。
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その夜、俺は机で紙に様々な計画を書いていた。
「やっぱり、義務教育ぐらいは受けさせるべきか。あとは、活動資金として...」
俺は今まで弟に本当に世話を焼かされた。それでも、俺が何かと付き合ってきたのはあいつが本気だったからだ。本気だからこそ、死にそうになっても、何度も何度も試してきた。だからこそ俺はそんなあいつに敬意も抱く。
そして、あいつの「ごっこ遊び」に入るなら、
「遊びなら、全力でやらないとな」
シャドーガーデンができたが、シドはモブに徹し、その間エドはどう動くのか。
次回、 さらば