Muv-luv Alternative -Right Stuff-   作:レイテンシー

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本作なのですが主題に1機体戦術機を持ってきて、それを主軸に話を展開していきます。
機体名の後ろは副題です。

合成食料の話で文字数が増えちゃったので分割しました。本話は戦術機が全く登場しませんん。

この作品、今更ですが、公式設定と独自設定の違いが非常にわかりづらいです。大体、適当言ってると思っていただいて構いません。



第2話 Type-04 second ① -カマボコとサバ味噌と日本帝国-

 

2014年--月--日

国連軍ユーコン基地

ユウヤ・ブリッジス中尉

 

突然だが、BETA侵攻によって既存の牧畜産業は壊滅した。配属された国連基地の食堂で配膳を待っている途中、なんとなしに今から食べるモノへと思考が移った。

 

当然だが合成素材を使用した、いわゆる合成なんとかランチである。ただ、これに不満があるわけではない。国策として高い食料自給率を維持してきた合衆国だが、それも西暦2000年に入るまでだった。

 

世界的な食糧事情の変化を前に、世界唯一の超大国も路線変更せざるを得なくなったのである。なのでアメリカ人である自分も合成食材は食べ慣れている。

 

今考えていること、これから考えることは戦術機とは微塵も関係がない。世界が宇宙生物との戦いで劣勢になる最中、意外に思うかもしれないが、大学では人文社会系科目についてもしっかりした講義がある。そこで習ったことだった。

 

曰く、文化を学び、それを維持することも、またBETAとの戦いなのだと講師は言っていた。戦うだけの生物に落ちぶれたら、その時こそ人類はBETAと同じ産業機械になってしまうのだとも。

 

さて、人類の食料事情が大きく変化せざるを得なかった理由は、大雑把にいうと陸地の価値が上がったことだった。

 

既存の食文化を支える農耕、牧畜は広大な土地を消費して食料を作り出している、と考えることができた。しかしこれらに向いた平地には、別の需要が生まれてきていたのである。

 

もちろん原因はBETAだ。ユーラシア大陸の失陥によって、多くの都市や工業地帯を失った人類は、まだBETAの手が及んでいない各地にその代替を求めざるを得なくなった。

 

つまり陸地には居住区、産業区としての優先的な役割が要求されるようになったのである。食料の問題は第一に考えるべき大問題では?と思うかもしれないが、これに別のアテがあるとなるとまた都合が変わってくる。

 

なので、とりあえずは人類は田畑や牧場を潰して、家や工場を建てることを優先したのだ、と考えてくれればいい。まずはBETA侵攻がどのように人類の食糧事情を脅かしていったかを順を追って見ていこう。

 

70年代のユニット落着以降、西進を進めていたBETAは、猛烈な勢いでユーラシア大陸の西半分を手中に収めつつあった。この時点で、人類は将来的な食料事情を変えていくことを迫られたのである。

 

その直接的な原因は、ソビエト連邦西部から欧州にかけての広大な穀倉地帯をBETAに荒らされたことにあった。進歩した輸送手段によって食料調達の国際化を進めていた人類に取って、この損失はユーラシア大陸に収まらなかったのである。

 

ここでの問題を単にパンが食べられなくなっただけ、と捉えるのは認識を誤らせる原因となる。ここで生産された穀物は、主に家畜の餌として消費されていたからだ。

 

なので人類が消費するはずであった穀物を家畜用に転換する、もしくは新たな土地を開墾する必要に迫られたのである。ここで牧畜は、その餌までも考えた場合、とんでもなく広大な面積を消費する贅沢品であることを人類は再認識されることになった。

 

対策の一つである新たな土地の開墾は思ったより大変である。ただ空いている土地に行って鍬で耕せばいい、というモノではなかった。というのも大きな農業地帯には、大体は歴史がある。

 

地域レベルでこれをシフトさせるのは、100年、もしくは1000年単位で改良を積み重ねてきた歴史を放棄することに等しかった。ここ50年で発展した科学技術を用いても、全くの新たな土地でまともな農作物を得るのに半世紀はかかるのではないかという予測が立てられた。

 

これを持って1979年に宣託されたオルタネイティブ宣言では、その8番目に代替的な食料調達が目標として掲げられたのである。ここに消極的な印象を覆して、リーダーシップを取ったのが日本帝国であった。

 

詳しくはわからないが、将軍よりも上に存在する命令系統からのビックオーダーがあったとの話で、彼らは人類に新たな選択肢を持ちかけたのである。

 

つまり食料調達における海洋資源への大規模なシフトである。

 

いわゆる狩猟は、陸地においては牧畜の前段階であり、都市化が進んだ20世紀には主要な文化圏において食料調達を依存する手段ではなくなっていた。しかし、海産資源については事情が異なったのである。

 

水棲生物に対する狩り、つまり漁は日本帝国の主要な食料調達手段として現役であった。この時まで日本帝国が食料調達の選択肢に狩りを残している特異な先進国であることを、各国は忘れていたのだ。

 

彼らが提示した新たな選択肢は、人類みんなで魚を食べよう、という呼びかけであった。

 

ただ大元のオルタネイティブ8が目指した世界はそれよりも高度であった。つまり非生物からの食料合成である。化学的に合成可能な物質から食料を調達することで、初めて人類の代替案になれるとしていたのである。

 

しかし、有機的な錬金術と評されるそれは、いくつもの技術的な壁を越える必要があった。また、文化という観点からも、既存の食文化を捨てさせる動きに反発があった。

 

ここで化学合成の前段階と、既存の食文化のイミテーションという現在の合成食料の大まかな方針が立てられたのである。

 

つまり海産資源をすり潰して合成し、既存の食文化に合う形で再成型したものが、今から自分が食そうとしているBランチ、合成サバ味噌定食だった。

 

面白いことに合成サバ味噌には、サバを含む合成食料が使われている。完全に一手間無駄だった。

 

好みの問題もあるが、大学で食堂に並んだ時、講師から直接魚を食べずに合成した魚っぽいものを食べているジレンマを噛み締めろと言われ、面白かったのでメニューに出た時はコレを選ぶようにしている。

 

90年代以降、日本帝国で積極的に導入された合成食料は、必ずしも歓迎されたわけではなかった。初期は何を食べてもカマボコにしか感じない、とされた。作り方がほぼ同じなので仕方がない。

 

ただ前述のビックオーダーがあったことや、合成プラント建設を外貨獲得のメイン事業として推進したこと、調理技術が急速に進んだことで徐々に受け入れられていった。

 

彼らからしたら、魚を主な食料調達元にしているかぎり、食文化を変える必要はなかった訳であるから、人類への貢献に頭が下がる。

 

初期に懸念された、大規模な海洋資源への依存による資源枯渇も、80年代から90年代に通して行われた全地球規模の海洋調査によって、そこまで大きな問題にならないことが判明した。

 

海洋資源の強靭度は、当初人類が想定した以上の強さを持っていたのである。その理由について調査を指揮したサカナクン博士は、海中の移動コストの安さを挙げた。

 

陸上生物が大規模な狩猟や環境変化により、容易く絶滅することを人類は経験として知っていた。同じことが海洋生物にも当てはまるのではないか、という懸念は当然である。しかし、この懸念を博士は移動コストという概念を取り入れることで払拭した。

 

つまり陸上生物が絶滅しやすい理由が、地形の高低差によって生じる移動コストの高さの問題によって、その原因から逃れられないことにあると説明したのである。

 

海洋にも潮の流れや、温度変化などの移動コストが高くなる要因はあるが、その領域が地上に比べて広いことと、水深という幅を持つことによって、海中の移動コストは陸上よりも遥かに安くなるのである。

 

人類が地球規模の調査までにコレを実感できなかったことは、その大きさが人類の経済的な枠組みすら超えていたからである。つまり仮に国レベルの影響力によってある地域で漁獲量が減ったとしても、他の国や地域では逃げた魚によって豊漁になるため、世界全体として漁獲量は大きく変わらないのである。

 

もちろん何も気にせず獲りまくればいい、という話ではない。ただ全世界で協調的に海洋資源を管理、維持すれば、人類は海という大きな循環システムから一部を拝借するだけで生きられるとしたのである。

 

海が陸と比べてBETAの影響が及びにくい点も前提としてある。

 

結果として、準国連機関となる日本帝国の水産資源省が世界の食料調達に大きく関与することとなった。彼らは排水量1万トンクラスの大型高速艦を多数配備し、世界中で日々、違法漁船と戦っている。

 

広域監視のためにアメリカ合衆国から払い下げの空母まで購入した。ターボプロップ2発の固定翼艦載哨戒機を有しており、改修でカタパルトまで装備している。帝国海軍機動部隊の実質的な復活であった。

 

一部地域では海賊より恐れられていて、届出を出さずに漁をしていたら、プロペラの音から1時間以内で大型巡洋艦が突っ込んできて、接舷、問い合わせを受ける、と伝えられている。

 

アメリカ合衆国海軍が艦隊でやった無許可のF作業に突撃した、という真偽不明の逸話まである。コレは取り締まりの規模からして本当か怪しい。

 

ともかく日本人の頑なな態度について、アジア文化史の講師は、背景に個人でも明確な善悪を判断できる基準がある時、日本人は一致して過激な判断を指示する、と教えてくれた。つまりBETA支配下での海洋資源優位が明確な判断基準である。

 

ただし第2次世界大戦でのそれは欧米列強からの解放であったわけであるが、その結果が歴史にある通りであるため、警戒すべきポイントで美徳とは言えなかった。

 

オルタネイティブ8での過剰なリーダーシップもその一環である。彼らは何かと極端なのだ。

 

話を戻すが、海洋資源で人類を永続的に養えるかというと、それは別問題だった。範囲が広いだけで海洋もBETAの影響は必ず受ける。BETAの支配領域が増えると養うべき人類の方が減る、という大問題があるが、それは置いておく。

 

BETAは地球の生態系に一切、組み込まれていないため、存在するだけで環境を汚染する。従来、汚染は海洋の方が広まりやすいとされたが、それは極論を言うと近くで魚を獲るからだった。魚を獲る領域が全地球に広がるとまだ少し猶予がある。

 

でも猶予があるだけである。地上で直接排除されてしまう動物や植物に比べると影響を受けにくい、という話であった。つまりオルタネイティブ8の最終目的は変わらなかった。繰り返しになるが非生物からの食料合成である。

 

現在の第8計画は、その過程にあって合成食材を受け入れる社会を作り出すことが目的であった。日本帝国もそれは承知していて、合成元になる海洋生物を最終的に化学的に合成した非生物へと、置き換えていくことは何度も強調している。

 

ただ技術の方が追いついていないのだ。公開されているロードマップでも、十分な安全が確保された非生物由来の合成食には程遠かった。だから海洋資源を使った合成食材が提案された。そして、さらに途中の段階を挟む提案がなされた。

 

コレが大問題だった。89年にオルタネイティブ宣言が改訂された際に、日本帝国はこの分野でのイニシアティブを盾に、とんでもないことをぶちあげた。

 

それが現在のオルタネイティブ8での代替目標「BETAを食べよう!」である。事前の協議なしに行われたこの変更に各国は憤慨した。

 

それまでの第8案での日本帝国の奮戦は、何故かは知らないけどよくやってくれている、というモノであった。畜産業を維持したい業界からの反発にも上手く対応していた。

 

合成食材の配合元を各国で変えられるように工夫したのである。例えば100%海洋資源ベースでの合成を考える日本帝国のオリジナルに対して、その鯨が占める部分を、割高になっても良ければ既存の畜産物に置き換えることができた。

 

また文化的には合成食材の導入を段階的とし、急激な変化は強制しないなどの柔軟な施作は素直に評価された。国際連盟から堂々と退場したかつての彼らのような堅さはないように思われたのである。

 

それが合成食材の配合ベースにBETA由来の材料を持ち込もうと主張しだした。猛毒を持った当たったら死ぬ魚を食べ続けている連中は、やはり理解できなかった。

 

BETAもそのまま食べたら死ぬ。それどころか10分直視したら発狂する恐れがある物を食べようとする精神は、到底分かり合えないのである。

 

余計に怖い部分が、急に狂ったのではなく、理論立てて正しく狂ったことだった。彼らの中には理屈があったのだ。それがオルタネイティブ8の詳細目標、BETAの地球生態系への取り込みである。

 

BETAが問題となるのは地球の生態系に全く合致していないことである。分解できる微生物が存在しないので腐敗もしない。支配地域で草一本生えなくなるのもその影響であるとされている。

 

であれば、それを逆転してBETAを地球生態系に取り込んでしまおうと彼らは考えたのである。正しくオルタネイティブ的発想だった。

 

BETAを食べるのはそのセンセーショナルな目標の一つで、スピンオフとして無害化したBETA由来の肥料を作って、失地の回復に充てるというそれらしい展望まであった。

 

そして、なんの根拠もなく言い始めたわけではない。そのために綿密な裏付けが行われていた。BETAの分解と無害化には、正しくロードマップが敷かれていて、それが非生物からの食料合成ほど無理がないことを第3者が検証していた。

 

さらに初期のBETA捕獲方法にも目処がつけられていた。最終的には人類がBETAを狩る訳であるが、それまでは自然死した個体を使用することが計画されていた。

 

BETAの自然死ってなんだ、という話ではあるが、彼らは宇宙生物に病があることを突き止めていた。活動を停止したBETAの中に、その理由が分からない個体があることは以前から知られていた。

 

つまり目立った外傷がないのである。AL4との共同作業部会は、これら個体の解剖結果から人類でいうところの心臓発作を起こしたのだと仮定していた。

 

それはBETAを宇宙人の産業機械と理解するのであれば不良品であった。BETA支配域を含む全地球規模での海洋調査を行った日本帝国は、この不良率が思ったより高いことを見つけ出したのだ。

 

これをしてBETA創造主の品質管理には改善の余地があると言い放った。ただし物量で踏み潰すBETAの基本戦略からすると多少の不良は問題ではなく、人類を有利に導く発見ではない。

 

ともかくその数が、BETAを主要な栄養源として取り入れても初期段階では成立する程度に存在する、というのが大筋の主張だった。

 

彼らはすり潰したBETAの粉末から未知の味覚成分まで見つけていた。単体で摂取すると脳がパチパチする感覚がある、と真面目に書かれていたらしい。コレをキメたから、こんな提案をしてきたんじゃないかと噂された。

 

最初にこの提案を受けた国連担当員は「人類が行ってはならない方向に追い詰められている様に感じた」と記録している。

 

ともあれ日本帝国が言い出した新しいオルタネイティブ8の目的は、世界中から大批判を受けた。やりたいことはわかるが、そこまでする理由が分からないと各国は頭を抱えた。

 

日本帝国の主張はオルタネイティブ宣言の全体作業部が試算する人類の戦況に基づいていた。宣言は10年ごとに改訂されるが、その根拠として、今後10年のBETA大戦の戦況予測を算出する。

 

この予測には、悲観的なシナリオ、現状維持のシナリオ、好転するシナリオの3つが存在する。ただし、何かの施策を立てる場合には後者2つのシナリオを使う。

 

悲観的なシナリオは大体10年後には人類は滅びている、と結論づけるので、それはそれで別の対応が必要なのだが、人類社会を続かせる策には使えないのだ。

 

ここ10年はなんとか現状維持のシナリオ通りにBETA大戦は推移している。

 

オルタネイティブ8での海洋資源をベースにした食料調達は、現状維持や好転のシナリオのどちらにおいても、なんらかのテコ入れが必要だと日本帝国は警告した。

 

それは前述の海洋資源の限界もあるが、仮に戦況が好転したとしても、すぐには牧畜などの陸上生物ベースの食料調達には戻せないためだと、彼らは説明した。

 

原因は、仮に大陸をBETAから奪還したとしても、その汚染を除去することに時間がかかることだった。特に植物において顕著であるとされた。

 

動物にはある程度、自力で汚染を排出する能力が備わっているが、植物は基本的に溜め込むことしかできない。人間が食べるモノ、家畜の餌にするモノを問わず、植生が従来の食料調達体系に戻るには少なくとも1世紀以上かかると試算した。

 

誰もが薄々感じていたことが具体化していた。BETAに支配されて荒野になったユーラシア大陸を見たら、心のどこかにもう2度と元の風景には戻らないんじゃないかという疑問が生まれる。

 

子供騙しだが、国連は明らかに茶色が主成分になったユーラシア大陸の衛星画像を、人目に触れさせることを避けている。

 

BETAへの対抗心を保つという観点から見ると、その後の復興について考えるのはタブーであった。まだ復讐心で燃え上がってくれている方がいいのだ。そこに日本帝国は、思いっきりパンチを叩き込んだ。

 

思うに彼らは真面目なのだろう。戦況がどうであれ、復興を考えないことは不真面目だと感じたのだ。それに間違いは全くない。

 

なので各国の反発する声は、言ってしまえば駄々をこねているだけだった。野菜を食べなさい、と言われて拗ねている子供である。だからどの国もオルタネイティブ8の改訂内容を取り下げさせなかった。

 

人類はBETAすら食べて生存し、荒野になった地に種を蒔いて育て、それが無毒になるまで捨て続け、ようやく無毒になった土地の瓦礫から街を興し、そこに経済を復活させる。仮にBETAに勝てたとしても、人類のその後は汗に血が滲む様な努力の連続だと叩きつけた。

 

ユーラシア奪還にこだわる欧州連合は、もはや手段が目的化していて、奪還さえ果たせば燃え尽きるんじゃないかという復讐鬼になっていた。

 

アメリカ合衆国には誤謬があって、BETAを駆逐さえできたら、人類は次のステップへ進む、地球環境は全部解決するのだと思い込んでいる節があった。隣国に作ってしまった巨大な帰還困難地域から目を背けるためでもあった。

 

ソビエトはよく知らないので分からない。

 

オルタネイティブ8の改訂目標は、人類がその後(The Day After)について考えた最初の機会であった。

 

驚くべきは、日本帝国がこの議論の最中にBETA侵攻を受けて国土を半分失っていることである。彼らはそれでも持論を曲げなかった。そして驚くべき意志の力でBETAを追い出した後、彼らは持説通りの復興を始めた。

 

少なくともそれはリスペクトに値する行動であった。

 

 

 

 

合成サバ味噌定食を受け取る。文字数にすると随分時間のかかることだと感じるかもしれないが、思考時間と実時間が一致しない話は前にもした。

 

ここからはアメリカでどの様に合成食料が受け入れられていったのかを見ていこう。

 

軍服を着ている時は、食事中はひたすら料理を食べることだけを考えないといけないので、誰かを見つけて雑談なんてことはしない。その方が気楽な面もあった。

 

90年代に日本が合成食料の導入を始めたのに続いて、各国で合成食料を導入する動きは続いた。プライドの高そうな欧州連合まで導入したのは意外だったが、高騰し続ける天然食料と比べると値段にかなり差が出るのでやむを得ない側面があった。

 

特に配合元を工夫して複数の海産資源から作られる合成食料は、既存の食料に比べて供給が抜群に安定していた。欧州連合はなんとか隠そうとしていたが、アフリカへの社会基盤移転で一部の食料供給が滞り、餓死者が出る事態にまでなっていたことが後々明らかになっている。

 

日本帝国が危惧した農業・牧畜産業の移転の難しさを、BETAの災難にあった各国は身をもって経験していた。海産資源は漁をした後の入港先を調整することで、比較的、柔軟に配分を変えることができた。それと発達した冷凍技術が最大の課題であった鮮度の問題を解決した。

 

要点は、食料の供給体制を人類で一元化したこと、であったとも言われる。これまでのように、各国で別々に食料を調達していた状況では、海産資源だろうと陸上資源だろうと問題が発生していたと考えられている。

 

世界中の沿岸に日本帝国が支援した水揚げ施設ができるようになると、海産資源は人類の食料供給を支える重要なリソースへと変わっていた。

 

最近は大型船そのものに合成プラントが合体しているタイプの船が多いらしい。洋上で多種の漁船と合流して魚を受け取り、船上ですり潰して合成食料を生成、それを冷凍機付きの規格コンテナいっぱいに詰め込んで港まで移動する。

 

たまに高速道路で魚が辞世の句を読みあげている絵が描かれたコンテナと出会うが、あれに一杯に合成食料が入っているらしい。漁獲量を測るのが難しくなる、と初期は水産資源省が難色を示していたらしいが、出来上がった合成食料の側を管理することで問題をクリアした。

 

アメリカはこの流れに最後まで抵抗した国だった。

 

最初に輸出に振り分けていた穀物を、国内の家畜の餌に回す様に手配した。それ以外にも国内で原料を融通して産業を維持できるように工面した。

 

90年代初頭の予測では、人口推移が順当であれば国内で食料調達を続けられるはずであった。それが2000年代に入って急速に崩壊したのは、移民の大規模流入により人口が膨れ上がったからである。

 

合衆国が移民の基準を緩めたのではない。むしろ基準は厳しくなっている。しかし、世界で唯一、まともに回っている先進国であるというネームバリューは凄まじく、基準を上げてもそれ以上に人が集まってしまう。

 

難民も行き先をよく精査して惑っている訳ではないので、行き先がなくなった時に最初に思いついてしまう、というのは人が集中する大きな理由になった。

 

90年代に入ってBETA大戦の戦況が悪化、国連が悲観的なシナリオに突入していることを認めると、流れ込む人の数は一気に増加した。その数が移民局の能力を完全に超えると、国内が不法移民で溢れかえった。

 

 

 

「ブリッジス中尉、日本のお偉いさんが顔合わせしたいそうだ。午後一で207会議室まで出頭してくれ」

 

食堂で偶然会ったイブラヒム中尉に思考をさえぎられてしまった。

 

ここから大学時代のレポートでトウモロコシにバター塗ったヤツを子供に配って歩いた話や、キョウヅカフードのエクストラミート3号、通称XM3がアメリカにどのように浸透したか、WHOが警告する「死の8歳」をいかに世界が乗り越えたかを考えようと思っていたが、一度さえぎられてしまうと続きが出ない。

 

たまに思うが軍人は大事な連絡を偶然会ったときに話してくることが多い。偶然会わなかったらどうするつもりだったんだと思うが、それだけ軍隊での行動がパターン化しているということなのだ。

 

ともあれ午後からは重たい話が続きそうだと覚悟することにした。

 

 

 


 

■■■■年■■月■■日

国連軍横浜基地

民間人 ■■ ■

 

 

目が覚めたら隣の幼馴染の家がロボットに押しつぶされていて、学校がなんか軍事基地になっていた。

 

夢だと思って守衛をからかったらきつめに地面に押さえつけられて、本物の牢屋に入れられた。

 

どこかで覚めるだろうと思ったが、体感時間ですでに1日以上経過していることを自覚しているし、途中で何回か気絶するように寝て起きた。

 

つまり現実だった。

 

「アンタはそのロボットを、今のところは、世界中の誰よりも上手く操縦できる」

 

何か体に機械をつけてボタンを押す検査を受けさせられた後、夕呼先生と別室で面会した。

 

状況が状況だったので情けなく泣きながら経緯を説明したら、この世界では面識はないし馴れ馴れしくするなと突き放されてしまった。

 

結論から言うと宇宙生物とロボットで戦争している変な世界に迷い込んだ。そして自分にはロボットを操縦する適性が、今のところ、世界で一番高いといわれた。

 

適性は念じただけで機械を動かせる装置が意思を読み取るときの誤差らしい。

 

国連オルタネイティブ4直轄 次世代間接思考制御研究開発部隊 A-01

 

精度誤差0.01と分類される最高適正A-01の人間だけを集めた、この世界での夕呼先生の教え子らしい。A-01とは具体的に何かの数値が0.01なわけではないが、誤差が存在するがそれが最も少ないことを表している。つまり人類で最も機械に意思を反映させやすい人間の集まりだった。

 

そこで面倒を見てやってもいいと言われた。

 

「宝くじで1等とった人間だけを1か所に集めたようなもんね」

 

後々に世界事情を知るとこの世界に宝くじがあることが驚きだったがわかりやすい説明だった。詳しく聞くと因果律がどうだかという話が出るのでさっぱりわからない。

 

目標はA-00の実現。誤差0.00、念じただけで機械が動く空想上のアレ。人間の意思が完全に機械に反映されたときに実現する大きな野望に向けた実験集団だった。

 

「釈然としないでしょうけど、とりあえず、ロボットを動かしてギャイギャイできるんだから乗せられなさいよ」

 

男の子だから好きなんでしょ?と言われる。

 

もちろん好きだった。

 

 

 





TDAで日本帝国が戦艦と一緒に合成プラントごとハワイまでやってこれたのはなんでだろう?と考えたら、文章量が増えていました。本筋にほとんど影響しないような気がします。

後半話をぶった切ったのは、エピソードとしては考えていたんですが、本当に長くなるので切りました。どこかに入れ込みたいです。

次のエピソードは主にG弾と日本帝国の戦略についてで早めに投稿したいと思っています。
本作を通じて読者の皆さんにG弾主戦論者になっていただきたいと思います。
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