一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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第3部 スターダストクルセイダーズ
出会い


 

 

 俺はスタンドである。主人はまだ居ない。

 いわゆる「独り歩き型のスタンド」と呼ばれるものだ。

 好きでそうなったわけではないが。

 

 対して。

 目の前にいる男の名は、空条承太郎。

 ジョジョの奇妙な冒険3部主人公にして、最強のスタンド使いの名を冠する男。

 そのしなやかな体躯は筋肉に覆われ、生半なヤンキーなどデコピン一発で吹っ飛ばしそうな偉丈夫である。

 

 場所は夢の中。

 スタンドとして深層意識下へと入り込み、夢という形でかの空条承太郎と対面しているのだ。

 

 地平線まで白いSFじみた不思議空間にて、承太郎は動揺を隠し油断なくこちらを鋭く見据えている。

 大した胆力だ。

 普通の人間なら驚きのあまり腰を抜かしているところだろうに。

 

 視線からビシビシと感じる警戒心を努めて無視し、俺はおもむろに承太郎へと本題を切り出した。

 

「はじめまして空条承太郎。ちょいと頼みがあるんだが、俺の本体になってくれないか!」

「……言っている意味がわからん」

 

 承太郎は真顔で言った。そりゃそうだ。

 

 

 まあなんだ。

 初めから説明すると、俺はしがない転生者なのだ。

 気が付けば見知らぬ女性のスタンドだった俺は、気ままに呑気に日々を過ごしていたわけだ。

 

 それが本体の死を機に一転。

 死の無念をもって強化された俺というスタンドは、暴走のままに片っ端から一般人に取り憑いては狂死させることを繰り返した。

 見事な害悪スタンドだ。

 が、悪は敗れるもので、野生のスタンド使いとの幾度かの対峙の末弱体化。

 憑依先を選べる程度にまで落ち着いたのだ。

 

 ようやく意識を取り戻した俺はこう思った。

 これ以上流れ害悪スタンドでいるのは嫌だ。早急に真っ当な本体を探そう、と。

 

 それでこうして作中屈指の強スタンド使いの前に現れたというわけだ。

 

 ちなみにだが、まだ時系列的に承太郎はスタンド使いではない。

 単なる不良のレッテルを貼られた黄金の精神持ち高校生である。

 

「俺はスタン……あー、浮遊霊みたいなものでな」

「蛇の幽霊なんざ初めて見たぜ」

「蛇だって成仏し損ねることもあんだよ!じゃなくて、そう」

 

 俺はずいと顔を寄せた。

 俺のスタンド像は翼ある巨大なガラガラヘビだ。

 その大きさはよく育った街路樹ほどもあるだろう。

 スタンド像としては特大の部類だ。流石に3部悪の一角であるストレングスには負けるが。

 

 目の前に迫った俺はひと呑みにされそうな迫力だろうに、承太郎は微動だにしなかった。

 

「浮遊霊である俺の本体……つまりは取り憑き先になって欲しいんだよ」

「そんなもん普通は誰の許しも得ず勝手になるもんなんじゃねーのか」

 

 それはそう。

 実際今まで俺はそのように勝手に取り憑いてきた。

 同時に、俺の強大なスタンドエネルギーに耐えきれなかった人を次々と死なせてきたのだ。

 かろうじて耐えきれたスタンド使いもいたが、俺の能力の制御ができず狂死した。

 

「……そりゃそうだが、感じ悪いじゃねーか。家主に一言もなく住み着くとかさぁ」

「変に律儀なやつだな」

「で、どうなんだ?俺を住まわせちゃくれねぇか」

 

 一拍間を置いてから承太郎は頷いてみせた。

 

「俺にメリットがあれば考えてやらんでもない」

「まじでか。やさしい…」

 

 ずいぶんとまぁ好意的だ。

 俺の優しいという言葉に嫌そうな顔をしたものの、前言撤回する様子もない。

 浮遊霊を名乗る身元不詳の大蛇を条件付きとはいえ受け入れる素振りを見せるとは。

 

 ごほん、と俺は緊張感を隠して咳払いする。

 

「えー、家事全般可能。料理の下準備から庭木の手入れまでなんでもできます」

「……浮遊霊が?」

「俺は万能な浮遊霊なので。ちょっと高いところに手が届かない、脚立を持ってくるのは億劫だ。そんな時ってありますよね?この大蛇がいれば!ひょいっと遠くのものをとれちゃいます!」

「気合いはわかったからショッピングチャンネルは止めろ」

 

 承太郎がうっとおしそうに俺の顔を片手で払った。

 眉間にしわも寄っている。

 

「あと俺未来予知できるから助言とかできるぞ」

「普通それを最初に言わねーか」

「いや、なんか嘘くさいかなと思って」

 

 ふ、と承太郎が笑った。

 口元だけで笑うそれは僅かではあったが、彼にしては分かりやすい方なのだろう。

 俺を見上げたその表情は満足そうであった。

 

「いいぜ、採用だ。蛇、テメーの名は?」

「アルカナテラー。神秘を告げる者、アルカナテラーだ」

 

 承太郎の承認と同時に俺はそのスタンド像を彼の魂へと絡みつかせた。

 本来は呪縛や呪詛にもなる契約だ。

 しかしそれは承太郎という埒外のスタンド使いの資質によって受け止められ、馴染んでいく。

 

 承太郎は小さくうめいた。

 俺の埒外のスタンドパワーにさらされておいてこの程度で済むなら、それこそ奇跡としか言いようのない才能だ。

 能力の暴発もない。完璧な制御とはいかないが、この程度なら俺で抑制できる。

 さすがは未来の最強のスタンド使い。

 

 俺は震える声を飲み込んで、するりと頭を下げてみせた。

 

「これからよろしくな、本体」

「承太郎でいい。ひとまずあのアマに紹介してやるか」

 

 

 

というわけで、翌朝「おいアマ、新しい家政婦だ」と雑な紹介で聖子さんに悲鳴を上げられた俺である。

 

「きゃーっ、承太郎が食べられちゃう!」

「違います違います!俺はごくごく大人しい蛇なんで息子さんを頭から丸呑みにしたりしません!」

「まあ!喋ったわ!承太郎!この蛇さんずいぶん日本語が上手なのね!」

「歌も歌えますよー、ばばんばばんばんばん!」

「あ、それ聞いたことあるわよ!温泉の歌よね?」

「どうぞホリィさんもごいっしょに」

 

 

 やかましいのが二人に増えたみたいな顔をする承太郎である。

 




スタンド アルカナテラー
「神秘」の暗示を持つスタンド。
強大なスタンドパワーを持つ独り歩き型で、能力は未来予知。
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