一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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Jガイル&ホル•ホース戦

 

 ぎぃやああああああ、という大絶叫が夜のフマユーン廟に響く。

 声の主は仇の男。

 その心根そっくりの醜い容貌の男──Jガイルが、喉を裂かんばかりに絶叫している。

 

 肩に大きな傷を負ったポルナレフは茫然とその異様を見守るしかなかった。

 

「どうしたJガイルの旦那!?」

「ひっひぃぃぃいいいいい、っゥボ、ア、コヒュッ…」

 

 テンガロンハットをかぶるカウボーイ風の男が慌てて距離を取り、Jガイルへと声をかけた。

 

 ポルナレフがあの外道、Jガイルのスタンドに肩を貫かれ、大量出血に膝をついた時だ。

 

 勝ち誇って姿を現したあの男の前に突如巨大な蛇のスタンドが乱入したのだ。

 反射物をその巨体で遮られ、舌打ちしたJガイルはポルナレフの靴の金具を介して蛇の瞳へと素早く飛び込んだ。

 ポルナレフを始末してから蛇の対処をしようと考えたのだろう。

 

 しかし次の瞬間。

 奴は尋常でない様子で苦しみだしたのだ。

「だし、出してくれぇぇえええ止めっ、ひっ、うひぁああああ!!!」

 げぼげぼと胃の中のものをすべて吐き出し、頭を抱えて鼻血と血涙とを垂れ流す。

 

 

 大蛇はいつの間にかポルナレフの前にいた。

 虚空を見つめ、片目を瞑ったまま子守唄でも歌うように言葉を紡ぐ。

 

「苦痛、憎悪、血、未来。可哀想に、我が瞳に飛び込む蠅よ」

 ポルナレフなどひと呑みにできそうな大蛇がシュルシュルと鳴く。

 邪悪に目を細め、ぺろりと細長く二つに分かれた舌を這わせる。

 ケタケタ嗤い、蔑み、人の戯画の如く醜悪に亀裂の走った笑みを浮かべる。

 

「多重の未来に苛まれ、疾く疾く息絶えるがいい」

 

 この化生を討たねば、人の世が危険だ。

 ポルナレフはそう思った。

 

 その時。

 ごん、と。黒い学生帽の男が蛇の胴を乱暴に蹴っ飛ばした。

 

「おい、蛇」

「…………じ、承太郎ってば聞いてた?」

「ったりめーだろ」

「あー、うん。あれだ。ちょっとテンション上がってただけだから聞かなかったことにならない?」

「なると思うか?」

「……ヤメテ…仕方なかったんです…久しぶりに新鮮な精神エネルギー食べられて…」

「拾い食いしてんじゃねぇ。犬かテメーは」

 

 蛇がぱっと目を開けた。

 もはや言葉にもなっていない狂気の言葉の叫び声をあげながらJガイルがフラフラと逃げ去っていく。

 

「っ待て!逃げるんじゃねぇ!!!」

 

 叫んでも体は動かない。立ち上がった拍子にバランスを崩し、無様に地面へと倒れ込むだけ。

 もはや血を失い過ぎて平衡感覚が死んでいるのだ。

 

 逃げゆくJガイルの後ろ姿を見ながら、占い師と思しきゆったりとした衣服の男が心配そうに口を開く。

 

「追わなくていいのか。奴は危険なスタンド使いなのだろう?」

「ここで逃がせばジャスティス戦で楽ができる。つまり生餌ってやつさ。じっくり獲物を貪るお楽しみの時間が……うん、俺今日はもう喋らないほうがいいなコレ。そんなわけにもいかないけど」

「どうした、君らしくもない」

「花京院君や、君の言葉はうれしいが俺って根本が悪属性だから気を抜くとクソ外道大蛇丸になっちゃうのよね。承太郎が本体だからちょっといいやつっぽく振舞えてるだけで」

 

 なんだか気の抜けた空気が場に溜まり始める。

 急すぎる変化に瞬きを繰り返すポルナレフだったが、視界の端にもう一人の敵を捉えた。

 ホル・ホースだ。

 どうやらポルナレフ同様激しく変化する状況に取り残されたらしい。

 

 ホル・ホースはしばらくフリーズした後、「げぇ!ジョースターじゃねぇか!」と大声をあげて逃げ出した。

「そうはさせるか、エメラルドスプラッシュ!」

「ちぃ、エンペラー!」

 

 緑の結晶が凄まじい勢いで発射される。

 ホル・ホースはスタンドの銃弾で結晶のいくつかを弾いたようだが、やはりその量的な問題は解決できなかったらしい。

 内臓をえぐるように当たった結晶体にごふ、と血をこぼして倒れた。

 そこを遅れてやってきた高齢のスタンド使いに紫色のツタのようなもので縛り上げられた。

 

 ポルナレフは整理できない感情に支配され、思わず叫んだ。

 

「貴様ら何の真似だ!これは俺の戦いで───」

「そいつは悪かった。だがこっちにも事情があってな」

「事情、だと?」

 

 先ほど大蛇を蹴り飛ばした黒い学生帽の男だ。

「俺たちはこのゲスどもに命を狙われててな。潰せるときに潰さねぇと枕を高くして眠れねーんだよ」

「………なぜ左手が右手の男に命を狙われている?」

「我々はDIOという男と敵対関係にあっての。そのDIOの刺客がそこにいる二人組なんじゃよ」

 高齢の男が言葉を続けた。

 二人はよく見れば目元が似ている。血縁関係だろうか。

「……ちっ、なら俺が口出しできることでもねーな」

 ポルナレフは納得できない感情を理性で押さえ込んだ。

 こいつらの言い分は尤もだ。命がかかっている以上、ポルナレフの行動に正義はない。

 だが、それではいそうですかと頷けるほど生易しい感情でもなかった。

 妹の無惨な遺体を思い返す。

「俺の名はジャン・ピエール・ポルナレフ。礼は言わねーぜ。これは俺の仇討だったんだ。それを邪魔されていい気分には到底なれねーよ」

「死んでは仇も何もないだろう。無念の死が貴様の望みか、ポルナレフとやら」

「てめぇ……けっ、分からんだろうな!俺の思いなど!」

 

 一歩踏み出した占い師風の男に吐き捨てる。

 立ち上がる時ふらついたが、差し出された手は拒んだ。

 

 俺は妹の仇を取る。さっき逃げたJガイルの面に剣を突き立てるまで、絶対に止まらない。

 その決意で背を向ければ、大きな影がぬうっとポルナレフを覆っていた。

「そう固いこと言うなよ、ジャン・ピエール・ポルナレフ。戦車のスタンド使い」

「蛇、こいつぁ……スタンドか!」

 

 ポルナレフを覗き込む大蛇は、先ほどの邪悪さを露ほども感じさせない人懐っこさで微笑んだ。

 

「そうとも。俺はスタンド。アルカナテラーだ。お前にちょっとばかり提案があるんだ」

「提案だと?下らねー話なら帰らせてもらうぜ。俺も忙しいんでね」

「お互い実りが大きい話だと思うぜ?」

 

 ぺろりと蛇、アルカナテラーは舌を出した。

 

「俺らはさっき言った通り、奴らのボスであるDIOに用がある。DIOはそんな俺らをうっとおしく思い、部下に排除の命令を出している」

「……それで?」

「お前が俺たちと一緒に旅をすれば、勝手に奴の部下──すなわちJガイルも姿を現すわけだ」

 やみくもに奴の後を追うよりも効率的かつスマートだろ?

 蛇はそう宣ってポルナレフの返答を待った。

「……、あのゲスがさっきので尻尾を巻いて逃げないと言い切れるのか?」

「言い切れるさ。奴の母親はDIOの熱狂的信者でね。後退し母親の陰に隠れて不意打ちすることはあっても、そのまま雲隠れすることだけはあり得ない」

「テメーらが俺の敵討ちに協力するメリットがない」

「俺らの敵を一人減らしてくれるんだ。それ以上何が必要なんだ?」

 

 蛇はキュートにウィンクをした後、ポルナレフにこう告げた。

 

「さすらいの騎士を護衛に雇う旅ってのも乙なものだろ?」

「……そうだな、せいぜい守ってやるとも」

 こんな血みどろの邂逅だと言うのに、優しい表情で見守るこの男たちなら、そう悪いことにもなるまい。

 悪の似合わない、と言えば良いのだろうか。

 どこか警戒心を薄れさせる善性を持ったものたちだった。

 

 ポルナレフはぽすぽすと大蛇の艶やかな鱗を叩いてわざとおちゃらけて見せた。

 

「ところでよ、お前の本体ってどいつなんだよ。ここにはいねーのか?さぞ愉快そうな面してんだろ」

「俺だ」

「承太郎なんだよなぁ」

「お前かよ!?え、なんだそりゃ、顔に見合わねースタンドだなぁ!?」

「僕が思うに、承太郎が無口な分をアルカナテラーが補っているんじゃないかと思うんだが」

「どうせ俺は外付けスタンドですよーだ」

 

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