一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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エンヤ婆戦

 

 パキスタンに入れば、じきに原作でジャスティス戦があった「霧の町」だ。

 そのはずだ。

 

 ……が、霧の街らしき場所はすでに車が入れるような場所ではなくなっていた。

 

「なんじゃこりゃ……」

 

 ポルナレフが息を呑む。

 ジョセフさんが「オーマイガーッ!ゾンビ映画じゃないんだぞ!!」と悲鳴をあげた。

 

 そこにあったのは、ただただ大量の死体の大群。

 動き、呻き、ダラダラと体液を垂れ流しながらこちらへと迫り来る穴だらけの骸たちであった。

 千は下らないだろう。おびただしいという言葉がぴったりくる大軍勢だ。

 

 一体どこから現れたのか、そのどれもがよく磨かれた鉄の武器と鎧を付けている。

 ギラリと鏡面仕上げに光る剣に、映り込む影がちらり。

 

「なんだこの軍勢は、スタンドなのか!?」

「スタンドだな。名前はジャスティス。俺並みの桁外れのスタンドパワーを持つスーパーお婆ちゃんが使い手だ」

 

 軍勢の向こう側からするすると進み出たのはエンヤ婆。

 気味の悪い笑みでこちらをせせら笑う、DIOに矢を与えた魔女であった。

 

「ひゃひゃひゃ。久しぶりじゃなァ憎らしい蛇め。分かっておる、分かっておるぞ、おぬしの能力は未来予知!所詮は時の奴隷よ!ならばその糞のような予知など関係ない程の量で攻めるのみ!」

「単純だねぇ。だがまあ、一定程度有効なのに違いねーな」

「クキィーーッ!おお、かわいそうな息子よ!わしの息子をあんな酷い様にした恨みはここで晴らすッ!貴様ら全員四肢をもぎ取って炙り焼きにしてやるーーッ!」

「……やってみな、ババア」

 

 承太郎が挑発すれば、鬼の形相のエンヤ婆が歯をぎりぎりと鳴らしながら吐き捨てた。

 

「お主らなぞ、時を支配するDIO様の敵ではないッ!」

「それはどうだろうな。黄金の精神はあるいは時すらも打ち破る。俺はそう信じている」

「腐れスタンド如きが偉そうにィイーッ!」

 

 激高したエンヤ婆は、その感情の高ぶりとは裏腹の冷静さで軍勢の裏側に姿を隠した。

 ぞろぞろと進軍する兵たちは360度目いっぱいにその数を広げ、キシキシと不気味な笑いをこぼしている。

 

 最前列の兵が剣を振り上げた。

 

「ッ、クロスファイヤーハリケーンスペシャル!」

 

 すかさず多対一のプロフェッショナル、アヴドゥルが炎を拡散させた。

 車を囲むように炎の嵐を燃やしていき、近づいた歩く死体たちを片っ端から燃やし尽くしていく。

 

 さすがアヴドゥル。この手の集団戦に滅法強い。

 あまりの高温に砂地が溶け、いびつな塊となって固まっていく。

 このタイミングでさりげなく蛇の長大な尾をアヴドゥルの背へまわす。

 死角からの攻撃をインターセプトってね。

 

 ギ、と異音。

 

「なんの音っ……まさかこれは!ハングドマンか!」

 

 光を媒介にした見えざる刃がギギギと鱗を突破できず滑っているのを見て、アヴドゥルは自分が狙われていたことを理解したらしい。

 視線を鋭く四方へ這わせれば、近場の死人の鎧に映りこむハングドマンが見えた。

 

 光のスタンド、ハングドマンはよくみればやみくもに刃を振り回しているだけのようで、周りの死人たちも刃傷を負っている。

 精彩を欠くというか、ほとんど暴走状態だ。

 先ほどアヴドゥルを狙った一撃はまぐれだったらしい。

 

 本来なら、乱戦からのコンボはもしJガイルが健在だったら相当に苦戦させられていただろう。

 秒ごとに映りこむ位置を変えたハングドマンにあらゆる角度から狙われたら、未来を予知する俺でも仲間をかばいきれないことは明白だ。

 

「助かった、アルカナテラー。まさか背中を狙われるとはな」

「いいってことよ、アヴドゥル。お前さんも気をつけろよ、大火力は真っ先に狙われる定めだからな」

「心しておこう」

 

 アルカナテラー、の名を聞いた瞬間暴れていたハングドマンのスタンド像が揺らいだ。

 

「ア、アル………ひぃっひゃぁああああ!!!!」

 

 軍勢の流れに逆らい、脱兎のごとく逃げる人影が一つ。

 それは庇護を求めるようにもう一つの影──エンヤ婆へと縋り付いて幼児のように抱き着いた。

 承太郎が【目】だけでそれを追っている。

 

 ふむ。チェックメイトだな。

 

「おお、無理しないでおくれ我が息子!Jガイル!」

 

 Jガイルを抱きしめ、エンヤ婆が悔しさに奇声を発した。おのれアルカナテラー、と俺を呼ぶ怨念の声。

 そしてそれ以上の怨念をたぎらせたジャン・ピエール・ポルナレフが俺の隣で無言のままにギラギラとした殺気をたぎらせている。

 漆黒の意思にはまだ早いぞポルナレフ。

 

「俺の胴体につかまれ!手っ取り早く軍勢の包囲を抜ける!」

 

 承太郎の意を酌み、俺はいったん距離を取るためにスタクル全員を背へと乗せた。

 その間に承太郎はスタープラチナを使い、手近な石を持ち上げて感覚を確かめている。

 

「しっかりつかまってろよ、おりゃあああああっ!」

 

 ドドドドド、と鱗の硬さで踏みつぶすように蹴散らしていく。

 とっさに気を利かせた花京院がハイエロファントの触手をネットのようにかけて、皆が振り落とされないようにしてくれた。

 一人落ちかけたポルナレフが悪い、と言って触手をつかんで謝っている。

 なおジョセフさんは波紋を使って俺の体に張り付いていた。ずるい。

 

 無事いったん包囲を抜ければあとは承太郎の出番だ。

 

「花京院、位置をずらさないよう俺をこの位置まで持ち上げてくれ」

「いいけど……何をする気だい?」

 

 触手によって持ち上げられた承太郎は、【目】を細めてその位置と未来とをもう一度確認した。

 すでにエンヤ婆たちは軍勢に紛れて見えなくなっている。

 しかし、その目はとっくの昔に未来をつかんでいる。

 かすかに笑う承太郎の宇宙色の瞳が美しく煌めいた。

 

 ぶん、とスタープラチナが石を天高くに投げた。

 腕が霞むような全力投球。

 

「ひゃひゃひゃ、どこを狙っておる?あてずっぽうで勝てるなどと思っておるのか?」

 

 むろんそれは遥か高くに飛んでいき、エンヤ婆にあたることはなかった。

 嗤うエンヤ婆が軍勢を反転させ、もう一度俺たちのもとへと差し向ける。

 

「ックロスファイヤーハリケーンスペシャル!」

「おりゃぁあああハーミットパープル!」

 

 アヴドゥルの炎の間を縫ってジョセフさんが波紋を流すが、あまり痛痒を与えられずわずかなダメージを残して撤退する。

 

「こいつら吸血鬼じゃないのか!?」

「言い忘れてた。こいつらはスタンドが幻覚に肉付けした生ける屍だから、波紋で攻撃しても純粋な物理ダメージぐらいしか与えられないぜ?」

「それを早く言わんかい!」

 

 本当は言い忘れていたわけではないが、まぁご愛嬌。乱数調整、乱数調整。

 屍にこそダメージは与えられなかったが、中に紛れていたエンヤ婆には効いたらしい。

 やけどじみた特徴的な傷を負ったエンヤ婆が腕の中に息子を抱えたまま叫んだ。

 

「このジジイィーッ!縊り殺してやるッ!!!」

 

 まさにその時。

 立ち上がり進み出たエンヤ婆の頭上に落ちる、遥か彼方から自由落下にて極限まで速度を上げた10kgはある石の姿。

 

「ッあゲへッ!?」

 

 人を撲殺するには十分すぎるエネルギーだ。

石が直撃したエンヤ婆は頭の上半分をぶちまけ、そのまま前側へと倒れた。

 心無いJガイルが無残な死を遂げた母親を放り捨て、またも無様に逃げ出していく。

 

「読み通り、ってな」

「さすが承太郎。1分近い未来予知狙撃とはまた、俺でもできない絶技を簡単にかますなぁ」

「蛇にゃ腕はねーからな」

「あってもスタープラチナ以外にあんな芸当無理なんだわ」

 

 残るはJガイルのみ。

 軍勢が消え廃墟と荒野ばかりの砂地で、転んでもがくJガイルの後ろに立つ男が一人。

 

 ゆらり、とあらゆる念の籠った瞳を細め、ポルナレフが口を開く。

 

「あばよ」

 

 瞬間。

 脳幹を的確に捉えた美しいまでの一撃で、Jガイルは言葉を発する前に絶命した。

 きっと痛みを感じる暇もなかっただろう。

 多くの人々を殺害した外道の死に様としては勿体無いほどの幕引きだった。

 

 ポルナレフは立ち尽くしたまま、ただ一言つぶやくのみであった。

 

「シェリー………」

 

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