一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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スティーリー・ダン戦

 

「ちっ、あんなクソ野郎がこの世に実在するとはな!」

 

 不機嫌さMAXの承太郎が忌々しいとばかりに思いっきり吐き捨てた。

 こんなに感情的になる承太郎も珍しい。

 が、ここにはそんなふうに承太郎を怒らせるものは存在しないようにも見える。

 

 場所はサウジアラビアの街の一つ。

 砂漠を越えてすぐそこは海だ。

 美しき海、紅海から来る潮をはらんだ風が鼻を刺激する港町。

 

 ……の、入り口がすぐそこに見えているという段階である。

 まだ街に入ってすらいない。

 

「キレるの早ェよ。今からキレてたら実物のスティーリー・ダンは一体どうなっちまうんだ」

「じゃあなんだ?あの吐き気を催すゲロ野郎を許せって?」

「そうは言ってねーけどさぁ」

 

 街の入り口でゴゴゴゴゴ……と背後に修羅を背負う男がいるせいで、他の通行人は遠巻きだ。

 そこに紛れるようにほんの数十メートル先にいる敵、鋼入りのダンは何も知らずにこちらへと近づいてきている。

 にやにやと悪質な笑いを隠すことなく、現地人に紛れるような服装で着実にこちらへと近づいてきている。

 ほんの小さな、ミジンコのような小ささのオケラに似たスタンドがまばらな人波を縫って跳んだ。

 

 ぷちり、と何かをつぶす音。

 

「グギャアアアア!!!」

「どうした。急に蹲ってよォ?」

 

 血を吐いて倒れたスティーリー・ダンの前に、いつの間にか近づいていたらしい承太郎が仁王立ちしている。

 承太郎?と不思議そうなポルナレフを無視して、承太郎が言葉を続けた。

 

「何をしようとしたのか、事細かに一つずつ語ってくれても良いんだぜ?なぁ、DIOが放った刺客さんよ」

「DIO!?敵なのか!!」

「名前は鋼入りの(スティーリー)ダン、だったか。極小のスタンド像を人の体内に潜り込ませるゲスなスタンドだ。反吐が出る」

 

 承太郎の背後に浮かぶスタープラチナが鋼入りのダンのスタンド、ラバーズを右手の指先でしっかり捕らえていた。

 その小ささは人の脳内に入って好き勝手できるほど。

 まさに極小の悪意と言って良い。

 

 それにしても饒舌だな承太郎。

 怒ってるのはわかるがまだ未遂だから。手心を加えてやれよ、マジで。

 

「な、なぜ分かったァァアアアアア!!!」

「俺の能力すらDIOに教えられなかったのか。哀れなヤローだ」

「み、未来予知では極小の俺のスタンドがどこを飛んでいるのかなど見えないはずだ!」

 

 一応俺たちの能力は教えられていたらしい。

 こんな男でもしっかり情報が届いているあたり、割とDIOの勢力って報連相が行き届いてるよね。

 だが残念。

 あの極小のスタンドを捉えたのは俺の目ではなく承太郎自身のスタンドの力。

 

「情報不足だな。俺のスタープラチナの目の良さを未来視と重ねれば、テメーのチンケなスタンドが飛ぶ経路程度すぐに分かるんだよ」

「ば、バカな……そ、そんな、」

「じゃあな。ゲス野郎」

「がっ!?や、止め、っイギャアアアアアアアアア!!!!」

 

 もう一回プチッとな。

 精密動作性に定評のあるスタープラチナが生かさず殺さずの絶妙な力加減でラバーズを潰した。

 しかも指の中で転がしている!

 

 高速回転しながらあちこちをぼきぼきと折るスティーリー・ダンは血反吐を吐きながらべしょべしょに泣いている。

 

「ウヒィイイイ許じでぐだざっヒャギヒィィイイイ!!!」

「じょ、承太郎?何をそんなに怒っとるんじゃ」

「見たくもねー野郎の所業を何億通りも見た。これで頭に来ねー奴は居ないってもんだぜ」

 

 あっ、ゴミをポイ捨てするみたいにラバーズの残骸を道に捨てた!

 

 ひらひらと風に舞うラバーズが地面につく前にそのヴィジョンを宙に溶かし、実体化を解除していく。

 ボロ雑巾のようになったスティーリー・ダンを承太郎が蹴っ飛ばして道の脇に除ける。

 邪魔だとでも言わんばかりだ。人の心がない。

 

「多すぎてツケの領収書も書き出せねー」

「いやお前、そのツケはまだ発生してないから。普通に無罪だから」

「蛇が細かいこと気にしてんじゃねぇよ。これは精神的な賠償ってやつだぜ」

「理不尽すぎる!」

 

 というか可能性線を何億通りも見られるほど成長したのかよお前。

 おそらく【目】をスタープラチナの目に重ねることで処理速度と解像度を上げてるな?

 それで不必要にダンの胸糞行為を見過ぎてプッツン、と。

 言葉にするとマジで理不尽だなコレ。ほっといたら現実になるアレだから全く根も葉もないってわけでもないが。

 

「ま、まあひとつ障害が取り除かれたというのは朗報だろう」とアヴドゥルが若干引きながら間に入る。

 

「というかあの位置、ワシが狙われとらんかった?」

「あの小ささですし、体に侵入することで真価を発揮するスタンドでしょうか」

「けっ、底意地悪そうなスタンドだぜ。人に侵入してどうこうしようなんざ、なあ花京院!」

「…………」

「花京院?おいおい、どうしたんだ黙っちまって」

 

 花京院はポルナレフに無言の肘鉄を決めた。

 地味に同じようなことできるからね、花京院。この世界線ではまだやったことないけど。

 鋭い肘鉄にゴフゥ!?と崩れ落ちるポルナレフ。ポルナレフは悪くないのに。

 

 この世には理不尽な怒りが多すぎる、と念仏を唱える蛇さんなのでした。

 




明日の更新は間に合わないか、あっても夜になります。
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