一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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アレッシー&マライア戦

 

 場所はルクソール。

 エジプトの都市の一つで、多くの遺跡の並ぶ一大観光地である。

 カイロまではもうすぐそこだ。

 

 街に着いたばかりの今はホテルにて休養中だ。

 合流したイギーを気にして、ホテルはペット可の場所を選んだ。

 SPW財団が頑張って見つけてくれたのだが、若干のアクセスの悪さは否めない。

 

 隅でコーヒーガムを噛んでうとうとしているイギーは、そんなことはつゆほども知らずリラックスした様子だ。

 無論敷いてあるラグは高級なやつ。人間のより金かかってるまである。

 

 会って早々イギーは俺のことを「デカいくせにとろくさそうな子分」と認識した模様。

 ガムの噛んだ余りのゴミを分け与えたり、犬マットの端っこを分けてくれたりした。

 俺は蛇である前にスタンドなんだがなぁ……。

 

 さて、次なる敵は影のスタンドを操る陰険性悪な奴、アレッシー。

 予知で見る限り奴は街中に潜み、計五箇所のポイントを巡っては俺たちを幼児化させようと付け狙っている。

 本来なら一人ずつ幼児化させられ、無力のままに奴の手にかかっていたことだろう。

 しかしタネが分かればこの通り。

 奴のルートと被らないよう全員で気をつけるだけでスルーできるというわけだ。

 

 俺達は書き出した予知の資料を確認し合い、各々街に補給に繰り出した。

 ……はずだった。

「いやー、やっちまったぜ!」

「言ったそばからジジイ……」

 

 目の前にいるのは2部でお馴染み若ジョセフである。

 表情豊かで愛嬌がある顔立ちに戦士の体格がよく映える。

 波紋戦士としてぶいぶい言わせてた頃の体は実に逞しく、鍛えているものの多いこのメンツの中でも一際飛び抜けている。

 つまりムキムキ度5割増し。狭いホテル内の気温がこれだけで2度は上がるような気さえする。

「でも僕たちでなくて本当に良かった。もし僕たちが歳を戻されていたら胎児になって生命維持すら難しくなってしまうところだ」

「50年は前ってとこか。ジジイも随分戻されたじゃねーか」

 

 ジョセフさんは敵スタンドに歳を戻されてからまだそこまで時間が経たないうちに撤退してきたらしい。

 記憶も一応うっすらとだが残っている様子で、話はスムーズだ。

「とぉーってもお得じゃね~?俺の全盛期の雄姿が見・れ・て!」

 ジョジョ立ちする波紋戦士に嘆息する承太郎、困り笑いのアヴドゥルさん、オーッと感動した様子のポルナレフ。

 波紋で固めて浮かせた水を添えて。

 画面映えをよくする小道具を自分で用意するとはやりおるな、ジョセフさんは。

「オォー!それが道中で話してた波紋って奴か!ジョースターさん、俺も使ってみてーんだがちょっくら教えてくれよ」

「………こうひゅーっってやってコォォォオオオ、みたいな感じで」

「い、一ミリもわからねぇ」

「いやぁ、俺生まれた時から波紋使えたからちょっとそういうの難しいんだよねん」

 てへ、とムッキムキの僧帽筋を寄せながら可愛コポーズを決めるジョセフさん。

 孫は一言「きめぇんだよジジイ」というに留めた。

 うん。ジョセフさんの体格でそれをやっても圧迫感が凄いだけだから逆効果だと思う。

「キモイとは何だキモイとは!孫だか何だか知らねーが喧嘩なら買うぜ!」

「しかも通常時のジジイの倍はうぜぇ。これが年を経て丸くなったということか」

「にゃ、にゃにをーぅ!!」

ジジ孫コントもシーズン2に突入したようだ。

憤慨するジョセフさんの姿すらM1グランプリに立てる素質が光る。

 

 と、その時。

 ジョセフさんが座っている椅子の背もたれ部分をゴソゴソと探った。

「……んん〜?なんだこれ?」

 

 立ち上がったジョセフさんが振り返れば、背もたれ部にあったのは不自然に目立つコンセントであった。

 全員に「???」と疑問符が浮かぶ中、事前に【見】えていた承太郎の動きは早かった。

「蛇」

「あいよ」

 

 豪快に部屋の壁をぶち抜いて、隣の部屋にいたマライアを一呑みにする。

 壁に大穴が空いたが、まあコラテラルダメージということで許してほしい。

 かなり前から仕込みを行っていたみたいだが、俺たち過去も見られるから偽装工作は意味ないのよね。

 

 マライア。

 コンセントに化け、己に触った相手に磁力を付与する能力を持つスタンド……バステト女神を持つ。

「あー、美味い。徹夜明けに効く一杯だねこりゃ」

「だから拾い食いすんじゃねー」

「承太郎がやれって言ったんだろ?」

「倒せと言ったのであって食えと言った覚えは無ェ」

「承太郎、とりあえず別の部屋を取るからフロントに連絡しようか」

「俺が払うからって盛大にぶっ壊しやがって」

 

 ジョセフさんがブツクサいう間にも、次なる敵……アレッシーが扉の隙間を縫って影を伸ばしてきている。

 ドアに一番近いのは承太郎だ。

 

 しかしこれも【目】にて分かっていた承太郎は微動だにしなかった。

 影のスタンド…セト神の姿が一瞬だけ承太郎の影と交差する。

「ッちくしょう、外した!!」

 ドアの向こう側で悔しがるアレッシーに対し、承太郎は静かに笑った。

 一年ほどだろうか。縮んでいく、というには一瞬すぎる交差だった承太郎は冷静そのものだ。

「残念だったな」

 

 それもそのはず。

ホテルの天井から透過して落下するように現れた俺がこれまた一呑みにしたからだ。

んげぇ、と口から吐き出せば、そこにはその一瞬で生命エネルギーを吸い尽くされ、干からびたアレッシーがいた。

「やはり生の味は格別だな!!」

 

 俺の声がいつもより若干低い。

 よく見れば体も黒く、普段の数十倍の精神エネルギーが体を駆け巡っている。

 

 あっ、まずい。

    

承太郎が膝をつく。凄まじい精神エネルギーの奔流に、ミシミシと部屋が軋む。

許容量オーバーでスタープラチナを出すこともできないのだろう。

 

 俺は愉快で愉快で、キシキシと金属がこすれるような声で嗤った。

「一体なんなんだ、アレは…!」

「ちょーっとまずくねぇ、アレ?究極生命体臭いまであるぜ。どうしてあんなんがフツーのホテルの一室に出るんだよ」

「ウォーッ、アルカナテラーが暴走したッー!?」

 

 セト神の影響でほんのわずかな時間ではあるものの全盛期に戻れたようだ。

 ギシギシと嗤い、運命をどうぐちゃぐちゃにしてやろうか思案する。

 

 そこに静かにかかる声。

「蛇」

「…………あァ、承太郎か。なんだ?我が【目】にて排除したいモノでもいるのか?」

「早く正気に戻りやがれ」

「正気とは、また異な事を。正気か狂気かなど時が定める妄言でしかないだろうに」

 

 【目】を全開にする。

 この曼荼羅のような視界の先に渦巻く滅び、一巡を見やる。

 一巡の未来を変えることこそが我が望み、本体の望み、メチャクチャにされた未来全ての望み。

 それを叶えるためならば、いくらでも本体を喰い漁ろう。

 

 承太郎/救世主が俺を見上げる。

 そして干からびたままひ、ひ、とか細い声を出すアレッシーを掴み上げ、無造作に蹴とばした。

 かくん、と遂にトドメを刺され意識を失うアレッシー。

 

 瞬間、ぷしゅんと体が萎んだ。

 

 あ。

「……よう」

「待って。言い訳させて」

「ずいぶんはしゃいでたみたいじゃねーか」

「どこに出しても恥ずかしい立派な過去をさらけ出して何が悪い!!!俺は無実だ!!!」

「逆ギレすんじゃねーよ」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶ俺に承太郎は無慈悲だった。

 あと忘れてたマライアも腹からんべっと出す。

 俺の鱗はツヤツヤしたが、ミイラは二人出来上がってしまったな。

 

 ドン引き、という様子のポルナレフが顔を覆っている。直視できないらしい。

 

 いつのまにか姿が戻っていたジョセフさんが「せっかく若い頃だったのに見せ場なしとは、皆気がきかんの〜」と文句を言っていた。

 孫の返事は「知るかジジイ」であった。

 

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