一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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夜咄

 

 イギーとまったり雑談を終え、部屋に戻れば若干安めの白いシーツと椅子のみの部屋がお出迎えしてくれた。

 

 今回は一人部屋だ。ちなみに俺は承太郎と同室である。一人部屋とは……。

 部屋を取り囲むように不可視のとぐろを巻けば、承太郎は部屋の角にあるベッドでごろりと横になった。

 すっかり慣れたものである。

 

 今日も夜遅い。

 日本からここまでの陸路での強行軍は確かに皆の体力を大きく奪っていた。

 今夜も一つ一つ、今後の未来を見ていこうかと目を閉じていると、承太郎がポツリと独り言にも似た声色で話しかけてきた。

 

「蛇。俺たちは勝てると思うか」

 

 実にキャラじゃない、不安ともとれるような言葉だ。

 いつものこの男ならば言うだろう。勝てるか勝てないかじゃなくどう勝つかだ、と。

 しかし硬質かつ沈鬱なまでに真面目な顔に宇宙色の瞳が備わっているのを見て、俺はしゅるると舌をひっこめた。

 承太郎の宇宙色の瞳には数万数億の可能性が星のように煌めいている。

 

 俺は静かに応えた。

 

「勿論だとも。DIOにも、大渦にも。すべてにおいて、俺たちの勝利は間違いない」

「……はっ、軽薄な蛇の言葉はいまいち信用がおけねーな」

「それが蛇さんのいいところだろ。真面目に不真面目、それが【目】と向き合うコツさ」

「違いない。俺もテメェを見習うべきか?」

「お前まで俺みたいになったらジョセフさんが腰抜かしちまうよ。お前はお前のままでいい」

 

 けらけらと笑って我が本体の不安を払しょくする。

 俺がそれを行える口を持ち、その意思を持てる。光栄なことだ。

 

「そのために俺がいるんだろ?」

 

 自信をもって、確信をもってそう答える。

 そう、俺こそがアルカナテラー。原初、未来に負けず人を勇気付けることを望まれて生まれたスタンド。

 

「ハッ、信頼してるぜ。俺のスタンド」

 

 すっかり調子が戻ったようだ。承太郎はニヒルに笑って帽子を下げた。

 俺も空気を合わせんとにやにや笑い、いつも通りに体をくねらせた。

 

「でも承太郎ってば俺に二股かけてるし?スタプラは万能だもんなー?」

「俺はこんなうっとおしい蛇と付き合った覚えはねぇ」

「まあっ、承太郎のイケズ!」

「蛇酒って美味いらしいな。お前はどう思う?」

「えっ、俺漬けられちゃうの?嘘、お前はそんなひどいことしないよな?」

「スタンド蛇酒。興味あるぜ」

「この蛇でなしーっ!あとお前未成年!夜な夜なビールたしなんでるの知ってんだからな!」

「何をいまさら。あと蛇でなしって何だ」

 

 空条邸にいたころから変わらないじゃれ合いだ。元来口数の少ない承太郎にしてはずいぶん饒舌で、これを初めて見たジョセフさんなどはかなりびっくりしていた。

 涙ぐんで「こんなにいいお友達ができて…うれしい!うれしいわ!」と喜ぶホリィさんも隣にいたり。

 その後三人もろとも「うっとおしいぞ!」と承太郎に追い出されるまでがセットの愉快な空条邸である。

 

 俺はしゅるりと体を縮めて、通常サイズの蛇となって承太郎の耳元に近づく。

 ここから先は内緒話だ。

 DIOが聞いていないことを未来視にて確認したうえで話す、秘密も秘密、重要機密事項のおはなし。

 

「教えよう。教えよう」

「……?」

 

 しゅるしゅるとささやく。口の中の矢をちらつかせて。

 

「この矢をスタンドに刺せ。俺でもいいし、スタープラチナでもいい」

 

 制御のしやすさで言うならスタープラチナの方がいいだろう。

 そう言うと、承太郎はその端正な顔に少しばかりの緊張をはらませてこちらを見た。

 

「……刺すとどうなる」

「ある男がレクイエムと名付けた現象が起きる。すなわち、スタンドの進化だ」

「進化、か」

 

 承太郎は言葉を慎重に吟味しているようだった。

 押し黙ったまま俺の言葉の続きを待っている。至極賢明なことだ。

 

 実際問題、ぐるぐるとエネルギー渦巻くレクイエムを視界にとらえることは非常に難しい。

 単純なエネルギーもそうだが、その可能性がごくごく限られるからだ。

 

 俺の【目】による認識では、レクイエムはスタンドを魂を捉える方向へと進化させる力を持っている。

 事象の魂を捉え、そこにたどり着けなくする。

 人の魂を取り上げ、ランダムに入れなおすなど。

 

「俺ならば魂の流れを知覚し、その行く末を能動的に決定することのできるスタンドになるだろう。スタープラチナならば………相対する敵の魂を認識し、その果てすらも超えていく『相手を踏み越えるスタンド』となるだろう」

 

 そのどちらもが他に類を見ないほどの強力な力を秘めている。

 無論、その手綱を握れるかは度外視だ。強力無比であって制御不能などレクイエムの常。

 そしてその困難を乗り越えることこそが、矢を制御する素質があるという事。

 

「どちらを欲す?どちらを望む?」

「どっちか選ばないといけねーのか?」

「……くは、そうだな。別に選ばないといけないわけじゃない。両取りだって立派な選択肢の一つだったな」

「俺は強欲なんでね」

 

 蛇を腕に絡めた承太郎はうっそりと笑って背後にスタープラチナを浮かび上がらせた。

 そのギリシャ彫刻のごとき美と、瞳の宇宙色の星々が深淵のごとき色を持つ。

 

 どうでもいいけど承太郎お前、暗い部屋でその表情かつ蛇とか持ってたら所作がラスボスのそれになっちまうから。

 

「ちなみに最近止まった時の中を動く練習してるみたいだが、どうだ?順調か?」

「俺の方は問題無ェ。【目】が使えないのが慣れねぇがな」

「お前は最近【目】開きっぱなしだな。頭痛くならねーの?」

「慣れた。今は10年ぐらい先までなら断片的に見えるようになった。ジジイの惨状には頭が痛ェ」

「おっと。バレてんじゃんジョセフさん。オラオラか?」

「それはスージーばあちゃんに譲るぜ。どうせ相手方の父親にもさんざんぶん殴られたみたいだしな」

「東方良平さん、怒りのあまりスタンド使い並みの背後オーラ出してたもんな……」

「やれやれだぜ」

 

 承太郎は首を振った。本当にどうしようもない、と呆れの先の感情が滲むしぐさだった。

 




・元々のアルカナテラー
 大雑把な未来を見せて、その運命に悲観しないよう元気付けるスタンド。小蛇ぐらいのサイズで戦闘能力は無い。
 ヘイ・ヤーの親戚。
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