ダービー兄弟「勝負師は絶対に負ける勝負などいたしませんとも」
SPW財団「なんか突然二人もDIO陣営から投降者が来た件」
DIO「だろうな。ゆえに二人には肉の芽を仕込んでおいた」
ダービー兄弟「!?!?」
屋敷に入れば、そこは幻覚の様子もない普通の部屋が広がっていた。
しんと静まり返った静謐さが石造りの壁と床、高級そうな分厚いカーテン、足の長い絨毯に反射している。
防御に優れる蛇を先頭に慎重に入室。
最後尾は鼻と耳の優れるイギー。生命感知のできるアヴドゥルはアンク型の炎を浮かべて室内を探索する。
しかし炎の生命探知に反応はなく、人の気配も怪物の視線も何一つ感じ取ることはできなかった。
「無人?昼は吸血鬼の領分では無いということか?しかし……」
「DIOめ、いったいどこへ行きおった!」
ジョセフが庭から持ってきたらしい水の入った水盆を掲げ、波紋を練る。
反応は地下。ピクリと眉を動かしたジョセフは近場に下へ通じる階段がないか辺りを見回す。
「吸血鬼と屍生人の反応が地下に一つずつ!……もし屍生人を増やされたりすれば厄介じゃな。街に溢れればゾンビパニックさながらの事態になりかねん!」
「ゾンビパニック?吸血鬼っていやあ血を吸って仲間を増やすイメージだけどよ」
「吸血鬼のエキスを受けたものは吸血鬼の亜種──屍生人となるのだ。そして屍生人に襲われたものもまた屍生人となる」
「げぇーーッ!なんだそりゃ!」
こんな大都市で屍生人が溢れ出せば大惨事も極まる事態へと成り果てるだろう。
眉を顰めるポルナレフと真剣な眼差しを地下へと向けるアヴドゥル。
その中で1人、ふと顔を上げた花京院は違和感に気がついた。
「承太郎、その瞳の色は……?」
まるでステンドグラスを光に翳したかのような、無数の色合いに包まれた瞳で承太郎は虚空へと視線を落としていた。
星雲を思わせる極彩色だ。
時によって方向によって色の違うような、深い深い色合い。
いつものアルカナテラーの宇宙色の【目】とも異なる、見たことのない瞳だ。
「事前準備って奴だ。それより、DIOの野郎はこっちだぜ」
「あ、ああ」
承太郎はこともなげにそう言って隣の部屋を指差した。
窓も閉め切られ暗い室内は見辛く、廊下の奥に薄ぼんやりと手すりが見えるだけだ。
ポルナレフが「陰気臭ェ屋敷だぜ」とぼやいた。
モルタルで塗りたくられたような後付けらしき階段を降りていけば、いよいよ部屋にはひとかけらの光も差し込まない暗闇となった。
アヴドゥルの生命探知の炎のお陰で探索のための光源は確保できているが、ソレがなければ全くの暗闇だ。
赤い炎に照らされた不気味な室内に、ぼんやりと浮かぶ影がある。
「あれは……女性の遺体か!?」
炎に照らし出されたのは、力無く打ち捨てられたような女性の死骸であった。
ただ死んでいるだけのものもあれば、血が吸い尽くされミイラのようになったものもある。
首に何かを差し込まれたような大きな傷跡が痛々しい。
「まさに食い散らかした、と言った様相だな」
「胸糞悪ィぜ。DIOの野郎…」
しばらく歩けば、開けた場所に出た。
相変わらず暗闇に包まれた広い広い地下空間の中央にゆったりと蠢く影が一つ。
高級そうな絨毯敷きの一角にティーテーブルが置かれ、優雅な午後のひと時でも味わうかのように足を組む男がいる。
屈強そうな四肢、ハートをあしらった奇抜な服、そして妖しげな色気。
ニヤリと歪む顔に牙がちらりと見え隠れする、スタンド使いの吸血鬼。
ソレすなわち、DIOである。
アルカナテラーが守るように承太郎の周りを囲う。
吸血鬼がゆったりと口を開いた。
「ジョースターの血は本当に思いもよらんな。まさか我が時の中に入門を果たすものがいようとは」
口ぶりは落ち着いた優雅なものだったが、そこには隠しきれない焦燥のようなものが滲んでいた。
そこに常の下等生物を見るかのような笑みはない。
ただただ冷たく濁った警戒心と、ソレを抱かざるを得ない現状への苛立ちが垣間見えるだけだ。
「時の支配はテメーだけの領分じゃねぇってことだ」
「しかもその目……あの忌々しい蛇の目か」
ジロリと。
吸血鬼はそこでようやく承太郎を見た。
取り巻く蛇を睨みつけ、ソレを従える埒外の人間……承太郎を唾棄すべき敵と見定める。
「アレのせいで手勢の幾分かを失った。ヒトに運命を突き付けその滅びをあざ笑う忌々しい蛇を、貴様一体どうやって手懐けた?」
「はっ、人望って奴の違いじゃねぇのか?」
「口の減らない男だ。まあいい」
ガタリと椅子を揺らし、立つ。
決戦の時が、来る。
「少しばかり遊んでやろう。来い、ジョースターども」