一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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音石明戦

 

 場所は虹村宅。

 

 集まったのはいずれも強力なスタンド使い、承太郎を筆頭に仗助、億泰、形兆、アヴドゥル、露伴の6人だ。

 そう大きくもない一般宅に勢揃いする様は圧迫感を覚えざるを得ない。

 その中で唯一、一般人の康一がやや居心地悪そうに部屋の隅で身じろぎしている。

 

 ちなみにだが、岸辺露伴については別に集まりには呼ばれていない。

 スタンド使い同士の戦闘を取材したいという理由ですっ飛んできた次第である。

 

 最強たる盾のスタンド、アルカナテラーの未来視の瞳が発動している証拠たる宇宙色に煌めく瞳で承太郎は口を開いた。

 

「今回集まってもらったのは他でもない。スタンドの矢の奪取のためだ」

 

 何処まで見通しているのか、何処までが計算通りなのか分からない承太郎の瞳を前に、否応なく緊張は高まる。

 隣に座るアヴドゥルは瞳を伏せたままだ。

 

「今夜、音石明というスタンド使いがスタンドの矢を奪うため吉良吉影の家へと忍び込む。我々の目的はそうして奪われた矢を横入りして奪取することだ」

「……それ、普通に盗まれる前にこっちが吉良なんちゃら?さんから盗んだらダメなんすか?」

 

 質問したのは仗助だ。

 そろーりと手をあげて発言し、それに周囲の視線が集まったことに居心地悪そうにしている。

 

「それをした場合、別のどれかの矢が音石明によって盗まれることになる。運命、というやつだ。ここで吉良吉影の矢が盗まれたところを奪取するのが一番手間がない」

「へぇー、なるほどぉ」

 

 全然わかってない声で仗助が返事をする。

 事実、運命について正確に理解できるのは【目】を持つ承太郎くらいのものだろう。

 後ろで仗助を鼻で笑う岸辺露伴の声が聞こえる。野郎ぶん殴ってやる。

 

 仗助を見習って、康一もそろそろと慎重に手を挙げる。

 

「あの、僕はなんで呼ばれたんですか?スタンド使いの戦いに僕は足手纏いにしかならないと思うんですが」

「いや。君が今回のキーパーソンだ。君には仗助と行動を共にしてもらうが、それでいいな」

「へっ?」

「では、具体的な位置どりと見敵時の詳しい行動指針について話していこう」

 

 一言でスルーされた上にキーパーソンと来た。

 聞きたいことがありすぎて、康一は喉が渋滞して発言できないと言う情けない事態に陥った。

 

 

 

 

「ここで合ってるよね?」

「ああ。地図によるとここで間違いねーぜ。【目】を発動してたっつーことは、ここに逃げてくる可能性が高いんだろうな」

 

 矢のある吉良宅から歩いて5分ほどの位置にある十字路に仗助と康一の2人は来ていた。

 億泰は兄である形兆とともに別の路地で待ち伏せする手筈になっている。

 

 なんとなく手持ち無沙汰になって、康一は緊張しすぎた空気をほぐすように仗助に声をかけた。

 

「あのさ、承太郎さんってどういう人なの?」

「あー、どう言う人かぁ」

 

 ふむ、と仗助が少し思案した。

 どういう人、というのは少し広すぎて答えづらい質問だったかもしれない。

 

「俺が知ってるのは、財団で矢とスタンド使いの歴史を研究する歴史学者で…最強のスタンド使いっつーぐらいか?」

「最強?」

「スタンドは普通、1人につき一つだ。それが承太郎さんは二つのスタンドを同時に使うんだ」

 

 1人1つ。初めて聞く制限だ。

 彼らの超能力はサイコキネシスやら瞬間移動やらと多様に見えたが、実は一つの力に集約できるらしい。

 

「そのどっちもが超強力。俺のラッシュを受けてびくともしねーうえ、未来視で奇襲を潰すアルカナテラー。近距離パワー型で時を止めるシンプルイズベストなスタープラチナ」

「…仗助君の人を治療する力もすごいと思うよ、僕は」

「!へへ、ありがとな」

 

 掛け値なしの本音で言えば、仗助は照れ臭そうに視線を左右に揺らした。

 

「それで、スタンドの矢ってなんなの?」

「矢はスタンド使いを生み出す厄介極まりねーアイテムだからな。杜王町にあるって聞いた時はびっくりしたけどよ、道理で多忙な承太郎さんが良く杜王町に顔を出すわけだぜ」

「スタンド使いを生み出す…!悪用されたらとんでもないことが起きるよ!」

「おう。今回奪取に失敗すりゃあ被害は免れねーはずだ」

「……」

 

 康一が重圧に息を呑んだその時。

 バチバチバチ、と特徴的な雷光が爆ぜる音。

 

「いただきぃ!これで矢はオレのものだぜェ!」

 

 返り血を電気の熱で蒸気に変えて、パキケファロサウルスに似たスタンド像が邪悪に笑った。

 無論、康一には見えないし聞こえない。

 素早く振り返った仗助のみが電線の上で勝ち誇るスタンド像を視認し、怒号を上げる。

 

「テメェ!矢をよこしやがれ!」

「……なんだぁ、てめえ?てめぇらも矢が欲しいってか」

「テメェなんぞに持たしておける代物じゃねーんだよ」

「は、なら力ずくで奪ってみな。誰だか知らねーが、所詮オレに敵うはずねーけどなぁ!」

 

 高所から仗助を見下ろしてゲラゲラと笑うスタンド──レッド・ホット・チリ・ペッパー──に、仗助の行動は早かった。

 ばきり、とコンクリを殴りつけ、そのまま割れたコンクリ片を平手で掬い投げる。

 恐ろしく早い、近距離パワー型の力を存分に活かした土石投射だ。

 

 しかし、それをレッド・ホット・チリ・ペッパーはひょいと軽く避けた。

 

「は、可哀想になるほどのろっちい攻撃だな!なら今度は俺の……グゲっ!?」

 

 そして後頭部に思いっきり瓦礫の直撃を受け、もんどり打って転げ落ちる。

 後ろから「治す」力で戻ってきたコンクリ片に巻き込まれたのだ。

 

「馬鹿な、これは……てめぇ、ものを治すスタンド使いか!」

「引き摺り下ろしたぜ、音石明。覚悟しな」

「ッなぜ俺の名をっ、さっきの妙なやつといいてめぇら一体何なんだよ!?」

 

 焦燥に駆られる音石明を仗助は牽制がてら鼻で笑った。

 おそらく、さっきの妙なやつとは吉良邸に直接強襲をかけて逃走方向を調整した空条承太郎のことだろう。

 

「終わりだ、さっさと矢を渡して投降しろ。ボコボコになりたくなきゃあな」

「へっ、甘っちょろいこと抜かしてんじゃねー、こんなんでこの俺が終わりだと思ってんのか?」

 

 スタンド像が立ち上がる。

 抉り取られた道路の断面にある配線から電気を充電し、激しく発光してニヤリと嗤った。

 

「なんっ、何してやがる!?」

「オラオラオラ、テメェのおかげで充電は十分なんだ、てめえの拳が止まって見えるぜ!」

「てめぇ!」

 

 そのまま殴りかかってきたレッド・ホット・チリ・ペッパーに仗助も応戦するも、その圧倒的な速度とパワーに苦戦させられる。

 両者の差はわずかだが、その僅差が拳の一撃、蹴りの一つに至るまで少しずつダメージを広げていく。

 ぐ、と仗助が苦悶の声を飲み込んだ。

 

 少しだけ遠くに避難した康一が、青あざまみれになっていく仗助を見ては無力感に打ち震えている。

 ───ああ。僕も仗助君たちみたいな力があったら。なんて。

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパーが左手に持ったままの矢がカタカタと音を立てている。

 戦闘中の音石はそれに気が付かない。

 

 ふと、仗助の全力の一撃がレッド・ホット・チリ・ペッパーの左腕を捉えた。

 

「が、っこの程度で………ッ!?」

 

 ばっと手から一瞬だけ離れた矢が、ものすごい勢いで康一の方へ飛んでいく。

 ひとりでに、というには不自然すぎる、意思すら感じさせる勢いで飛翔する矢は、吸い込まれるように康一へと向かっていく。

 

 「しまった!」と矢を手放したことに焦る音石の声が遠くに聞こえる。

 

 そしてそのまま。

 矢はあやまたず広瀬康一の心臓を貫いて、止まった。

 康一の体がぐらりと倒れ込む。

 

「康一!!!!」

「早く矢を取り戻さねぇと……くそ、矢を返しやがれテメェ!!」

 

 絶叫する仗助に最後の一撃を入れようと拳を振り上げたレッド・ホット・チリ・ペッパーは。

 

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド」

「グゲェァァアア!?!?」

 

 

 最強のスタンド使いによって吹き飛ばされた。

 7秒にも及ぶ時間停止の間にラッシュを受け、紙屑のように吹き飛ばされていく。

 

「仗助は撤退して康一君を治してやってくれ。

こいつは俺たちが仕留める。治すのはお前しかできないからな。頼む」

「っ、承太郎さんがそういうなら分かったっすよ」

 

 仗助が康一のもとに駆けていく。

 承太郎はレッド・ホット・チリ・ペッパーの方へ向き直った。

 大量の電気によってそれ相応の硬さも手に入れていたレッド・ホット・チリ・ペッパーは、スタープラチナのラッシュを受けながらも起きてよたよたと這いずっていた。

 

「何ださっきのは、このレッド・ホット・チリ・ペッパーを超える速さだと…!?馬鹿な!」

 

 ヨロヨロと血を吹き出しながら立ち上がりやぶれかぶれに本体に攻撃するがするりとかわされる。

 スタープラチナ・ザ・ワールドの時間停滞だ。

 本体すらも近距離パワー型のスタンド並みの動きを実現するその力に、承太郎自身の鍛え上げられた肉体が合わさればこのような絶技も実現可能になる。

 音石はついに倒れ込み、歯噛みした。

 

「本体も速く、くそが、なんの力だよ!?」

「さてな。答える義理がない。お前はここで終わりなんだ、早く諦めてくれ」

「断る!ちっ、ならここは一度退く!」

「……させると思うのか?」

 

 本当に不思議そうに承太郎は首を傾げた。

 

 スタープラチナ・ザ・ワールド。

 超スピードを超えた超スピード。時を留めて加速するスタープラチナの異能が発動する。

 

「グゲギャァアア!?!?」

「鈍いな。まあ遅い分には楽でいいか」

 

 【目】で見たそれよりも遅い、と承太郎が酷評する。

 満身創痍の音石に全力のスピードなど望むべくもないが、そのような事情を戦場が酌んでくれるはずもない。

 停滞した時の中でスタープラチナのラッシュを受け、ついに音石はスタンド像を顕現させる力すらも失って倒れた。

 

「さて、本体を回収に行くか」

 

 そうして、承太郎が身を翻そうとした時。

 仗助が気を失った無傷の康一をそっと道路に寝かせ、こちらへとゆっくり歩み寄ってきた。

 

 その表情は鋭く引き締められている。

 

「このために連れてきたんすね。矢を、わざと康一に引き寄せて音石の手から引き離すために」

「そうだ」

「……こうして康一が矢に刺されて、重傷を負うっつーことも織り込み済みで」

「そうだ。そろそろ行くぞ、億泰君達と合流する」

「………」

 

 仗助がクレイジー・ダイヤモンドを出すその一瞬前。

 

 はぁ、と蛇のため息が聞こえてきた。

 スルスルと承太郎の服の中から顔を出して、いつもの定位置に体をかける。

 そしてジト目で承太郎を睨み上げた。

 もう一度ため息。

 

「康一君は未来に至るまでずっと、己がスタンド使いでないことを気にしてたんだよ」

「……康一が?」

「無力感か、疎外感か。何にせよ【目】で見る彼は辛そうだった。けれど財団管理下である【矢】を個人のために使わせるわけにはいかないからな」

「康一の、ために?」

「それにしても荒っぽいことには違いないけどな。まったく、承太郎は言葉足らず過ぎんだよ」

 

 何を考えてるのか分からない無表情で、承太郎は同意するように一度首肯した。

 

「矢が康一君に引き寄せられるのは確率として高くはなかった。そのために別働隊で先回りする計画も立てていたが……無事上手くいってよかった」

「あーーーー。うん。承太郎さんさぁ、その調子で徐倫ちゃんとも話をしてるわけじゃあないっすよね?」

「………」

「この変なおじさんは無口で怖いということで徐倫の中で有名だったぜ。現場からは以上だ」

「承太郎さん…」

 

 承太郎は何がダメなのか分からない、という顔をした。

 チベットスナギツネみたいな表情の蛇を添えて。

 

 完璧超人に見える人にも弱点はあるんだなぁ、と新たな学びを得た仗助であった。

 





・承太郎のコミュ障について
 空条承太郎は、周囲は自分の気持ちなど当然知っているものだろうと思っている。
 自明なことはわざわざ口に出したりしない。
 ので、蛇が代わりに口を出すを繰り返していたらこうなった。蛇涙目。
 下地は主に作中二大テレパシストであるホリィさんとジョセフが整えた模様。

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