一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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吉良吉影は静かに暮らせない

 

 そろーりとターゲットの胸ポケットから顔を出して、しめしめ。

 時刻は昼。

 場所は杜王町郊外の閑静な住宅街。

 

 今回の俺ことアルカナテラーの任務は単独での潜入捜査だ。

 対象は────吉良吉影。

 

 俺は街中で吉良吉影とすれ違ったタイミングでするりと吉良にとり付き、にんまりと笑った。

 本格的に運命を越える【条件】が揃いだしてきたので、その一手を埋めるための潜入である。

 

 ちなみに今回俺は分裂して任務にあたるため、少々コミュ障のきらいがある承太郎を一人にしておくという心配すぎる状況に陥る心配はない。

 ちょっと見ない隙にバッドコミュニケーションを連発されて仗助と殴り合いのけんかになってるなんてなったら目も当てられないからな。

 

 などと悲しきコミュ障の罠に悩まされながら、俺は吉良吉影が一人になるタイミングを待った。

 

 一人、吉良は定番のバーガー屋さんのハンバーガーを購入して閑静な広場の一角に陣取る。

 そして同じ袋に入れた被害者の手をそっと芝生の上に置いた。

 その邪悪、その悪逆を知るものは限られるが。

 故にこそ、愛おしそうに袋を撫ぜる仕草すらも悍ましい。

 

 俺はそこでようやく、吉良吉影へと声をかけた。

 

「よぉ吉良吉影。どうだ、彼女と食べるバーガーは絶品か?」

 

 奴は一瞬固まった。

 蛇がしゃべったのがよほど予想外だったのか、そのまま咳払いした後ネクタイを整える作業に戻ってしまった。

 まあ確かに、蛇が喋ったら疑うべきは超常現象よりも己の頭の確かさの方だよな。

 

 俺はバシリと地面を尾で叩いた。

 

「無視してんじゃねーよ」

 

 吉良は長い沈黙の後、絞り出すように返事をした。

 

「……気のせいかと思ってね。普通、蛇がしゃべるわけがないじゃあないか」

「くはは、そうだな。その通りだ。だが俺は喋るし、お前の隣人のように振る舞うだろう」

 

 俺は目を細めてやつを見た。

 吉良吉影の行動は早かった。

 「キラークイーン」とただ一言だけ呟き、普通の蛇なら瞬く間に潰れるであろう殴打を俺へと加えて。

 

「!?」

 

 するり、と通り抜けた拳を見て目を見張った。

 

「無理だね。俺はお前の目の中にいるんだ。爆破も物理攻撃も何一つ効かねーよ」

 

 今の俺は「子蛇さん」モード。

 他人にとり憑いてその瞳の中に潜み精神エネルギーを吸い取るスタンドだ。

 

 これは、あの旅を経て承太郎のキャパシティが増強されたことで俺の全盛期の力の一部が解放されたものだ。

 かつて数百の小蛇に分裂し、数多の人に取り憑いてエネルギードレインを行った力がそれだ。

 流石に邪悪すぎてその使い方はできないが、敵にとり憑いて直接敵情視察なんてマネなら軽いものよ。

 

 なんにせよ、吉良吉影の目の中にいる、というのは実に因果なものだ。

 

「何が目的だ」

 

 額に一筋の冷や汗を流しながら、吉良吉影が問いかけた。

 いつでも爆破できるように背後にキラークイーンを待機させているが無駄なことよ。

 今の俺は無力であるがゆえに無敵である。仕留められるとしたら「振り返ってはいけない小道」で自爆を承知で振り返るくらいのものだ。

 それでも数百分の一の俺という子機を破壊するに過ぎないが。

 

 強がっているのか、脅しかけるような口調に俺は鼻で笑って答えを返した。

 

「見てるぞ、と言いたいんだよ」

「見ている、だと……?」

 

 俺が承太郎から任された任務は吉良吉影の悪行の証拠集めだけだが、ついでにプレッシャーの一つでもかけてやろうと決めていた。

 プレッシャーは焦りを生み、焦りはミスを生む。

 我慢できない殺人衝動を抱えている吉良にとって、この禁欲を強制される空気はとても耐えられるものではないだろう。

 

「オメーの醜い殺人の罪も、死体の手を切り取る悪行も、全部見てるってことだ」

「見てる、ね。それで、君に何ができるっていうんだい?」

 

 所詮無力な蛇だろう、と吉良は吐き捨てた。

 俺はそんな様子をせせら笑って口をひらく。

 

「蛇の悪行と言ったら告げ口に決まってんだろ」

「……なに?」

「テメーのくだらない犯罪行為を、俺は見ている。そして告げ口する。皆にね」

 

 奴の日常を間近で観察し、もし犯罪を犯すようなことがあればSPW財団へ提出する証拠や証言をそろえる。

 それが俺の主要任務だ。

 どうせ俺がプレッシャーをかけずとも、こいつは遠からず殺人を犯す。

 その時がこの男の破滅の時である。

 

「俺の名はアルカナテラー。未来という恐怖。お前の未来にとり憑き、お前の行く末を呪う蛇だ。破滅というにはちょっとばかり手ぬるいが、その方がお前もありがたいだろう?」

 

 このクソ蛇が、私の体から離れろッ!と 激しく身をよじって手を振り払うが、その行為のすべては無駄に終わる。

 あくまで目の中にいる俺は、一部特異な攻撃をのぞきあらゆる攻撃を無力化する。

 

 ばきり、と俺を払った拍子に机に袖のボタンが当たり、ボタンが取れてしまう。

 転がったボタンが開けっ放しのバーガーの袋の中に入り、被害者の手にあたって血に塗れる。

 焦燥に駆られているやつはそれに気が付かない。

 

 全盛期当時の心持ちを思い出し、俺はひたひたと邪悪の滴る声で嗤った。

 

 

「せいぜい足掻け、吉良吉影。我が力、我が瞳から逃れられるなどという幻想を抱いているのならなァ」

 




アルカナテラー(子蛇さんモード)
 他人の瞳の中に憑りつき、絶望の未来を見せる邪悪な蛇。
 宿主の精神エネルギーを吸収しており、本来なら宿主は10日ほどで衰弱死する
 この子蛇を数百使って万華鏡のように焦点を合わせる技を、アルカナテラーは「アイズオブヘブン」と勝手に名付けている。
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