一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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くしゃがら

 

「承太郎さんはくしゃがらって知っていますか?」

 

 未来の大渦に向けての会合の終わり頃、露伴は雑談を兼ねてそんな話題をふっかけてきた。

 

 瞬間、承太郎に飛び込んでくる概念上の虫、くしゃがらを過たず俺がキャッチ。

 そのままもぐもぐと咀嚼する。

 うーん、あえていうなら味の薄いハイチューみたいな。

 

 しかしまあ、不意打ちすぎるんだよなぁ。

 承太郎は当然「くしゃがら」なる謎の単語に心当たりがないらしく、僅かに首を傾げて返答する。

 

「くしゃがら?俺は知らないが」

「そうですか…」

「俺は知ってるぜ、くしゃがら。っつーか、そういうタイプの怪異を、だけどな」

「!」

 

 ガタリと椅子を蹴って立ち上がる露伴先生に俺はニッと笑った。

 実のところ「くしゃがら」と同じく俺も怪異であるため、この手の知識は本能で理解しているのだ。

 

「くしゃがらは一言で言えば自己増殖する情報だ。くしゃがら、って言葉自体を媒体に感染し伝播するウイルスと言ってもいい」

 

 ミーム汚染、って言っても伝わらねーか、とひとりごちる。

 この世界には無いからな、SCP財団。一番適切な単語なんだが。

 

「ウイルス、だって?そんなものが実在するのか……」

「おうよ。承太郎もその手の生き物には会ったことなかったよな?」

「ああ。初耳だ」

「なら聞いといて損はねぇな」

 

 通常、承太郎のようなスタンド使いが敵対するのは同じスタンド使いのみ。

 「振り返ってはいけない小道」のような純粋な異常現象にはとんと縁がないことが多い。

 

 俺は慎重に話す内容を吟味して頭の中で整理した。

 どう説明すれば分かりやすくなるか、難しいところだ。

 

「俺らが使う身近な力、スタンド能力はルールを押し付け合うバトルだ。それはよく知ってるな?」

「ええ。僕のヘブンズドアーはまさにそのタイプですからね」

「けれど、スタンドはルールだけでなくもう一つの要素が存在する。それは精神エネルギー………つまりは心だ」

「それは…あくまでも使い手に強い精神が宿っていなければスタンドのルールも力を失う、という意味ですか?」

 

 スタンドは「本体の精神」、「ルールという能力」の2つによって成り立っている。

 精神が弱ければなまっちろいルールにしかならず、ルールがなければただの能力もない未熟なスタンドとなる。

 

 スタンドに本体は必要不可欠。

 だが、一人歩き型スタンドはその限りではない。

 

 本体の精神とルールとが一対一で成り立っていたところ、一人歩き型スタンドはそのバランスが崩れるのだ。

 よりルールに忠実に、よりルールを全面に出した様相へと変化する。

 例えば射程も持続力もスピードも∞という埒外のスペックを叩き出す、ルールの化身、ノトーリアス・B・I・Gのように。

 

「俺の鱗が硬いのもそうだぜ。『蛇の正しい打倒手順』を守らないから、誰も突破できないほど固くなるんだ」

「お前の打倒手順か。気になるな、俺の盾であるお前に致命的な穴があっては困る」

 

 承太郎が俺の顎をくすぐってそう言った。

 猫じゃないんだから止めなさいそれは!

 俺は確かに動物型だが、実態は歴としたスタンドなんですが。

 

 ただ、承太郎の心配もわかるため、それが杞憂だとすぐに伝える。

 

「心配いらないさ。俺の打倒手順は『未来の絶望を見てなおそれを踏み越える事』だからな」

「それ、事実上承太郎さんしか無理じゃないか?」

「まあ、それはそう。とは言えこれもあくまでルールだから、別のルールと競合するとその限りじゃないんだけどな」

 

 たとえば億泰君やヴァニラ・アイスのガオン。

 アレはルールによる空間消失のため俺の不死性が通用しないのだ。怖いねぇガオンは。

 

「ルールによる存在は強いぞ。くしゃがらも、下手なスタンド使いなら食い尽くすほどの力がある」

「………対処法は?」

「ひとまず露伴先生についた分は俺が食っとくよ。それ以降は、くしゃがらのルールに抵触しないようにすることだな」

「見るな、聞くな、触れるなってことか」

「そう。ルール外では何の力もないのが怪異ってものだ」

 

 別名、触らぬ神に祟りなし。

 「振り返ってはいけない小道」しかり、ルールさえ分かってしまえば対処は簡単なことが多いのも怪異の特徴の一つである。

 承太郎がふむ、と何かしらを思案してこちらを見た。

 

「暴走していた頃のお前もそういった『怪異』に近いものだったのか?」

「そうだぜ。俺に多彩な力があるのは元怪異のスタンドだからこそだな」

「すると、不思議な現象が起こった時、それはスタンドではなく怪異によるものである可能性が否定できないと」

「そうだな。自然発生したものか、元スタンドかはわからないが。何にせよルールによって成り立つ存在には注意が必要だ」

 

 この世界にはルールが多い。未来しかり、運命しかり。

 あの世すらも「許可」というルールが存在している以上、ルールへの警戒は場合によってはスタンド以上に欠かしてはならないものだ。

 

「承太郎、露伴先生、ルールには気をつけろよ」

「……ああ」

「わかってますよ、そんなこと」

 

 二人の表情は暗かった。

 




・アルカナテラーの力の泉源は「ルール」。怪異の力。
・スタープラチナの力の泉源は「精神力」。スタンドの力。
あの蛇は過去、本体たるエジプト人女性を殺された後怪異へと成り果て、その後打倒されてスタンドとしてのあり方を取り戻したという。

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