一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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うっかり筆が乗って吉良吉影を討伐してしまった…
まだ引っ張る気だったのに…


シアーハートアタック②

 

「どどどどういうことですか、殺人鬼って、承太郎さんは杉本鈴美さんを殺害した犯人の正体を知っているんですか!?」

「ああ。前々から知ってはいたが、状況が揃わず手をこまねいていた」

 

 前々から!?と驚いてから、そういえばこの人は未来視という規格外のスタンド能力を持つ人だったと思い出す。

 未来視があるのなら、それは当然殺人鬼の正体だって知っているだろう。

 

 承太郎はくいと親指で通りにある一軒の店を指差し、口を開いた。

 

「ここだ。ちょうどこの靴屋に奴はいる。君はどうする、寄っていくか?」

「………!?」

 

 観光地でも案内するみたいなノリだ。もしかすると最強のスタンド使いと謳われる承太郎から見てみれば、一地方の殺人鬼など本当に観光名所の一つでしかないのかもしれない。

 

 などと混乱した思考を展開する間にも、承太郎はガラガラと靴屋の扉を開けて中へ入っていく。

 聞いておいて考えさせてくれる時間が足りないよ!

 康一は急いで承太郎の後を追った。

 

「失礼する」

「ま、待ってください僕も行きます!!!」

 

 はい、いらっしゃい、と店主さんが店に入る2人の人影に気がついて挨拶を返した。

 一見何の変哲もない靴屋に見える。所狭しと並んだ革靴、スニーカー、学生用のローファーなんかもおいてある。

 ペラペラの手書きで「簡単な裾直し、ボタン付け、繕い等受け付けます」と書かれた紙が壁に貼ってある。

 

 ここに、本当に鈴美さんを殺した殺人鬼がいるのだろうか?

 

 店主さんが手元に金額一覧なのか紙を持って近づいてくる。

 

「はい、なにかありましたか?」

「ふむ」

 

──スタープラチナ・ザ・ワールド。

 

 承太郎は止まる時の中で後ろにかけてあった服を取り、その服につけられたタグを見る。

 

「吉良吉影か。これだな」

「……!?お客さん!勝手にほかのお客様の服を持って行かれては困ります!」

「承太郎さん、なにがです?」

「近くのバーガー屋で行方不明になっていた女性の血痕がついたボタンが発見された。元の服は男物だと調べがついているが……」

 

 言葉を切って承太郎は視線だけでボタンの取れたジャケットの裾を康一に示してみせた。

 

「!じゃあそれは…」

「そうだ。女性の失踪と関わりがある。もっと言うなら、この町で起きている連続失踪事件──殺人、でもいいか。殺人事件の犯人が、この男だと言うことだ」

 

 承太郎は無表情の中に僅かに笑みを混ぜた。

 口だけでニヤリと笑うようなニヒルな笑みだ。

 そしてただ、思わず口から漏れたと言うように呟くのは──。

 

──運命の突破条件は揃えた。「吉良吉影の犯行の証拠を押さえる」「それを吉良吉影本人に突きつける」「上記を二ヶ月以内で行う」。この三つを揃えたとき──

 

 

 吉良吉影は失墜する。

 

 

 康一は我知らず、生唾を飲み込んでいた。

 なにか大きな物事が動いているような、そんな感覚に襲われたからだ。

 ちらり、と承太郎が康一を見やる。

 

「康一君、2歩下がってカウンターの下で屈んでくれ」

「え?はい……?」

 

 康一は意味こそ理解できなかったが、おずおずと指示に従った。

 仗助からの教えだ。

 承太郎の指示にはどんなに奇妙でもとりあえず従えと、未来視の未来視たる所以をよく知る仗助が口を酸っぱくしていったのだ。

 ならば自分がそれを破る道理もない。

 

 瞬間。

 ガン、という衝撃音。

 何かが吹っ飛んできたのだろう。

 スタープラチナによってそれは天井へ弾き返されたらしい。

 

 康一の目では影しか追えなかったが、拳を振り上げた姿勢で止まるスタープラチナと、天井にできた穴からそれを察することができた。

 

「手を狙ったのだろうが、残念だったな。俺もお前と同じ力を持つ者……スタンド使いだ。その手は効かない」

 

 承太郎があくまで部屋の奥へと視線を向けて喋りかける。

 奥の部屋から人の気配がするが、扉は半分閉まっているし、中は暗くてよく見渡せない。

 

 すると、天井に空いた穴から歪な声が聞こえてきた。

 

 コッチヲ見ロォー、と。

 

 キュルキュルとキャタピラの音を響かせ、髑髏柄の顔のようなものが呻いている。

 すかさず承太郎の裾から飛び出した羽のある蛇が、髑髏に取り付いてぐるぐると雁字搦めに巻き付いた。

 そのまま動きを封じて二体まとめて床へと落ちる。

 ガチン、とキャタピラが床と鱗とにぶつかって硬質な音を立てた。

 

 何もかもを理解したように、承太郎が5歩、機械的に下がった。

 

 瞬間。

 轟音を立てて、髑髏の機械は何の前触れもなく爆発した。

 まるで部屋の中で大砲でも炸裂したかのような酷い威力に反し、音は不自然なほど小さかった。

 きっと拳銃の音より小さいだろう。

 

 康一は唖然として爆破し大破した部屋の床を眺めた。

 そしてふと気がつく。

 

 測ったようにちょうど部屋の中央で爆発が起きたため、家具やその他備品に被害はほとんどなかったということを。

 承太郎の横顔は泰然とリラックスしているようにすら見えた。

 

「わわ、わゃ……これは一体…!?」

「お爺さん、動いちゃダメです!」

 

 康一は近くにいた何もわかっていない店主を安全圏へと引き込み、隠れさせた。

 依然として爆弾はキャタピラを空回りさせながら数秒おきに爆発を繰り返している。

 

「無駄なんだよなぁ。俺の鱗はこの程度の爆発じゃあ突破できない。だろ、承太郎?」

「そうだな。どうだ、出てきたらどうだ、吉良吉影。俺がお前についた蛇の主人だ」

 

 部屋の奥から息を呑む声がここまで聞こえてきた。

 次いでギリギリと歯軋りするような、凄絶な怨嗟の滲む音。

 

 吉良吉影とやらの次の一手もまた、凶悪な殺意を秘めた爆発だった。

 

 ぴん、と飛ばされた光を反射するそれが何か、康一にはすぐにわかった。

 百円硬貨だ。硬貨が飛ばされてきたのだ。

 

 罠に違いない。触らないで処理するのがベストだ。

 ならば康一が「彼女」との出会いの中で身につけた力…Act2を使おうと構えて。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド」

 

 承太郎の視線は無機質ですらあった。

 宇宙色に輝く瞳は敵でも味方でもなく、ただ大河の如き「流れ」を見つめていた。

 

 ドォンと。

 爆発は隣の部屋からだった。

 まるでコマが飛ばされたかのように100円玉が消え去り、爆発音だけが隣の部屋に残される。

 

 よろよろとバランスを崩した隣の部屋に潜む男……吉良吉影が廊下に倒れ込んだ。

 爆発を間近に受け、肩は抉れ血をとめどなく流し、ジャケットの右半分が消し飛んでいた。

 

「馬鹿な、なぜここに投げた百円硬貨が……ゴボァッ…ガ……」

 

 血を吐いて咳き込む。

 どう見ても重傷だ。今すぐ病院に駆け込めば助かるだろう、というほどの。

 

「言う必要がないな。これから財団に引き渡される身の君が知る必要もない」

「……ざい、だん?」

「君と言う殺人鬼は上手くコントロールできれば再利用の芽が無いではないからな。杉本鈴美には悪いが」

「素直に言うことを聞くとでも思うのか……この吉良吉影が……!貴様などにィィイ!!」

「君の選択はどちらでもいい。素直に地獄へと落ちるか、財団の管理下で生きるか」

 

 康一は丁度そのとき、運良く──あるいは運悪く──気がついた。

 小さな小さな蛇が、彼の瞳の中で笑ったのを。

 そして殺人鬼の耳元でこうも囁いたことを。

 康一は見ていたのだ。

 

「杉本鈴美があの世の縁で待っているぞ、お前が来るのを」

 

 

 

「キラークイーン!!!」

 

 殺人鬼は絶叫した。

 

「そこの店主を爆弾に変えた!!奴の命が惜しくばそこをどけぇ!!」

「……地獄の方がお好みか」

「いいか、何もするな!貴様がもし一つでも何かしようとするそぶりを見せたら店主を爆破する!!」

 

 はぁ、とため息。

 吉良吉影の不幸は、その時を留める超常のスタンドの能力発動速度が吉良のスイッチを押す速度などより遥かに早かったことだろう。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド」

 

 

 はっと、次に見たとき男は胸に穴を開けて事切れていた。

 どくどくととめどなく血を流し、あるいはこれまで築き上げてきた被害者達の似姿のように。

 吉良吉影なる殺人鬼は青白い肌を晒していた。

 

 仕事は終わった、とばかりにどこぞへと電話をかける承太郎を見上げるこの心持ちを何と形容すればいいだろうか。

 

 全知のスタンド使い。最強のスタンド使い。

 

 何か、人類などより大いなるものを見るような気がして、康一は僅かに息を詰めたのだった。

 

 あの殺人鬼の魂はきっと振り返ってはいけない小道にたどり着くのだろう。

 その時何が起こるのかは、かのおぞましき悪竜を思い出し──考えないことにした。

 




まだもうちょっとだけ4部は続くんじゃよ
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