一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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吉良吉廣戦

 

 杜王町、郊外、昼。

 時刻は午後3時。ティータイムだ。

 

 吉良吉影の家には承太郎の他に、アヴドゥル、虹村形兆、虹村億泰、広瀬康一、そしてジョセフ・ジョースターが集まっていた。

 皆遠距離攻撃が可能、もしくは能力による高い機動力を持つもの達だ。

 それは、今から行われるのが包囲網──敵を逃さぬ戦いであると言う証左だ。

 

 計画はこうだ。

 まず吉良吉影の家だが、SPW財団立ち入りの前に安全を優先してアヴドゥルが入り、屋敷ごと全焼させる。

 

 屋敷から逃げ出す可能性も考えられるため、射程の長い形兆、康一、そして能力により空間を削ることができる億泰によって周囲を取り囲む。

 最後に間違いなく仕留められたかの確認のため、念写が可能なジョセフが後詰めにつく。

 

 計画を聞いた康一はいつにない緊張に身体をこわばらせていたが、そこでジョセフにバンバンと遠慮なく肩を叩かれた。

 

「心配なぞせんでもいいわい。ワシらがついとる!な、若人よ!」

「は、はい」

 

 大きな背中だ。カラカラと豪快に笑う姿になんだか緊張がときほぐされていく。

 

 康一もその場にいたが、あの殺人鬼の最後はあっけないほどだった。

 しかしきっと、何か一つでもかけ違いがあれば、凄絶な被害があっただろうことだけは想像がついた。

 

 杜王町の郊外にて、康一は改めてその殺人鬼が住んでいたと言う屋敷を眺める。

 

 目の前の屋敷はやや広めの庭を持つ、母屋と離れに分かれた大きな日本式民家だ。

 和風の作りはしっかりしていて、かつてこの辺一帯の地主であったのかもしれない、と康一は思った。

 

 そこでするりと進み出たのは、ゆったりとした中東風の服で身を包む大柄の男性、モハメド・アヴドゥルだ。

 ただでさえ体格が大きいのに服にもかなりのゆとりがあるから、康一などすっぽりと包み隠せてしまいそうだ。

 

 アヴドゥルはゴホンと一つ咳払いをし、承太郎へと話しかけた。

 

「さて、住宅街でここまで大きな炎を出すのは気が引けるが……これだけ家々が離れていれば延焼の危険もそうはあるまい」

「アヴドゥル。お前のマジシャンズレッドの炎ならばそれすらコントロールの内だろう?」

「ふふ、そうだな。そこまで期待されているならば見せねばなるまい、マジシャンズレッドの炎の力を」

 

 交わす視線は力強く、その絆が本物であることがここまで伝わってくる。

 

 億泰から聞いた話によると、アヴドゥルは財団職員で普段はスタンドの矢の守護管理を行なっているということらしい。

 元々虹村家にあった矢以外にも、DIOの館から押収したものであったり音石明から奪取した──つまり康一自身を貫いた矢──だったりも守護しているのだという。

 また、アヴドゥル自身もスタンド使いで、凄まじい炎をあやつる他に類を見ない強力なスタンドを操るのだとか。

 

 億泰が言うには「矢はよぉ、財団が作ったっつー特注の凄えデケェ『焼却炉』の中にあってよ。敵が入ってきたら矢ごとアヴドゥルさんが燃やしちまうんだとよ」とのこと。

 想像するだに恐ろしいことである。

 

 計画開始予定時刻はもう少し。

 同行した康一は固唾を飲んで見守った。

 

 

 

「ではいくぞ。クロスファイヤーハリケーンスペシャル!」

 

 スタンド像から、大量のアンク型の炎が吐き出され、屋根へ物理的な威力を伴って降り注ぐ。

 そこから爆発したような激しい出火が起きる。

 飛び出した炎は荒縄状に編まれ、それが家全体を囲う檻のように帳を下ろす。

 家全体があっという間に炎に包まれ、燃えて黒煙を上げゆく。

 唯一の出口と言わんばかりに、窓の一つだけを避けて炎は燃えた。

 

 康一は目を見張った。

 あの窓は釣り餌だ。唯一の脱出口と見せかけた!

 

 すでに己の役割を理解したらしい億泰の兄、形兆がバッドカンパニーを整列させている。

 

「ぜんたーいッ、構え!」

 

 狙うはこの唯一の脱出口から生存を求め躍り出てくるはずの……。

 

 がしゃん、と。

 次の瞬間何かが飛び出してくる。

 何か紙に似たものが、不自然に鋭角に空気を切り裂きながら、ものすごい勢いで窓ガラスを割ったのだ。

 その機を形兆は逃さなかった。

 

「うてーーッ!!」

 

 小さくとも本物の銃器であり軍隊、バッドカンパニーの一斉掃射が当たり、それは「ぐげぎゃっ!?」という声を出して呻いた。

 飛び出す勢いが弱まり、空中でヒラヒラと火の粉混じりの風を受ける。

 

 それを見逃すアヴドゥルではなかった。

 多くの矢を狙う盗人達を全て灰へと変えてきた最強の守護者が、その炎の縄を標的へと巻き付ける。

 

「マジシャンズレッド!」

 

 そしてすぐさま炎の網は燃え盛り、元の家中へと連れてゆく。

 

 ただの紙であるはずのそれからは、おのれ、おのれぇぇえええ!と怨嗟を叫ぶしわがれた声が耳を打つ。

 改めてよく見れば、炎に囚われたのは一枚の写真だった。

 写真が炎に喰われ、ドンドンと黒く灰に還ってゆく。

 

 承太郎は地面の砂に念写していたジョセフにチラリと目線をやった。

 頷くジョセフに、仕事の終わりを感じ取る。

 

 未だ燃え盛る民家を前に、康一は「振り返ってはいけない小道」の彼女らを訪ねることを決意する。

 今頃どうしているだろうか。早く、全ての因縁が終わったことを伝えないと。

 

 承太郎はいつも通り泰然とした様子で蛇と何事かを話しているようだった。

 

「ひとまずの杜王町の心配事はこれで払拭完了かねぇ、承太郎?」

「エニグマは……放っておいていいだろう。スタンドに目覚める縁が無い以上、奴は無害だ」

「あとそうだな、スーパーフライは、うーん。ありゃ半分以上怪異だな。触らぬが吉だ」

「ならあとは今後のためシンデレラの辻彩と繋ぎだけ取っておくべきだな」

「やることが多いって奴だ。未来視持ちは多忙で辛いな。イタリアの件もある」

 

 承太郎が目を伏せる。

 パチパチと炎が爆ぜる音だけが静寂を妨げる。

 

「あと13年、か。私はあの渦に対して手は打てているだろうか。進めているだろうか」

「何言ってんだよ。今まさに進んでいる途中だろ。立ち向かうために、踏み越えるために。お前はよくやってるよ」

「……そうか」

 

 あの空条承太郎でも不安になることがあるのか。悩むことがあるのか。

 康一は予想外な気持ちと、ああ、考えてみれば彼も人間なんだから当たり前のことだ、と気付くような複雑な気持ちになった。

 

 屋敷は燃えている。殺人鬼はもういない。

 杜王町は平和を取り戻した。

 

 

 それでもなお、きっと、未来は危険と試練に満ちているのだろう。

 




第5部は承太郎をイタリアに送り込む予定です。
ボス撃破RTA。
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