一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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暗殺チームの楽しい新入社員研修

 

「というわけで、ブチャラティ率いる護衛チームは現在、ボスの娘トリッシュの護衛についている」

 

 チームの新しいボス、空条承太郎の言葉に、一同は静かにうなずいた。

 

 幹部ポルポの隠し遺産を組織に献上し、幹部になったブチャラティのこと。

 そのポルポが最後にやり残した任務を引き継ぎ、ブチャラティチームがボスの娘を護衛していること。

 現在、彼らの内情を探るべく花京院という名のスパイをブチャラティチームに同行させているということ。

 

 これらを聞いて、リゾットもその情報収集力、未来予知という万能のスタンド能力に感嘆の念を抱かざるを得ない。

 思うんだけどさ、と口を開いたのはホルマジオだ。

 

「既にボスの手のものがトリッシュに同行してんだろ?そのまま攫って少々甚振ってやれば吐くんじゃねぇか?」

 

 ボス、と呼ばれた承太郎は静かに首を横に振った。

 それに反応したのはイルーゾォだ。

 

「馬鹿、俺らはもうお……表?の人間?なんだぞ?女甚振るとかダメだろーがよ」

「疑問符消せてねーぞ」

「ウルセェぞホルマジオ。てめーだって5秒ごとにSPW財団のロゴの入った帽子脱ぎ被りしやがって!鬱陶しいんだよ!!」

「な、なんだよ悪りぃーかよ!!」

 

 

 

 本日朝のこと。

 SPW財団と正式に契約を交わし、数年前新しくできたネアポリスの一等地に佇む財団支部へと招かれた一同。

 

 それは「初日の中途入社者研修」なる未知の説明会のためであった。

 

 午前は各種雇用契約書の確認、押印と福利厚生制度の簡単な説明。

 午後は制服の貸与とコンプライアンス相談窓口周知、会社概要の紹介。

 

 それらを美しく無機質な会議室で受けたリゾット他チームのメンバー達は、完全に小さく固まってパキパキになっていた。

 

 スーツに身を固めた社員研修係の初老の男性は、「まあまあ、そう皆さん固くならないで。スタンド使いの方は皆経歴もいろいろありますから、私どものサポートもあります。すぐに慣れますよ」と朗らかに言った。

 それに「お、おう、じゃなくてはい…」とオドオドプロシュートが挨拶する一幕もあった。

 

 そして研修が終われば、いよいよ最初の任務にむけて会議が始まる。

 

 貸与されたピカピカの財団制服は一旦自分に割り当てられたロッカー──これもまた新しく綺麗で、一同壊さぬようそうっと開けていた──に畳んでしまう。

 道中、通りかかったサラリーマン風の男に「スタンド使い部門の方ですか、いつもお疲れさまです」と挨拶され、リゾットは思わずフリーズした。

 

 異文化交流の数々を乗り越え、会議室に集まる頃には「どうしたんだ、お前達」と承太郎に声をかけられるほど一同ヘトヘトになっていた。

 

「柄じゃねぇ、という問題ですらねぇ。そのうち全身に蕁麻疹が出る気がするぜ…」

「そうかいプロシュート。俺は研究室勤め時代を思い出して懐かしい気がするね」

「メローネ、てめーはそうだろうな…」

 

 比較的表に理解あるリゾット、メローネ、ギアッチョの3人に先導されなんとかいつもの状態まで心を落ち着ければ、先に会議室にて資料を整理していた承太郎に「安心するといい、お前たちのように久方ぶりの表の空気に疲れ果てるスタンド使いも少なくない」と声をかけられた。

 

「能力者なんて我の強い奴ばかりだからな。こういう画一的な空気は苦手だろう」

「そ、そうだな……いやいや、ボスは平気なのかよ」

「わたしか?慣れたという言葉が正しいな。得意というわけではないが、SPW財団に勤めて長いのでな」

「そんなもんか」

 

 ホルマジオの疑問にそつなく答える承太郎は泰然としていて、まだ若いながらもボスとしての貫禄を感じさせる。

 

「では、そろそろはじめるぞ。君たちの最初の任務、ギャング・パッショーネのボスの正体を探るための情報交換といこう。」

 

 

 

 と、そんな感じで冒頭に至るのである。

 リーダーであるリゾットの精神的疲労は推して知るべし。下手な任務より気を使った、とは後日彼が漏らした言葉よりの抜粋だ。

 へとへとの元暗殺チームに気を使ったのか、ゆったりと確認するように承太郎が口を開いた。

 

「トリッシュについている花京院にはそのまま護衛を続けてもらう予定だ」

 

 リゾットはその言葉に疑問を抱き、そのまま口にする。

 完璧な上意下達、異論をはさむことのできない環境であった以前とは大違いだ。

 

「何故だ。このままだと娘はパッショーネのボスの元に送り届けられてしまうが」

「パッショーネのボスはチキンでな。間違いなく保身のため、自分の娘を自分で殺そうとするんだよ」

 

 リゾットの疑問に承太郎のスタンドたる蛇が答える。

 蛇の言葉は承太郎(ボス)の言葉とみなしていい、とは承太郎の言である。

 

「!?娘を……何故?」

「身内は弱点、ってな。奴は自分だけが頂点でいればそれでいいんだ。」

「……っ、……」

 

 かろうじて残った忠誠の欠片が咄嗟に否定しようとして、その為の言葉が出てこない己に動揺する。

 路地裏にはありふれた悪だ。非難できるほど自分達はお綺麗ではないし、しかし擁護するほど自分たちのプライドは安くない。

 

 ただ少なくとも、ボスの器ではないと。そう考えてしまうのは間違いだろうか。

「おいおいちっちぇ野郎だなぁ、それがパッショーネのボスの真実って、まじか?」と声を上げたのはホルマジオだった。

 同意するのはイルーゾォ、プロシュート、ペッシの三人だ。

 

「なんにせよ、だ。そのボスの方針は護衛チームのリーダー、ブチャラティとは致命的に反するだろう」

「そうだな。あの男ならその手の外道を毛嫌いするはずだ」

「じゃあ俺らはどうするんだよ」

 

 イルーゾォが行儀悪く椅子の上で足を組んで言った。

 その隣でピシっと足をそろえて座るペッシの肩を、褒めるようにプロシュートがぽんぽんと叩く。

 

「ブチャラティチームの動きに乗じてボスの正体を暴く。彼らは最終的に私たちと目的を同じくするのだ。わざわざぶつかる必要もないだろう」

「お手手繋いで仲良くな、とは言わねーのは気に入った」

 

 ギアッチョが眼光鋭く口角を吊り上げる。

 

「君たちはそういうタイプではあるまい。だが、それを禁止するつもりもない。各々が最善を尽くし、結果それがボスの正体を暴く一助になるだろうと私は信じている」

「………なるほどな」

 

 了解した、とリゾットは言葉をつづけた。

 彼の覇気、彼の気配はこう言っている。

 

 私の期待を裏切ってくれるなよ、と。

 

 そのようなメッセージを言葉にせずとも気配でもって示すプレッシャーよ。

 その様子に挑戦的に笑う者、ただ黙って強く見つめ返す者。

 

 各々が緊張と挑戦を胸に、SPW財団特設調査部隊として、初めての任務に乗り出すのだ。

 




ちなみに、SPW財団における彼らの扱いは高度専門技能職の中途入社者(既定の月給+評価報酬+危険手当)です。
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