一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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歴戦のスタンド使い

 

「空条博士。情報収集部門より報告が入りました」

 

 SPW財団イタリア支部の機密会議室にて。

 いつもの白いロングコートに身を包んだ承太郎は、背後からバインダーを手に駆けてきた財団職員を一瞥し、視線だけで先を促した。

 

「スタンドユーザー部門所属のギアッチョ氏、ペッシ氏、プロシュート氏三名の奮闘によりセッコ・チョコラータ両名の打倒を無事確認しました」

「被害状況は?」

「一般人の被害は三名。我々の避難誘導が間に合わず、殺人カビに蝕まれ……」

 

 沈鬱な顔で絞り出すように報告する職員に、承太郎もわずかに言葉を詰まらせる。

 こうならないようなるべく人の少ない場所で戦闘開始するよう、細心の注意を払って人員を配備したのだが。

 【目】によって被害者が出ることは不可避だと分かってはいた。それでも、やはり心は痛む。

 

「っ、私がスタンド被害対応部門に話をつけよう。直接戦闘に当たった3人はどうなった」

「ペッシ氏がセッコの泥化能力を受け両手を欠損、プロシュート氏がカビの影響で右膝下を失う大怪我です。現在、回収した欠損部位とともに日本へ救急搬送しています」

「そうか。仗助とはすでに連絡はついているな」

「はい。アルバイトの名目で既に所定の医療機関へ研修医を装い手配済みです」

 

 こうして仗助が緊急で呼び出されるのももはや数十を超える。

 「怖くなるぐらい実入りはいいんすけど、すげー緊張するんすよね、あの空気」とは仗助談だ。

 はじめは「いいっすよこれくらい」と謝礼を辞退していたのだが、そのあまりの唯一性、希少性にほぼ財団職員の泣き落としのような形でバイト代が払われるようになったという経緯があったりもする。

 

 蛇がしゅるりと承太郎の肩から伸びあがり、揶揄うように笑う。

 

「まったく仗助さまさまだぜ。な、承太郎」

「ああ。彼がいなければどれだけの損失があったか。頭が上がらないとはこのことだ」

「トニオさん仗助の医療ペアが強すぎて。ここにガオン傷対応のジョルノが加われば百人力なんだがなぁ」

「……それは難しいだろう。彼は近いうちにパッショーネという組織を率いる人間だ。我々と協力関係は結べても、一つにはなれない」

 

 ジョルノ、の名前に後ろで控えていた財団職員が顔を曇らせた。

 

「彼はジョースター家の仇敵、DIOの子供。残党が担ぎ上げる可能性も含め、危険すぎます」

 

 財団にとって、ある種DIOとは特別な存在だ。

 ジョースターの敵、多くのスタンド使いを生み出し、その被害を拡大させた巨悪、今もなお多くの信者を抱え傷跡を広げる病巣。

 その息子がギャング・パッショーネというスタンドを悪用する組織にいる、という事実が多くの職員を警戒させている。

 財団上層部も、ジョルノには憂慮しているのだという。

 

「だが同時に彼はジョナサン・ジョースターの息子でもある。彼の中には間違いなくジョースターの血が流れている」

「……」

「彼の肩にある星は、我々の仲間だという確かな証。血の絆だ」

 

 承太郎は窓よりイタリアの街並みを見下ろした。

 現在、彼らはヴェネツィアにてパッショーネボス、ディアボロに反旗を翻している。

 正しいと思える魂のもと、黄金の精神のもとに。

 

「もう少しだけ様子を見よう。きっと彼なら事態を正しい方向に進めてくれるだろう」

「………はい、承知しました」

 

 職員は深く一礼し、かつかつと革靴の音を響かせながら退室していった。

 

 

 

 

 サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会でパッショーネのボスから逃げ切ってから、ジョルノたちはそのままヴェネツィアから動かず一時潜伏の期間としていた。

 

 パッショーネは巨大だ。新興勢力ゆえに古参のそれに比べれば未成熟なものの、イタリアのあらゆるところにネットワークを張り巡らせている。

 そんな巨大組織に盾突いているのだから、このイタリアに逃げ場なんてない。

 ならば無理に逃げ隠れするのはかえって逆効果。

 襲撃に備え、このヴェネツィアにて力を蓄えるのみ。

 

 そう考え、ブチャラティをトップに彼らのチームは一時の休憩を楽しんでいた。

 

「前々から思っていたんだが。君の生命を生み出す能力、本当にすごいな」

 

 いたるところに流れるヴェネツィアの細い水路たちを背景に、花京院はパスタをフォークに絡ませながら口を開いた。

 大通りを観光客が大勢行き交い、ざわめきは途切れることなくヴェネツィアの街並みを彩っている。

 ジョルノが紙コップのアイスコーヒーを左手に持ったまま、視線だけで花京院に先を促した。

 花京院はぱくりとパスタを口にして、おいしそうに頬を緩めた。

 

「僕の知り合いの子に『他人を治すスタンド』という治療特化の能力を持った人がいるんだけどさ」

 

 その言葉に目を見張ったのはチーム全員だ。

 治療するスタンド。想像しなかったわけではないが、実在するとは考えてもいなかった能力だ。

 

「それは……どれほど有用か想像もできないな」

「ええ。あの子はすごいですよ。僕の見た限り、ほぼ即死に近い状況から無傷へと瞬時に回復させますから。そのせいでだいぶ長い間僕らも『死者は治せない』というルールに気づかなかったぐらいですから」

「僕らのチームにすぐにでも欲しいぐらいだ。そう思いますよね、ブチャラティ」

「……ああ。その話が本当なら、負傷の心配をほぼしなくてよくなるんだからな」

 

 ブチャラティが神妙な顔をして同意した。

 この厳しい状況の中、いつ人員に欠けが出てもおかしくないのだ。それが防げるのだと思えば、諸手を挙げて歓迎するに決まっている。

 花京院は少しだけ苦笑してジョルノをまっすぐに見た。

 

「でも、生命力を操るジョルノ君ももしかしたら同じことができるかもしれないと思いまして」

「……どうやって?僕は生命は生み出せますが、他人の中に生命力を注入しても生命力の過剰促進にはなっても傷の回復なんかはできませんでしたよ」

「別に、生命の定義次第だろう? 細胞だって生命だし、細胞でくみ上げられた生体部品だって生命だ」

 

 そういえばDIOも切り落とされた部位を切断面にくっつけるだけで動くようになったぐらいだし、生命力が高ければそういうこともできるだろうか、などと。

 そんなことを花京院はぼんやりと考えたものの、口には出さなかった。

 ジョルノは手の中でストローを赤い木の実の生る枝へと変えてうつむき、考えに浸る。

 

「部品を生み出してはめ込むのか!それなら僕のゴールドエクスペリエンスでも可能かもしれない」

「ホイミは人類の夢だからね。病気に犯された組織を正常な組織に置換することで病を治したり、夢が広がるよ。考えるだけならタダだ」

「……組織を…置換……古い組織を材料に新たな生命を生み出せばあるいは…」

 

 その様子に、ブチャラティは口を挟まず静かに花京院を見守っていた。

 やはりスタンド戦に慣れているらしい。

 発想が豊富、というよりいろいろな事例を見慣れているといった方が正しいか。

 その経歴が気になるところではあるが、下手につついてこの危機的状況の中さらに彼と敵対したくはない。

 

 椅子の背もたれに顎を載せ、少々行儀の悪い恰好でナランチャが問いかけた。

 

「いいなぁジョルノだけ。なあなあ、俺のエアロスミスはどう思う!?」

「火力も索敵性能も高い。方向性としては意外と僕のハイエロファントと似たタイプのスタンドだと思うよ」

 

 「本当か!」と褒められたと思ったらしいナランチャがやりぃ、とこぶしを振り上げた。

 実際、ナランチャのエアロスミスは遠距離ながら高い火力を誇り、シンプルで弱点らしい弱点も少ない。

 ブチャラティのチームでもトップクラスの使いやすさを誇るスタンドだ。

 

 花京院は喜ぶナランチャに微笑ましそうな顔をして、ゆっくりと言葉を続ける。

 

「けど役割は全く違う。僕は広い射程を生かして広範囲の警戒を担うことが多かったけど、君はどちらかというと敵への襲撃がメインだからね」

 

 遠くに潜んでいる敵に対し、不意打ちで高火力を叩き込む。

 特殊能力を持つ敵スタンド使いへのカウンター的な役割だと、花京院は言う。

 

「ミスタのセックスピストルズを載せればなおいい。お手軽遠隔追尾弾に早変わりだ」

「おお!コンビプレイいいな!」

「たしかに、エアロスミスの弾を操作したこと自体はあったけど、初めからエアロスミスに搭乗させたことはなかったな。オレのセックスピストルズの方が射程は短いから、それだけは注意しなくちゃいけねーな」

「ははは、所詮は素人考えさ」

 

 ちょうど自分の話が出ているとポテトの乗ったトレイをもってミスタが顔を出してきた。

 愉快そうにナランチャと肩を組み、ナランチャがいぇーいとピースする。

 

 謙遜する花京院にブチャラティは静かに首を振った。

 彼の考察は実に的を射ていた。スタンド戦の頭脳として正式に右腕に雇いたいぐらいだとブチャラティは思う。

 

「いや、たまには外の考えを取り入れるのも自分のスタンドの能力の幅を広げることになる」

「僕の友曰く、スタンド能力は『できて当然』と思うことが大切らしいからね。考えが広がる一助になれたなら光栄なことだよ」

 

 そこでようやく、熟考から帰ってきたジョルノが花京院を見て、慎重に口を開いたところで。

 

「その友人についてなのですが、パッショーネのボスと同じタイプの能力、とはいったい───」

 

 突如。

 ナランチャが舌を切り取られ、椅子から転げ落ちた。

 

 

 

「ッ、敵スタンド使いか!」

 

 反応が一番早かったのは花京院で、ズアッと一気にハイエロファントグリーンを出現させ、人目もはばからず素早く触手を張り巡らせる。

 

「本体が姿を隠している。遠距離型で、かつ特殊な力があるタイプのスタンドか!」

 

 花京院が素早く思考を口にする。

 

 何故舌を狙ったんだ?舌を根こそぎ狙えるぐらいなら、位置を少し上にして脳幹を狙った方が早いし確実なはず。

 わざわざ舌を狙わなければならなかった?………本体の嗜癖、であるのなら他にも同様の犠牲者がいておかしくないはず。

 何らかの発動条件か?

 

 僅か5秒。

 まだ敵襲、という発想すらないタイミングでの素早い想定に、ブチャラティもアバッキオも鋭く花京院の方を見ていた。

 やはり歴戦、相当なスタンド戦経験のある男だ。

 

 ただのトリッシュの保護者などではない、と。

 





・現在のSPW財団
スタンドを始めとした各種怪異、怪奇現象の研究をメインに行う世界最大規模の総合研究機関。
特にスタンドユーザー部門は規模・質ともに世界最高レベル。
そのスタンドユーザー部門長が空条承太郎、のイメージ。
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