一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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亀のポルナレフ

 

「くっ、あれほど先行するのはやめろと言ったのに、ベイビィ・フェイス!」

「焦っても仕方がない。リゾット、だったか。あの鶏がどっちへ行ったか分かるか?」

「おそらくはパッショーネのボスの元だ。この近くにボスがいるということは、こちらの動きは読まれていると思っていいだろう。つまり、ベイビィ・フェイスは──」

「俺たちの目的地、コロッセオにいる可能性が高い、か」

 

 ブチャラティ率いる護衛チームは、現在ローマ市内でコロッセオへ向けてひた走っていた。

 

 こうも急ぐことになってしまった理由は先ほど、鶏を用いて生まれた多少けんかっ早いスタンド体、ベイビィ・フェイスが「ディアボロの気配発見!行くぜ行くぜ!俺はやるぜ!」と突然走り出してしまったからだ。

 小さな体は多くの観光客の間をすり抜け、あっという間に見えなくなってしまった。

 「やはり首輪をつけておくべきだった……」と本気で嘆くリゾットに、鶏脱走の文字列に笑いをこらえきれない花京院。

 

 それを冷静に見ていたジョルノが「あれが本当の鳥頭ってやつですね」などと漏らすものだから、場の空気は弛緩するばかりだった。

 

「ともかく、パッショーネのボスの手にかかってしまう前にベイビィ・フェイスを見つけ出そう。あれでもボスの追跡能力は本物のようだ。亡くすのは惜しい」

「だがよブチャラティ、コロッセオっつったって結構な広さだぜ?あのちっせー体をやみくもに探すには広すぎる」

「人気の少なくなったところでナランチャのエアロスミスで探してもらいましょう。スタンドで生まれた生命とはいえ、一応息はしてるんでしょう?」

「ああ。ボスの追跡ができて喋れるという事以外は普通の鶏と変わらない」

「いや普通の鶏がスタンドなのかよ……それでどうやって戦うんだよ」

「本来ならもっとずっと強力なスタンドだ、メローネのベイビィ・フェイスは。安価かつ人道に配慮した結果こうなってしまっただけで」

 

 などと走りながら雑談とも相談ともつかぬ会話をしていたところ、ふいに横の通路から鶏が飛び出てきた。

 こっこけっこ!!と羽をばさばさと暴れさせて慌てるベイビィ・フェイスが、リゾットたちの姿を見た瞬間大声で叫びはじめる。

 

「っおま、ベイビィ・フェイスか!?」

「大変だ大変だ大変だ!ココ・ジャンボが!亀が喋りだしたんだぜ!!!」

「はぁ?亀って、お前の背に乗せといた奴のことか?」

 

 スタンド使いの亀、ココ・ジャンボは、移動に際して一時的にベイビィ・フェイスの背中の上に括り付けられていた。

 というのも、もし戦闘に巻き込まれた時、ジョルノたちが持っていたら流れ弾を喰らって可哀そうなことになる可能性も捨てきれなかったからだ。

 ならば最初から非戦闘員で足も速く、飛べるので機動力も高いベイビィ・フェイスとセットにしておけばいいだろう、と。そういう判断であった。

 

 ココ・ジャンボがずい、と明確な意思を感じさせる動きでジョルノたちを見やる。

 

「っおま、花京院じゃねーか!?どうしてこんなところにいんだよ!?じゃなくて、そう、やべーんだよマジで!!」

「ココ・ジャンボが本当に喋ってますね……この不気味な現象に心当たりは?」

「あるわけないだろう。ベイビィ・フェイスはそういうスタンドではない」

「俺、もうなんか動物って喋るもんなんだなーって思えてきた」

「ナランチャ、正気に戻ってください。それはない」

 

 花京院はその声に聞き覚えがあったが、自らの感性を信じられず恐る恐るココ・ジャンボに聞き返した。

 

「まさか……その声はポルナレフ、なのか?というかどうして亀なんかになっているんだ!?」

「そうだぜ花京院!なぁ、お前らマジで頼む!俺のスタンドを止めてくれ!このままじゃ俺は亀のままだし被害範囲がどんどん広がって行っちまう!」

「スタンド?あなた、スタンドがどうかしたの?」

 

 トリッシュが問いかければ、亀はぶんぶんとうなずいて話し始めた。

 

「俺はさっきまでコロッセオでお前らの到着を待っていたんだが。そこにディアボロ……パッショーネのボスが現れてな。戦闘になったんだ」

「っ!あなたが財団職員で我々の待ち人の……希望を託したい、と言っていた」

「ああ。託す前にこんなんになっちまったけどな。ともかくだ。俺はディアボロと戦闘になり、しばらく拮抗状態が続いていたんだが、そこに突然鶏が乱入してきて」

「あーーー」

 

 ミスタが声を上げた。なんだか想像がつくような、がっかりしたような気持ちの混じる声だった。

 

「で、そこをディアボロに不意打ちされた俺は手元の操作をミスってスタンドの矢を自分とチャリオッツ……俺のスタンド両方を刺し貫いちまった。どっちか片方ならいいんだがよ、両方ってのが不味かった」

「スタンドの矢で……自分とスタンドを刺し貫く?」

 

 ブチャラティは想像がつかず、困惑したように聞き返した。

 ただジョルノのみが黙って考え込む中、ポルナレフと名乗った亀は話を続ける。

 

「そうだ。スタンドの矢は摩訶不思議だ。スタンド使いを貫けばスタンドが強化されることがあるし、スタンドを貫けば場合によってはレクイエムと呼ばれる進化現象を引き起こす」

「レクイエム……」

「ポルナレフ、それは開示していい情報なのか?僕の知る限り、それは機密情報に近いもののはずだが」

「承太郎からさっき電話がかかってきたが、口止めされてねぇってことは言っていいってことなんだろ」

「なら安心だな。で、君がそんな亀の姿になるってことは、レクイエムが暴発したんだろう?」

「ああ」

 

 ココ・ジャンボはうめくようにうずくまった。

 

「スタンドの強化だけなら問題なかった。レクイエムだけなら暴発まではしなかった。両方起きたせいで、俺は自分の体からはじかれて鶏が背負ってた亀の体の中に入っちまった。その場でディアボロもぶっ倒れてたから入れ替わったんだろうな」

「スタンドの制御はまだ利くかい?」

「一応、全力で効果がこれ以上発動しないよう抑え込んでる状況だ。ぶっちゃけしんどい」

「そこは責任取ってくれ」

 

 頭痛をこらえるようにブチャラティが亀と花京院と、わめく鶏とを交互に見た。

 何から聞けばいいのか言葉が渋滞を起こしているが、これで思考停止するわけにもいかない。

 

「聞きたいことは多々あるが、ひとまずコロッセオに行けばボスに会えると。そういうわけだな?」

「ああ。ついでにだが、矢は持ってきた」

 

 ココ・ジャンボが鶏の羽毛の中からべっきりと二つに折れた矢を口で取り出した。

 「あの混乱の中亀の体でここまでできたんだ。上出来だろ?」と非常に自慢げだ。

 そしてジョルノへと渡し、微笑む。

 

「あんたがジョルノ・ジョバァーナだな。矢をよろしく頼むぜ」

「……何故僕に?」

「承太郎が言ってたのさ。ジョルノに渡してくれってよ」

 

 ジョルノはしばらく沈黙した後、大きなため息をついた。

 結局、ここへ戻ってくるわけだと。

 

「未来視というのはつくづくやっかいですね。まるであの男の掌の上で踊っている気分だ」

「そういうなよ。あいつはあいつで色々思い悩んで、より良い未来を選んでるんだ。悪いようにはならねぇよ」

「だといいんですがね」

 

 ジョルノが皮肉げに矢をかかげる。矢は太陽光を反射し、鈍く輝いた。

 

「では、いきましょうか。スタンドが暴走しているという、コロッセオへ」

 




蛇「だから亀って言ったろ!」
リゾット「鶏用の散歩リードは売っているだろうか…」
ブチャラティ「全ての黒幕=謎の未来視能力者…?」
フーゴ「喋る動物ばっかで頭おかしくなってきた」
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