一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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穏やかな飲み会Re

 

「ダディなんて嫌いいいいいい私の蛇さんとった!!!」

「ああいや、その」

「一週間も取った!蛇さんは私のなのに!!!とった!!!」

「徐倫、徐倫聞いてくれ、私は」

「とったあああああああああああああ」

「徐倫……」

 

 ほぼ聞く耳なし。ごろごろとすさまじい勢いで転がって家具にぶつかる小怪獣は家具の足に噛り付いた。

 泣きながらガジガジと高級家具の足を削っている。

 

 そんな二人を遠目から見守る母親に、俺は看板を掲げた。

 

『大丈夫、見守りましょう。承太郎も徐倫もきっと仲直りできますよ』

「でも……あの人は命のかかった大変な仕事があったんでしょう?徐倫を一人ぼっちでさみしがらせてしまったのは私にも責任が…」

『そんなことはない!貴方は本当によくやっている。たまには承太郎に寄りかかってもバチは当たりませんよ』

 

 俺は小さめのホワイトボードにそう書き殴ってニッと笑った。俺の姿なんぞ見えてないだろうが、気分的な問題だ。

 憂い顔の奥さんをそう元気付けて、俺は改めて暴れ回る徐倫に声をかけた。

 

「よぉ、徐倫」

「へびさん!!徐倫の事嫌いになっちゃった!?ダディの方がいい!!??」

「徐倫、俺も承太郎もお前のことをたーくさん愛してるんだ。嫌いになんてなるわけねーだろ?」

「ダディは別にどっちでもいい」

「いやいやいやいやいや」

 

 すんっとテンションを真っ平らにした徐倫が真顔で言うものだから、俺は「根が深そうだな…」と思わず零さざるを得なかった。

 マジ顔だったぞアレ。おいたわしや承太郎。

 

「落ち着け承太郎、気をたしかにもて。まだ試合終了じゃないから、大丈夫だから」

「じょりーん……」

 

 大男がしゅんと小さくなっている様を見るのは楽しいが、あんまり放っておくのは哀れだ。

 

 後ろから「大丈夫か承太郎ォー?生きてっか?娘に嫌われたぐらいで泣くなよな」「ポルナレフ、とどめを刺すんじゃあない」「可愛い可愛いジョリーンちゃん、わしに顔を見せておくれ〜」と騒がしい声がする。

 ポルナレフ、花京院、ジョセフにアブドゥル、そしてイギーのスタクルメンバーだ。

 それに驚愕したのは奥さんだ。

 

 「まぁ、お客様!?それにおじい様まで!何の用意もしてないのに」と言ってあたふたと家の中を気にし始めるものだから、ポルナレフがきりっとした顔で玄関から一礼した。

 

「いやぁ、俺らは外で飲み会したら帰るからお気になさらず、マダム。というか事前に連絡ぐらい入れとけよな承太郎、奥さん困ってんじゃねーか」

「だから徐倫ちゃんに嫌われるんだと僕は思うね。間違いない」

「たまにしか顔を出さないワシの方が好かれとるって相当じゃぞ?貞夫君もほぼそんな感じだったと言えばそれまでじゃが」

「血筋というものですかね……」

「アギッ……フンッ」

 

 御年12歳の高齢犬、イギーが未だ健康そのものの歯でコーヒーガムを噛んでいる。

 歳を経てずいぶん丸くなったので人にガムをくっつけることは無くなったが、それでもまだまだ現役。

 精緻を極めるザ・フールの砂人形で潜入や情報収集を担当していたりする。

 既に孫もおり、孫たちの優雅な暮らしのためにSPW財団で働いている側面もあるらしい。

 

「まったく、好き放題いいやがって……私はもういく。徐倫、あまりわがままを言うな」

「!!徐倫もいく!メロンさんと遊べるならダディのこと許してもいいよ」

「メロンさん?」

「ハイエロファントグリーンのことじゃねーか?光るメロンみたいな見た目してるし」

「ハイエロファントに向かって失礼なやつだな君は。まぁ、僕のことに違いはないが」

 

 花京院に関しては、承太郎の様子を見にくると言う名目で時々徐倫と遊んでいるので、この2人の仲は良好だったりする。

 「夫もいないのに徐倫と3人で遊んで、不倫と疑われないかしら」と奥方は初めはかなり心配そうだった。

 そこに花京院が「大丈夫、そもそも承太郎は僕がくることも今何をしているかも見てますから」と逆に不安になるようなことを言って宥めていた過去もあったりする。

 未来視を言ってるならその通りなのだが、なんか妻の浮気を疑って家に監視カメラを仕掛ける夫みたいなドロドロの様相になっちまうからやめて欲しい。

 

「メロンさんはね、触手がすごい伸びて徐倫を抱っこしてくれるんだよ。それにとっても優しい!」

「ははは。嬉しいことを言ってくれるな。どうだい承太郎、僕にこの子を」

「やらん」

「食い気味じゃん?そんなに愛しいなら家にいてやれよな…まったく。DIOの残党が家に来るのが嫌なのはわかるが」

「うん?僕のところに残党が来たことは一度もないが」

「わしもじゃ」

「わたしもですね」

「あ、俺も俺も」

「実はな、聞いて驚け。承太郎が全部インターセプトしてる。そろそろ過労死すっぞ」

 

 花京院がハイエロファントの触手をいきりたたせて立ち上がった。

 

「はぁ!?!?水臭い通り越して肘鉄打ち込まなきゃいけないレベルの所業だぞそれは!?僕のことが信用ならないのか!?」

「蛇……テメェなんでバラした」

「おいおいおい、まじかよ…そんなん俺らで普通に撃退できるだろうが。そんな時間あんなら徐倫ちゃんといてやれよ」

 

 承太郎が目線を逸らした。

 まぁ、ポルナレフの場合両足を失う大怪我をするって分かってたから一週間もかけて根元から断ったわけだが。

 花京院も、内臓吹っ飛ばされて意識不明の重体になるはずだった。

 運命は……回避したと思ってもミミズのように這い出てくる。そういうものだ。

 

「ダディ、メロンさんを守ってくれたの?」

「………まぁ、な」

「なら許す。徐倫も寂しいけど、メロンさんが痛い思いをするなら我慢する」

「徐倫ちゃん、僕なら大丈夫だから。このダメ親父にもっとわがまま言っていいんだよ?」

「言われてるぞ承太郎」

「ノーコメントだ」

 

 徐倫を抱っこして、承太郎は白いロングコートをひるがえして入口へと向かう。

 途中に不安げにたたずむ奥さんのところで立ち止まり、ピクリとも動かない怜悧な無表情で奥さんに口を開く。

 

「今日はこいつらと飲みに行ってくる。徐倫も連れて行く」

「貴方、大丈夫?お友達と飲むなら徐倫は預かるわよ」

「いや。ウェイター付きの完全個室の店で飲むから心配いらない。それに、全員スタンド使いだからな。徐倫のスタンドの制御もみてやれる」

「……それなら」

 

 そう言いつつ、なおも心配そうな奥さん相手に、承太郎は僅かに載せるようなほほえみで応えた。

 

「いつも迷惑かけてすまない。愛している。」

「!……ええ。わたしもよ」

 

 俺は蛇胸をはちきれんばかりに膨らませて胸を張った。

 

「なんかオメー凄い誇らしげだけどどうしたよ、アルカナテラー」

「承太郎は俺が育てた」

「なにおう、わしの孫じゃぞ承太郎は。蛇なんぞにはくれてやらんわい!」

「ジョースターさん、そういう話じゃないです」

「アギギ……ハァ」

 

 イギー爺さんの呆れたようなため息を背景に、俺たちは夜の街へと繰り出していく。

 目指すは予約を入れていた財団の息のかかった高級中華だ。

 いつかのように机を囲んで、酒も入ってわいわいやるのはいくつ年経たって楽しいものだ。

 

 徐倫がマジシャンズレッドの羽をむしろうとしたり、シルバーチャリオッツのパージした鎧を代わりに装備してみたり。

 「ミニシルバーチャリオッツ、突撃だー!承太郎に攻撃!」「おらおらおらおら!」と徐倫がポルナレフと一緒になってシルバーチャリオッツごっこにいそしんでみたりもした。

 本物のシルバーチャリオッツが鎧を取られた素寒貧状態で体操座りをしていたので、俺が隣に座ってやったりした一幕もあった。

 

 花京院がエメラルドスプラッシュの結晶で作ったフィギュアを机の上に並べれば、イギーがどこからともなくザ・フールで同じサイズの砂フィギュアを作り、無言で張り合うフィギュア原型師大会が突如開催されたりもした。

 

 楽しい楽しい飲み会の夜は更けてゆく。

 破滅まであと10年。約束の時はすぐそこだ。

 

 けれど今ぐらいは安らぎの中、戦士たちの休息があっていいだろうと俺は思うのだ。

 




明日は6部の構想を練るためにお休みです。
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