一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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第6部 ストーンオーシャン
穏やかな家族団欒/静かなる導入


 

 あの男だけは止めた方がいい、という承太郎の言葉に、徐倫の反論は静かだった。

 「父さんのいう事を聞いてれば恥も失敗もないかもしれない。……けどそれはあたしの人生じゃない」

 

 そう言ってデートへと出かけていった娘の後姿を、承太郎は沈鬱な顔で見守っていた。

 

 

 などという事があった数日後。

 某所喫茶店。

 承太郎はポルナレフとともに崩した姿で席についていた。

 

「お前も過保護過ぎんだよ、承太郎。もう19歳なんだろ。そろそろ子離れしろよな」

 

 ポルナレフが呆れたようにパスタを丸めながら言った。

 承太郎は沈黙した後、言葉を絞り出した。

 

「…でもあの男だけはだめなんだ」

「どーして?」

「ひき逃げを起こした挙句まだ息のある被害者を沼に捨てる手伝いを徐倫にさせる」

「ブフゥーーーッ!?!?」

 

 ポルナレフは飲んでいたレモンスカッシュを全て吹き出した。

 承太郎の後ろからぬっと出てきた蛇が雑巾をくわえて机を拭いている。

 そして「わ、悪い」「あまりの衝撃の事実だからな、仕方ねーよ」と軽く会話する。

 

「マジか?マジなのか承太郎!?どうしてそんな超ド級の地雷を踏み当てるんだよ、徐倫は!」

「私が知るか、で、あげくすべての罪を徐倫に擦り付けるんだ」

「クソさ加減がたどり着くところまでたどり着いちまったじゃねーか。どうすんだよ」

「それは私が聞きたい。だが実際、この流れは特に強い運命の流れに乗っている出来事だ。変更するのは難しい」

 

 隣で用意されていたコーヒーをアルカナテラーがストローでチューチューとすすっている。

 何もないのにひとりでに減っていくアイスコーヒーに向かいの席の人が目を白黒させたようだ。

 ポルナレフは口直しにパスタを一口、口に掻き込んで言った。

 

「強い運命の流れって……それってもしかして前言ってたあれか?」

「ああ」

「あんまし覚えてねぇが」

「いやそこは覚えててくれよ。あ、あんま口出さないようにしてたのに口出しちまったじゃねーか」

 

 アルカナテラーがえへんと咳払いをした。

 

「『普通の未来』を庭の散水ホースから出る水の流れに例えるとする」

「どんな例えだそりゃ」

「聞け。その程度の水ならホースを曲げりゃ幾らでも流れを変えられるだろ?」

「まあな。じゃあ運命は?」

「用水路だな。アスファルトを破壊すりゃ強制的に流れを変えられるが、水があふれてとんでもねーことになる危険性もはらんでる」

「めんどくせーな。変えられはするがアフターケアが手間っつーことだろ?」

「そうそう。で、強い運命っつーのはナイアガラの滝だ。ダイナマイトで吹っ飛ばせなくもねぇが、川が氾濫して甚大な被害が出るかもな」

 

 その強い運命の流れが、徐倫の収監なのだという。

 納得がいかないような顔をして「わけわかんねー。なんでそこが運命になるんだよ」とポルナレフが頭を掻く。

 「大渦の一部だからな」と端的に承太郎が答えた。

 

「あー。なら、いっそのこと向かわせてみるのはどうだ?」

「なに?」

「あいつだってもう一人前のスタンド使いだ。大渦の調査ぐらいできるだろ」

「……しかし」

「実際問題、1から10まで承太郎に面倒を見てもらえる状況がいつまで続くかもわからねーんだし。箱入り娘もいいが、やっぱ千尋の谷を経験してこそのスタンド使いって奴だろ」

「……そう、だな」

「な、アルカナテラーもそう思うだろ?」

 

 ずい、と席から身を乗り出してポルナレフが言う。

 蛇はコーヒーを飲むのをやめて、未だ躊躇する承太郎へ向けてうんうんとうなずいた。

 

「なら、徐倫へ試しに頼んでみよう。断られたら別の方策を考える。いいな」

 

 

 

 という諸々があっての今日である。

 朝食を軽くつまむ徐倫を前に、承太郎は重々しく口を開いた。

 

「お前に頼みがある」

「なによ。あと私この後美容院行くからあんまり時間とれないわよ」

「いい。これからお前は冤罪で殺人の罪を負い、実刑判決を受けてグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所へ受刑者としていくことになるんだが」

「待って。なんて???」

「それに乗じて、刑務所内のスタンド使いの調査をお願いしたい」

「いや、その、ねえ、待ってくれない?強烈なパワーワードばっかで頭に内容がまったく入ってこないんだけど」

 

 徐倫は頭痛をこらえるように目元をもみほぐした。

 父である承太郎は基本的に話が早く、無駄が無いのはいいことなのだが。

 時々話が早すぎて置いていかれることがあるのだ。このように。

 

「なに、刑務所?なんであたしが?」

「罪状は殺人だ。実際は冤罪だが、弁護士に裏切られて実刑判決を喰らう」

「この世のクソを煮詰めたみたいな状況なんだけど。冤罪って、なんでそんなことになったのよ」

「罪を擦り付けた真犯人はお前の彼氏のロメオだ」

「嘘でしょロメオあのクソ野郎がぁ!!あたしに愛をささやいたのは噓だったってわけ!?!?」

「いや、愛していたのは本当だろう。単に保身がそれを上回っただけで」

「同じことだろうが!!あたしの純情を弄びやがって……というかクソ親父早く言えよそういうのは!」

「いや…ああ……すまなかった」

 

 事前に幾度も言った過去はどぶに捨て、承太郎は大人しく謝罪した。

 娘に逆らうなどとてもとても。

 

「それで?スタンド使いの調査はいいけどあたしの人生めちゃめちゃになる件、そこんとこは大丈夫なのよね?」

「ああ。調査終了後、SPW財団の働きかけで釈放、その後も財団にポストが与えられる手はずになっている」

「あたしの名誉が回復してなくない……?」

「そういうのは徐倫は気にしない……必要としないだろうと思ってな」

「それはそうだけど。初めから前科一犯のままって言われるのは複雑な気分だわ」

 

 なんとなくぼやいてみれば、承太郎はひどく辛く悲しそうな顔をした。

 余人から見れば単なる無表情だろうが、ここまで何年も一緒にいる娘の徐倫からすれば一目瞭然だ。

 ちょっとばかり悪い気がして、徐倫は父親が口を開く前に手をぴらぴらと顔の前で振って見せた。

 

「はいはい、いいわよ、分かった。でも被害者さんはそっちで助けてくれるのよね?」

「ああ。SPW財団の方で医療班を派遣予定だ。その後の十分な補償も計画している」

「ならいいわ。あーあ。あたしの麗しい青春がパァよ。全部父さんのせいだわ」

 

 すまない、と承太郎は言葉少なに謝った。

 徐倫は父の言葉を疑わない。彼の予言は本物だし、それにいつも悩んでいることを知っている。

 父がそういうからには、それが最善なのだろうと純粋に信じてもいた。……従うかどうかは別として。

 

 そこでうねうねとコーヒーと茶菓子の乗ったお盆を背で器用に持ってきたアルカナテラーが、徐倫と承太郎の前にそれぞれことりとコーヒーを置いた。

 挽きたてコーヒーの香り高い芳香が部屋に満ちる。

 

「よぉ、コーヒー淹れたぜ、徐倫に承太郎」

「ああ、助かる」

「ありがとテラー。あ、ってことは今晩のご飯テラーが作るの?」

「奥方は慰安旅行中だからな。俺が腕を振るって最高の日本食を作るぜ!具体的にはキスの天ぷらとお吸い物」

「やった、あたしテラーの日本食好きなのよね。毎回手もないのに凄い器用だなとは思うけど」

 

 家の家事は交代制だ。

 母が行うこともあれば、アルカナテラーが行うこともある。

 人間以上の膂力を持つアルカナテラーは本当に助かると以前母が漏らしていたのを徐倫は思い出した。

 なんでも、ベッドの下や冷蔵庫の向こう側の掃除が非常に楽なのだとか。

 

 そう言う徐倫も手の届かない高所や狭い場所の掃除をストーンフリーで受け持っていたりする。

 スタンド様様である。

 ちなみに、あまり家に帰らない承太郎も一応帰って来た時は家事を手伝うようで、なんかの自動装置のようなスピードで洗濯物をたたむ姿が印象深い。スタープラチナの無駄遣いといえなくもない。

 

「尾の包丁さばきだけで魚の小骨まで取れるようになるには長い年月を要したぜ……今なら精密動作性B行ける気がする」

「残念ながらこの間のSPW財団スタンド機能テストではC判定だったな、精密動作性」

「うっそだぁというか精密動作性上位陣が化け物なだけで俺はBにふさわしいはず!」

「私のストーンフリーもCよ。テラーとお揃いね」

「前言撤回。俺には身の程に合ったCがふさわしい。間違いない」

「相変わらず現金過ぎないか」

 

 穏やかな家族の午後は今日も過ぎる。

 徐倫は今後の困難にそっと想いを馳せ、己の両腕に力を入れなおした。

 




構想1ミリも決まってないけど0から無計画に描き始める
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