一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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『神父』という怪異

 

 取り立て人マリリン・マンソンを適当にぼこす今日この頃。

 自由時間を楽しむ徐倫達に突っかかってきた木っ端スタンド使いを軽くいなし、徐倫は廊下をため息をつきながら歩いていた。

 先ほど下したそのマリリン・マンソンなるスタンドは完全条件発動型のスタンドで、相手の手に乗りさえしなければ素手で殴りかかっても勝てる相手だったというわけで。

 術中にはまってからとなるとなかなか苦戦しただろうが、こちとら未来視でおなじみ蛇の目持ち。

 バレバレのちょっかいを拳で返事して、と対処していたらせっかくの自由時間が終わってしまった。

 

 つかつかと不機嫌そうに歩く徐倫に、後ろから声をかけるものが一人。

 

「やあ徐倫」

「ああ、エンポリオ。いたのね。お母さんの調子はどう?」

「F・Fがすっかり気に入って一日中撫でてるよ。そのおかげか体調もいいみたい」

「それは良かった。F・Fが撫でられ過ぎてしょげてない?」

「いや、なんか『不思議な満足感がある!』って言って仁王立ちしてたよ」

「うーん……犬っぽいプランクトンが誕生してそうでちょっと申し訳ない気がしてきたわ…」

 

 エンポリオは監獄生まれの男の子で、優秀なスタンド使いだ。

 産後の肥立ちが悪く、やせ細り立つこともままならない…そんな母のことをエンポリオは甲斐甲斐しく世話していた。

 

 今、世界各地で謎の意識喪失が相次いでいる。

 SPW財団はそれをスタンド・ホワイトスネイクによるDISC抜き取りによるものだと断定。

 現在厳戒態勢でスタンド使いを招集し、事の対処にあたっているらしい。

 

「またプッチ神父のところに行くの?」

 

 エンポリオが心配そうに徐倫を見上げた。

 

「ええ。私はどうしても神父が犯人とは思えないの。あの人はそんなことができる人じゃないわ」

「……気を付けてね。僕もおねぇちゃんが傷つくのは嫌だよ」

「分かってるわ、ありがとうエンポリオ」

 

 エンポリオの頭を軽く撫で、徐倫はプッチ神父の私室へと足を速めた。

 

 

 

 

 

「ねえ、プッチ神父。いる?」

「………ああ。入ってきなさい」

「お邪魔するわ。………って、ひどいじゃない!?何その顔色!?紫!?棺桶に片足突っ込んでるわよ!」

 

 ドアを開けて入ってすぐ目に飛び込んだのは、誰がどの角度から見ても「重病人?」と口走るであろう酷い顔色をしたプッチ神父が、よろよろと右手を上げる姿であった。

 普通に病院に突っ込まれるべき人間だ。今救急車を呼んでも許されるであろう惨状に、徐倫は急いで神父の元へ駆け寄った。

 

 徐倫はベッドの上から上体を起こして出迎える神父を無理やりベッドに戻して、持ってきたペットボトルの紅茶をコップに注いでサイドテーブルに置く。

 すまない、と弱弱しく神父が謝る。その声にも覇気がない。

 

「ねえ、本当に何があったの。教えてくれない?」

「……私は」

 

 神父は言いよどんで、げっそりと頬のこけた顔を片手で覆った。

 

「……SPW財団から連絡が来た」

「でしょうね。アメリカでも意識喪失の患者がどんどん増えてるって、私も知り合いから聞いてるわ。あなたの……その、ホワイトスネイクの仕業じゃないかって。」

「私も、どう説明したらいいのか分からない……。徐倫、お前には本当に迷惑をかける」

「いいのよ。もし違ってたなら違うって言えばいいの。何か事情があるってのなら聞くし、父さんにだって掛け合う。何でもいいから話してみて」

「……ありがとう」

 

 神父は目を伏せたまま、万感のこもった感謝を徐倫へと落とした。

 

「──数週間前から、私は夢を見るようになった」

「夢?どんな?」

「私が変異したホワイトスネイクの力を使い、世界を滅ぼす夢だ」

「な……!?」

 

 ぐるぐると朝と昼が繰り返される、生物が置いて行かれる夢。破滅の夢。

 それを本気で祝福する、自分の悪意滴る夢。

 プッチ神父は一瞬それを思い出し、吐き戻しそうになった。喉を胃酸が焼き、プッチ神父がわずかにむせる。

 

 プッチ神父の話を聞いて、徐倫は考え込んだようだった。

 

「生物を除いたすべてを早回しにする時間干渉系のスタンド能力かしら。凄まじいスピード、と言えるほどの倍率で時間を進めておきながら、発動制限もほとんど無いなんてとんでもない性能ね」

「どうやら、夢の中の私がDIOの考案した特別な儀式のようなものを行って発現した特殊なスタンドらしい」

 

 「DIO」の言葉に一瞬反射的に緊張する。

 SPW財団の人間たちは特にDIOという言葉を警戒する。その癖が知らず知らずのうちに移ってしまった徐倫は、自分の過剰反応に少しばかり苦笑した。

 

「メイド・イン・ヘブン」

「!」

 

 美しいとも恐ろしいとも形容できる、不思議な馬に似た姿のスタンドをプッチ神父は出現させた。

 彼のスタンドであるホワイトスネイクとどう見ても異なっている。

 徐倫は困惑した。

 

「夢の影響で変異した私のスタンドだ。出せてわずか数秒で、それに私の操作を頻繁に受け付けなくなる」

「操作を受け付けないって……勝手に自分のスタンドが動くってこと!?」

「そうだ。最近では私の限界を超えて動き回り、過度に体力を消耗して倒れる羽目になった」

 

 数秒ののち、ぐにゃりと溶けてそれは元のホワイトスネイクの姿へと戻った。

 それでもヴヴヴ、と砂嵐でも混ざったような奇妙なざらつきがホワイトスネイクを覆っている。

 まるでスタンド像自体が安定していないかのようだ。

 

「私は、これが『夢の中の私』による侵略だと受け取っている。理屈はわからない。だが、許されざる思想の下、その身勝手な悪意を私に代行させようとしているのだ」

 

 神父の表情は悲痛そのものであった。

 

「この悪魔に神のしもべである私が負けるわけにはいかないのだ、徐倫。私はなんとしてでもこの悪徳を否定せねばならない。」

 

 悪魔、とその夢の下手人をプッチ神父は呼んだ。

 自らの似姿としてみえているからこそ、それを突き放すつもりで悪魔と断定しているのだろう。

 

「一巡などという偽りの天国は、私が承太郎に見た真の天国にかけて、承太郎に救ってもらった恩義にかけて、否定せねばならないのだ」

「神父さん……」

「中途半端な変えられぬ未来のみを見て絶望の中生きるなど……許されない。未来とは己の全てをもって立ち向かうもの。全力を尽くすのに、あんな不確かな運命のみが与えられることはあってはならない…」

 

 血のにじむほど握りしめた拳がベッドを僅かに濡らす。

 徐倫は気遣うようにプッチ神父の背中をさすった。プッチ神父がよろよろと弱弱しく微笑む。

 

「ホワイトスネイクから隙を見て取り上げたDISCたちがそこの棚に入っている」

「!……こんなにDISCが、いやでも、ボヘミアンラプソディーがない…ねえプッチ神父、DISCはここにあるもので全部?」

「ああ。そこに無いものは私が取り返す前にホワイトスネイクが使ってしまったのだろう」

「使った?何に……いえ、それより今はこのDISCね」

「すまなかった、と伝えてくれ。謝って済むものでもないが。今私が斃れれば、この身の内に住まう悪魔が形を得てホワイトスネイクを乗っ取り、暴れ出すやもしれない」

「ええ。DISCはSPW財団を通じて早急に被害者たちの手に戻るよう手配させてもらうわ。でも神父さん…あなたも一緒にここを出て、SPW財団の支援の利いた病院で…」

 

 そこまで言いかけて、プッチ神父がそれを制した。

 

「いや。私はここを離れるわけにはいかない」

「どうして!」

「DIOの骨が私を見ている……私が今ここを動けば、裏切りとみて動き出すかもしれない」

 

 こつ、と。

 棚の上に飾ってある骨のようなものが、カタカタと同意するようにひとりでに動いたように見えた。

 

 徐倫は戦慄した。

 あまりにも異変が多岐にわたりすぎている。骨に、悪夢に、ひとりでに動くスタンドに。

 変異したあの馬のような姿のスタンドも気がかりだ。一体神父の身に何が起こっているのか、まるで分らない。

 アルカナテラーが言っていた「違う自分が残した怨念」とは何なのか。

 

「これは……怪異なの…?」

 

 それらを結ぶであろう唯一の解をつぶやくと同時に。

 ぞっとするほどねっとりとした悪意が、もっともドス黒い悪が、徐倫の頬を撫ぜた気がした。

 

 

『徐倫……もう一度お前の息の根を止めてやろう。そして、今度こそ世界は完全なる天国へとたどり着くのだ』

 




・空条宅にて
承太郎「徐倫が刑務所にぶち込まれたが予定調和なので問題ない」
旅行から帰ってきた妻「」(茫然自失)(宇宙猫)(イカれているのか…この状況で……)
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