一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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スポーツ・マックス戦

 

 エルメェスは跳ねっ返りだ。

 跳ねっ返りすぎてギャングの殺害現場を覗き見て、命を狙われて逃走がてら追手を返り討ちにしてしまい殺人の容疑で逮捕されるぐらいには。

 

「で、それであたしを刑務所送りにしてくれやがったスポーツ・マックスの野郎がこの刑務所にいるってわけ」

「正当防衛がききそうなものだけど……相手は銃を持ってたんでしょ?」

「どうせ裁判官がギャングと癒着してたんだろ。あたしの事情は一ミリだって加味してくれなかったさ」

「そうだな。完全に癒着してた。で、さらにギャングどもはお礼参りに刑務所の中でお前を殺す計画を立ててたりする」

「まじか。……まじかアルカナテラー」

「残念ながらマジなんだよなぁ」

 

 徐倫の部屋でごろごろ雑誌を読みながらコーラのペットボトルを転がしている今現在。

 吊るされたハンモックの上でエルメェスは大きなため息をついた。

 

 ボール遊びに目覚めたF・Fが「29、30、31!」と犬の姿で器用にサッカーボールをリフティングしている。

 「ボールで机の花瓶割らないでよ」と徐倫が注意すれば「分かってるって!」と微妙に危なそうなフラグなような生返事をした。

 とまぁ、完全に私室の様相である。

 

「あ、そういえばさぁ、徐倫。結局あの無重力のやつから抜き取ったDISCには何が書かれてたんだよ」

 

 エルメェスがくるくると指で円盤型を作る。

 徐倫は雑誌をパタリと閉じ、部屋の隅に放って枕に顔を埋めた。

 

「あれね。正直意味不明だったわ。まず、DISCに書き込まれてた命令は三つ。徐倫と『ウェザー・リポート』の命を狙え。『サヴェジ・ガーデン』を殺せ。『エンポリオ』の小僧の息の根を絶対に止めろ。誰よ、ウェザーって」

「エンポリオって、あの建物の幽霊の?なんでだよ」

「あの子、最近あたしのために屋敷の中に犬用ウォーターサーバー置いてくれたんだ。いい子だよ、あたしが絶対守る!」

 

 犬がきりっとした表情で姿勢を正した。

 とても賢そうに見える。

 

「え、ええ。頼んだわF・F」

「すげーイケメンなシェパードって感じだな。道理でエンポリオの母親に人気なわけだぜ」

「どうよ、あたしのボディは。歩いてると人間はみんなにこやかな顔するんだ。たまに蹴ったくろうとする馬鹿野郎がいるから噛んでやるんだけど」

 

 胸を張るジャーマンシェパードは実に愛らしいが、そういえばどうやって喋っているんだろうか、とどうでもいいことを考える徐倫である。

 

「あ、そうだ。テラーはウェザーって誰なのか知らない?」

 

 部屋の隅でデロっと打ち捨てられたしめ縄みたいになっていたアルカナテラーが顔だけ上げて見せた。

 

「知ってるぜ」

「ほんと!?」

「そんな人物は【この世界には】存在しない、ってことをな」

 

 徐倫は眉を顰めた。

 

「……どういうこと?ホワイトスネイクは存在しない人物を殺そうとしているの?」

「今回の敵は怪異だ、徐倫。怪異は一定のルールに従う」

 

 アルカナテラーはしゅるりととぐろを巻いた。

 

「今回の怪異……仮に『一巡に失敗した神父の怨念』としようか。『一巡に失敗した神父の怨念』は、基本的に失敗したことだけを覚えてるんだ」

「……えーと?」

「この場面で徐倫を殺すのに失敗した。だから今回は早めに殺す。エンポリオを殺すのに失敗した。絶対殺す。ここでウェザーを殺しておけば苦労しなかった。殺す」

「……」

「ようは未練だ。まともな理性があるわけじゃない。ただ未練を晴らそうとしているだけなんだ」

 

 側で聞いていたエルメェスがハンモックから身を乗り出した。

 

「ならボヘミアンラプソディーとやらが盗られたのは?盗むんなら、それは未練っつーか計画的な思考だろ」

「そっちはDIOの骨に唆されたんだろうな。たぶんDIOの子供達全てを狙っているはずだ」

「なんのために?」

「そりゃあ、肉体を完全に復活させ、再び世に舞い戻るため、だと思うぜ。悪の帝王、吸血鬼DIOなら」

 

 お、おお…とファンタジー小説の読み聞かせをされたような声をエルメェスは漏らした。

 それも当然だ。吸血鬼。それに加えて骨だけから復活、悪の帝王と来たのだから。

 徐倫だって、散々SPW財団から聞かされていなければクソ親父の戯言だと切って捨てている。

 

「それで……」

 

 言葉を続けようとした時、素早くアルカナテラーが徐倫を守る姿勢に入った。

 

「敵襲?」

「そうだぜ。俺の苦手な敵。見えないゾンビが来る」

 

 ミシ、と扉が軋んだ。何かが無理やりこちらに入ってこようとしているかのようだ。

 

「F・F!扉の前から離れて、アルカナテラーは攻撃準備!」

「おうよ!」

「徐倫、私も戦うぞ!」

 

 しかして。

 バリバリと扉をぶち壊して雪崩れ込んできた透明なゾンビの群れは、そのまま入り口に添えるように大口を開けていた蛇の腹の中へと直行した。

 

「おえーーッ!!腐ってやがる!!知ってたし別にエネルギー吸う分には問題ないけど!!腐ってやがる!!!」

「ごめんテラー、後で取り寄せたスイーツお詫びであげるから!」

「許した」

「いいのかよ。前から思ってたけど徐倫に甘すぎねーかこの蛇」

「徐倫!あたしもなんか美味い水欲しい!」

「そうね…高級ミネラルウォーター取り寄せてみようかしら」

 




・怪異、アルカナテラー
根本的には悪魔、サタン。
楽園で囁く蛇であり、終末に現れる赤い竜でもある。
氷に弱いのはサタンはコキュートスに封印されるから。
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