一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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DIOの骨

 薄暗い懲罰房を延々歩き続けて15分。

 徐倫達は地下牢内を一周し、上り路へと差し掛かろうとしていた。

 スタンド、ドラゴンズドリームが指し示す吉兆の方向を歩き歩いて、DIOの骨が無いかを探してゆく地道な作業だ。

 時折不埒な囚人にちょっかいをかけられながらも徐倫達は進んでいく。

 

 ちなみにだが、そのあとをついていく俺はもごもご口の中でヨーヨーマッを転がしていたりする。

 うーん、パチパチはじける新食感。ちょっと青臭いけどいい味してる。

 

 道中やってきて「だんな様」などと無防備に話しかけてきたので、蛇の判断で初手丸呑みが決まったのである。

 ここまでにいくつも食い歩いてきたため、既にアオダイショウのような体も真っ黒に染まっている。

 

「吉兆を追いかけてここまで来たが…はてさて」

 

 階段手前でふと、老人が立ち止まる。

 意味ありげな視線を蛇たる俺へと向け、スタンド使いたる老人は笑った。

 

「太歳星君よ。貴君はどう思われるかな?」

「俺、木星(歳星)の化身じゃなくてどちらかと言えば金星寄りなのよね」

「なるほど、西洋の絶対悪か。ひぇっひぇっ、やはりこちらに付いて正解じゃったわい」

 

 未だ怯えの残るドラゴンズドリームが「チョ、アンナノト口利イテンジャネーヨ!」と慌てている。

 まったく聡いスタンドである。

 徐倫の教育にも悪いので、隙を見てご老人は丸のみにしてやろうと画策しているのだが、それを察している節が見受けられる。

 

 徐倫が俺とケンゾーの会話に首をかしげて言った。

 

「テラーがどうしたの?」

「ようもまぁこんな陰の気の塊のようなものを背負って立っていられる…。若いもんは違うってことかの」

「まぁ、小さい時から父さんからテラーを預けられてたから。財団の人でもテラーを支え切れる人はなかなかいないって聞くわ」

「当然じゃ。ここまでの黒々とした禍い、背負おうものなら中身をぶちまけることになるじゃろうて」

 

 それはそう、と俺はうんうん頷いた。

 承太郎が高校生の時とは違い、今の俺はどんどん肥え太り、やろうと思えばすぐにでも竜体へと変じられるありさまだ。

 10年前「振り返ってはいけない小道」にいた分体とどっこいどっこいのサイズ感と言えばわかるだろうか。

 今の俺は小蛇の皮被っているだけの邪竜だ。

 その規模感はスタンドと名乗れるギリギリを滑り込みでセーフしていると言っていい。

 

 ……とはいえ、実は今の状態でも体の半分ほどを承太郎に置いてきていたあとだったりね。

 思わず膝をついたとはいえ、七つ頭の俺を支え切る承太郎の胆力はさすが、最強のスタンド使いといったところ。

 

 そもそもの話なのだが。

 俺はとあるエジプト人女性のスタンドとして転生した。

 その時点では何の変哲もない子蛇で、どちらかといえば運命を告げる神使の類としての側面が強かった。

 

 それが一転したのはDIOに俺の主人が殺害された時だ。

 俺は大渦を止めるものとして、DIOに敵対するものとして望まれ、呪われ、死後の怨念として一人歩き型スタンドへと生まれ変わった。

 

 大渦という天国の門を阻むもの、DIO(神)に敵対するもの。

 さもありなん。それはまさしくサタンであると。

 そんな意味付けをされてしまい、そのスタンド像は急激に肥大化したのであった。

 

 はてさて、現れた悪魔はエジプトにて破壊の限りを尽くし、名もなきスタンド使いに鎮圧された。

 誰もが息を呑み称賛するであろう偉業を知るものはだれもいない。

 相打ちに近い形で名もなきスタンド使いも力を失い血しぶきに斃れ、そこには多くの屍のみが残ったからだ。

 

 その時削り切られたエネルギーはすでに20年という年月をかけて補填済み。

 無力な子蛇だったころは遠い過去の話。今は天すらひと飲みにする、邪竜がここには在るのだ。

 

 方位陣の方のドラゴンズドリームを掲げ、ケンゾーが前を歩く。

 その方角はどんどんと変わり、今や地上を指し示している。

 

「これ、方位が動いているのは追ってるDIOの骨が動いているってことよね?」

「骨が自ら動くとは奇妙なことよな。じゃがわしのドラゴンズドリームに間違いはない。これはDIOとやらの骨が動いているか、もしくは誰ぞかが持って逃げておるか」

「……もし誰かが持っているとしたら、そいつは他人の水分か血かを抜く悪趣味なスタンド使いってことになるわね」

 

 かつかつと足音を響かせて歩く道中、牢の中で時折囚人がミイラのように干からびている姿が散見されるようになってきた。

 行きの時は元気に道行く徐倫に糞を投げつけようとしていたチンパンジー君たちだが、こうなってしまえば奇妙さ、不気味さの方が際立つ。

 というか牢獄内の秩序どうなってんだココ。

 

 地上階まで登れば、点々と血痕が奥の方へと続いている。

 思わず、徐倫とケンゾーはそちらを目で追っていく。

 

 俺は運命の妙に小さくため息をついていた。目で追わずともずっと前から分かっていた。この先に立つものが何であるか。

 

 外に続く道は太陽光がまぶしい。

 ぎらぎらとした昼の光の中、全ての血を吸い取られてミイラになった死体が散乱している。

 廊下を曲がり、徐倫は立ち止まった。

 ケンゾーは持ち前の勘か、曲がり角に体を隠したまま外に出ていく気配が無い。英断だ。

 

 そこには。

 緑色のところどころ木々の生えた、瘦せこけたゾンビのようなものが立っていた。

 

「そう警戒しないでくれ。私は君に危害は加えない」

 

 人を安心させるような危険な優しさに満ちた声でソレは言う。

 ボロボロの古木のような手を伸ばし、鋭い枝のごとき爪で刺し貫くように此方を指さす。

 

「私と友人になろう。きっと、お互いにとって実りのある関係になるはずだ」

「……なん、なの…?」

 

 言葉もない徐倫に代わり、俺はさっと徐倫の前に進み出た。

 

「冗談。徐倫をお前みたいな性悪吸血鬼に近付かせるわけねーだろうがよ。なぁ、DIO?」

「……あの時の蛇か。忌々しい。まったく厄介極まりない蛇だ、貴様は」

 

 古木の怪物……DIOが、その悍ましい穴だらけの顔をゆがませた。

 

「私が復活することぐらい、貴様ならば当然見ていたことだろう?なぜ阻止しなかった?」

「大きな運命の渦の一部だったからな。ここで無理やり変えたら何が起こるかわかんねーんだよ。つくづくしぶとい吸血鬼だぜ、お前」

「大きな渦……そうか。プッチか」

 

 DIOは哄笑してそのいびつな笑みを亀裂のように裂けさせた。

 冷や汗を流してケンゾーが息をひそめているのが感じ取れる。勘が良すぎだろ、この爺。

 

 緑色の赤ちゃんと発生原理は同じだろう。

 囚人の命と骨によって誕生した新たな命。

 違うのは、怪異たる別世界の神父の怨念に励起され、DIO本人の意識すらも目覚めてしまっているという事。

 怨念に方向性を与えたのもこの復活したDIOの思念によるものだろう。

 

「プッチに纏わりついていたあの邪気……それに喚起されて目覚めてみればだ。なんとまあいじらしい男だ、プッチ!死んでまで天国に固執し、私の骨に縋り付いて嘆くとは!」

 

 くくくく、とDIOが嗤う。 そして俺へと手を差し出した。

 

「まあ、そんな事どうでもいい。それよりも、私とともに来ないか、アルカナテラー。遺恨は忘れよう。私と貴様が組めば、われらは運命を制し、世界を制し、未来すらも制するだろう!」

「……」

「時期的に…承太郎の娘…といったところか、そこの小娘は。そんなもの捨てて、我らで天国に至るのだ!」

 

 さあ、とかつての因縁が俺へと手を差し伸べる。

 燦燦と降り注ぐ太陽光の中、吸血鬼であったはずの男が異形の姿で嗤っている。

 

 俺は徐倫の前に進み出た。

 一言。

 

 

「死にぞこない血吸い蛭風情が大きな口を利く。答えはNOだ。疾く失せよ、目障りだ」

「は、所詮は地を這うしか能のない蛇。私の崇高な目的など理解し得ないか」

 

決裂を表明し、場はピリリとした緊張に包まれた。

 




承太郎「徐倫…」(うろうろ…そわそわ…うろ…)
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