一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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逃走、脱走、脱出

 

 勢いよく啖呵は切ったものの、状況は最悪だ。

 

「徐倫、撤退だ」

 

 目の前に立つDIOを尻目に、俺はじり、と後退しながら徐倫を庇う位置を崩さずに言う。

 

 向こうはまだザ・ワールドを持っている。

 静止した時の世界に入門できる人間がいない以上、俺たちは残念ながら負け確だ。

 古木姿のDIOの身体能力がそう高くないのが救いではあるが。

 

 俺の消極的な姿勢にDIOが嘲笑した。

 

「ほう。吠えた割にはずいぶんと弱気だな、蛇よ」

「俺の防御を突破できないお前と、お前の世界を捉えられない俺じゃ千日手だ。俺は無意味なことはしないんでね」

「無意味か。それはどうかな」

 

 古木に生えたシワのような顔で、DIOがニヤニヤと悪辣な笑みを浮かべた。

 長い樹皮の爪を剥き出し、うっそりと笑いながら徐倫を指差す。

 

「そこの小娘を殺す程度なら───」

 

 全て言い終わる前に、俺は行動を起こしていた。

 ごくん、と。徐倫と、ついでにケンゾーを丸呑みにする。

 不意打ちだったからか、徐倫もケンゾーも「きゃああああああ!」「なんじゃああああ!?」と悲鳴をあげただけで無防備に飲み込まれた。

 

 DIOは面白そうな顔でザ・ワールドを使いもせずに俺の行動を見送った。

 ここまでは想定内。

 

 徐倫の防御力では容易くザ・ワールドの攻撃で腹をぶち抜かれてしまうし、時止めに対応する力もない。

 だから硬い鱗に守られた腹の中にて匿うのが俺にできる最善の守護。

 

 そしてそのまま龍に変じて跳躍。

 ようやく俺の逃亡が現実的であることを理解したのか、DIOの顔に緊張が走った。

 

「ッ!?ザ・ワールドォ!」

 

 一瞬の時の静止。

 おそらく俺の足を掴んでザ・ワールドのパワーにモノを言わせて引き摺り下ろそうとしたのだろう。

 だが残念。

 

 再び動き出した時の中で、DIOは自らの掌を見て苦虫を噛み潰したような顔をした。

 俺を掴んだザ・ワールドの掌が焼けたのだろう。

 潰えぬ熱を示すように僅かに煙が上がっている。

 

 終末、サタンたる赤い龍は硫黄の燃える火の中に投げ込まれ永久に燃え続けるのだという。

 それを示し、赤い竜たる俺の体は常に神の火が燃えているのだ。

 吸血鬼にはずいぶん染みることだろう。

 

 俺はダメ押しとばかりに腹の中のケンゾーからちょっとばかり精神エネルギーを頂戴して変化する。

 大きな頭蓋がひとつ、ふたつ、みっつ。

 流石は怪異、ドラゴンズドリーム。一日二日寝込む程のエネルギー搾取で三ツ頭まで至れるとは。

 三本の頭をぎゅるりと伸ばし、地表に向かって息吹を吹き下ろした。

 

「第一のラッパ、炎の息吹を味わえよ、DIO!」

 

 第一から第七まである終末のラッパ。

 その再現である地上の三分の一、木々の三分の一、すべての青草が焼ける炎の息吹だ。

 怪異としての性質が色濃くなったことで使用可能になったこれは、火のついた対象を何があろうと三分の一まで燃やし尽くす。

 それが青草であるのなら決して消えることなくすべてを燃やし尽くすまで止まらない。

 温度こそアヴドゥルのマジシャンズレッドに比べるべくもないが、それでも青草に該当する今のDIOには効果覿面だろう。

 

 DIOが「ガッ!?」と驚愕と痛みとを堪える声で炎から逃げゆくのが見える。

 俺はその隙を突き、思い切り高くまで飛翔した。

 

 必要なフラグは全て踏んだ。

 もうこの刑務所にいる必要はない。後にエルメェスらを迎えに行く手間はあるが……今は事態の報告のために承太郎の元へ行くのが先決か。

 

 三つの頭で同時にため息をつき、俺は今後について思案した。

 一番なってほしくないルートになってしまった、と。

 考えられたルートは三つ。原作神父の怨念に負け、プッチが乗っ取られるルート。怨念が独立して動き、天国へと至ろうとするルート。そして最後の一つがこれ、DIO復活のルートである。

 

 DIOが復活したことで、事態は怨念神父とDIOとの間で綱引きするようになった。

 神父はただ愚直に哀れに天国を目指そうとするが、DIOは違う。あれは自分が敷く支配が全てだ。

 生きている頃の神父ならまだしも、怨念神父とは根本的に相容れないのがDIOという吸血鬼である。

 

 可能性が拡散しすぎてうまく未来を読めない。

 俺は歯噛みし、終末の赤い竜として咆哮した。

 

 そのとき。

 あ、と。俺は眼下に見える人物の姿を見て取り、わずかな寄り道をした。

 

 巡回中の看守ミュッチャー・ミューラーだ。

 彼女のスタンドはジェイル・ハウス・ロック。物事を三つまでしか覚えられなくする、対個人特化の希少なスタンドだ。

 そして今回の件で徐倫を動きやすくするためSPW財団より送り込まれたスタンド使いでもある。

 

 俺はミューラーの前に降り立ち、切迫した声で切り出した。

 

「ミューラー!緊急事態だ!」

「っ!?お前は空条部門長のスタンド…いったい何があった!」

「DIOが復活した!第一級事態だ、SPW財団に今すぐ報告してくれ!」

「な……ッ、分かった!敷地内を封鎖し、財団に緊急連絡を入れる!」

「無理はするな、アレが外へ出るのは運命で決まっている!」

「……了解した!」

 

 そしてそのまま、グリーンドルフィンストリート刑務所から翼による飛翔で飛び立つ。

 向かうは空条承太郎の元。

 DIO対策に、そして今後狙われるであろうDIOの息子たちの護衛のために。

 

俺はぐんぐんとスピードを上げていった。

 




・赤い竜の一つ目の頭「血の雹と火」
血の混じった雹と火を吹き、地上の三分の一と木々の三分の一と、すべての青草を焼く。
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