一人歩き型スタンドなオリ主と承太郎   作:ラムセス_

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休みのはずだったけどつい書いちゃったから投稿する。
明日こそ休む。、


メイド・イン・ヘブン戦

 

 時は少し戻って。

 此方です!と先導するSPW財団職員に連れられて徐倫が財団所有のヘリで向かったのは、ここから30kmほど離れた町のカフェだった。

 

 貸し切りのカフェは明るい照明に反して静まり返り、奇妙な不気味さを醸し出している。

 既に周囲にもひとけは無く、どうやら財団による避難指示は済んだ後のようだ。

 

 そこのテラス席で一人、優雅に足を組んでコーヒーの香りを楽しむ男が一人。

 男──リキエルは財団職員を伴った徐倫の姿に気が付くと、ガタリと椅子を蹴っ飛ばしながら立ち上がった。

 

「徐倫!わざわざ危険な場所に来るなんて、何を考えているんだ…ッ!」

「あなたが心配だったのよリキエル君!あなたのスタンド、対怪異向きじゃないでしょう!」

「それはそうだが、君を危険に巻き込むなんて俺のプライドが許さない!」

 

 リキエルは胸を張った。このあたり、兄としてのプライドというものであるらしいことは徐倫も理解している。

 それでもまあ、引き返すほど徐倫だって押しが弱い女ではないのだが。

 

「昔から頑固なんだから。それで、状況は?」

「……」

 

 はあーーーと、リキエルは大きなため息をついた。

 

「今のところ襲撃は無い。スタンド使いの警護はついているが、これからどうなるのかは不明だ」

「警護って?」

 

 すっと進み出たのは徐倫も知る金髪の男であった。

 意志の強そうな立てた髪に、パリッとしたグレーのスーツ姿だ。

 整った姿勢から、ぱっと見どこかの俳優さんかなにかかといった印象を受ける。

 

「僕です。一応、警護として僕もついてるので力にはなれるかとは思うよ」

「貴方は……仗助さんのお友達の!」

 

 徐倫の頼れる親戚、東方仗助がよく一緒にいるスタンド使いだ。

 しかしとっさに名前が思い出せなくて、うーん、うーんと思い悩んでいると男は苦笑したようだった。

 

「康一です。広瀬康一。承太郎さんの娘の徐倫ちゃんだよね?昔杜王町であったことがあるんだけど、覚えてるかな?」

「うっすらと……だけど覚えてるわ。それで、康一さんが護衛ってことでいいのかしら」

「そうだよ。他のメンバーは活性化したDIO残党の対処に追われているらしいんだ。ちょっとばかり戦力不足だけど、そこは経験でカバーするって方針で」

「なるほど。康一さんなら怪異対策の経験もあるし、ちょうどいいわね」

 

 そこでにゅるりと徐倫の背後から蛇も這い出し、康一へと笑いかけた。

 

「よう、久しぶりだな康一。どうだ、財団職員の仕事は慣れたか?」

「さすがに6年も勤めてれば慣れるに決まってますよ。大学出た後すぐに就職したんですから」

「お…そうだったか。うーむ。時間感覚がアレになる老人症候群というやつだ。許せ」

「いえいえ。僕が若輩者だというのは本当ですから。別に気にしてなんていませんけどー?」

「この、言うようになったじゃないか。この分なら今回の任務も楽勝だな」

「やめてくださいよもう!徐倫ちゃん、あんまりテラーさんのいう事は真に受けないでね?」

 

 軽い打ち合わせののち、戦いやすい広いスペースへと移る。

 リキエルは少し離れたカフェの壁を背に下がる形の陣形だ。

 彼のスタンド、スカイ・ハイは未確認生物ロッズと交信する能力を持つ。

 しかしながらロッズはスピードこそ強烈なものの直接破壊力が無いため、今回の敵……本体無しのスタンドにはあまり効果が認められないのだ。

 

 己の無力さに歯噛みするリキエルを尻目に、康一は徐倫へと囁いた。

 

「相手は防御に特化したスタンド使いをやすやすと打倒するほどの超スピードを持つスタンド使いだ。まず……」

 

 その時。

 ず、と不穏な空気。怪異特有の背中のぞっとするような存在感を背に覚える。

 例えば幽霊にあった時、悪寒を覚えるような。そんな感覚。

 康一が周囲を油断なく見渡して叫んだ。

 

「まさか、来るのか!?」

「ある時空では世界をも滅ぼしたスタンド、メイド・イン・ヘブンの御出ましだ。構えろ康一、徐倫!」

 

 蛇の一声に応えるかのように、まるで空間を跳躍したような速さで空に現れるのは敵性スタンドにして怪異。

 一巡を招くもの。天国を僭称するもの。

 メイド・イン・ヘブンだ。

 

『じょょりーん…忌々しい……今度ここここそ息の根を止め止めてやろう……あの薄汚い小僧はどこだ…』

「だから誰よその小僧って!プッチ神父のふりをするな、この怨念ヤロー!」

『ああ、私のケイカクをぶち壊したあの小僧が憎い……DIO……わわわが友よ……』

「人の話を聞け!!!」

 

 徐倫が吠えて、そのまま糸を操作して飛ばす。

 メイド・イン・ヘブンからしたら呆れるほどに遅いのだろう。避けるそぶりさえ見られない。

 

 糸が届くその直前。あるいはメイド・イン・ヘブンが嘲笑をもって避けようとするその直前。

 ふいにメイド・イン・ヘブンのスタンド像が地に堕ちた。

 メシャ…とアスファルトをへこませながら苦悶にくぐもったうめき声をあげる。

 

「エコーズAct3 Freeze。加速しだす前に決められてよかったよ」

 

 右手をかざした状態で康一が笑う。

 エコーズAct3 Freeze。相手の重力を重くする、もしくは「言葉の重みを解らせる」能力である。

 

『おぉぉぉおおのれ、我が一巡を阻止する悪魔めェェェえ!』

「何が目的か知らないが、この人は傷つけさせない。観念するんだな」

 

 絶叫する怨念と化した神父に、康一は確固たる意志を突き付けるように叫んだ。

 みしりと何かがきしむ音。

 康一がぴくっと眉を顰めた。メイド・イン・ヘブンの不審な動きに気づいたのだ。

 

『C―MOONよ。重力を反転せせせよ』

「っ!まさか同系統のスタンドなのか!?」

 

 再び軽やかに空へと浮き上がるC-MOONが、不意にその倍化された重力のままに猛烈なスピードで康一へと突進する。

 Act3Freezeを解除すべきか、いや解除すればあの瞬間移動のごとき超スピードが…。

 迷いは一瞬だった。

 

「う、エコーズ!」

 

 エコーズに押し出される形でギリギリで突進を避けるも、C-MOONが振りかざした拳の方は避けきれなかった。

 重い一撃がエコーズの肩を吹っ飛ばす。

 

「がぁああっ!!」

「康一さん!!」

 

 エコーズの重力倍化が途切れ、自由になったC-MOONが再びべりべりと裂けるように変形していく。

 メイドインヘブンになろうとしているのだ。

 

「っさせるかぁ!」

「徐倫、深追いするな!」

 

 蛇の言葉に構わず徐倫は駆けだした。

 上空へ放った糸を編んで織って四肢を戒め首を絞める形へと成形する。

 メイドインヘブンはその温度のない顔で何の言葉も発さずに徐倫を見た。

 そしてその超スピードで糸という糸をぶち破ろうとする。

 

 しかし。

 ぐ、と加速しようとしてから、メイド・イン・ヘブンは首を傾げた。

 ちっとも速度が出ない。糸から逃れられない。

 

 いつの間にか立ち上がった康一が、ヨロヨロと砕かれた肩を押さえながら左手で指さしていた。

 

「しっぽ文字、『のろのろ』。さっき一撃喰らわされた時に書かせてもらったよ。速度が売りなら、その売りをつぶせばいい。そうだろ?」

 

 そう言って不敵に笑う姿の心強さよ。

 おのれ、おのれと幽鬼のように身を捩り、メイド・イン・ヘブンは顔を歪めた。

 そしてくいっと何かを手繰り寄せるような仕草。

 

「う、がぁ……ッ!」

「な……プッチ神父!どうしてこんなところに!」

 

 何かに操られるように顔面蒼白のプッチ神父がよろよろと建物の陰から飛び出てきて、そのまま地面へと倒れ込む。

 立つこともままならないようだ。そのまま地面で苦しそうに魘されている。

 ストーンフリーによる糸でぐるぐる巻きにされているのをものともせず、メイドインヘブンはプッチ神父の真上に空気をすべるようにゆっくりと移動した。

 

『ううう動くな』

 

 蹄をプッチ神父の頭に添え、簡潔に怨念はそう言った。

 

「なんてこと、自分の本体を人質に取るなんて!」

「徐倫ちゃん、あれが怪異の本体!?でもどうして…何が狙いだ!」

『───私は肉体の軛より解き放たれ、天国へと至る。見るがいい承太郎の娘』

 

 膂力で勝るメイドインヘブン相手では徐倫の糸の拘束もさしたる意味を持たない。

 徐倫の身体を引きずるように足を振り上げ、メイドインヘブンは無情にプッチ神父の頭を踏み砕こうと足を振り上げる。

 

 ふぅと大きく息をつき、徐倫は気合を入れなおして神経を研ぎ澄ませた。

 これまで黙ったままだったリキエルも、たまらず叫んだ。

 

「くそ、これ以上はしっぽ文字も持たない!」

「徐倫、逃げるぞ、あの神父がやられている間に……徐倫?」

 

「いいわ、やってやろうじゃないの」

 

 繋がったまま千切れかかった糸に力を籠める。

 この糸は徐倫のスタンドだ。

 

「アルカナテラーは私のスタンド。私のスタンドはアヴドゥルさんの炎にだって負けないぐらいの硬さと強さを持ってる」

 

 アルカナテラーは徐倫のスタンドだ。

 つまりは。つまりはだ。

 

「子供のころから常々思ってたのよ。ストーンフリーだって私のスタンドなんだから、硬いはずよね!」

 

 鉛筆をぼきっと折るように、できて当然と思う事。それこそがスタンドの神髄。

 黒く鋼のごとき硬度を「思い描く通りに」手に入れた徐倫は、それをギッと引き寄せて挑戦的に笑った。

 

「あんたの身体、そのままバラバラにしてあげるわ!怨念!」

 





蛇「そのりくつはおかしい」
徐倫「(満面のどや顔)」
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