「夜間については問題無し、提督の本日の予定ですが、この後町の商工会との打ち合わせの為昼過ぎ迄不在となります、同行は山城さんとなっています、以上」
夜勤筆頭秘書官の霧島が、日勤筆頭秘書官の妙高に引き継ぎをおこなっていた、
「夜間については問題無し、提督の本日の予定、この後町の商工会との打ち合わせの為昼過ぎ迄不在、同行は山城さん、申し受けしました」
妙高が申し送りを復唱すると、大淀が追加事項を伝達した
「尚、護衛艦娘インターンとして矢矧さんも同行します」
そう、僕が公務で外出する際は扶桑か山城が護衛艦娘兼秘書官として同行するのだ、そしてその護衛艦娘に新たに矢矧が加わる事になった。
「僕からは特に無し、じゃあ今日も怪我や事故の無いように」
「了解!」
夜勤組が執務室からお疲れ様といって出でいった。
「じゃあ大淀、行ってくる、何かあったらこれに宜しく…山城、矢矧行くよ」
僕はスマホを手に持つと、山城と矢矧を連れて打ち合わせ場所へと出かけることにした。
「場所は町の商工会議所、運転は矢矧さんね」
「はい」
矢矧が大淀から、車の鍵を借りる為に必要書類に記載をしていた、
「書類に不備は無いようですね」
大淀が書類を確認すると、矢矧に鍵を渡した。
「提督、どうぞ」
矢矧が車を正面玄関に廻すと、山城が後部座席のドアを開けてくれた。
「矢矧さん、出して」
山城が助手席に乗り込むと、矢矧に車を出すように合図した。
「提督到着しました」
矢矧が商工会議所の駐車場に車を停めた。
「じゃあ行こうか」
僕達は商工会議所に入っていった。
「今日は宜しくお願いします」
応接室に案内されると、室内にいた3名の男女がソファから立ち上がり僕に挨拶をしてきた。
「初めまして、鎮守府提督の近松翔といいます」
「役場通り商店会会長の小山内と申します」
まずはじめ年配の男性が名乗った。
「海岸通り商店会会長の中尾と申します」
隣の女性が次に挨拶をしてきた。
「町長の湊と申します」
恐らくは四十代位の男性が最後に挨拶をしてきた。
「本日はお忙しい中お越し頂き有り難うございます」
町長が僕にテンプレ的に挨拶を再度した。
「提督にお伺いしたい事があります、鎮守府での日用品などの仕入れはどのようにするおつもりですか…其の申し上げにくいのですが前任は…その」
町長の言いたいことは何と無く理解出来た。
「賄賂を要求していた…という事ですね」
「はい」
やはりか…葛はどこまで行ってもクズだった。
「私が考えているのは、週毎に納入業者を替えるというやり方を考えています」
「一社だけとかではなくてですか?」
「はい、町にある総ての青果、精肉、鮮魚、文具、家電の個人店から交代制で納入してもらおうと考えています」
僕の考えを話した、
「提督のお考えだと確かに個人店は助かりますが…大手スーパーがどう出るか」
商店会会長の危惧することも理解できるがそこは事前に話をつけてあった、
「大手スーパーには週初め早朝を依頼しております」
「成る程、個人店では対応しきれない週初めの納入をそちらに依頼してですね」
「はい、大手からはそれならばと回答はもらっております」
その後も配送の手筈や支払い等の話を煮詰めるとお昼前の早い時間に打ち合わせは終わった。
「それでは我々はこれで失礼します」
僕達は商工会議所をあとにした。
「少し早いけど、何処かで食べて帰ろうか」
僕はそう言うと、
「矢矧、そこのお寿司屋さんに」
「了解です」
廻らないお寿司屋さんに入ることにした。
「何にしようかなと…」
僕はお品書きを見ていた。
「私と矢矧は海鮮丼にしますけど、提督は?」
「じゃあ僕もそれで、海鮮丼3つお願いします」
「海鮮丼3つ、あいよ」
店主の威勢の良い声が響いた。
「ヘイ、海鮮丼3つお待ち」
僕達の前にこれでもかと山盛りの海鮮丼が出された。
「雲丹と蟹…」
海鮮丼のてっぺんに鎮座する雲丹とその横に丸々脚二本分の蟹を隣に座る山城に相談することにした。
「山城、お願いがある…雲丹と蟹お願い」
「いいわよ」
そう言うと蟹を矢矧に雲丹は自分の器に移してくれた。
「ごめん、助かる…蟹と雲丹駄目なんだよね」
僕は蟹と雲丹が駄目なのだ。
「提督…好き嫌いはいけません、と言いたいですけどこれなら喜んで」
山城が満面の笑みで雲丹を引き取っていった。
「服装違うようだが、嬢ちゃん艦娘かい?」
店主が山城に声を掛けた、
「ええそうです、制服については出撃任務以外はこれですけど」
「この男が提督?」
「提督ですけど」
「確かこの辺の鎮守府っていったら…海辺のクズ野郎の所かっ…おかしいな彼奴は醜いデブだった筈、こんな爽やかな若者ではなかった…筈だが…」
「そのクズ野郎の事は知りませんけど、今の提督はこの方ですよ」
山城が店主に説明していた
「そうか、あのクズ野郎は死刑か」
店主の表情が少し緩んだ。
「そうかそうか、この海鮮丼はうちの自慢の品だ食べてくれ」
そう言うと、店主は山城からの説明を理解したのかしきりに頷いていた。
「雲丹、こんなに甘くて美味しいのもが嫌いなんて、提督もったいないです」
矢萩が満面の笑みを浮かべて海鮮丼を食べていた、
僕は大淀に『昼食べてないなら大淀と秘書官達の分差し入れ買って帰るけど』とメールを打つと、直ぐに返信が来た、『待ってます!』と。
「店主、持ち帰りは出来る?出来るなら海鮮丼を持ち帰りで10人前頼める」
「あいよ、器は夕方鎮守府に回収に伺うから」
そう言うと店主が持ち帰り用の海鮮丼を10人前を作り出した。
僕達はそんな店主の様子を見ながら海鮮丼を平らげた。
「提督、つきました」
帰りも矢矧の運転で鎮守府へと戻って来た。
「山城、確か多目的ホールのギャレーに配膳用のカートがあったはずだから、持ってきてもらえる」
「了解しました」
山城が配膳用のカートを探しに行った。
「提督ありました」
山城が配膳用のカートを持って帰ってきたので、それに差し入れ用の海鮮丼を乗せると、僕達は執務室へと向かった。
「大淀、戻ったよ…これ差し入れね」
机の上に出された海鮮丼を見るや大淀が…うん君も乙女なのだからね、涎はやめようよ。
本日の筆頭秘書官である妙高が配下の艦娘に配膳し始めた。
「うぉ、うまそー」
天龍ちょろいな…チョロ天…。
なんて事を考えていたら、
「提督、何か天龍ちゃんの事考えていたかしらぁ~」
龍田、君はニュータイプか!
等と思っているうちに、みんなが美味しそうに食べ始めた。
「提督、買って帰って良かったですね」
矢矧が微笑んでいた、彼女もあんな事が有ったが今では馴染んでくれたようだ。