「さて、知ってること全部吐いてもらうよ!」
「だからっつってこんなことまでする必要ねーだろ!」
あの初戦からおよそ1時間ほど経過して、竜希達は竜ヶ丘自然史博物館の第二会議室に来ていた。
ここは本来、様々な来客が会議などをする場所であるが、誰も使っておらず、事実上の空き部屋となっていた。
その部屋の中の机の上に、レックスが大きな鳥籠の中に閉じ込められていた。
恐らくこれが、愛瑠なりの事情聴取なんだろう。
「ここまでしなきゃ逃げ出すでしょ!なんなら、私の動画のネタになってもらう?」
「ヒィッ!?それだけは勘弁してくれ!」
「愛瑠、今動画って言った?」
竜希は、愛瑠が言った『動画』という言葉が引っ掛かり、聞いてみる。
元から愛瑠はミーハーで行動力の塊であったため、やっているだろうなと竜希の中では薄々思っていた。
「そう。でも1年ほど前からだけどね」
そう言うと、愛瑠はリュックサックからタブレット端末を取り出し、動画を竜希に見せた。
『どうもー!考生物系DoTuberのアイちゃんでーす!』
動画の中の愛瑠はいつものテンションと変わらずに、絵などを交えながら恐竜や古代生物の事を説明している。
てっきりいつものノリで変なことをやっているのかと思っていた竜希は、少し安心した。
ちゃんと常識はあるようでよかった、と。
「ただ、ちょっと色々問題があって……」
「問題?」
「再生数が全然伸びなくてぇ~……」
動画の再生数を見ると、75回となっていた。
それもそのはず、シークバーを見ると、45分となっていた。
「愛瑠、これ生配信?」
「いや、動画だけど?」
「これだけ長いとそりゃ再生数もへったくれもなくなるだろう?」
「そりゃそうだけど、タツ兄だって多くの人に古生物学を知ってもらいたいでしょ?」
「それはそう。でもこれだけ長いと、見ている人も飽きられるぞ?」
「そっかぁ、やっぱり編集ソフト買うかぁ……」
愛瑠はそういうとがっくりと項垂れた。
古生物に興味を持ってもらおうと始めた動画投稿だが、古生物愛に振っていたため、そこまで考える余裕がなかったのだ。
「いや、始めるなら準備しておけよな?」
「か、買おうとは思っていたけど、如何せんそこまで手が回らなかったというかなんというか……」
竜希は計画性のない妹の言い訳にも思えない言い訳に頭を抱えた。
全く、どうしてそこまで考えられないんだ!と
第2話[鋼の竜の背に乗って]
ヴァグレードの拠点である洞窟の中、アブラムシの怪人が戻ってくる。
「いやぁ、やられましたよ」
「やられた?何がだ、アリマキ」
「私たち同様に、ヤツも蘇っていたのですよ。竜の戦士が」
アブラムシの怪人こと、アリマキの言葉に辺りは騒然となった。
一族にとっての最大の敵である竜の戦士復活は、考えられていたが最悪の事態でもあるからだ。
「まっさか、ウチらを焚き付けるためにそんなこと言ったとかじゃないの?このアリマキのことだし」
「ほほう、私の言っている言葉が信用ならないとでも?キィト」
「おい、二人ともやめろ。ローグスト様の御前だぞ」
「……チッ、これだからグレイみたいな誇り高い武人様はイヤ」
アリマキと蚊の女怪人のキィトが一触即発の雰囲気となってしまう。
彼は事実を言ったまでだが、己しか信じない我儘な性格のキィトにとって、胡散臭いアリマキから出た情報は出まかせとしか思えないのだ。
その雰囲気を、ザリガニの怪人グレイが止めにかかる。
このグレイという怪人は、ローグストの右腕ともいえる存在であり、ローグストの傍に仕えることを誇りとしており、キィトが嫌うほどの生真面目な性格なのだ。
「アリマキの言う話が本当ならば、オレが早急に片しに行かねば……」
「まぁ待ちなさい。早々に潰しては、面白みがなくなりますから」
「レイドエッグか。なぜこれを持たねばならない?」
ローグストの邪魔者であるレクシードを一刻も早く排除したい考えであるグレイは洞窟から去ろうとする。
しかしアリマキに引き留められ、レイドエッグを投げ渡される。
「まずこの世を知らなければならないでしょう?そういうことです」
やはりコイツの考えていることは、億千年眠っても分からないものだ。
レイドエッグを渡されたグレイはそう思い、洞窟を後にする。
億千年眠っていた彼には、外の太陽はあまりにも眩しかった。
■■■
「というか、なんでタツ兄は帰国なんてしたの?ニュージーランドでの発掘で忙しかったのに」
「あれ?福井教授からなんか言われてなかったの?」
「言われてたよ。3か月ほど前から日本で恐竜時代と思われる遺跡が発見されて、それで人手が足りないからって」
ここ数か月前から、日本で頻繁に遺跡の発見事例が多発という異常すぎる事態に、海外からも日本人の考古学者や古生物学者を招集していた。
竜希も、その件で呼ばれていたのだ。
「あー、それもあるんだけどな」
「それもある?」
「ほら、俺がよく『竜の戦士』の夢を見るって言ってたじゃん?」
「うーん、記憶にあるようなないような……?」
「ま、覚えてなくてもいいんだけど……。それが、本当にいたんだって話」
「へぇ~……って、えぇぇぇぇ!?」
「うるせぇっ!?」
窓ガラスが割れんほどの愛瑠の叫びが部屋中に響き渡る。
あまりのうるささに、竜希とレックスも耳を塞いだ。
この瞬間、竜希もコレがまた日常になるのだろうなと悟った。
「アレって本当の話だったの?学校の友達に言ったら盛大に笑われたあの竜の戦士の話!」
「お前っ、地味に昔の事掘り起こすなっての!ほら、証拠!」
しれっと掘り返されたくない過去を暴露され、少し傷心気味の竜希は、車の中で福井教授に渡された紙の資料を手渡した。
愛瑠はそれを手に取り読み始める。
「ふむふむ……。って、この竜の戦士の姿、さっきタツ兄が変身したレクシードってヤツじゃ……?」
「なにぃっ!?」
ほぼ置いてけぼりにされていたレックスはレクシードという単語を耳にした瞬間、持ち前のバカヂカラで鳥籠の扉を蹴飛ばして飛び出した。
その光景を見て愛瑠はマジで?という顔をした。恐らく、これなら逃げまいという考えだったからだろう。
「一言一句全て間違いねぇ。ヴァグレードの侵攻も、レクシード様の戦い全てもこれに刻まれていやがる……」
「レックス、とりあえず質問。あの時の戦いから、ゾーアだのヴァグレードだの専門用語が多すぎて頭がパンクしそうになってるんだけど」
「それ思った。いくら何でも説明しないのは分が悪いって」
「ぐぎぎ……。まぁ、竜の血を引くニンゲンがいるなら仕方ねぇな……」
レックスは少し不服気味に、レクシード、そしてヴァグレードの事について話し始めた。
■■■
今から億年も昔の話になる。
とある部族がいた。
名をヴァグレード。人を超える蟲の力を手に入れた奴らはその力を使い、時にはゾーアと呼ばれる魔物を傀儡として地球にいる生命体を狩りつくし、支配を尽くしていた。
でも、それを黙って見過ごすことができないニンゲン達だっていた。
恐竜と共に暮らしていた民族であるレクシア族がその筆頭格だ。
レクシア族は、恐竜たちの力を鎧として纏う戦士・レクシードを創り出し、ヴァグレードに反逆した。
その苛烈な戦いを支えるべく、
戦いの末に、ヴァグレードの長であるローグストを封印することに成功した。
だが、封印される前にヤツは言った。
『我は不滅。故に、時を経て蘇る』
その言葉を受けた先代のレクシード様は、『ヴァグレードの封印が解かれたら、俺の血を引く者を見つけ出せ』というお達しを告げて、オレを封じた。
さっきのゾーアを見るに、ローグストの配下たちも封印を解かれていると睨んでも間違いなさそうだがな……。
■■■
「成程、此れが今のニンゲンが築き上げた文明というモノか」
灰色のロングコートを羽織った青年の姿に擬態したグレイがアーケードを練り歩く。
現代人の服装、建物、看板、古代人である彼からすればすべてが真新しいものの塊に見えた。
そんな中、グレイはふと、アーケードの路地裏に足を踏み入れる。
薄暗く、どことなくじめじめしている道を歩いていく。
「文明に悪気などはないが、遊ばせてもらおうぞ」
グレイはそう言うと、先ほどアリマキから手渡されたレイドエッグを地面に落とした。
割れたレイドエッグが肉体を形成していき、蟷螂を模したマンティスゾーアとなる。
「命は言わん。好きにやれ」
「承知」
グレイとマンティスゾーアは短い会話を交わし、マンティスゾーアはアーケードの方向へと駆け出す。
そこから10秒も経たぬうちに、グレイの耳に人間たちの悲鳴が伝わっていった。
■■■
「……っていうのが、知っている限りでの話だ」
「なんて言うか、漫画みたいな話なんだけど、それが現実なんだよな……?」
「あぁ、オレが言ったすべて現実だと思え」
レックスによる太古の話を聞かされた竜希と愛瑠は信じられない。という表情を浮かべた。
自分たちが生きているこの時代より遥か昔に、そんな戦いが起こっていたのか、と。
だが、先ほどのゾーア、そして竜希の変身したレクシードが事実であるということが物語っていたのは言うまでもない。
その戦士の血が、俺に流れているのか……。
竜希は複雑な表情を浮かべた。
「だが、竜の血を引くオマエがいれば何ら問題……」
その時だった、レックスの体に悪寒が走った。
彼の体には、ゾーアの反応を感知する器官が備わっているのだ。
「レックス?」
「ゾーアがどっかに現れやがった!ニンゲン、ついてこい!」
「って、待てよレックス!」
レックスは一目散で会議室を抜け出した。
竜希と愛瑠も遅れてレックスを追いかける。
■■■
レックスを追いかけた竜希たちが目にしたのは、惨劇だった。
人でにぎわっていたはずのアーケードは、今や炎と瓦礫の場所と化していた。
こんなことをやるのは間違いない。
炎の向こうには、その首謀者であるマンティスゾーアの姿があった。
だがこの光景を、未だに竜希は信じられずにいた。
これは夢なのかもしれない。
はたまたゲームの世界なのかもしれないと。
果たして、本当に俺が竜の戦士の血を引く者なのかも分からない。
それでも、俺は……。
そう思い、竜希は一歩足を踏み出した。
「俺、やるよ」
「タツ兄!?」
「正直言うとさ、今でもレックスの話とか、この状況とか、全く分かんないよ。だけどこれだけは分かってる。この状況を覆せるのが俺だけだっていうなら、『やるっきゃないなら、やるしかない』から!」
「へっ、言うじゃねぇかニンゲン。ぶちかましてこい!」
「あぁ!」
戦士として戦う決意を固めた竜希は、センチゾーアを見据えてレクシードライバーを腰に装着した。
その瞳は迷いを振り切った目をしている。
〈ステゴエッグ!セットアップ!〉
「変身!」
〈ヴァイティン・アップ!〉
〈紺碧のソードマスター!ステゴアームド!〉
竜希はレクシードに変身。ステゴカリバーを手に、駆け出していく。
目標は無論、マンティスゾーアだ。
だがマンティスゾーアは、小さな卵をレクシードの前にばら撒いた。
割れた破片から、ゴッカヴイという黒い体の戦闘兵の肉体が現れる。
「戦闘兵のゴッカヴイか。そんなの蹴散らしちまえ!」
「う~わ。あの見た目ってどう見てもアレじゃん。台所とかに湧く……」
レックスの激励と、愛瑠の見たままのリアクションを背に受けて、レクシードはゴッカヴイにステゴカリバーを振った。
一体、また一体とゴッカヴイを斬り伏せていく。
斬られたゴッカヴイの肉体は、破片へと還っていった。
「ほう、アレが現世の竜の戦士か、面白い!」
現代に蘇ったレクシードによりどんどん倒されていくゴッカヴイを見て、マンティスゾーアは飛び出す。
ゴッカヴイの大軍を撃破したレクシードに右腕と同化した鎌を振り下ろした。
レクシードはそれを間一髪で避け、刃をマンティスゾーアに向ける。
「レックスの話が合っていればゾーアって怪人か。目的はなんだ!?」
「目的?そんなの決まってる!力による支配。それだけだ!」
マンティスゾーアはそんな言葉を言うと、再びレクシードに襲い掛かる。
レクシードはその猛攻を避けてはステゴカリバーで攻撃を繰り出していた。
しかし、その攻撃もマンティスゾーアの前に阻まれ、重たい一撃を受けてレクシードは地面を転がる。
「力は……。支配のためにあるものじゃない!」
「む?」
「苦しんでいる人達を救い、守るためのにあるもの、それが『力』だ!」
レクシードは力を振り絞り立ち上がる。
命を弄び、遊び半分で支配するというヴァグレードのやり方は許せない。
それを止められるのが俺だというのなら、やってやるだけだ!
「俺はこの力でお前たちの野望を絶対に阻止してみせる!今、この瞬間から俺は、悪を砕く正義の牙・『仮面ライダーレクシード』だ!」
「へっ、やっぱり竜の血を引く者だ。覚悟も何もかもケタ違いだな!」
仮面ライダーレクシードはそう高らかに宣言した。
愛瑠と共にそれを見ていたレックスは、にっと微笑み、竜希の覚悟を受け止める。
レクシードは再び、マンティスゾーアにステゴカリバーを振るった。
マンティスゾーアはそれを回避しようとするが、レクシードの決意を込めた一撃の連続は避けようにも避けられない。
なんだ、この力は?これが、蘇った竜の戦士の力だというのか!?
マンティスゾーアは狼狽した。
「おのれ……。ならば!」
マンティスゾーアの眼が赤黒く光り始めると、その身体はどんどん肥大化していき。巨大な蟷螂の肉体となった。
前腕の鎌でレクシードを弾き飛ばし、レクシードの体は宙を舞い、地面を転がる。
その隙に巨大化したマンティスゾーアは逃げ出そうとしていた。
「なりやがったか、
「超越体!?」
「自分の生命エネルギーを引き換えに強大な力を引き起こす禁断の力ってヤツだ」
「もう何でもありじゃん!?」
「でも今ある力じゃ逃げられるって……!」
巨大化したゾーア相手に唯一の戦力であるステゴのみでは圧倒的に不利。
万事休すか。
その時、地面を突き破って1匹の青と赤のボディの機械の恐竜がレクシードの前に現れる。
姿はヴェロキラプトルのそれに近い。
それと同時に、竜希の脳内にあるビジョンが浮かんでいた。
バイクに変形する恐竜。
そう、あの時福井からもらった資料にあったそれと同じ姿形だった。
「つまり、これを使えって事か!」
レクシードはその恐竜に近寄った。
同時にその恐竜は機械的な鳴き声を上げ、その身体をバイクのような形状に変形させた。
「行くぞ、グランザウラー!」
レクシードはそう名付けたバイクに跨り、スロットルを捻る。
グランザウラーは咆哮のようなエンジン音を上げ、勢いよく発進していった。
■■■
「くっ……。やはり竜の戦士。時を重ねていようが強さは変わらぬか……!」
苦々しい表情を浮かべて、超越体となったマンティスゾーアは、道行く車などを跳ね飛ばしながら市街地を駆け抜けていた。
その時、マンティスゾーアの足が止まる。
背後から近づく咆哮のようなエンジン音に気づいたのだ。
「逃がすかぁぁぁぁっ!」
マンティスゾーアが振り向くと、グランザウラーに跨ったレクシードの姿が見えた。
コイツ、まだ追ってくるのか!?
一瞬の焦りを感じたマンティスゾーアは、自分が蹴飛ばした車を前腕でつかみ、それをレクシード目掛けて放り投げた。
しかし、レクシードはグランザウラーのハンドルを切り、難なく回避。
投げられた車は無惨にも地面に激突し、レクシードの背後で爆発した。
「おのれ……。ならば!」
マンティスゾーアは今度こそはと思わんばかりに、前腕で大型トラックを掴み、大きく放り投げる。
そこからさらに、前腕の鎌から丸鋸のような斬撃のエネルギーをレクシードにめがけて飛ばしてきた。
トラックの直撃は避けられても、斬撃は避けられない。逆も同じだ。
「グランザウラー!さっきの恐竜モードに変形できるか?」
レクシードはグランザウラーに問いかける。
グランザウラーは勿論だ!という意思を表すようにヘッドライトのような眼を光らせ、唸り声をあげた。
「よし、行くぞ!」
レクシードはスロットルを限界まで捻り、加速する。
トラックはレクシードの眼前で地面に大激突。
レクシードはグランザウラーの前輪を上げ、ジャンプで乗り越える。
グランザウラーはそのジャンプをきっかけに、先ほどの恐竜形態・ザウルスモードに変形した。
「手を変え品を変え……。猪口才な!」
マンティスゾーアはレクシードに向かって突撃を繰り出した。
だがレクシードは、左手で手綱のようなハンドルを操作し、右手にステゴカリバーを握る。
その姿は恐竜に乗った騎馬兵にも思える。
マンティスゾーアの突撃を、右に跳躍して回避した。
ザウルスモードとなったグランザウラーの機動力はバイクモードの倍以上。
巨大な姿となり、機動力が劣った超越体には効果的だ。
その機動力を生かしてレクシードは、マンティスゾーアを翻弄する。
「くっ、ちょこまかと!」
マンティスゾーアは再び鎌から斬撃のエネルギーをレクシードに向けて飛ばす。
レクシードは再びハンドルを操作し、大きく前に跳躍してそれを回避した。
避けられたエネルギーは周囲の地面に直撃し、爆発が起きた。
こちらの攻撃を予測したマンティスゾーアは前腕の鎌で防御の姿勢をとる。
グランザウラーは再び高く跳躍し、レクシードは落下の勢いを利用しステゴカリバーを振るった。
その刃はマンティスゾーアの鎌を切り落とすのは容易かった。
マンティスゾーアのは大きく狼狽える。その身体は満身創痍と言ってもいいだろう。
「おのれぇ、許さん……。許さんぞぉ!」
「お前の野望、俺が嚙み砕く!」
〈フィニッシュヴァイティンアップ!〉
ドライバーの恐竜の口を操作し、必殺発動の音声がベルトから鳴り響いた。
レクシードはハンドルを操作し、グランザウラーを後ろに大きく跳躍させる。
最大出力と言わんばかりのエンジンの轟音と、グランザウラーの咆哮が合わさり、後方のマフラーから青い炎は吹き出し、グランザウラーはものすごい勢いで走り出す。
レクシードはグランザウラーの背に立ち、ステゴカリバーを構えた。
青いエネルギーが刀身に漲ってくる。
〈ステゴ!ザウリングフィニッシュ!〉
グランザウラーのスピードをのせたレクシードの必殺の斬撃がすれ違いざまに放たれた。一撃が繰り出されたのを判断したグランザウラーは後ろ足でブレーキをかける。
その一撃を喰らったマンティスゾーアの身体からどす黒いエネルギーが噴き出る。
その肉体は大爆発を起こし、消滅した。
激戦の舞台となった市街地には、車の残骸や折れた標識、そしてレクシードとグランザウラーの姿しかいなかった。
■■■
そこからしばらくして、変身を解いた竜希がグランザウラーに跨って戻ってきた。
「ただいま」
「おかえり。倒せたの?」
「まぁ、なんとかな」
竜希は愛瑠の質問を苦笑い気味に答える。
お疲れさん。という思いでグランザウラーをなでる。
少しうれしいのか、眼がピカっと光った。
だが、竜希は一抹の不安が過った。
このグランザウラーって変身後に乗るのは問題ないけど、さすがに変身前の姿で乗るとキツイな。と
変身前でこれに乗ればまるで改造バイクに乗った珍走団。警察から職質待ったなしだ。
そう思い、レックスに声を掛けた。
「なぁ、レックス」
「なんだ?」
「あのグランザウラーの姿、どうにかならない?この時代じゃあまりに浮きすぎるし……」
「なーんだそういう事か」
レックスはグランザウラーのタンクにあたる部分に乗っかり、念を込める。
するとどうだろう。
恐竜的な見た目に亀甲模様が走り、その姿がパネルのように反転。現代的なアドベンチャータイプのオートバイに姿を変えたのだ。
レックスが凄いのか、それともグランザウラーの能力なのか。
どっちにしろ、太古のテクノロジーってどうなってるんだ?と竜希と愛瑠は思った。
「ま、バイク問題は解決したところで戻るか」
「そだね。多分いきなり消えていったから教授も心配するだろうしね」
恐らく今頃教授は自然史博物館からいなくなった竜希と愛瑠を探している頃だろう。
心配をかける前に、グランザウラーが変形したバイクでこの場を立ち去ることにした。
■■■
「なーるほどね。出遅れたかと思ったら、レクシードが復活していたとはね。コレの出番はなかったか」
茶色のボブヘアーに緑色のアウトドアジャケット、カーキ色のカーゴパンツの青年が物陰から竜希たちの会話を見ていた。
その手には万力のようなスロットとレバーハンドルのようなバックルを持っている。
「師匠。どうするつもりなんだい?」
カールがかかった長髪に黄緑色のシャツとデニムのズボンの少女が師匠と呼ぶその青年の隣にいる。
「とりあえずはコンタクトをとってみることにするよ。なにせ、僕もヴァグレードに抗う戦士。協力関係は築きたいからね」
「賢明な判断と言えるな。智成」
智成という青年が背負っているバッグから、小さなメカニカルなサーベルタイガーが顔を出した。
「さぁて、とりあえずはあのレクシードとなった人を探ろう。話はそこからだ。行こうか玲、サーボ」
「うん」
「了解した」
サーボというサーベルタイガーは再びリュックの中に顔を引っ込め、玲という少女と智成は傍に停車してあったオフロードタイプのオートバイで竜希達の後を追いかけていった。