魔女の微笑み 作:カトレアの花言葉
おいおい…ザカリアス・スミスの奴、なんでこんなに勧誘がねちっこいんだよ。確かに嫌な予感自体はしていたが、ここまでとは思わなかったわ。なんか初対面の時よりもより粘り気が増してきたぞ?というか原作でこんな奴だったか?良くも悪くもこんなタイプではなかったような気がするんだが…。何かが彼の情緒を変えてしまったのだろうか?
あと、ザカリアス・スミスだけではなく彼の取り巻き…というか周囲の取り巻き連中も変に鼻息が荒くて、目の瞳孔がかっぴらいて少し怖いな。たかが1年生の寮合同授業で、こんなにも興奮するのかね…?
あとさぁ、俺の隣にいるパーバティ・パチルとラベンダー・ブラウンの絶対零度の視線に気づけよな。彼女達の存在自体を無視しやがって。他寮の同学年女子から完全にもう「無神経でアレな人」って認識されてんぞ、おい。これから7年間の学生生活で色々と支障が出かねないよ?主に異性関連で。
あーあーあー…俺が所属するルームメイトだけじゃなく、隣のルームメンバーを含めたグリフィンドール寮1年ガールズの目がヤバいわ。サリー=アン・パークスやエロイーズ・ミジョンも「マジかよコイツら…」みたいな視線だ。
ちなみに我らが偉大なる「ミス・勉強」ことハーマイオニー・グレンジャーはハッフルパフ寮のメーガン・ジョーンズとウェイン・ホプキンス、更にグリフィンドール寮のサリー=アン・パークスと同じグループを結成したようだ。メーガン・ジョーンズは半純血らしいが、あの中堅純血家系であるジョーンズ家の親族か分家筋なのだろうか?俺が所属するランドール家もハッフルパフ閨閥の中堅純血家系なので、同格同門同士として結構交流はあったのだが…彼女の顔はあまり記憶になかったな。
それはともかく、ザカリアス・スミス達みたいな連中ではなく、もっと真面目そうなハッフルパフ寮生はどこかいないかな…?ってか「真面目なハッフルパフ寮生」って「東から昇る太陽」みたいに当たり前の表現だけど、例外もあったんやなって。ハッフルパフ寮に所属する学生なら、みんな真面目で実直で勤勉だと思って油断してたわ。
まぁよくよく考えてみれば「勇敢ではないグリフィンドール寮生」や「狡猾ではないスリザリン寮生」、「賢明ではないレイブンクロー寮生」みたいな例外もいるにはいるだろうし、寮の特色はあくまでも主な傾向レベルなのかもしれない。そもそも論として、この俺自身が「勇敢さ」や「騎士道精神」の欠片もないグリフィンドール寮生なわけだし。つーかマジでなんで赤獅子寮に選ばれたんだよ…。消去法か?
お、優しそうで品の良さそうなハッフルパフ男子と目がバッチリあった。ニッコリと微笑んでやると、少し恥ずかしそうにしながらも微笑み返してくれた。良い奴そう。よし、君に決めた!
「あのう、すみません。もしよろしかったら、私達と4人組班を作りませんか?」
「あ、はい。僕で良いなら喜んで」
話し方も上品だな、こいつ。美しい容認発音(Received Pronunciation)だし。純血家系…にしては例の純血交流会では顔を見なかったが…まぁスリザリン閨閥に嫌気がさして出席を控えるグリフィンドール閨閥出身でハッフルパフ寮に入寮したケースなのかもしれないけど。
お互い軽く自己紹介して分かったが、このイケメンってあのジャスティン・フィンチ=フレッチリーなの!?確かに言われてみれば少しカール気味な金髪で温厚そうなので、まさかとは思ったが…。まぁ組み分けの儀式の時は緊張してたし、まだグリフィンドール寮生以外は同学年でもちょっと顔が分からない時もあるからこんなもんかもしれない。
原作でもハリー・ポッターやロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーといったいつもの赤獅子寮トリオも2年生の合同授業でジャスティンと「初めまして」と自己紹介してたし、1年生や2年生はまぁそういうものなんだろう。さすがに日本の中学1年生くらいに該当する3年生だとそんなことはなさそうだが…。
あ、ちなみに現時点でハーマイオニーはハリーとロンとは口を全くきいていない。まぁあの深夜のホグワーツ校内☆減点上等☆大冒険があった後だもんな。この頃はまだハーマイオニーはハリーとロンにはツンツンしてたし。「ミス規律」っぷりが合わなかったのだろう。初期のロンによるハーマイオニーへの「口攻撃」が非常に目立つが、「やや規則を無視する傾向」(某魔法魔術学校校長閣下談)があるハリーとも初期の初期なら合わないのかもしれない。
とにかく、この名門イートン校を蹴ったガチ英国マグルエリート階級様にも徹底的にヨイショと媚び売りをしなければ。1992年9月16日という「暗黒にして白い水曜日」に荒稼ぎ…じゃなかった「対応」するには、英国マグルの政治エリートや経済エリートとの繋がりや動向を観察する必要があるし、何より激動の90年代英国マグル政治経済を生で把握出来るのは純粋に学術的な意味合いで興味深い。
そんなこんなで俺、パーバティ、ラベンダー、ジャスティンの四人で薬草学の授業を受けることになった。ちなみに先ほどのザカリアスを見たからか、パーバティとラベンダーはジャスティンの性格を高く評価してた。まぁ比較対象が比較対象だから当たり前か。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ジャスティン・フィンチ=フレッチリーは少し困惑した。それは薬草学の授業内容…にではない。薬草学の授業自体は相変わらず面白く、我らが温厚柔和たるハッフルパフ寮生に相応しい寮監ことスプラウト教授の丁寧かつ実践的な授業は本当にためになる。困惑したのは、今回の寮合同授業で一緒になったあるグリフィンドール寮女子生徒の自分に対する態度や姿勢だ。
なんというか、物理的な距離が近く、甘く官能的な匂いと妖艶で肉感的な雰囲気で全く授業に集中出来ないのだ。いや思い違いというか自意識過剰なのかもしれないけど、初対面の自分に恭しく非常に丁寧なのは事実なのだ。あ、また胸が腕に当たった…すっごく大きい…。今度は低音のアルトボイスながら甘い吐息が耳にかかった…。うぅ…蕩けて溺れそうだよ…。
「殺してやる…殺してやるぞ、ジャスティン・フィンチ=フレッチリー!」
「ランドールさんと距離がちけーんだよあの野郎!」
「どうする兄弟?処す?処す?」
「もう殺すしかなくなっちゃったよ」
…グリフィンドール寮生、ハッフルパフ寮生を問わず一部(?)の男子生徒の怨嗟の声が聞こえるが、それらはまぁ無視しよう。あ、ザカリアスが呪詛を僕に飛ばしてきた!しかもあれ高度な無言呪文の一種では?7年生でやる内容じゃないか!なんで入学して一か月も経過していないハッフルパフ寮生が使用出来るんだろう?思いだけで人を殺せそう…。
同じ四人組班であるパチルさんは苦笑いをし、ブラウンさんは肩をすくめているけど、もしかしてグリフィンドール寮内では日常茶飯事なんだろうか?ちょっと羨ましい…。
スプラウト教授の目を盗んでお喋りをしていると、どうもランドールさんは最近の英国マグルの金融や経済の話題に関心があるみたい。なんでもグリンゴッツ銀行の小鬼たちがしきりにイングランド銀行や某為替相場メカニズムの動向を気にしている…とか?正直なところ詳しくはないが、確かにホグワーツ入学直前に父親が深刻な顔で叔父と似たような話題をしていたけど…。
そういったことを伝えると、ランドールさんは微笑みながら相槌を打ってくれた。非常に艶やかな笑顔の筈なんだけど、何故だろうか、狡猾で老獪な雰囲気を一瞬だけ感じたような…?あの「シティ」にて蠢動する魑魅魍魎と似たような気配がしたけど…直ぐにいつもの優し気な雰囲気になった。まぁ気のせいだろう。優しいランドールさんに限ってそんなことは有り得ない。
あと会話の流れで知り得た内容として、なんと今月末の日曜日…すなわち9月29日はランドールさんの誕生日らしい。もうすぐ12歳なんだ、ランドールさん。…12歳には見えないけどなぁ…色々と。
これはランドールさんと同室であるパチルさんとブラウンさんも初耳だったそうで、ちょっと慌てていた。しかしグリフィンドール寮の女の子が三人集まると本当に賑やかだなぁ。たぶん我がハッフルパフ寮生やレイブンクロー寮生、スリザリン寮生の女子生徒よりも賑やかだと思う。
あ、来月にでもお茶会をしましょうと誘われた。是非ともハッフルパフ寮生の友人も誘って、グリフィンドール寮とハッフルパフ寮の友好と安寧の為…だとか。これ対スリザリン寮生を想定しているのかもしれないね。魔法族のお茶会もマグルとあんまり変わらないだろうけど、結構楽しみだ。でも開催する場所の選定が難しいような…?あ、お茶会専用の部屋とかあるんだ、ホグワーツ魔法魔術学校。本当になんでもあるな…。
ちょっと!今度は有言の呪詛が左右から飛んできたんだけど!?もうこれ闇の魔術じゃないの!?色が禍々しいんだけど!
お茶会への招待に反応したのか、スプラウト教授から隠れながらハッフルパフ寮生とグリフィンドール寮生の男子生徒が血走った目で僕を狙い撃ちしてきた…うわ危な!下剤効果のある呪詛…?酷い呪詛撃ってきちゃってさぁ!反撃せざるを得ないじゃないか!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
おっしゃあぁぁぁ!!英国マグル政界・経済界に影響力のあるマグルの名門と繋がり…への橋頭堡…への一里塚を構築出来たぞ!!
今後の英国マグル界隈における激動ぶりを見るに、コネクションはあればあるほど困らないからな。来年を乗り切っても色々とあるし。まぁ地道にコツコツと浸食していけばいいや。
内心ガッツポーズを決めているうちに薬草学の寮合同授業は進み、なんだかんだで平和のうちにに終了した。まぁ強いていえば男子同士で仁義なき呪詛の打ち合いがあったみたいだけど…。薬草学の授業は呪文学と闇の魔術に対する防衛術の授業を兼ねていた可能性が微粒子レベルで存在する…?
闇の魔術に対する防衛術で思い出したが、ターバンの中である後頭部に「名前を呼んではいけない例のあの人」を貼り付けている死喰い人であるクィレル教授の授業は、正直なところ微妙だったな。基本的に座学のみで、実技は無かった。まぁ基礎的な理論や教科書をなぞるだけなのは1年生の授業なので仕方がないのだろうが、あまりにも単調だった。
あとマジで教室がニンニク臭い。本当に臭い。まぁこれはターバンの中にある後頭部対策だろうけど。あのターバンの中身はニンニクなんか比較にならない腐臭が凄まじそうだしなぁ…。ニンニクの強烈な匂いで誤魔化しているのだろう。
とはいえ、割と闇の魔術の事例や概念を列挙してたのは悪くはなかったと思う。『悪霊の呪い』シリーズをはじめ、どもりながらもその辺を名前だけでも列挙してたのは良かった。おかげで図書室で勝手に調べ、自己学習が出来る。
つーかクィレル教授の後頭部にいらっしゃる「名前を呼んではいけない例のあの人」って、ホグワーツ魔法魔術学校で闇の魔術に対する防衛術の教師を志望してたんでしょ?それが叶わなかった腹いせに闇の魔術に対する防衛術の教師が1年ももたない呪詛をかけたんだろうけど、クィレル教授が教壇にたったから半分くらいはその願いが叶ったんじゃないっすかね?あと何気に今後約数ヶ月は「名前を呼んではいけない例のあの人」と同じ空間にいるのか。冷静に考えてみるとヤバい…ヤバくない?
さて、授業も慣れてきたので段々と移動時間や予習復習時間にも余裕が出来た。そこでその空いた時間や土日を利用して「必要の部屋」にて失神呪文といった有用な対人魔法と、魔法薬の調合に精を出そうか。
武装解除呪文や呼び寄せ呪文は既に入学前に両親や親族のみんなに教えてもらい取得出来たが、失神呪文は間に合わなかったからなぁ。あとは無茶苦茶便利なプロテゴこと盾の呪文。闇の魔術に対する防衛術の6年生における授業で習うみたいだが、こんな無茶苦茶便利な呪文、たとえどんなに難しかろうが早めに取得した方が良い。
まぁこれらはまだ良いけど、3年生になる前には絶対に「守護霊の呪文」を取得しないといけないから、本当に気合いを入れないといけないな。対吸魂鬼用の呪文があれだけしかないのだから、絶対に取得せねば。学校をアズカバンの看守である吸魂鬼に囲まれながら過ごす1年間とか本当に気が狂いそうだ…。彼らを校内に入れなかったダンブルドア校長はマジで偉大だと思う。
1993年まで英国魔法界の監獄であるアズカバンから脱獄犯を一人(母親と入れ替わったとある男性)しか出さなかった吸魂鬼達の手腕は素晴らしいが、それはあくまでも看守として有能だっただけで、決して守衛向きでないよな。特に多感な十代の少年少女が多数いる学校を守衛するのにはマジで向いていないと思う。
魔法薬の調合は趣味と実益を兼ねている。フェリックス・フェリシス(幸福薬)を出来るだけストックしたいが、その前に他人の外見に変身する効果を持つポリジュース薬を作ろうか。いざというときに役立つし。また、それらの上級魔法薬だけでなく、中級魔法薬も地道に貯めていく。
それらの魔法薬の材料確保の為には、あの禁じられた森に入る必要が出てくるが…そこは森番であるルビウス・ハグリッドと地道に交流を持って材料を融通してもらうか、俺本人がウィーズリーの双子みたいに禁じられた森への殴り込みを敢行するかの二択になるのかな?
まぁハグリッド本人はともかく、彼と交流を持つとハリー・ポッターと近くなる可能性が高くなるから、ここはウィーズリーの双子に倣って直接的な禁じられた森への殴り込みしかないか。あとハグリッドに口止めは不可能なので、彼にも秘密裏にやるしかないか。
そこで失神呪文やプロテゴの修得に話が戻ってくる。あれらの呪文が禁じられた森で通用するかは未知数だが、無いよりかは遥かにマシなのは事実だろう。
俺が常にかけているラリエットネックレス(母方の祖母の家に伝わる魔術的な秘宝らしい)やランドール家に伝わるこの金色の指輪(古代ルーン文字と古代神聖エジプト文字の二重掛け)って魔法生物にも効果があるのかな…?対人用としては凶悪かつ苛烈らしいけど…。
まぁその辺は綿密に計画をたててから実行するしかないか。ウィーズリーの双子にそれとなく禁じられた森について聞いてみるか?ハリー達に漏洩しない程度に当たり障りのない塩梅で。狡猾に周到に準備し、果断に猛然と実施するのがベターなのだろう。
そういえば以前から準備し、俺がグリフィンドール寮所属になってしまったために前倒しで実施することになった国際面と経済面を両輪とする週刊雑誌が遂に来月初週から刊行する。名前は「週刊国際魔法経済」だそうだ。ネーミングが安易過ぎない?まぁ「週刊魔女」よりはマシかもしれないが。ちなみに兄貴はここに就職したそうだ。マジかよ。配属先はオーストラリア本社だとか。…忖度されてない?
既にカナダ魔法省とオーストラリア魔法省の魔法生物規制管理部によるインタビュー記事を掲載しているらしい。なんでも魔法生物の保護と密猟者への警告だとか。なんか耳が痛い内容っすね…。
徹底した御用雑誌らしさを全面に打ち出す一方で、各種魔法薬の原材料価格や交易レートの推移と今後の展望を詳細に記述し、グリンゴッツ銀行の各支店長のコラムも掲載している。ちなみにグリンゴッツ銀行東京支店のコラムはマジで危機感マックスでヤバい。次点でロンドン支店(ダイアゴン横丁支店)のコラム。まぁこれは先の賢者の石盗難未遂騒ぎにも関連はしているが、両支店長ともマグル経済のヤバさを婉曲的に示唆してる。現地のマグルの役人が読んでも通じそうな内容で笑えないっすね…。
あと来年1月には小鬼の親玉による年頭所感を全ページ掲載し、各国魔法省だけでなく、小鬼にも徹底的に媚びを売る方針でいくらしい。ここまで御用雑誌路線を貫くと、いっそ清々しいな。
割と事前の「掴み」では好評らしい。曰く「今までなかった」とか。日刊預言者新聞とか醜聞や社会面に特化してる印象があるからなぁ…。ある意味で「棲み分け」だ。
ちなみに俺も一か月に一回だがプチコラムを掲載する。ペンネームは「ロンダニーニの黒犬」で、内容は魔法省ヨイショと国際魔法使い連盟ヨイショ。んでもって薄っすらとした三大魔法学校対抗試合への言及と示唆。もちろん英国魔法省だけでなく、フランス魔法省やスウェーデン魔法省にも根回し済み。太鼓持ちなら任せろー!
さて、来月末のハロウィンにはトロール事件が発生するが、逆にいえばそれ以外はイースター休暇までは割とホグワーツ校内自体は平穏だ。ハリー達のトリオは大変そうだが、例のドラゴン事件まではそこまででもないのでは?強いていえばハリーは例の鏡でひと悶着あるけど。
その平穏な内に「必要の部屋」でみっちりと対抗策を身につけて、禁じられた森対策として情報収集に勤しむことになるだろう。もちろん勉学は決して疎かにせず。
こうしてみると、原作のハーマイオニーってマジで天才だなと再確認出来る。どんだけ忙しくても常に学年トップなのだから。努力する天才とかもう無敵じゃんね。おまけに根性も凄いし、グリフィンドール寮生らしく勇敢さもある。絶対に真似できないわ。そら将来は英国魔法省大臣にもなるよなぁ。あと彼女の存在自体が純血主義への強烈なアンチテーゼになってるよな。
海外の某所で有名なサリー=アン・パークスさんは本当にどこの寮なのか不明なので、グリフィンドール寮生にしました。5年時のO.W.L(ふくろう試験)時に名前が名簿にないので、おそらく交換留学制度を使って南米のカステロブルーシューに留学したと妄想。主人公のある意味理想形ですね。同学年女子生徒ですし。
メーガン・ジョーンズとウェイン・ホプキンスは2001年のBBCで原作者が言及してたのと、かの『ポッターモア』にハリー・ポッターと同世代でハッフルパフ寮かつ混血と言及があったので、登場させました。意外とオリキャラが少ないな…。