魔女の微笑み   作:カトレアの花言葉

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第11話 ハロウィン騒乱

 10月に入ると気温が低下し、どんどん寒くなってきた。さすが1990年代のスコットランドだわ。もう既に秋を通り越して冬の気配を感じ出した。9月はまぁまぁ残暑が凄くて夏っぽかったのに。結局あの夏用制服は6月まで持ち越しかぁ。パーバティとハーマイオニーがあの夏用制服の着用を許可してくれたらだけど。というか10月でこの寒さなら、クリスマス休暇直前や休暇直後はもう本当に極寒なんだろうなぁ…。

 

 先週の誕生日(9月29日)は両親と兄貴、叔父さん夫婦をはじめとした家族や親族から大量のプレゼントを貰った。…初めての親子離れ離れの誕生日だからか、妙に気合いの入ったラインナップだった。魔女専用のメイク道具一式とか、これOLがたまにやる自分へのご褒美買い物じゃねぇの?兄貴のチョイスしたマグル製の某クマのぬいぐるみが逆に浮いてた。

 

 いうて叔父さんみたいに、12歳の女子生徒に「愛の妙薬打ち消しセット」を送り付けるのはそれはそれでどうなんですかね…?選択にえらい生々しさを感じるが、さすがに一年生の女子生徒に「愛の妙薬」を盛る馬鹿な奴なんて存在しないのではないだろうか…?

 

 ちなみに俺と同じ9月生まれのハーマイオニー・グレンジャー(1979年9月19日)に配慮して、ルームメイト同士の誕生日プレゼントは今年はお互いに無しになった。代わりに来年度からはやるらしいし、なによりクリスマスは絶対にやるそうだ。ラベンダー・ブラウンは巨大リボン一式とか送って来そう…。

 

 原作主人公であるハリー・ポッターは見事にクィディッチのグリフィンドール生チームに参加し、シーカーとして週3回練習に励んでいるらしい。一応は極秘らしいし、実際に練習姿を見た人間はいないので、クィディッチチームのキャプテンであるオリバー・ウッドによる作戦は形式上は成功しているように見える。が、ヘトヘトになりながら寮の談話室に帰ってくる姿をみれば、勘の良い人間なら薄っすらと察せられる。ホグワーツのクィディッチは11月からがシーズンなので、まさに直前の追い込みなのだろうね。

 

 さて、禁じられた森への殴り込みの為に、それとなくウィーズリーの双子に聞き込みをしてると、面白い奴を見る目で見られた。曰く「君のような優等生が禁じられた森に興味を抱くなんて!」と。別に優等生ではないと思うが…。ハーマイオニー・グレンジャーやパーバティ・パチルの方が優等生っぽい。

 

 とまぁウィーズリーの双子から一応の情報や膨大な注意事項を聞いた俺は、お礼代わりにバタービールの樽を後日彼らに送った。無茶苦茶喜んでた。やっぱ贈答品として優秀過ぎるな、バタービール。スリザリン寮生への贈り物攻勢でも絶大な効果を発揮してるし。あいつら金はあるんだから自前でやれそうなのに、贈ると喜んでくれるから不思議。まぁ美味いから仕方ないか。

 

 前世がサラリーマンのオッサンだったので、ビールを含めた酒はよく飲んでたし、好きだったが、このバタービールは少年少女でも飲めるようになっているためか、少し物足りない気がしないでもない。だがお酒とは違う飲み物と捉えれば話は別。嗜好品としては本当に素晴らしい飲み物だと思う。

 

 ただ、どうもウィーズリーの双子と喋ったり密談してたのをルームメイト達や同期達に見られたようで、意外な組み合わせと思われたようだ。まぁウィーズリー家の次男であるチャーリー・ウィーズリーとランドール家の長男にして俺の兄貴でもあるジェームズ・ランドール(レイブンクロー寮出身)が親友同士で、お互いの家に遊びに行ってた間柄と知ると納得顔をされた。

 

 実際、ジェームズ兄貴はよくウィーズリー家の「隠れ穴」に泊まり込みに行ってたし、チャーリーも我が家に遊びに来てくれた。ウィーズリー家の「隠れ穴」はフォーセット家やラブグッド家(両家ともレイブンクロー閥)とご近所なので、もしかしたら両家の「ご息女」とも面識があったのかも?

 

 ちなみに当たり前だが俺は「隠れ穴」に行ったことはない。まぁホグワーツ入学前の女子だったのもあって、両家の親が危ないと判断したのだろう。何よりあの頃は少々「お転婆」気味だったので、ウィーズリー家に迷惑をかけたくないとも思われたのかな?一度は見てみたかったなぁ。

 

 さて、4年後に独自で闇の魔術に対する防衛術を実践的に自己学習する原作主人公達みたいに、俺も「必要の部屋」で呪文の練習を始めた。土日や余った時間を利用しているが、結構楽しい。もっともハリー・ポッター達みたいな集団ではなく、たった一人で孤独に地道に自己学習するだけだけど。

 

 まぁでもその方が原作みたいな構成メンバーからの情報漏洩や「裏切り」は物理的に有り得ないから、セキュリティ上は安心出来る。なぁレイブンクロー寮のマリエッタ・エッジコム先輩?「ご尊顔」は未だに拝してないが、出来るだけ早くチェックして5年生になるまで忘れないようにしないと。

 

 それはともかく、「必要の部屋」を「対人・対魔法生物を問わず戦闘用呪文練習に向いていて、自分以外は入れない部屋」にしたおかげか、闇の魔術に対する防衛術関連の書籍だけでなく、闇の魔術一歩手前のヤバイ書籍や海外の古代魔法の資料集なんかも出てきて変な笑いが出た。これ禁書じゃねぇの??しかも数と種類が半端なく、小さな図書館クラスの蔵書量だ。なんか古代エジプト魔法や古代インド魔法関連だと「生贄」とか「召喚」とか恐ろしいワードが出てくる…遊戯王かな?

 

 ちなみに、じゃあ「必要の部屋」を「ありとあらゆる古今東西の魔法薬を製作・保管でき、自分以外は入れない部屋」にすれば、もう禁じられた森への殴り込みをしなくても大丈夫なのでは?と思ったが、中途半端な結果になった。部屋には多種多様な魔法薬の実験道具や製造機材、それも真鍮製だけでなく、多種多様な金属・非金属別に一式ずつ揃っており、壮観な眺めになった。また参考書籍や資料も膨大な量があり、これまた小さな図書館クラスの蔵書量だった。ってか、これ明らかにホグワーツの図書室の禁書棚に並んでいるのもある。やべーだろ、これ。まぁここまでは完璧だった。

 

 ところが、肝心の魔法薬の材料が出てこなかったのだ。おそらく材料の元になるのは植物・動物を問わず生物だからなのか、あるいは「魔法薬」の概念があまりにも普遍的・抽象的過ぎて、「材料は各自が用意してね」と必要の部屋が判断したのかは分からない。

 

 とりあえず失神呪文やプロテゴ(盾の呪文)を中心に地道に自己学習し、それらが習得出来たら守護霊の呪文やインセンディオ(対象物発火呪文)、ディフィンド(遠距離斬撃呪文)辺りの攻撃呪文を学習するか。禁じられた森対策なら、蜘蛛に絶大な効果を発揮するインセンディオは特に学んで損はない。対人戦闘にも良い。

 

 もちろん純粋な攻撃呪文だけでなく、アクシオ(呼び寄せ呪文で、これは既に習得済み)やデパルソ(跳ね除け呪文)みたいな強制呪文や、レヴィオーソ(対象浮遊呪文)やアレスト・モメンタム(対象物遅滞呪文)みたいな制御呪文も当然必須だ。これらを巧みに組み合わせ、臨機応変に応用していく。

 

 中期目標としてはまぁ禁じられた森への殴り込みだけど、長期目標は対人自己防衛を目指す。気合いを入れて頑張ろう。

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ラベンダー・ブラウンは非常にウキウキしてた。ルームメイトにして友人の一人であるオリヴィア・ランドールが音頭を取って、寮を跨いだ少人数の一年生お茶会を主催するからだ。英国ガールたるもの、マグルだろうが魔法族だろうが「まずは」お茶会をしないと話にならない。この際お茶会の「レベル」や「格」なんてどうでもいい。気取ったお茶会なんて、大人になってからいくらでもやれば良い。それよりもまずは早期に「同じ釜の飯」ならぬ「同じポットの茶」を飲まないと。

 

 まぁ寮を跨ぐといってもハッフルパフ寮とグリフィンドール寮の2寮だけだが。レイブンクロー寮生は良くも悪くも個人主義で我が道を行く同級生が多い印象があるし、スリザリン寮生はグリフィンドール寮生からすれば論外。もっともそれは逆もまた然りだろうが。

 

 場所はグリフィンドール寮の先輩とハッフルパフ寮の先輩方が教えてくれた空き教室で、お茶会当日はあの忌々しい管理人のフィルチやポルターガイストのピーブズが乱入しないようオリヴィアが何やら複雑な魔法を使っていた。…あの呪文、英語やフランス語、ラテン語じゃないような…?アジア方面の言葉じゃないかしら…?

 

 用意されているお茶やサンドイッチ、スコーン、ケーキの種類は非常に多種多様だった。これどうやって準備したんだろうか…?何やらハッフルパフ寮生の一部は仕組みを察しているようだったが…。

 

 グリフィンドール寮からはオリヴィアとパーバティ、私の3人が参加メンバーだ。オリヴィアとパーバティはあのハーマイオニー・グレンジャーも誘っていたらしいけど、前からの予定があったらしく断られたらしい。ふーーーーーーーん、そう。まぁでも割と急な面もあったから仕方ないかもしれない。次回からは必ず参加するとか。

 

 ハッフルパフ寮からの参加メンバーは、先の寮合同薬草学の授業で同じ班だったジャスティン・フィンチ=フレッチリーと、彼の友人であるハンナ・アボット、コウタ・オオニシ、メーガン・ジョーンズだ。ちなみに「あのザカリアス・スミス」は絶対に誘わないように工作した。それはもう綿密に。

 

 お茶会が始まると、話題は数週間後にシーズンが開始される四寮対抗クィディッチ杯や、今月末にホグワーツの大広間を中心に開催されるハロウィンパーティーについてがメインだった。先輩方が仰ってたけど、結構盛大に開催するらしく、割と一年間の行事でトップクラスの人気を誇るんだとか。まぁクリスマスはみんな帰るし、イースター祭は楽しいけどハロウィンの派手さには劣るもんね…。

 

 あとはまぁどの授業が難しいか、どの先生が優しいか、あるいは逆に厳しいかが話題になった。やっぱスネイプ先生はハッフルパフ寮生にもキツイらしいけど、グリフィンドール寮生よりは地味にマシっぽい…。羨ましい…。ってかさ、絶対にウチの寮ってスネイプ先生に狙い撃ちにされてるよね!?本当マジで最悪なんだけど!

 

 寮対抗クィディッチ杯の話題だと、自然にハッフルパフ寮が誇る偉大なクィディッチ選手であるセドリック・ディゴリー先輩に関する噂話や話題になった。ディゴリー先輩、優等生でハンサムで、高身長かつ細マッチョで、クィディッチが上手く、人望もあり、性格も非常に紳士的な、まさに「理想の王子様」のパーフェクトなイケメンだ。

 

 そして家柄も素晴らしい。彼が所属するディゴリー家は門閥家族の中の門閥家族で、魔法省大臣も排出したハッフルパフ閨閥の領軸家門の一つだ。あと彼のお父様は魔法省官僚らしい。

 

 もっとも、今まさに真正面で穏やかにダージリンティーを飲んでいるハンナ・アボットが所属するアボット家(聖28一族)や、今日は所用(ゴブストーンの野良試合があるらしい)で来れなかったアーニー・マクミランが所属するマクミラン家(聖28一族)はより凄まじいが。

 

 それでも中堅純血家系であるブラウン家の人間からすれば、門閥家族も十分に雲の上の存在だ。まぁでもグリフィンドール寮一年生男子生徒も聖28一族(ウィーズリー家やロングボトム家)や門閥家族(ポッター家)はいるので、最近はそこまで気にはならないが…。

 

 ちなみに我がブラウン家と同じ中堅純血家系であるランドール家に所属するオリヴィアは、さっきからハンナ・アボットにさりげなく配慮と敬意を示している。上座に真っ先にハンナ・アボットを恭しく誘導してたし、椅子や机は全て同じではあるが、それでもハンナ・アボットのところだけは絶妙に豊富な種類のサンドイッチやスコーン、ケーキが華美にならない程度に綺麗に並んでいた。元々はハッフルパフ閨閥出身だけあって、本当に頑張ってるなぁ…。ハンナ・アボット自身はのほほんと楽しんでいる。

 

 それはともかく、ディゴリー先輩って今は彼女がいないらしいけど、本当なのかしら?絶対にモテモテだろうに…。私がもし仮に同学年同寮なら絶対に狙ってるわ。本当に憧れちゃうよねぇ。

 

 恋愛で思い出したけど、オリヴィアって好きな男の子とかいないのかな?なんか恋愛自体にあんまり興味が無さそうなのよねぇ。顔はちょっと女王様チックだけど無茶苦茶綺麗で、性格も素晴らしいし、何より身体が同性の私でもクラクラするくらいドスケベofドスケベなのに、本当にその辺が無頓着なのが勿体ない。なんか今も成長期らしいけど、それはもう許されざる成長でしょ。

 

 それとなくオリヴィアに気になる男の子とか聞いてみようかと思ったけど、これはまぁある意味でグリフィンドール寮内でやるべきことなので、ここではやめておこう。ちなみに我が赤獅子寮内でこの話題は非常にデリケートで、ハリー・ポッターの話題の次くらいに扱いに気を遣っている。

 

 ちなみに、毎年ハロウィンで成立するカップルもあるらしいので、ちょっとその辺も気になってる。まぁ私らはまだ1年生だからそういうのは早いのかもしれないけど、やっぱ気になるじゃない。…って何よ、パーバティにオリヴィア。私に対する呆れ顔と苦笑いはやめなさい!いいじゃないの、恋愛そのものが気になるのは!

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ハロウィン当日の朝、グリフィンドール寮どころかホグワーツ校内に溢れかえるパンプキンパイやカボチャを扱った料理の甘ったるい匂いで俺らは目を覚ました。凄まじいな、この匂いは…。いや悪い匂いではないけれど、ここまで「どぎつい」とは思わなかった。まぁそのうち慣れるやろ。

 

 おう、おはようパーバティ、ラベンダー、ハーマイオニー。なんかヤベーよな、この匂い。え?先輩方曰く「ハロウィンはまだ健全な甘ったるさだけど、2月のバレンタインデー当日は本当に良くも悪くもより激烈」らしいって…?うへぇ…マジっすかぁ…。

 

 確か当日(1992年2月14日)は金曜日か。土日なら一日中「必要の部屋」に逃げれるんだがなぁ。まぁ午前中は魔法薬学の授業で、午後は休みだから、そう酷くはならんやろ。

 

 そういえば遂にハロウィンだが、あの有名な呪文学の授業とトロール女子トイレ乱入事件が発生するんだけど、これによってハリー・ポッターとロン・ウィーズリー、そしてハーマイオニー・グレンジャーの主人公三人組が完成するんだよな。本当に感慨深い。

 

 絶対に邪魔にならないように、今日は徹底的にあの3人とは距離を置く。ごめんね、ハーマイオニー。明日からは普通にするから。ロンは…まぁ無難に接するか。知らない仲でもないし、グリフィンドール寮の中心であるウィーズリー家を敵に回したくはない。ハリー・ポッター?あー…彼には今までも、これからも「見」に回るさ。「触らぬ神に祟りなし」とまでは言わないが、深く関わると巻き込まれる。

 

 あと、クィレル教授(後頭部に闇の帝王閣下憑き)によるトロールぶち込みや、それを察して例の4階の廊下に急行するスネイプ教授の隙をついて地下室にある魔法薬学の教室や魔法薬学教授研究室に潜入し、必要な材料を奪取してくる。ハーマイオニー・グレンジャーが来年度に実施するやり口を先取りや。原作主人公達の行動をリスペクトするぜ!まぁそれだけじゃ足りないから、禁じられた森への殴り込みはもちろん実施するけど。

 

 呪文学の授業に行くと、原作通り「浮遊呪文」の授業だった。この呪文、ある意味で『ハリー・ポッター』シリーズで一番有名かもしれない。次点で守護霊の呪文か?何はともあれ結構便利な呪文だ。対象物や対象者を浮かせて任意の場所で落とせば…。ちなみに自分自身を飛行させることが可能な魔法族は、今は「名前を呼んではいけない例のあの人」しか存在しない。「ヴォルデモート」がフランス語で「死の飛翔」を意味するのには、全ての魔法族を超越し、彼らの悲願である「道具に頼らない飛行」を叶えた意味で理由があった…?

 

 さて、フリットウィック教授(レイブンクロー寮監)によって実技練習のペアが強制的に組まされた。関係ないが、薬草学のスプラウト教授(ハッフルパフ寮監)とは真逆のスタイルなんだな…。原作通り、主人公であるハリーポッターはシェーマス・フィネガンと、ロン・ウィーズリーはハーマイオニー・グレンジャーと組まされたようだ。

 

 そして、俺はなんとネビル・ロングボトムと組まされた。大丈夫なのかな、これ。原作でネビルはハリーと組みたそうにじーっと見つめていたけど…うーん…。まぁなんとかなるか。グリフィンドール寮ではハーマイオニー・グレンジャーの次に顔見知りになった仲だし、少なくともハリー・ポッターよりはかなり会話をしてる。

 

 お、ネビルからやってみるの?よっしゃ、ネビル、まずは発音と杖の振り方や。隣のシェーマス大先生による爆発は無視して大丈夫。彼とペアを組んでいるハリーの服まで少し煤けてるな…。おー発音は普通に良いねぇ。後は正しい杖の振り方だな。ロンが原作通り腕を風車の如く振り回して呪文を唱えているのが見えるが、あの手法はちょっと良くないかもしれないからね。ではちょっと失礼して…。

 

 俺はネビルの左側に座ってたので、背中からネビルの杖腕である右腕をそっと持ち上げた。ちなみに席は割と自由。あ、髪の毛がネビルの横顔や耳にかかったけどゴメンな。あとネビルって1年生の頃はまだ小柄なので、背の高い俺が背後から少し覆い被さる形になった。すまんな、ネビル。

 

「ビューン、ヒョイですよ、ロングボトム君。ビューン、ヒョイ」

 

「わわわわ…!ランドールさんの吐息が!香りが!髪の毛が!手の感触が!そして背中越しにランドールさんの…!!!!!」

 

 ん?ネビルなんか混乱してるのか?ってか前方のロンとハーマイオニーのペアが言い争いしてるから、この辺一帯が少し騒がしいんだよな…。あ、原作通りハーマイオニーが完璧に成功させた。フリットウィック教授が非常に褒めてて、ハーマイオニーも得意満面だ。やっぱ本当にハーマイオニーはすげぇわ。んでロンは…あー…あの顔はまっずいっすね…。

 

 ちなみにネビルは何か放心してた。大丈夫かよ、おい。一部始終を見てたらしいパーバティに呆れられ、ラベンダーには大爆笑された。解せぬ。

 

 さて、呪文学の授業が終わったので、俺は普段以上にフリットウィック教授に呪文の質問や兄貴の話題でかなり時間を消費し、更には帰り道にフクロウ小屋に寄り道し、徹底的にハリー、ロン、そしてハーマイオニーと会わないようにした。

 

 そして、午後の授業では一切ハーマイオニーの姿を見なかった。遂に来たか。本当に可哀想だが、ここは心を鬼にして我慢するしかない。パーバティも少し気にしてたが、俺は敢えて気付かないフリをして話題は出さないようにした。あの三人が偉大なトリオを結成する機会を奪ってはならない。断じて。それが「名前を呼んではいけない例のあの人」の打倒にも多大な影響を及ぼすし。とはいえ…やっぱつれぇわ。

 

 午後の授業が全て終わり、ホグワーツ全体が非常に浮ついていた。やっぱハロウィンだけあって、仮装とまではいかないが、ふざけてジャックオランタンの被り物をしてる上級生もいた。そのうち変なダンスを踊り出しそう…。

 

 あとは陽キャっぽいグリフィンドール寮の先輩方が大広間前の廊下でウェイウェイやってた。ふえぇぇ…前世がオッサンサラリーマンなので、本当に怖い…。ある意味でグリフィンドール寮に入寮して良かったのかもしれない。談話室でよく見かける連中だし、挨拶程度なら結構お互いにやってるので、顔見知りではある。もし仮に他寮に所属してたらマジで今以上にビビり散らかしてたわ。

 

 ちなみにレイブンクロー寮の学生は足早にその場を通り過ぎ、スリザリン寮の学生は皮肉たっぷりに嘲弄してた。あとハッフルパフ寮の学生は一部はグリフィンドール寮の陽キャ軍団に混ざってたり、レイブンクロー寮の一部と共に遠回りしたり、かなり多種多様だった。

 

 彼らに目礼しながら横を通り過ぎ(彼らも片手を上げて挨拶してくれた)、大広間に入ると、普段とは異なりハロウィンの素晴らしい飾り付けで楽し気な雰囲気が充満してた。あれ生きてる本物の蝙蝠じゃないよな…?

 

席に座って寮の連中とお喋りしてると、どうやら宴が開始したようで、多種多様なハロウィン料理が出てきた。まぁこの後のイベントで大広間では食えず、寮の談話室で食べるんだけ…あ、噂をすれば来た。

 

「トロールがー!地下室にー!!!」

 

 闇の魔術に対する防衛術の先生であるクィレル教授が大広間のドアをぶちあけ、息を切らしながら駆け込んできた。これはアカデミー賞助演男優賞間違いなしの演技ですね…。恐怖に引き攣ってる表情は、演技にしては迫真なので、後頭部にいらっしゃる闇の帝王閣下から何か言われたのかもしれない。

 

「トロールが…ゼイゼイ…地下室に…ゼイゼイ…お知らせしなくてはと思って…」

 

 そう言い終わると、クィレル教授(死喰い人)はバタンと倒れた。後頭部にいらっしゃる闇の帝王閣下を傷つけないよう、うつ伏せに倒れてるのが面白い。まぁ上司だもんな。そりゃ配慮しないと後が怖い。部下の悲哀はなんかすんげぇ前世で身に覚えがありすぎて辛い。

 

 ぼんやりとアホなことを考えながら、クィレル教授の迫真(?)の演技に騙され大騒ぎしてる生徒達を眺めていると、職員席の真ん中の上座に座っていたダンブルドア校長が鎮圧した。そして各寮の監督生に生徒達を引率して各寮に引き上げさせるように指示を出した。

 

 さて、ここからが勝負だ。スネイプ教授はこのクィレル教授による一連の工作を懐疑的に見ており、すぐさまこれを陽動と理解し、本命である「四階の廊下」に向かう。そして俺はその隙をついてスネイプ教授がいない彼の研究室を調査する。しかもスネイプ教授は今回の件で三頭犬により足を負傷するので、彼の研究室への帰還は非常に遠のく。まぁそもそもマクゴナガル教授とスネイプ教授とクィレル教授はトロールが侵入した女子トイレで後始末に追われるからどっちみち好機だ。

 

 そこで俺はグリフィンドール寮に向かう途中で、さらっと空き教室に入り抜け出した。まぁ大広間付近は大勢の生徒でごった返しており、ぶっちゃけ一人くらい誰かいなくなっても誰も気にしない。監督生も各寮の生徒を一人一人見てるわけじゃないし。

 

 「トロールが地下室に現れた」とクィレル教授が警告したので、地下に寮があるスリザリン寮とハッフルパフ寮の生徒達は大広間で待機するか、集団で一階を慎重に歩き、地下に降る階段を少しずつ降っていく最中だった。まぁ臭いでトロールは近くにいるか分かるので、その辺は安心出来る。原作でパーシーが「恐るるに足らず」と断言したのには理由があった。「倒す」のではなく「避ける」のなら建物の中だとよりやりやすい。もちろん危険レベルはXXXX(専門知識を持つ魔法使いのみ取り扱い可)の化け物なので、学生が倒すとかは想定の範囲外だ。

 

 俺はグリフィンドール寮に組み分けされて非常に心配した親父から貰った「防犯」(犯罪防止の枠を大いに逸脱してる道具だらけだった)道具の一つを取り出した。そう、「透明マント」だ。もっとも主人公であるハリーポッターが持っている本物とは異なり、魔法動物デミガイズの毛で織った透明マントの簡易版だ。ゼノフィリウス・ラブグッドが語っていたように、本物と異なり時間経過で効果が薄れる。とりあえず一年ごとに新品と交換するか。高価といえば高価だが、ぶっちゃけ金はいくらでもあるしな。

 

 簡易版透明マントの着用、ヨシ!スリザリン寮に向かうスリザリン生の小集団を追いかけ、ちょっとビビってるドラコ坊ちゃんを追い越し、避難するどさくさに紛れてイチャイチャしてるスリザリンのカップルにドン引きし、スリザリンの談話室への入り口を通り過ぎ、魔法薬学の教室に侵入した。夜中の魔法薬学の教室ってこえーな。

 

 魔法薬学の教室内部から繋がっているスネイプ教授の研究室に入ると、目当ての材料が並んであった。そこには手を付けず、在庫棚を漁ることにした。これならまぁバレないだろう。ってかハーマイオニーはこれをスネイプ教授が近くにいる中で実行したのか…すんげぇ度胸と勇気だな。これは紛れもなくグリフィンドール生ですわ。

 

 目当ての材料を回収すると、俺は来た道を戻った。ってか地下室に向かった筈の先生方は本当に見なかったな。強いていえばハッフルパフ寮方面の地下には結構行ってるみたいだが…まぁあちらは厨房に近いし、トロールがそこに行くと判断したのかもしれない。

 

 大広間まで戻り、そこからグリフィンドール寮方面に歩き出すと俺は違和感を感じた。なんだろう、この感覚は。更に、母方の祖母の家に伝わる魔術的な秘宝の一つらしいラリエットネックレス(リング付きのY字型ネックレス)が胸元で温かくなった。これはいったい…?危険を知らせているのか?

 

 そういえばゴーストがいないな、マジで。もっとも入学直後以外は殆ど遭遇しない。これはどうも俺だけのようで、他の人は普通に見かけるし話もするらしい。ってかハロウィンだから逆にもっといそうな気がするんだが、奇妙なことだ。まぁ来年はグリフィンドール寮の寮付きゴーストである「ほとんど首無しニック」の絶命日パーティにゴースト達は参加するんだろうけど…なんでいないんだろう?なんなら俺だけポルターガイストのピーブズにも遭遇しない。これはこれで好ましいかもしれないが。

 

 そんなことを考えながら歩いていると、グリフィンドール寮の談話室にたどり着いた。透明マントを脱ぎ、「太ったレディ」に合言葉を伝え中に入ると、どんちゃん騒ぎの真っ最中だった。そうか、大広間で出来なかったが、料理を各寮の談話室に運び込んで宴は継続するんだった。先生方の目がない分、学生主導の宴になってる…。

 

 え、この陽キャの祭典の中に入るの?マジで?トロールと戦闘する方がまだマシだよぉ…。




感想、お気に入り、作品評価、ここすき、誤字報告をしてくださり誠にありがとうございます。本当に執筆活動の励みになるので、非常に嬉しいです。

フォーセット家の娘さんは主人公やハリー達と同世代(学年は不明)ですが、肝心の名前が「S」のイニシャルしか分からない…。原作だとレイブンクロー寮所属ながらも行動様式が凄くアクティブなので、個人的に結構気に入ってるキャラです。レイブンクロー寮ルートだと主人公のルームメイト兼友人ポジション。
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