魔女の微笑み 作:カトレアの花言葉
絢爛豪華すぎる緑色の封筒をぼうっと眺めていたら、他の寮のテーブルでも俺が貰った豪華な緑色の封筒と同じものを何人かの生徒が受け取っているのに気がついた。
というか、なんかよく見ればこの緑色の封筒を受け取った連中って、みんな俺と同じ1年生じゃないか。いったいどういうこった?割合としてはスリザリン寮の連中が非常に多い印象はあるが…。
ちなみに、もう片方の地味な方の封筒を受け取ったのはどうも俺だけみたいだ。これはこれで気になるんだけど。なんで母方の祖母の家に伝わるラリエットネックレス(リング付きのY字型ネックレス)は緑色の封筒ではなく、こちらに反応しているのだろうか?
それはさておき、この明らかに見覚えのある紋章と封蝋を見るに、まぁ十中八九マルフォイ家による手紙なんだろうな。今までの人生(前世も含めて)で見た中で、一番豪華絢爛な封筒だわ。なんせ宝石(エメラルド)まで装飾に使用されているし。
あとマルフォイ坊ちゃんの様子を見るに、本人はこの手紙の内容を僅かながらに知ってそう。少なくとも現在進行形で緑色の手紙を貰ってるパンジー・パーキンソンにドヤ顔で何かを語っている様子が見える辺り、全く知らないってことはないのだろう。
マルフォイ家ねぇ…。ぶっちゃけ、あの家との交流はあまりなくて、せいぜい以前にあったホグワーツ入学前の純血家系交流会後からちょくちょく手紙のやり取りをドラコ坊ちゃんとしているくらいだ。それも本当に他愛のない内容だしなぁ。クィディッチの話題とか流行りの箒の話がメインか?
ちょっとドラコ坊ちゃん側からの手紙が多い気はするが、まぁ前世のSNSみたいな感覚なのかもしれない。10代なんだし、こんなもんでしょ。そこは洋の東西を問わず、更に魔法界もマグル世界も変わらんと思う。
まぁ強いていえば、ホグワーツ基金への寄付をする際に、かのルシウス・マルフォイ理事と手紙のやり取りをしたのはカウントしても良いのかな?直接はまだ会ったことはないが、良くも悪くも事務的かつビジネス的なやり取りだったのは覚えている。
なんというか、前世における非常に大事な取引先相手や大型顧客とのメールのやり取りを思い出して地味に胃が痛かったな…。オッサンは権威や権力に微妙に弱いのだ。
あの家は1970年から1981年までの第一次魔法戦争でも、そして今から約4年後の1995年から1998年までの第二次魔法戦争でも死喰い人や闇の陣営でありながら、両戦争の戦後はちゃっかりと生き残る。まさに俊敏狡猾であり、彼らの家訓である「純血は常に勝利する」の重みが増す。
風見鶏と言われようが保身家と言われようが、他の断絶したり族滅したりしている聖28一族や門閥家族を見ていると、家族全員生き残っただけで十分以上に凄まじいと思う。死喰い人であれ不死鳥の騎士団構成員であれ、直接参戦した家はみな大なり小なり犠牲者や深刻な負傷者、逮捕者を出してしまったのだから。
もっとも、政治的失点の少なさを考慮すると、死喰い人すら輩出せずにアズカバン行きを完全に回避したパーキンソン家やフリント家の方がより凄まじい気はする。真の俊敏狡猾さぶりよ。結果論だろうが何だろうが、世の流れから最終的には離れなかったのは凄まじい。
正直なところ、家の当主が魔法省神秘部の戦いで直接現場に出て、結局は学生と不死鳥の騎士団構成員に敗北しアズカバンに一時的とはいえ収監されてしまったマルフォイ家よりパーキンソン家やフリント家の方が政治的にも物理的にも勝ち組だよな…。
というか、地味に来年度以降からマルフォイ家の権勢衰退(没落や零落ほどではない)が始まってる印象があるよな。ホグワーツ理事解任とかマルフォイ館への魔法省による家宅捜索とか。全てウィーズリー家絡みだな…。やはりお互いに不俱戴天の関係か。
パーキンソン家とフリント家が政治的に身綺麗なのは本当に侮りがたい。おそらく第二次魔法戦争後はマルフォイ家以上の権勢を振るうんだろうなぁ。スリザリン閨閥の旗頭になれるかは微妙だけど、マルフォイ家が混乱し、グリーングラス家が物理的に厳しくなるなら、もうパーキンソン家かフリント家くらいしか「政治的に身綺麗なスリザリン閨閥の聖28一族」は存在しない。両家とも魔法省大臣を輩出してるし。
第二次魔法戦争後のスリザリン閨閥は、今のマルフォイ家を頂点とした構図からマルフォイ家、パーキンソン家、フリント家の集団指導体制…というか三巨頭体制になるのかな?まぁスリザリン閨閥自体が現状より更に白眼視されそうなので、より防衛的でより慎重な閨閥構図になりそうだけど。
まぁもっとも、パンジー・パーキンソン嬢が1998年5月に発生するホグワーツの戦い直前に「大失言」でやらかしてるので、マジで政治的に身綺麗なのはマーカス・フリントを輩出したフリント家しかないのかもしれないけど。
それはともかくとして、あのお歴々とほとんど接点のない俺に、何故マルフォイ家の紋章入りの豪華な封筒が届いたのやら…。この場で開けるのも周囲の目が気になるし、何よりペーパーナイフはグリフィンドール寮の女子寮部屋にあるので、とりあえず今はポケットに入れて朝飯を楽しむか。まぁオートミールとマッシュポテトなんだが。たまには白米が食いてぇ…。あと納豆や味噌汁も。
おや?同じグリフィンドール寮のテーブルだとラベンダー・ブラウンも受け取ったみたいだな?目を丸くしているのが見える。分かるわー、その気持ち。ほとんど関わりがないか、あるいはあんまり仲が良いとは言い難い同学年男子の親御さんからの手紙とか、10代前半の女子学生からすればちょっとビビるよな。
英国流を極めた朝食(穏当な表現)を済ませて、俺はグリフィンドール寮の談話室に戻った。今日は日曜日なので、授業は一切無し。更にハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーの主人公トリオ達は、森番であるルビウス・ハグリッドが「ついうっかり」漏らしたケルベロスの名前や「ニコラス・フラメル」の名前で更にエンジン全開になり、今も図書館で彼の正体を調査中だ。
つまり、主人公達に秘密に緑色の封筒を開封して読み込むことができる。いや別にバレても問題は特になさそうだけど、紋章が紋章だからね…。「秘密の部屋」問題で校内が荒れ狂い疑心暗鬼に陥る来年度に貰わなくて良かったわ、マジで。
主人公であるハリー・ポッターと過度に仲が良くなるのは確かによろしくはないが、かといって仲が悪くなるのは更によろしくない。常に非常に薄っすらした協調関係レベルに留めておかないと。
もっとも、ロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーなら更に仲が良くなっても良いかもしれない。特に原作完結後のことを考慮すると、ウィーズリー家周りとは徐々に関係性を高めるべきだろう。人脈や保身の意味合いで。第二次魔法戦争後はウィーズリー家(魔法大臣や魔法省官僚の家族)が英国魔法界の中枢となるだろうし。
談話室から寝室に戻り、ゴシック様式の個人付き戸棚からペーパーナイフを取り出し、慎重に開封してっと…うわ、中から淡い緑色と銀色の爽やかな香りのする煙が出てきた。いちいち金がかかってそうな演出だなぁ。これ香水だよな、それもアホみたいに高いやつ。
さてさて、肝心の中身は…。
…。
…。
は?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
クリスマス、それはこの英国を含めた欧州諸国や北米圏では基本的には自宅で家族と過ごすものである。またクリスマス当日よりかなり前から家族と一緒にクリスマスツリーやクリスマスリースを制作あるいは準備をしたり、家に飾り付けをして家族間の親睦を深め、繋がりを再確認する大切な時期だ。
これは英国魔法界もあんまり変わらない。強いていえば、宗教色は1990年代の英国マグル世界よりやや薄いかもしれないが。
また今年(1991年)の12月は21日が土曜日なので、ホグワーツ魔法魔術学校は12月20日の金曜日までが授業日であり、そこから正月をまたいで翌年(1992年)の1月5日の日曜日までが休み期間となった。これは例年よりも少しだけ長期のクリスマス休暇となり、ホグワーツの生徒達やその保護者を非常に喜ばせた。
クリスマス当日は家で家族と団欒するが、クリスマスの翌日から1月の4日くらいまでの期間を利用して海外旅行に出かけたり、パーティなどの社交を楽しむ家もあるだろう。それこそ、純血や半純血やマグル生まれを問わず。
ランドール家も1990年代の英国魔法界の例にもれず、クリスマスには家族が集まりゆったり一家団欒を満喫する。今年は一家の大黒柱であるセオドア・ランドールの弟一家もやって来る。娘であるオリヴィアの叔父に該当する家族だ。彼の姪に該当するオリヴィアをたいそう可愛がっていた弟であり、オリヴィアもよく懐いていた。
懐いていたといえば、叔弟一家の息子と娘の兄妹もオリヴィアには非常に懐いていたな。自分の甥と姪になるが。確か甥は来年度、姪は再来年度にホグワーツ魔法魔術学校に入学予定だ。弟も彼の妻、すなわち自分の義妹もハッフルパフ寮だったが、自分の息子であるジェームズがレイブンクロー寮、そして娘であるオリヴィアグリフィンドール寮になってしまったので、弟一家は少しピリピリしてるみたいだ。赤獅子寮はちょっとその…なんというか…少しヤンチャ気味な気風があるからな…。同じハッフルパフ閨閥である弟一家が心配するのも無理はない。
特に甥の方は少しだけ病弱気味で、聖マンゴ魔法疾患傷害病院に通院していた時期もあったほどだ。少しヤンチャ気味なグリフィンドール寮や相互監視社会であり血縁閨閥団結主義的なスリザリン寮はまぁ心配になるのかもしれない。もっとも、今は甥も完治しているので、杞憂だとは思う。
ちなみに姪の方はミニ・オリヴィアみたいに育っているらしい。嬉しいような、心配なような…。家で勝手に初級者用錬金術関連の書籍や神秘主義入門の書籍を読み漁りまくっているとか。行きつく先は「古き賢き」レイブンクロー寮かな?ただミニ・オリヴィアなら、それこそ赤獅子寮に行くのではないか…?不安だ。そういえば家に遊びに来た時にはジェームズとオリヴィアと一緒に川で水遊びしたり、近場の森で片っ端から魔法薬の材料となる昆虫や魔法生物を採集してたな…。大丈夫かな。大丈夫だよな?
そんなことを考えながら自宅の書斎で仕事をしていると、窓からコツコツと音がした。娘が飼っているフクロウであるグレイだ。そういえば更に郵便用フクロウを増やすみたいだが、相変わらず魔法省の官僚並みに多忙な娘だな。
そんなことを考えながらグレイを部屋に入れると、手紙を差し出してきた。オリヴィアからの手紙だが…なんだろう、封筒にデカデカと「速達・最重要機密事項」って書かれているんだが…開けるのが怖い。
そう思って開封し、手紙を読んで見ると…オリヴィアがマルフォイ家のクリスマス休暇パーティーに招待された、と書いてあった。ほうほう、マルフォイ家でのクリスマス休暇パーティーにオリヴィアがねぇ…。
はぁ?え、マジで言ってる?マルフォイ家って「あのマルフォイ家」?ホグワーツ魔法魔術学校理事会理事にして英国魔法省大臣筆頭相談役のルシウス・マルフォイが当主であるあのマルフォイ家?門番家族どころか聖28一族の中でもトップの名門中の名門で、色々とキナ臭い噂の絶えないあのマルフォイ家?
スリザリン閨閥の首魁どころか、ブラック家が斜陽な1991年11月現在において、英国純血魔法族で事実上の「王家」みたいな存在じゃないか。関わりなんてあったか?こちらは吹けば飛ぶようなハッフルパフ閨閥の中堅純血家系でしかないのに。いやまぁ最近はそうでもないみたいだが。
そういえば例の交流会以来、マルフォイ家のご子息殿と娘は文通はしていたみたいだが…。まさかホグワーツ魔法魔術学校で何かやっちまったのか?寮が違うとはいえ、確かグリフィンドール寮とスリザリン寮は妙に合同授業が多かった印象なので、交流する機会は割とありそうだが。
いやそんなことより、どうしようか。一応は開催日が12月27日の金曜日なので、まぁ割と各家庭に配慮はしてくれているみたいだが…これは断れないよな。パワーバランス的にも今後の風聞を考慮しても。
オリヴィアも同じような考えのようだ。とはいえ非常に嫌々というか、例の交流会以上に参加を渋っているな。諦めてはいるようだが。
無理もない。あのマルフォイ家が主催をし、開催場所もマルフォイ館というスリザリン閨閥ゴリゴリのパーティーっぽいのだから。グリフィンドール寮のオリヴィアに招待状が来ること自体が奇異だ。
しかし、よく読むと同じグリフィンドール寮の同級生やレイブンクロー寮の女子生徒も招待されているようなので、孤立無援ではないのが幸いか。というか聖28一族でもアボット家(ハッフルパフ閨閥)とブルストロード家(スリザリン閨閥)の両ご令嬢が排除されている辺り、本当の純血しか招かないのか?確かに彼女達は半純血かもしれないが、聖28一族のご令嬢であり、我が家も含めたそこらの中堅純血家系よりも、よほど高貴な家柄なのだが…。あの入学前の「交流会」に半純血でも参加出来たのはそういうことだ。アボット家はハッフルパフ閨閥の重鎮だし、ブルストロード家にいたってはあのブラック家とも親族関係に該当するしな。
でも正直なところ、我がランドール家みたいな非スリザリン系中堅純血家系でも近年は上昇傾向にある気鋭の家門を取り込み、「寄子」にしたいのかもしれない。スリザリン閨閥以外にも権益を拡大させる橋頭堡としたいのだろう。マルフォイ家の現当主殿はあまりにもスリザリンらしき「野心家」なのは一部では有名な話だ。なんせ魔法大臣筆頭顧問なのだから。
あぁ、なるほどオリヴィアによる莫大な規模と頻度の「寄付」に着目したのか。それなら合点がいく。てっきりオリヴィアが無意識のうちマルフォイ家のご子息殿を…あー…ゆうわk…違うな、情緒を揺さぶってしまったのかと思ったわ。ガハハ。
むしろそれはグリフィンドール寮の寮生にこそ該当するな。なにせ彼らは少々ヤンチャ気味なのだから。私の学生時代でも、あの寮は風紀が乱れ気味だったし。その…性的な方面で。なんで「愛の妙薬」の構成レシピがプルウェット家のご令嬢を中心としたグリフィンドール寮女学生グループから校内にばら撒かれているんですかねぇ…。まぁそれに嬉々として他の3寮も乗っかってるのは目を覆いたくなったが。10代の多感な年頃なんて洋の東西を問わず、更に魔法界・マグル界も関係なくそういうもんだろうが。
まぁそれはともかくとして、手紙を読む限り夕食会と舞踏会を兼ねたパーティーなので、パーティードレスを用意しなければならないな。割とフォーマルそうだし、妻であるソフィアとも相談して用意するか。良くも悪くも娘のおかげで資金だけは山のようにあるし。格別でありながら派手さがない方が良いだろう。ダイアゴン横丁の「マダム・マルキンの洋装店」に行った方が良いか。
というかクリスマスには弟一家も来るので、彼らとも相談してみるか。弟はともかく、彼の妻である義妹はそういった方面にも詳しそうだし。私や妻も仕事柄社交界には積極的に出るが、良くも悪くもスリザリン閨閥の社交界というよりは、通商方面・国際取引の方の社交界になるからなぁ。少し毛色が違う。文化も客層も違うから仕方ないが。客層にいたってはメイン層は半純血がおそらくマジョリティーだろうし。
まぁせっかくの可愛い娘の晴れ舞台だ。綺麗に着飾って送り出してやりたいのが親心。相手が薄暗い噂の絶えない「あのマルフォイ家」のパーティーでも、だ。
しかし、何かマジで大事なことを忘れているような気がする。なんだろう。ルシウス・マルフォイ氏でもなく、ご子息殿のことでもなく、あの家に漂うキナ臭い噂でもなく…うーん何か本当にスリザリン閨閥の社交界的な意味で見落としちゃいけないヤベェのを見落としているような…?
ちなみにスリザリン寮ルートだと、ここはかなりギャグ調になります。某SF侍漫画並。
オリヴィアの従兄弟プロフィール
・主人公であるオリヴィアの1年下(ジニー・ウィーズリーやルーナ・ラブグッドと同世代)
・両親(オリヴィアの叔父叔母に該当)は共にハッフルパフ寮
・明るい茶髪に碧眼で瘦せ型、やや小柄(ショタ気味…?)
・ややメカクレ気味で少しだけ病弱(イケメンというか可愛い系)
・聖マンゴ魔法疾患傷害病院に通院歴あり 今は回復(入院歴はギリギリない)
・秘密の部屋時にホグワーツに入学予定
・オリヴィアの兄であるジェームズを心の底から尊敬し、魔法省懐疑論者になりかけている。
・聖マンゴで色々な患者を見てきた。特に死喰い人による被害者には衝撃を受けた。
・主人公であるオリヴィアのドスケベな体と無意識的スキンシップのせいで性癖が破壊されてしまった。可哀想。