魔女の微笑み   作:カトレアの花言葉

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ホグワーツ入学前の純血家系交流会に招待された主人公


第2話 風薫るパーキンソン家第二別荘

「本日はホグワーツ魔法魔術学校に1991年9月1日入学予定の未来と由緒ある少年少女諸君と保護者の皆々様方にお越しいただき、誠にありがとうございます。我がパーキンソン家がこのような栄えある大役を担うとは光栄の至りでございます」

 

 おーおー、あのオッサン、もう絶好調だな。昼間で、しかもパーティーの趣旨が趣旨だから酒は飲んでいないだろうけど、すんげぇ得意満面の笑みで数分は演説してるぞ。前世の取引先の社長さんと同じタイプとみた。良くも悪くも自分の演説に自己陶酔するタイプだ。

 

 ブリテン島に初夏の訪れを告げる爽やかな風が吹き、スコットランドの北端以外でポカポカ日和を感じる5月後半に、俺とお袋は英国魔法界でも有数の権勢を誇示するパーキンソン家の第二別荘に呼ばれた。別荘内部ではなく、ガーデンパーティー形式の立食交流会で、非常に開放的だった。おそらく俺たち未就学児なら走り回るガキも出て来ると睨んだ措置と思われる。

 

 別荘付きの屋敷しもべ妖精に案内され会場となる庭園に入ると、案の定スリザリン閨閥展覧会と化していた。スリザリンの紋章を誇らしげに付けている人がいるし、何より雰囲気で察せられる。僅かながらにハッフルパフ閨閥かレイブンクロー出身の純血家系がポツポツといる。グリフィンドール寮は個人レベルならいるにはいるが、まぁお察し状態だ。

 

 聖28一族やその親族、取り巻きの門閥家族や我がランドール家みたいな中堅どころを含めてそこそこの数の純血家系が招待されているようだ。尤も、主役はあくまでも1991年9月にホグワーツに入学予定の少年少女なので、意外と雰囲気は明るく、賑やかだ。

 

 ちなみに第一別荘は純粋に家族だけで使用するもので、客人を呼ぶのは第二別荘なのだとか。パーキンソン家すげぇな…。流石は魔法大臣を輩出しただけあるわ。聖28一族の他の家が断絶する家も出てくる中で、ここまで権勢を維持出来るのは本当に凄いと思う。

 

 俺がパーキンソン家の権勢ぶりやそれを維持する政治力に感嘆していると、お袋が別荘付き屋敷しもべ妖精からグラス(中身はノンアルっぽい)を受け取りながら会場内にいる純血家族を小声で教えてくれた。

 

「あちらのテーブルで歓談されていらっしゃるのはグリーングラス家の方々とそこに連なる門閥家族の方々ね。本家のご息女がオリヴィアと同学年で、更に2つ年下の妹君もいらっしゃるとか」

 

 おお、あのグリーングラス家か。姉の方は詳しくないが、妹はドラコ坊ちゃんの奥さんになる人じゃん。後々にはマルフォイ家と共に純血主義も緩和するらしいし、スリザリン系聖28一族の中では話が通じそうだ。ってか俺と同学年になるダフネ・グリーングラスって、あの金髪の物静かそうなお嬢さんか?いかにも「深窓の令嬢」って感じだ。

 

「そしてあちらの生垣の前で歓談されていらっしゃる大柄な方々は、ブルストロード家と一族郎党の方々ね。一族の誰かがオリヴィアと同学年らしいけど…いらっしゃるのかしらね?」

 

 すげぇ…いかにも魔法戦士っぽい人達だらけの集団だ。なんというか、杖を使わなくても普通に肉弾戦だけでも強そう…。確か俺と同学年ってミリセント・ブルストロードだよな?なんか…見当たらないような…あ、もしかしてあの俺よりもかなりでかいアイツか?とりあえずプロレス技をかけられないように立ち回ろう。

 

「そして…まぁ!アボット家の方々と門閥家族の方々だわ!いつ見ても温厚柔和で品があり優しそうな方々だわ…。本家のハンナお嬢様がオリヴィアと同学年なのは当然知っているわよね?」

 

 ハッフルパフ寮出身のお袋が早口になってる…。まぁでも気持ちは分かる。同じ聖28一族でもハッフルパフ閨閥だけあって本当に優しそうな方々だ。そして先ほどお袋から確認(?)されたように、中央で微笑んでいる金髪の三つ編みっ子がハンナ・アボットだろう。これまた同じ聖28一族で裏主人公ともいえるネビル・ロングボトムと結婚するお嬢さんだ。ハッフルパフ寮に入寮したら、真っ先に媚を売らねば…何せ「もう一人の英雄」と後々に結婚する方だしな。

 

 しっかし、中心にいる聖28一族って見事に女の子ばっかじゃねぇか。まだお互いの子飼いの門閥家族で囲っているから平穏だけど、いざ交流が始まるとどうなんだろう…?

 

ってか我がランドール家みたいな中堅~門閥家族くらいの微妙な純血一門はどう動けばいいんですかね?一応は出身寮の傾向からハッフルパフ閨閥の所属っぽいから、アボット家に挨拶に行った方がいいんじゃね?

 

 それとなくお袋に伝えてみると「主催者のパーキンソン家の方々に挨拶をするのがまず最初」と返された。そりゃそうだ。至極ごもっとも。

 

 そう思って主催者席の後方に位置する華麗な庭園用長椅子や豪華なテーブル群を伺うと…いた。後々に同学年のスリザリン寮で女子生徒序列一位になるであろうパンジー・パーキンソンとそれを文字通り取り巻いているパーキンソン家のご親族や分家筋の門閥家族のお歴々だ。

 

 どうも退屈そうにしているな…まぁ無理もないか。主催者側じゃ周囲の大人達も忙しいだろうし、何より彼女がご執心のドラコ・マルフォイ坊ちゃんがいないもんな。あの坊ちゃんはどこにいんだ?

 

 俺がマルフォイ家の跡取り息子を探していると、ようやくパーキンソン家の司会者のオッサンの大演説が終わったようだ。たぶん誰も聞いてないぞ、あれ。

 

 演説の終了が合図だったのか、会場の招待客達がみんなゆっくりと動き出した。まずは聖28一族の少年少女達が主催者のパーキンソン家に挨拶に行き、その後に親族や門閥家族、そして最後に我々のような中堅純血家系だ。面倒くさい形式だが、これでもまだ未就学児が主役なので非常にマシな方らしく、大人オンリーの純血家系の社交界だと規則や形式がもっとあるらしい。うへぇ…。

 

 待っている間は暇なのでお袋と会話をしているんだが…さっきから無茶苦茶視線を感じる。そもそも会場に入った時から注目を浴びていたようだが、遠目で分かりづらかったらしく、こうやって移動時間になると視線の集中砲火を浴びてしまう。

 

 そりゃ転生してから鏡を見るたびにドン引きするくらい妖艶で華麗なのは自覚していたが、まだ10歳にもなってないガキだぞ?そこまで見るもんなのか?

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 パンジー・パーキンソンは少しイライラしていた。以前ほんの少しだけ会った時から気になっているドラコ・マルフォイとなかなか会えないからだ。そもそもドラコ・マルフォイだけでなく、マクミラン家の子息やノット家の子息もいない。というのも、どうも聖28一族の男子だけ急遽何らかの用事で呼ばれたらしく、後から遅れてくるそうだ。

 

 ちなみに非聖28一族の他の名門純血家系の男子や門閥家族は会場にちゃんといる。クラッブ家の子息が一心不乱に会場の料理を味わっているのが遠くから見えるし、米国系名門家系のゴールドスタイン家の子息も雑談に興じている。

 

 「聖28一族の男子に交流の心構えを説く」というのが表向きの理由だが、どうも「とある純血令嬢」に対する注意喚起が原因らしい。自分の同期にどんなヤバい女子がいるんだろう、とパンジーは少々ビビッていた。

 

 パンジーが物思いにふけっていると、親戚の叔父様による大演説が終わり、招待客が自分と同じ年の少年少女を連れて挨拶にやって来た。パンジーは他のパーキンソン家の親族や腹心の門閥家族と共にこれらを受け流し、自分が友とする人間や子分候補とする人間、距離をおくべき人間を見定めていった。こういった人間観察は良くも悪くも純血家系の人間なら誰でも出来なければならないが、パンジーは割と得意な方だった。

 

 聖28一族であるグリーングラス家の息女やブルストロード一門の娘を自らの友と見定め、アボット家の息女は距離を置こうと決めた後は、割と気楽に捌いていった。門閥家族連中の媚売りを淡々と受け流し、子分候補や子分よりは扱いが上の取り巻き候補をどんどん決めていった。そして門閥家族ですらない中堅純血家系の番になると、もう後は惰性だった。

 

 少々疲れてきたころ、パンジーは周囲がざわめいているのに気がついた。何か失態でも犯したのかと身構えたが、どうも自分が原因ではなさそうだ。

 

 内心首を傾げながら親族と共に次の中堅純血家系を待つと、一組の親子連れが来た。母親と娘という今まで散々あった組み合わせである。そう思い、声をかけようと自分の同期となる女子の方を向くと、絶句した。

 

 腰まで届くキャラメルブロンドのロングヘアに、瞳の色はエメラルドグリーンの美女がいた。そう、美女である。美少女とは言い難かった。顔立ちは非常に美しいのだが、「可愛い」ではなく「妖艶」とか「華麗」といった言葉が似合う容貌で非常に存在感を放っていた。また、顔立ちと並んで身体の方も凄まじい魅力を放っていた。同世代の女子よりも身長が高く、胸も目立っていた。現時点でこれなら、成人したらどんな「魔性の女性」になるのやら…。

 

 とても同い年には見えないが、ここにいるということは同い年なのだろう。そうパンジーが思い直していると、その美女が低いアルトボイスで話しかけてきた。

 

「初めてお目にかかります、パーキンソン家のご令嬢様。私はランドール家の娘で、オリヴィア・ランドールと申します。ご令嬢様のご尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じ奉ります。聖28一族や門閥家族の皆々様方とは並ぶのもおこがましいですが、どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

 

 ランドール家…あぁ、中堅純血家系にそんなのがいたな…と思ったパンジーだが、ふと最近は割と聞き覚えのある家だと思い出した。曰く、昨年の10月頃にグリンゴッツの小鬼連中と組んで欧州や北米のマグル連中の金融市場を荒らし稼ぎまくった家があったと。更にそれと前後して、極東の日本という島国で、現地のグリンゴッツ銀行支店を通して何やら株式関連で怪しい動きをしていると。

 

 確か元々は外国との魔術品交易関連を生業とした家だったが、まさか小鬼どもと繋がりがあったとは…。グリンゴッツ銀行は魔法界唯一の銀行であるが故に世界中に支店がある。それらの国際情報網は侮りがたく、国際魔法貿易を扱う商人どもは重視しているらしいが…ランドール家の家業を考慮するに、そこの繋がりか?

 

「そう。どうもありがとう」

 

 ランドール家の躍進とその要因を考察しながらも、パンジーは素っ気なく返事をした。確かにマグルども相手に荒稼ぎした「活きの良さ」は認めるが、所詮は門閥家族にも劣る中堅純血家系の家。聖28一族の娘である自分とは格が違い過ぎるからだ。

 

「ははっ、我がランドール家は偉大なる純血の中の純血であるパーキンソン家の皆々様を模範とし、精進いたします。聖28一族よ、永遠なれ」

 

 まぁ立場はわきまえてるようだし、この娘も他の門閥家族どもや中堅純血家系の連中と同じくこちらを敬ってるのはよく分かった。それだけでも良い。聖28一族への態度も素晴らしかったし、まぁホグワーツでも取り巻きにしてやろうか。

 

 パーキンソン家のご令嬢はニタリと笑いながら未来のホグワーツ入学後の関係性を夢想していた。なぜ聖28一族の男子達が注意喚起を受けているのかも忘れて。

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 うひょーむっちゃ緊張したわ。やっぱ原作のネームドキャラ相手だと、ここが『ハリー・ポッター』の世界なんだと再認識するわ。最近は良くも悪くも魔法界の人間らしくない行動ばかりとっていたから、良い刺激になった。

 

 1980年代の国際金融市場の歴史を知っていたから、それらの結末を逆に利用してグリンゴッツ銀行の小鬼達を通して荒稼ぎしたからか、自分が魔法界の人間だということをうっかり忘れそうになってたわ。いかんいかん。

 

 1995年6月24日(ハリー・ポッターが4年生)に「名前を呼んではいけない例のあの人」が復活し、1996年から本格的に第二次魔法戦争が激化し、英国魔法省は陥落するわホグワーツは死喰い人が牛耳って地獄になるから、今のうちに両親や兄貴が国外避難出来るように金稼ぎと国際人脈作りを今以上に頑張ったわ。おかげで小鬼連中からは畏怖の目を向けられ、魔法省やウィゼンガモットからは注視され、純血家系コミュニティでは奇異な目で見られたらしいが後悔はない。

 

 もともとはランドール家の家業を手伝う名目で親父やお袋の「お手伝い」や「おつかい」としてグリンゴッツ銀行に出入りしていたが、あいつらガキ(見た目は美女)相手でも良くも悪くも対等に接するから、あれよあれよと事態が進んでしまった。

 

 まぁそんな過ぎたことはどうでもいいとして、やっと同世代の連中と交流が出来るぜ。どんどん媚びへつらい、なんとしてもホグワーツ入学後の生活を盤石にしないと。少なくとも上手く立ち回れるだけの「武器」を手にいれねば。

 




劇場版『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のパンジー・パーキンソンは凄く印象に残りましたね…無茶苦茶美人で、本当にビックリしました。

実は主人公の「容姿」は某週刊漫画作品のキャラをモデルとしております。中身は全く違いますが。
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