白夜と藍嵐   作:凍星 奏雨

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【登場人物】
ーー銀狼隊戦闘部・一年
椛野(かばの)穂咲(ほざき)・赤毛の少女。〈種子〉
仙慈(せんじ)寿人(ひさと)・目隠れの少年。〈万華の右眼〉
金時(きんとき)射弦(いづる)・白髪の少年。《剣士》
小森(こもり)蜜歌(みつか)・桃毛の人狼。〈桜援〉
土内(どない)游游(ゆうゆう)・黄緑髪の両性。《植人》
鴻上(こうがみ)(しの)・白インナーの少年。〈影絵〉
霞ヶ浦(かすみがうら)兎子(ばにい)・兎尾の少女。
添木(そえぎ)(ばん)・三白眼の少年。〈岩纏〉
甘扇(あまおうぎ)(まつり)・三つ角の少女。《鬼》


ーー銀狼隊幹部
彼岸崎(ひがんざき)(にしき)・空色目の少年。戦闘部管轄。
朽羽(くちば)那由多(なゆた)・三つ編みの少年。支援部管轄。



第二十二話 天秤は知らん顔 (付記・能力考察)

 空中に極彩が浮かんだ方面へ駆ける。駅の方角に近いけど、逸れる。距離的には線路沿いの何処かなのだろうか。

 勝手に動かれても困るので私も乗ったが、こうしてまっすぐ突き進んでもすれ違いそうで少し不安だ。

 周囲を鋭く見渡しながら、どんな障害にも一直線に越えることを意識した。

 細い路地を抜け、時折物を蹴飛ばすのは、新宿区の喧騒を走り抜けた記憶を思い起こさせる。

 迂回が面倒で、種子を足伝いに屋根へ上る。――途端視界に入ったものから、私は身を隠すように屋根の起伏を使った。

 右側、百メートル以上は離れた先で、土内さんの姿が見えた。一発でそうと分かったのは、腕を電柱に伸ばして振り子運動する移動方法は現実的に考えて、土内さんくらいなものだろうという推察でしかないけど。

 進行方向は大雑把に見て私が居た方角。少なくとも、鉢合わせるようなことはなさそうに思う。

 前を見ても、彼の姿は記憶に残った。

 随分と、随分と彼は自由に動く。

 尊敬出来ないところも多いけれど、土内游游の伸びやかさは、どうにも記憶に爪痕を残すらしい。

 走り始めてどれくらいか。短い時間で二人目を見つける。

 その少年は道路の中央で、私が屋根に飛び移るところを進路上で見つめていた。

 まるで立ちはだかるように。

「悪いけど加減はしないから。先約があるの」

 屋根に縁に立って、私は言う。

 黒髪で眼鏡を掛けた少年。ここまでは彼岸崎先輩と一緒でも、その眼差しには覇気がなかった。この期に及んで踏ん切りのつかない立ち姿で、彼は張りのない声を出す。

「仙慈か……」

「だったら何?」

 よく見ると髪の裏に覗かせる白いインナーカラー。彼は確か、Aチームの気弱そうな……。

「い、いや」

「別にいいけど。貴方、名前は?」

 彼は構えるように一歩退く。

 その内に、私は塀を介して道路まで降りた。地面を蹴れば既に格闘の間合だ。

「なんで今」

「名前の知らない人を蹴り倒すのも、どうかと思ったから」

「…………鴻上篠。き、君は椛野だろ。言われなくても分かる」

 どれだけ彼は吹聴したのやら。

「そう」

 長引かせるつもりはない。彼は丸腰で、ともすれば仙慈君と同じタイプ。

 ならば先手必勝――駆け出した瞬間、視界が闇に染まった。

 

 

――ビビって近付かねえってのも違えよな……!

 三白眼は迷いを滲ませながらも、空中に浮かんだ二つの能力物質を反復させる。

 添木番もこれまた最短、一直線に極彩と種子の伸びる方面へ走った。参加者全体で見れば最も極彩から遠く、彼自身、このまま走り続けて件の能力者と出会うとは思っていなかっただろう。

「どいつも、やることが派手だよなあ……」

 ボヤキながらマンションの敷地を突っ切る。一号、二号、三号棟と抜け、マンションの管理する公園を遊具傍目に走った。

 彼は今までの試験を反芻する。

 歯が立たなかったどころか、自分が足を引っ張ってしまったのではないか――そうとさえ思わせる第一試験。そしておそらくは第二試験の、人質立てこもり事件。つたない説得をしているうちに、チームメイトが奇襲で終わらせてくれてしまった。

 自分に彼らほどの突破力も技量もない。ましてや、こうして敵を誘き寄せるくらいの自信だって今はない。

 ピタりと、添木の足が止まる。

「くそッ……! 試験中に何考えてんだ、俺」

 両手で頬を叩く。公園内にささやかな音が響いた。

 奇しくもそれが、空中に円を描くよりも極めてささやかなそれが、一人の少年を誘き寄せた。

 進み始めた添木の前に銀色が(はし)る。

 一直線に投擲された刀剣は、遊具――くまのスプリング遊具――の楕円の持ち手に刀身を潜り抜けさせ、柄が引っかかった。

 くまがぐわぐわと揺れる。刀剣ががたがたと揺れる。

「……!? …………?」

 持ち手と柄の衝突音と、間抜けた運動音に混乱を隠さぬまま、添木は投擲された方を向く。

 音もなく歩み寄るのは白く長い髪をひとつの房に纏め上げ、糸目の先に闘志を見る者。

「金時……」

 零れ落ちそうになった鈍刀『蛇尾』を持ち、滑らかな手付きで切先が三白眼の少年に向けられる。

 よりにもよって――そんな言葉が、添木の脳裏に過ぎる。

「手合わせ願います」

 金時の言葉に、右脚を前に出して応える。

「ぶっちゃけりゃ、俺は圧倒されっぱだったけどよ……」

 腰を深く落とし、形作るのは歪なクラウチングスタート。触れた地面に亀裂が走る。

 双方の緊張は交わり、情熱と平静の混在した沈黙が場を焦らした。

「ここで退くってのは、漢じゃねえだろ――っ!」

 

 

――私は椛野さんにはなれない。

 豆の木よろしく伸びる枝を見て、小森蜜歌が覚えたのは悲観だった。だが、内情は清々しく、表情にも迷いはない。

 熱に浮かされて自分を見誤るつもりはない。毅然と言い切るかのように、彼女の動きは淀みなかった。

 極彩と枝木を直線で結んだ経路には近付かず、かといって離れるようなことはしない。桃毛の人狼は四足歩行で道なりを進む。

 小森の脳内地図では、直線を内側にして、円を描くように移動している。道を素直に使っている分、多少ガタガタではあるものの、概ね目論見通りと言えた。

 進行方向の左寄りに土内の姿が見える。地面を低く走る自分と、電柱や屋根を介して高所を渡り移動する彼では補足にも差が起こるだろう、今のうちに接近しようと、少女は舵を切る。

 角を曲がった時だった。

 アスファルトを蹴る人狼に、宙を跳ぶ兎が迫る。

 否――兎を異能で摸倣した少女、霞ヶ浦兎子が、今まさに小森へ飛来する。

「ッ――」

 空気を切る音を素早く聞きつけ、中央を跳ねた小森は道の端へ転身。

 強く地面を叩く音が響いた。

 相当な衝撃と、それをものともしない足。眠たげな細い瞳を臨戦態勢の鋭い目へ向けながら、着地の体勢からゆっくりと上半身を伸ばす。

「完全に奇襲だったと思うんだけどなぁ」

「霞ヶ浦さん……」

 人狼もまた立ち上がり、両手を前に構える。黒い肉球と、可愛げのない爪を見せつけるように。

「知ってくれてるんだぁ。なんか悪い感じ」

「悪い、ですか」

「だって、きみの名前知らないまま勝つのって、ねえ……?」

 眠たげな眼差しは一転して、挑発的なようにも見える。薄く持ち上がった口角も相まって、普段の小森ならば気圧されてもおかしくはない。

「――今なら私、頑張れる気がするんです」

 呟いて口を結び、ほんの僅かに長い瞬きをする。

 開かれた瞳に、勝利が映る。

「忘れられたら困るので、負けた後にでも聞いてください――っ」

 

 

 第二特別訓練室。

 動き始めた状況に、さしもの二年生もモニターへ釘付けとなる。

 幹部二人も同様で、引き攣った笑いを朽羽彼岸崎両名が浮かべている。

「女子こわ……」

「一年男子が紳士的なのかもしれないよ」

「んじゃこの土内はどうなんだよ。……あからさまに()る気ねえ感じだぞ」

 強引に繋げたな、と苦笑しつつ、朽羽は擁護を図る。

「この試験で厳しいのは小森さんと土内さんだからね。小森さんはまだマシかもしれないけど……彼ないし彼女は、むしろ積極的に戦いに行く方が減点ですらある」

「ま、そうか。あの身体性能は万能っちゃ万能だが、今回の勝利条件は流石にキツい……その為の支給品ではあるんだがな。でも小森がキツいってのはどうなんだ?」

 画面には二人の少女。空中に足場を出し、自由な直角軌道で鋭い蹴りを放つ霞ヶ浦と、持ち前の俊敏さで躱しながらも反撃を試みる小森の姿がリアルタイムで映し出されている。

 気後れした様子もなく、少女は爪を振るっていた。

「戦い向きの性格ではないって懸念は……どうやら的外れだったらしいけど、能力が死んでるのは難しいね」

「……あー、あの桜って自分には使えねえのか。そうか。でも戦闘力はそれ頼みでもねえだろ?」

「人狼の戦う術っていうのは、相手を倒す武器じゃない、相手を殺す武器なんだよ」

 気安く言ってみせる朽羽だが、表情に愉しさは微塵も見て取れない。

 実際に少女が振りかぶる爪はことごとく急所を外れている。これを偶然、技量不足と断じるのはあまりに軽率で、滑稽ですらあった。

「しょうがねえわな。うちの方針で戦うんじゃ、ここを忖度するわけにはいかねえ」

 彼岸崎がそう言い出すまでに間はあった。互いに目を見ず、どことなく他の隊員の意気も落ち着いたような気がした。

「仲間相手に戦わなくちゃなんねえってなぁ。皮肉かってんだ」

 漂った絶妙な空気を埋めるように呟いたものだが、言葉はより深く沈殿していく。

 かといって、朽羽は落ち込むでもなく、むしろ軽い笑みを取り戻した。

「皮肉ね、別にそんなつもりはないよ。実際一部の手の内が分かってた方が、動きは考えやすいだろう?」

「俺が言いてえのはな――」

「……待った」

 言葉を断ち切り、朽羽は上体を起こしてモニターを注視する。

 動きを止めた目隠れの少年、緩慢に移動する鬼の少女も、余さず映すマイクロドローン。

 九人の受験者は六つの場面を作り、そのうちの一つへ視線が収束していく。

 

 

「――強いわね。貴方の能力」

 引き気味に戦う鴻上君を追う形で、自然と種子の使用も手札に来るようになった。

 良いエンジンだ、と流石に口には出さない。

「どーもっ……!」

 道幅は三人が並んで歩けるくらい。走る鴻上君を追い越すように、横を抜けようとする。走力の差的には余裕だが、彼の足元に黒く素早く動くモノがあり、それが邪魔をするだろう。

 鴻上君の足元から黒い線が二本、私を囲おうと放たれた。軌道は直線と直角、正方形を描くようにして動く。ノーモーションで放たれたそれは、既に命令を受け付けているか、さもなくば鴻上君の影が自律しているような動きだ。

 囲われる前に脱出を図るが、規模の小さな正方形は形成が間に合ってしまう。

 私を入れた黒い正方形の枠組みが出来上がる。これが鴻上君の能力の第一段階。

 意識を自分の能力に割いておく。彼が思い描いたもの次第では、能力を使わずに打開するのは不可能だ。

 枠組みの内側が瞬時に黒く染まる。その頃には、彼も足を止めて私を睨みつけていた。足元に影がない、能力の媒介に影を使っているのは確定だ。

 黒は光もなく、ともすれば遠近感を喪失した状態で立体化する。

 今度の立体化は――眼前は封鎖するように黒く染まる。黒壁が地面から()り出るというのは今回が初めてではない。

 急いで背後を振り返る。過程で見えた右側面、鴻上君側は、今まさに黒の立体が顕在化される瞬間だった。

 背後も黒壁。左側面は塀で通行不可。

 右側面を見ても、既に鴻上君は見えない。黒が埋めている。

「……またそれ?」

 空を見れば、徐々に右側から黒く染まりつつある。無機質な侵蝕に感じる恐怖も、対処さえ分かれば怖くない。

 まだ呑まれていない空へ種子を浮かべる。遠近感は塀で測った、丁度侵蝕の進行上に種子は出て、枝木が防衛ラインのように引かれる。

 黒が種子に衝突する。

 劇的な変化は何もなく、ただ、黒は私の出した植物に呆気なく塞がれた。

 全域は間に合わなかったから、枝木の及ばなかった端っこだけが構わず侵蝕を進める。そして、案の定黒い箱に閉じ込めるような形を成した。

 どうやらこの顕在化した黒色は、進行上に何かがあるとその時点で動きを止めてしまうらしい。

 もう一つの種子を使って上から脱出しようと、足元に種子を出す。

 足を掛けた瞬間、黒が消えた。

「っ」

 これは初めてのことだった。さっきまでは私が脱出してから黒が消えていたのだ。

 咄嗟に鴻上君のいた方角を見ても――いない。

 息を飲む声は視界の右端に。

 守勢には出ない。声の主を視界の中央に収めながら、すぐさま右足を突き出した。

「ぁ……ッ」

 柔らかな手応え。蹴りは鴻上君の腹部に深々と入った。

 追撃に備えて右足を踏み込む際、種子を動線上に出して数瞬でも早く動作を完結させていく。

 足元の種子を踏み、よろめく彼の顎を左足で蹴り上げる。勢いのまま飛び上がるようになった私の身体は、そのまま両肩を押さえつけるようにして組み敷いた。

「ようやくそっちから近付いてくれたわね」

 両肩を膝で踏みつけ、拳を構える。

 それでもなお、鴻上君の右腕に力が入るので、なにかと思えば――平手が上を向いていた。

 通信が入る。見知らぬ女性の声だ。

『鴻上篠戦闘不能、残り八名。五分後に医療部が到着します』

 こんな感じか。判断が迅速で助かる、やりすぎるといけない。

 彼は朦朧とした様子で、一応意識は残っているみたいだけど、動けそうにはなさそうだ。

 何もしないのが良いのかもしれないと思いつつ、私は鴻上君を塀に寄っかからせた。呻きつつ、呂律の回らない口で感謝を伝えられる。そもそも私がそんな目に遭わせたので、あまり快く受け取ろうという気分にはならないが。

 初めて戦ったのが能力に偏重したひ弱な子というのは、幸運だったかもしれない。

 ……この場を離れる前に、どうにも我慢できなかった言葉が出てしまう。

「仙慈君と天秤に掛けた結果よ、これが」

 さて、仙慈君がいる方角は何処だったかな。

 

 

 通信を聞き入れ、目隠れの少年はほくそ笑む。

 一階にはリサイクルショップと本屋が、外階段を経由する二階には百均が入っている、やや広めな敷地を持つ商業施設の駐車場は、いまやポツンと少年が佇むだけの寂しげな空間だった。

「彼が真っ先にやられてしまうとは……武闘派が多い今回の試験では、やむを得ない結果という訳かな。僕も気を引き締めなければならないね」

 仙慈寿人は百均、それこそ現実世界の同一座標で買った腕時計を眺める。

 ここに陣取ってから既に数分が立っていた。彼は知る由もないが、丁度椛野が鴻上を相手していた時間とも重なる。

「ふむ、本来なら既に落ち合うべき距離感だった。察するに、鴻上君へ阻まれていたのだね。……無粋とは言わないさ、火付け役となってしまったのだから、同情を禁じ得ない程だとも」

 誰に聞かせるでもなく、彼は一人納得する。

 仙慈のいる駐車場は十字路と直接()しており、見晴らしがいい。十字路の道自体も広く、彼は一目見てここだと決めていた。

 彼は空を見上げ、もう一度居所を伝えようかと迷う。

 しかし、ゆっくりと首を横に振る。

「焦らしてくれるよ。またとない機会に波乱はつきものだが――今回ばかりは、万全を発揮させてもらいたいところだね」




――彼岸崎錦の能力考察――

【第四回】〈万華の右眼〉

四回目は仙慈寿人の能力だな。
このコーナーでは能力の内容に加えて、分かりやすくメリットとデメリットに分別した内容を解説していくぜ。

万華(ばんか)右眼(みぎめ)
自分を中心に衛星軌道する物体を空間に出す能力。
対象と目を合わせる程、出せる時間と量が増える。

【メリット】
・物体に干渉しない
・能力物質と相殺する
・理論上視界内全域へ瞬時に発生させられる
・速度が可変


【デメリット】
・物体に干渉しない
・能力物質と相殺する度右眼がダメージを負う
・右回りしか出来ない
・たった一人にしか適用しない
・目を合わせなければ発動出来ない
・出現時にポインターが出る

メリットデメリットは一息に言うと難しいものがあるな。
最後のポインターについて詳しく説明するぞ


白い線の正円(ポインター)が浮かぶ
椛野は作中でレーザーポインターのようだと表していたが、かなり的を得ているな。
対象を決め、極彩を出す時にはこの正円が浮かぶ。
このポインターの内側で、ポインターと同じ高さの座標に極彩を回すことが出来るんだ。
例えば、三層のレイヤー(ミルフィーユでもいい)を想像してほしいんだが。
真ん中の層に正円が出たとすれば、上層と下層に極彩を出す事は出来ない。尤も、新しく白い正円を出して、攻撃に高さを付けることは出来るがな。
そしてこのポインターを出す事で、視界を合わせて溜めた仮想のエネルギーを消費する。所謂初期費用って奴だ。
正円は必ず仙慈の『右眼』を中心に据える必要があるが、中心に据えてさえいれば、必ずしも地面と水平である必要はない。作中では《月面の麗人》を地面へ叩き落とす為に、右回りの極彩を縦回転で出していたな。

時間と量についても解説するか。
具体的な時間は避けるが、仙慈の右眼を見続けて100のエネルギーが溜まったとしよう。
10のエネルギーを使ってポインターを出し、5のエネルギーを使ってその中に通常の大きさの極彩を出す。ポインターと水平になるなら5のエネルギーを使って幾つも増やせる。
それから10使って大きな極彩を作る事も出来るし、超遠くへ出現させる20エネルギー分のポインターを発生させることも出来る。
そして維持費で段々エネルギーを使う必要がある。
エネルギーの溜まり方についてだが、眼鏡だとかの薄いガラスくらいなら貫通して目を合わせたことになるらしい。髪で目を隠しても溜まることから、眼球の露出度についても厳しくはないみたいだ。だが、物理的な距離が遠ければ溜まりは悪くなる、物体が隔てている場合でも同様に、隔てている面積に応じて溜まらなくなってくる。

長くなったが、〈万華の右眼〉の『極彩』についてはこれくらいだ。
話す事はもう少しある。奴の右眼自体だ。
アイツは〈麗人〉の魅了効果を無効にしていた。これは第二回目でも言及していたな。
この通り、瞳自体も常人とは別の要素がある。概念的には虎郷の目に見えないものを見る〈浄眼〉と近いかもな。
そもそも虹彩が極彩色に煌めきながら動いているわけだし。


ここから先は余談になるが、〈万華の右眼〉は能力器官が当て嵌めやすい能力だ。
能力器官とはその通り、能力を使う為に発達、変化した器官のことで、〈心剣〉の場合は心臓、〈麗人〉の場合は表皮、〈桜援〉の場合は肉球のことを指す。
解説をしてないが、鳴島の〈放電〉なら神経に紐づいて発電器官がある。
何故鳴島を出したかと言えば、器官は能力を使う為に発達した――鳴島で言えば、電気を使う為に発達したものだからだ。つまり、電気に耐性があると言える。
当然〈万華の右眼〉の器官は右眼だ。
能力を相殺する能力の器官がどんな耐性をもっていても、最早不思議じゃねえよな。
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