彗星が近い 作:情けない奴!
ゼナ様がお亡くなりになられた…その悲報はすぐさま広がり、アクシズ内、強いてはジオン公国国民へと広がっていった。しかし、皆が悲観に暮れる中、数多の思いを受け止め、軍内部でその流れに反応する人物がいた。スペースノイドの独立を志、だからこそ!と声を挙げるエンツォ大佐である。
緊急会議招集という形で、参謀及び大佐級の者達を集め語り出した。独立戦争という今もその遺志が続く事柄を先頭に、今のジオンの士気が低下していく現状、今回の悲報から始まり、インフラなど社会情勢の悪化…我々がジオンであるという意思の統合を合わせ、皆に向けた行動をすべきであると提案したのだ。その話題の中心となったのが、母を失って間もないミネバ・ザビ様についてである。
「ミネバ様がジオン公国公王の正当な後継者である事を全国民に知らしめるためミネバ様の即位式を執り行うべきであると」
まだ一歳であるミネバ様を祭り上げる行為に難色を示す者も多い中、民衆へのアピールと士気の向上は確かなものとなる。各参加した者達の声が飛び交う中、その場にいながら、上から見下ろすかの如く、冷静に物事を見ているマハラジャ提督がいた。
(…一語一句が聞いた通りか)
エンツォ大佐が語り続けているジオンの生末。マンマより聞いた、未来という可能性が今、現実となって体感することになった。その正確な予言の如き知識、ただ語っていただけだと言うのに劇を見ているような心境である。
「提督、ご決断を・・・・・」
「うむ・・・・・」
最終的に公王位継承式に落ち着くのも聞いていた通りだ…末恐ろしい事だ。ハマーンやマンマと関わり、未来という現実に触れる機会ができ、自分はどこか上の空であったのだろう。
(この感覚を、13歳の少女が抱き続けていたか…ハマーンよ、未来という重みは想像以上だ)
何を考える、何かを決める、何かに向けて行動する…そういった答えを、可能性という未来を見続けて結果を知り続ける。一見羨ましいと思うかもしれない、だがその実態は名状し難い恐怖に襲われ続ける事になるのだ。
明日にはこうなる、次にこうなる。一度や二度であれば、順序を立てて対処できるであろう。だがそれが無限、例え有限だとしても途方もない回数をこなす事になるとしたら…そして、その見え続ける未来に自身が見たくないもしもがあれば…
「マハラジャ提督」
「シャア大佐、すまんな」
「いいえ、私が招いた事ですので」
…エンツォ大佐が緊急会議招集をするに当たって、シャア大佐の件は互いに水に流そうと提案してきた。一見、己の器を見せる行為を含んでいるのかと思うが。
(連邦との戦闘が近い故か)
シャア大佐も早期に牢から出られるチャンスを逃す気はない。表顔では和解を受け入れ、会議に出席していた。この提案を受け入れるに当たり、エンツォ大佐とシャア大佐両名の関係は良好であるとアピールも兼ねているようだった。シャア大佐は許した訳ではないようだが、表立た顔に出すような事をせず抑えていたのが見て取れた。
「マンマから何か」
「いいや、何もない。彼女から直接聞いてほしい」
「そうですか…」
ハマーンとマンマ、あの二人からあの場にいた者達に対し言われたことがある。シャア大佐には未来について語るなと、念を入れる様に言われたのだ。理由は定かではない。彼ほど頼りがいのある人物に何故教えないのか、彼から意義のある回答が出ると考えられるのにだ。
(ハマーンと問題を起こすのは…それこそ未来の出来事のはずだ。彼に頼ることが危険だと思っているのか?私に語った問題外での事柄…彼の性格、いや本質の部分なのか?)
情報が足らない。憶測で他者を見るなどあってはならない事だ…なるほど、これは泥沼になる訳だ。答えに近いからこそ、その答えへの道を出そうと動く。マンマが陥った思考は実に単純で、そして明確に一律にしようとする遺志。今を見れなくなるのも頷ける。
「…シャア大佐にとって、マンマはどう見えるかね?」
「マンマですか、NTとして…全てを受け止める存在でしょうか」
「ほう、それは何故だね」
「表現に困ります。いったい何を聞きたいのですか」
「いや、何でもない戯れだよ。忘れてくれ」
触れてほしくない事か。全てを受け止める…彼女が?ふむ、私にはわからない感覚なのだろう。シャア大佐自身もNTであり、特殊な感覚を有している事からNTでしかわからない何かがあるのかもしれない。
(ジオン・ズム・ダイクンの正当な後継者である彼に期待するな、か…)
マンマから聞いた未来の出来事。ジオン残党からなる過激派の出現、連邦の腐敗、それに対処していくシャア大佐…その過程で絶望し、アクシズを地球に落とす結果となり、連邦のガンダムのパイロット、アムロ・レイと消息不明となる。
(理解できるが、肝心の各個人の考えがわからんと何とも判断に困るな)
マンマは未来について話した。我々が陥る過程も…だがその中で、シャア大佐が関わる事に関しては顔をしかめながら、流れしか話さなかった。より詳しく聞こうとしたら、ハマーンに話しかけられ聞けず、その後も両者が目で語るように話題を避け続けた。
(助け合うと言葉にしながら、ハマーンよ…背負う覚悟はあれど、背負い過ぎているのを自覚しておるのか)
娘が未来の先導者として名乗りを上げた。その背中を支えてほしいと、自らだけでは無理なんだと、親として子にそんな場所に立ってほしくない気持ちはある。だが自ら選択し、下りる事のない遺志を見せられたのなら…共にその道を歩む覚悟はとうにできている。
(私の出来ることをやるとしよう)
エンツォ大佐の話も終わり、参加した者達が席を立つ中、流し目で小太りな男を見た。現在、とある策をハインツ少佐に話し、スパイの情報と並列してあの男の経歴を探っている。過去の情報は抹消されているのが多く、著しくない結果になりそうだと伝えられ、卑怯な手を使わざるえないかと…前の自分なら選択に躊躇したであろう事柄に、罪悪感を感じた。
教えられるまで知り得なかった情報だ。知るすべもなく、相手側の主張を鵜吞みにできなかった。違うな、【罪人の言葉】という先入観を持ってしまっていた故に海兵隊の真実を信じられなかった。我々が入港拒否したのをどんな気持ちだったか…思うだけで心が苦しくなる。罪を擦り付けた者に対し、最後まで責任を持てと思う気持ちもあれど、まだ私は自主的に告白してくれないかと思ってしまう自分がいる。
「シャア大佐。これからの目標を話してもよいかね」
「目標ですか。ジオンとしてではなく、でしょうか」
察しがいい。流石と思うべきか、マンマとの関わりに引っ張られたと思うべきか…それは自分もか。
「地球連邦が発足した人類統一過程において、我々スペースノイドは強いられてきた。それにより我々ジオンを筆頭にスペースノイドは立ち上がった。今もなおアクシズに集まる者達、独立という意思の下に集う者達。だがそれもまた…歴史の繰り返しに過ぎないのだ」
スペースノイドと位置づけられる我々は、人口増加に伴う地球からの移民者。権力者がアースノイドと呼ばれ地球に残り、地位の低い者を中心に宇宙に上げられたのが始まりだった。ラプラス事件…宇宙移住に反対派、分離主義者によるテロ行為によって宇宙世紀が幕を開け、今に至るまでの争いの歴史を作り、紛争、独裁、支配、今の地球連邦の統一政権を生み出す切っ掛けとなった。そして今、ジオンと連邦という形でまた争い傷つき、繰り返されたのだ。
「…人は愚かです。どんなに傷つこうと、その事実は歴史の中に埋もれていく」
「掘り返すのも人である…その行為を無くすことはできないだろう。しかし、長引かせる事はできるかもしれない」
我々ができる事は、未来の者達に託す事だ。ああ、無責任と言えるかもしれない。だが夢がある。人の夢、新たな拠り所を創るというのは。
「もう一つの地球を創ろう」
宇宙空間で二機のゲルググが争っていた。方や、経験豊富なパイロットとしての力量を存分に発揮し、もう片方のゲルググの後方を陣取るように動き続ける。劣勢に見えるもう片方のゲルググだが、後方から迫るビーム兵器をまるで見えているかのように最小限の動きで避け、反撃に移るを繰り返していた。
「っち、何なんだお前は!素人みたいな動きをする癖に!…ッしかとしてんじゃないよ!」
通信で聞こえるように声を荒げて、今も避け続けているパイロット、マンマ・コメットに呼びかける。
(気持ち悪くて喋れないんだよ!!)
現在、マンマは急進派のモニカ大尉に強制で連れられ模擬戦をさせられていた。最初は訓練用の戦闘プログラムかと思っていたが、素人である自分に会ってそうそう『アタイが、シャア大佐の代わりに鍛えてやるよ!早く準備しな!』と勢いのまま連れて行かれたのだ。
『あん?模擬戦と言ったらMSに乗らないでどうするんだい』
『私はまだ一度しかMSに乗ってません』
『謙遜するんじゃないよ。シャア大佐のお気に入りだからねぇアンタは』
『…だからといって』
『いいから準備しな。私も楽しみたいんだよ』
ふざけんな!何だこいつ、自分の鬱憤晴らしに私を使いたいだけじゃねえか!こっちはやる事が溜まってんのに邪魔するなよ!
拒否権を使いたかった。この程度であればエンツォ大佐も気にしないかもしれないが、ある程度は合わせる必要もあるかと行動を共にしたのだ。その結果がこれである。今も観戦席で急進派連中が…いや、関係ないパイロットも見ているようだが、見せもんじゃねえ!と殴ってやりたい!
(ちくしょう!MSを動かせるのは、無理やり経験を得たからであって、ド素人何だぞこっちは!…っまだマシか!)
ヅダの経験が活きた…ヅダは瞬間加速だけなら下手な機体より速い動きができる。一つのエンジンブースターでゴリ押し加速を繰り返す機体だ、左右に移動するのにもいちいちエンジンカットやAMBACの応用、再点火をする都合上、自身に受うるGは現存するアクシズ内のMSの中でもトップクラスに大きい。まあ、戦闘継続能力が自爆するせいで皆無だし、ドッグファイトしてたら死にましたになる機体なんてポンコツもいいところだ。
その点、ゲルググは最高だ。無茶な設計なんてしていない。無駄に回る手首とかに疑問は持つが、加速性、運動性、どっちも癖がない。学徒兵が使えていたのも頷ける。なにより、急加速、急展開など上級者に求められる技術を常時必要とされないのが最高だ!ブースターを吹かせ続けられる喜びを感じるなんて、普通なら意味がわからんだろうがな!
(右足を狙う!)
「っ避けるだけじゃ勝てないよ!」
模擬戦用に調整されたビーム兵器な為、当たっても撃墜判定が出るだけだ。さっさとこの試合を終わらすなら、当たってしまえばいい。だが絶対、もう一試合だ!とか絶対言う。なので、私自身の練習も兼ねて本気で戦っている。
≪ちくしょう、何で当たらない!?≫
フハハハ怖かろう。こっちはシャアとは違うのだよシャアとは!奴みたいに明確な殺気しか感じれない訳では無い!流石にアムロさん並は無理だが、狙ってくる遺志を感じるぐらいならできるんだよ!
…とはいえだ。相手に反転し、こっちのビームも撃ってみようとすると…反転する動作が上手くいかず、その過程でモニカ大尉は有効射程から外れてしまう。アムロさんなら関係なく予測撃ちができるだろうが、私のようなド素人では動く場所を予測出来ても体が追いつかない。
モニカ大尉は埒が明かないと、接近戦に切り替えるようだ。デブリを盾に、私の方に忍び寄ろうとしているのが読めた。
(っ撃ち過ぎた!こっちの残量を読んでたのか)
シューティングゲームの要領で撃っていた為、残弾を確認していなかった。モニカ大尉が、ゲルググのビームナギナタを取り出し、腕を回転させながら突撃してきた。
「落ちな!」
後ろにはMS並のデブリがある。避けることができない!私を上手く誘導していた…とでも、言うと思ったか!そんなの想定の範囲内だよ!
ナギナタの回転、狙ってくるのはメインカメラ!狙ってくる位置がわかるなら!
私はゲルググの姿勢制御をオートからマニュアルに変更、同時に機体をやや斜めになるようにしながら、こっちもナギナタで受け止める姿勢になる。
ナギナタがかち合った瞬間…私のゲルググは姿勢制御が無いため打ち付けられた衝撃で、回転する。それが私の狙い!受け流しをしつつ、そのまま背中と足のブースタを部分点火!更にデブリを蹴る事で更に加速!私の高速回転した機体に反応できず、顎を蹴るが如く、モニカ大尉の機体を蹴り上げた。
「がはっ・・・・・!」
対象は沈黙!強烈な衝撃を受け、モニカ大尉はコックピットで気絶したようだ。シャアが使った蹴り技の再現である…宇宙空間で衝撃だけの技はあまり有効ではないのだが、今の時代のコックピットならば
自身の機体制御をオートに戻し、回転していた機体を元に戻す。咄嗟にマニュアルにしたが、この技術は各機体のリミッターを外す技の応用だ。MSの適性稼働状態を超えた動きをするエース級、シャアなど一部が使うのだが…ヅダだと常時使っている。というより、意識して限界地点ギリギリを攻めないといかん!と、ヅダへの思いが熱いデュバル少佐のやり方を参考にしてしまった為、自然とできてしまうのだ。
(あ、ヤバい…ここで…出したら…)
胃の中の物がせり上がって来る!・・・気合で耐えろ・・・
その後、他の様子を見ていた者達が私達を回収に来てくれた。戻っている最中で、モニカ大尉は復活して内心を隠そうとせずイライラしながら行ってしまった。モニカ大尉のゲルググは…メインカメラ、というか頭部が破損していた。私の方も右足が内部フレームまで破損していたようだ。無茶な動きをさせたせいだが、仕方ない。
「なんて無茶な動きをするの!」
「シャア大佐の動きを参考にしたのですね、戦闘データとして貴重な一試合でありました!」
「オリヴァー中尉、そこじゃないでしょ!」
「ええ、あの状態を見るに頭部と右足は全て取り外し、換装する必要がありそうです。模擬戦としては、問題でありますね」
「…もういいわ」
当然ながら、私が模擬戦をすることになり、知人のメンバーも知ることになる。ナタリー中尉とオリヴァー中尉も、オペレーター室から見ていたようだ。だが、今回の試合は急進派の策略も混じっている。モニカ大尉の気持ちが大半であったが、私の活躍…幼年のパイロットがMSで成果を出すのが目的であったようだ。まあ、予想以上の動きに急進派連中も驚いているようだが。
「マンマ…いい腕ね」
「っこのマシュマーも遅れを取らんぞ!」
「まだ戦闘プログラムも上手くできてないだろう?マシュマー」
「ぐッキャラ、なぜお前の方が早く扱えるのだ!」
「あんなの感覚でイケるだろ?ゾクゾクしちまうよ、早くMSに乗りたいねぇ!」
賑やかである。あの未来の話をしながらも、立ち直りが早かったマシュマー達…結局ハマーン様に頑張ってもらえばいいや感覚に落ち着いたようだ。前の私を見ているようだ。
この二人は現在、入隊予定者の名目でハマーン様が連れて来た…そのままだが、ワガママで連れて来た話を周りに流している。エンツォ大佐も背中を押す案件なので何も言わない、むしろ太鼓判を押してくれるので、完全に押させないようにマハラジャ提督が動くと…酷いマッチポンプを見た。報酬が無いタイプのマッチポンプ…
まあいい。今後の動きとするなら、私や彼らが周りの目に映る立場になった方がお得になる…その為にも、マハラジャ提督やハインツ少佐には頑張って調べて告訴とは違うが、証拠を何とかして集めてもらわないと。
(あとは、上手く彼女をこちら側に引き入れられるか…それが難しいんだよな)
今だと、取引という形で動くかギリギリのはず…アクシズで入港時にマハラジャ提督とも会っているはずだ。そして、入港を拒否された事もまだ最近の出来事。
まだ連邦と接触もしていない現状、彼女の判断で今後の動きが決まる。公王位継承式で動ける人材かつ実力もあり、人間性も…こちら側から歩みよればまだ何とかなる人材。
(私なら絶対引き入れない連中だが…カーンの者達にとっては、それを込みでも引き入れるべきと考えるのか)
…これは、ハマーン様、マハラジャ提督にしか話していない。私が一人で動こうと、スペースノイドの独立を考えた場合の考えを述べた時の事だ。核兵器とか、環境破壊兵器を手に入れ抑止力とする案を伝えてみた。
『…なるほど、だから私にあのような事を』
『そんな事を思っていたのね。お父様に警戒されて当然よ、例えお父様じゃなくても早計…段階を数段飛ばしているわ。いいえ、ザビ家の行った歴史をそのまま継承する形なら正当と言えるかしら』
『ハマーン、発言には責任を持つことだ。我々はジオンである』
『っ、失言でした』
私はザビ家のように使うのではなく抑止力として!と説明を加えたが、それこそ私の思い上がりだと真っ向から言われた。
『いいかしらマンマ。あなたの考えだと、連邦を寄せ付けない武力を持つことで拮抗状態まで持っていこうとした。合ってるかしら?』
『はい。今のジオンは先の大戦で戦力だけでなく、スペースノイドの民からも信用が下がっている状態です。過程を経て連邦が内部から崩れて行った未来であれば、他の選択肢もあると思いますが、求心力のない今のジオンに取れる手段は…良くも悪くも急進派同様、力業が精々だと考えました』
ジオンは敗北したのだ。ザビ家という求心力が揃って消えた時点で、ジオンに連なる者達が何を言おうと現実は変わらない。限られた者同士、残党兵がいくら集まろうと正当性がない現状、声を挙げたところでテロリスト。エギーユ・デラーズの行った星の屑作戦のような行為ぐらいしか民衆にアピールできることが無い。
新たなジオンの求心力になりうるミネバ・ザビ様はいる…しかし、今でなければ間に合わない。仮にミネバ様が成人するまで紛争など、残党ジオンが大人しくしていた場合、今度はジオンという志と表現すればいいのか…再起するまでスペースノイドがアースノイドからの搾取を受け入れているであろう状態から、過去にコロニー落としから始まり、そのジオンという存在が暴れたせいで前より強く取り締まっているであろう現在に至るまでの過程を知識として理解している者達に対し、過去の異物と表現される者達の言葉を受け入れる体制を作れるかが問題になってしまう。
コロニー落としを行った事で、人口の半分が死滅。それに伴う気候変動などで陸海空全てに影響を及ぼし、今現在も地球上で食料不足に嘆いている者達が多くいる。更なるコロニー落とし等を行うか否かで大分影響が変わってくるだろうが、どっちにしても民衆にとって明日がどうなるかがわからない者が大半を占めているのだ。それこそ、コロニーの民衆、地球の民衆問わず、ジオンの志云々より今をどうにかしてくれ。という願いを叶えられるなら正直誰でもいいというのが本音であろう。
結局、憎しみとか怒りとか抜きにすれば、今の生活を良くしてくれる指導者を皆が求めている。その結果が散々だった…それが今の現状だ。
それらを踏まえ、無理やりでもスペースノイドを独立させ地球の物資面を確保してしまえばワンチャン…と考えたのが、私の思想だ。最終的に貿易による対等を目指すのが、今のできるベストだと考えていた。
『私が言うのも何だが、マンマよ。君は人に理想を求めすぎているな。力を持つ者が正しく使い続けられる保証は誰にもできない。それこそ未知である』
マハラジャ提督は、力による、武力による支配・独立は破綻すると考えを変えなかった。ハマーン様も同意見なようだ。
『実現できる可能性はあるわ。同時に人類が滅びる可能性も実現するわね、アスタロスだったかしら。それが地球圏にバラまかれれば地球上の植物が消え、酸素を生み出す存在も消える』
『私はあくまで抑止力として!』
『人は自分以外見えない…そうじゃない?その切っ掛けを得られた者、同じく理解してくれる人なんてほんの一握りよ』
確かに今も、連邦という存在に悪意を持ったことでジオンが生まれた。力を持った民衆は急進派と変わらない思考になるのも必然かもしれない。だが、だったらどうすればいい!それこそスペースノイドの独立を許してくれる連邦政府なんて夢物語の存在だろう!
『その夢を実現するのが、我々の務めなのだろう?果ての無い夢より、見える夢を目指すのが皆の志に繋がる。もっと簡単に考えてみるといい、我々スペースノイドが欲する物は何かを』
提示されたのは随分と壮大な、でも現実的な解決策である。
「マンマ、少しいいかしら」
ハマーン様に言われ、少し離れた位置で二人で話す。
「ルナリアン共だけど、思った通りエゥーゴに流していたわ」
「やはりこの時期から介入してましたか」
「MSはまだ流していないようだけどね。スポンサーなだけあって、尻尾を掴むのに苦労する連中よ」
「戦争屋ですからね」
「駄目よそんなことを言っては、出資してくれる俗物とでも呼びなさい」
スペースノイドの独立に向け必要なモノ。それは地球である。正確には我々の総意、掲げられるだけの何かの存在が必要不可欠なのだ。自分たちの生きられる場所、その象徴だ。
『私達がすることは簡単に言えば貿易会社を作る事よ。出資を集めて、資金を集めて、夢の実現を図る。実に簡単でしょ?』
最初は何を言ってるのか理解できなかった。
『テラフォーミング。その後押しをしようと考えておる、君も知っているであろう?ジオン共和国が火星に資本導入を行っているのを』
火星!?その惑星の名を出され、真っ先に思い浮かんだのはジオンマーズの存在。キシリア派の生き残りが実効支配…いや、まだこの時期ならサイドAアルカディア辺りで燻ってるぐらいだろうか。
(そういえば、あいつもザビか…)
アリシア・ザビ…デラーズ紛争後に現れるジオン残党と呼べばいいのか?どう見てもプルシリーズに見える容姿であるが、後の火星を支配する女帝も同時に思い浮かぶ。
…確かに、ジオン共和国は火星に対し資本導入を今現在行っている。しかし、その資本金は決して多くない。あくまで移民の受け入れ先として、長く見積もっての計画の一部として予算を組んでいる、一種の民間区域の拡張を目的としたパフォーマンスの一つとしか認識していないだろう。実際10年程未来においても、火星のテラフォーミングは最低限であり、大気の改善もされていなかった。
『火星に資金を出す者達は現れないのではないでしょうか?』
例えアクシズからも資金を出しても全然足りないだろう。経済的にも、辺境と呼ばれるだけの場所に位置する火星だ。どの資本家も資金を出すのを渋る案件である。
『出させるようにするのが、我々の役目よ。でもその前に、目の前の障害を排除するとしましょう』
『排除ではない、協力を願うだけだ』
ハマーン様とマハラジャ提督がいい笑顔で笑い合う姿を見せられ私は思った。
(カーン一族って怖いわ)
セラーナ様はこうはならないでくれと心から思った。
悪夢だ。また、悪夢が私を呼んでいる。スペースノイドの独立に向け、ジオンに志を抱いていた頃の自分なんて、夢となって消えていく。死者の顔だ。苦しむ顔だ。奴らが私を掴んで離さない。
知らなかった、知らなかったんだ…それに気づいたのは、どのタイミングだったか…思い出したくない、だが決して消させてくれない現実が待っている。
お前がやったんだろ。確かにそうだ、上官命令で暴徒鎮圧用のガス散布を命じられていた。自分の故郷であるコロニーに散布するに対し、嫌悪感はあれど上官命令に従うのが軍人。ただ命令に従い、散布した。それだけのはずだった。
誰も信じなかった。私達が上官命令を無視して、毒ガスにすり替えたと…今更嘆いても遅いとわかっている。だからこそ、この入電には戸惑いが己を支配していた。
【ワレハ、キカンラノ、シンジツヲシッタ】
アクシズの暗号回線から送られた入電…アクシズから入港を拒否され、自分たちの居場所はもうないと思い知らされたばかりである。
ふざけるな!と激高したい気持ちはここにいる皆同じ。実際物に当たる者もいる…だが、生き延びる為、例え思惑はあれど取引に応じる必要はあると考えはまとまった。
「っ気に入らないねぇ」
扇子を叩き、怒りを抑えながら船を動かす指示を出す。
こちらには後がない。頼れる者もいないとわかっているからこその取引だろうと見え透いている。見え透いた政治がらみの考えだろうと読み取れる今回の取引…比較的簡単な内容な為、賭けてみるのも手かと思い行動した。
裏切りも考え、保険も用意しておくが…それでも口元が歪んでしまう。
「あのアサクラの顔に一発ぶち込めるいい機会さね!」
助っ人に来てくれるのはいったいどんな美人の32歳女性なんだ…
資料を見て、話しの統合をまとめて可能ではある。と考えたので投稿させて頂いた。ただし、何度も書いたがご都合主義である。
マ・クベさんが生きていれば…と書いていて何度も思った。そしてシャア、お前の性格上邪魔だと何度も思ったぞ。