数の子って言うな!   作:うた野

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第17回

 ナンバーズ。

 ジェイル・スカリエッティの作品群である戦闘機人たち。

 現在No.1~6、10が稼働しており、稼働を開始した順番に関係なく数字の若い者を姉と認識している。

 

 ──そしてもうすぐ、当初の予定よりも数年早く新たな機人が稼働を開始する。

 

 No.9。

 タイプゼロに使われた遺伝子を基に製造された戦闘機人である。

 

 

 補足すると“彼女”の遺伝子を使用するよう進言したのはNo.1 ウーノとNo.4 クアットロ。ジェイル・スカリエッティの製作した戦闘機人が他のそれを上回っていることを証明するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 新暦0065年 冬

 

 

「ウーノのつくったおうどん食べたい」

 

「よろしい、ならばおうどんだ」

 

 

 もうすぐ年の瀬という時期。一週間ぶりにラボに帰還を果たしたドゥーエ、そんな娘の頼みを無碍に出来ようか、否。

 

 ということで夕食はうどんに決定。

 朝から夕食の話というのもどうかと思うが。

 

 

「ご苦労様、ドゥーエ。どうだい、協会の仕事は?」

 

「あそこが聖なる協会だということを忘れてしまいそうです」

 

 

 まったく男って生き物は……と愚痴を零すドゥーエ。

 ふん、この無限の欲望でさえ、もうある一線を越え、なんかエロい金髪のねーちゃん=ドゥーエ に他の娘と同様の愛しさしか抱かぬようになったというのに。

 娘に邪な感情など持たないとも、持たないともさ。

 

 

 

「ああそうだ、ドゥーエ」

 

「はい?」

 

「もうすぐ新しい妹が稼働する。忙しいとは思うが、姉としてよろしく頼むよ」

 

「──ええ、それはもちろん」

 

 

 ドクターの頼みと可愛い妹のためとあらば、そう言ってドゥーエは笑った。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「というわけだからクアットロ、あなたも姉としてしっかりね」

 

「はぁ……」

 

 

 クアットロにしては珍しい、困ったような曖昧な表情でドゥーエの言葉に頷いた。

 

 

「……でもドゥーエ姉様」

 

「なに?」

 

「私たち姉妹が親交を深めて、どうにかなるんですか? 連携ならデータリンクで十分でしょう?」

 

 

 それは以前のチンクやセインと同じ、戦機故の疑問。

 

 

「ドクターは何故そんな命令を?」

 

 

 そんな妹の疑問に困るのは今度はドゥーエ。

 さて、なんと答えたらいいものか。

 

 暫しの思考の後、ドゥーエは口を開く。

 

 

「クアットロ」

 

「?」

 

「これはドクターの指示なのよ?」

 

 

 他者からすればだからなんだ、と言われそうな返答。しかしドゥーエは確信していた。

 これでいいと。

 

 

「……そう、ですね。ドクターの命令ですから。私たちはそれに従うだけでした」

 

(──今はまだこれでいい。一から十まで教わるようじゃダメだわ)

 

 

 想いは違えどきっとNo.3 トーレも似たような返答をしていただろう。

 

 ドクターの命令は絶対。

 我々はそれに従っていればいい。無論、ただ命令を待っているようではいけないが。

 そんなようなことを。

 

 

(それも仕方ない──私も、外に出て初めて違和感に気づいたのだから)

 

 

 ────もしかしたら、No.2 ドゥーエが姉妹の中で最も大人なのかもしれない。

 そう思わせるような姉らしい表情だった。

 

 

「さて、じゃあお勉強を再開しましょう。ドクターのために、そしてあなた自身のためにね」

 

「はい、ドゥーエ姉様」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「──チンク姉、話しって?」

 

「ああ。実は新たな妹、No.9のことでな」

 

 

 ドゥーエとクアットロが親交を深めているのと同時刻。

 チンクはディエチを呼び出していた。

 

 

「No.9──ノーヴェは私の担当になるそうだ」

 

「そうなんだ……でもチンク姉ならピッタリだと思うよ」

 

 

 ディエチの心からの言葉。

 

 それはディエチが姉と呼ぶのがチンクだけという点にも現れている。

 姉妹の中で最も姉らしい人物、それは間違いなくチンクだろう。

 

 

「ありがとう。私も姉としてこれまで以上に努力する」

 

 

 だが、とチンク続けた。

 

 

「先の任務で痛感した。私は姉としても戦闘機人としてもまだまだトーレたちには及ばないということを」

 

 

 そんなことはない。

 ディエチとてあの時、あの場面に居たならばドクターの指示を待っていた。あの傀儡兵の腕を避けようとはしなかった。

 それが当然だと、そう思ってきたのだ。

 

 

「──だからディエチ。お前も年長者としてノーヴェと接してほしい。ナンバーと関係なく、お前が経験したこと、これから経験することをノーヴェに伝えてあげてほしい」

 

「え……」

 

 

 最も姉らしいのはチンク、そう思っていたからこそ、ディエチは驚いた。

 

 目の前で妹に頭を下げるチンクに、その言葉の意味に。

 

 

「────そこは素直にうんって頷くっ」

 

「わっ」

 

 

 背後からポンと頭に手を乗せられ、半場無理やりに頷かせられる。

 

 

「チンク姉の頼みを無碍にはできないだろ? 妹としてはさ」

 

 

 やはりと言うべきか、背後に立っていたのは問題児セイン。

 ディエチは困ったように頬をかきながら、

 

 

「……うん」

 

 

 と頷いた。

 

 

「だってさ、チンク姉」

 

「……恵まれているな、私は」

 

 

 ──たとえ世の中の人間が否と断じようとも、この瞬間のチンクは間違いなく幸せだった。

 

 

「セイン、ディエチ。よろしく頼む」

 

「よろしくするのは私たちじゃなくてノーヴェにね」

 

「おおっ、今ディエチが上手いこと言った!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゥーエとクアットロ、チンクとディエチ、セイン。

 

 それぞれウーノとトーレが呼びにいくまで食卓の席が埋まることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……伸びたうどんも悪くない、悪くないんだ」

 

 

 

 

 

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