数の子って言うな!   作:うた野

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第18回

 No.9 ノーヴェが稼働したのは新暦0066年の春のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイプゼロについてのデータは少なく、また基となった遺伝子も秀でた能力を持った魔導師のものではありませんが、肉体的なスペックだけならばタイプゼロよりも上のはずです」

 

「ふむ……」

 

 

 ふむ……などと考え込む動作をするものの、実際に考えているのはスペックのことなどではなく、新たな娘、ノーヴェの心のこと。

 

 

「ノーヴェの様子はどうだい?」

 

「問題ありません」

 

 

 ……まあそれは分かっているんだけどね? 

 何と言えばウーノに伝わるのだろう、と苦笑い。

 

 

「──気になるのでしたらチンクか、直接本人と話してみては?」

 

「ああいや……そういう問題ではないんだ」

 

「?」

 

 

 そう。

 私の懸念は話してどうなるものでもない。

 不器用な人間に器用になれ、と言うようなものだ。

 

 それに私があまり口を出すべきでもない────ほら、言うだろう? 男は背中で語れと。

 男はあまりベラベラと喋るものではないのだよ。

 

 

 ──などと思考する私の懸念とは結局何なのかと言うと、

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ぐらいになれば全てツンデレに変換することも容易なんだが……」

 

 

 娘たちにそれができるのだろうか? 

 ノーヴェもいい娘なんだ、ただ不器用なだけで。

 ふふ、そう考えるとどこかフェイトと重なるものがあるな。或いはプレシアとか。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ジェイル・スカリエッティが父親的思考の渦にのまれている頃。

 その娘たちは──

 

 

「──ぷはぁっ、いや結構なお手前で」

 

「……何言ってるの? セイン」

 

 

 洗浄後にドリンクを一杯。

 気分は風呂上がりの牛乳である。

 無論機械的に量産されたそれにお手前も何もあったものではないが。

 

 ともかくセインは美味しそうにドリンクを飲み干した。

 そんな彼女を見つめるのはディエチと赤毛の少女、ノーヴェ。

 前者は呆れたように、後者は興味なさ気に。

 

 

「うん? ノーヴェも飲む?」

 

 

 そんな視線を勘違いしたのか、自分の持つドリンクをノーヴェへと投げ渡すセイン。

 

 

「……いらねーよ」

 

 

 ノーヴェは危なげなくそれをキャッチし、すぐにセインへと投げ返す。

 

 自分の頭の上を行き来するドリンクにディエチは嫌そうな表情を隠しきれなかった。

 

 

(洗浄したばかりなんだから、かけられたらたまらない)

 

 

 セインならやりかねない、とディエチは安全地帯と言えるチンクの隣の席に移動する。

 

 

 

「恥ずかしがらなくていい、おねーちゃんが飲ませたげるからさ」

 

「さーわーるーなーッ!」

 

 

 

 

 

 

「どうだ? ノーヴェは」

 

「見ての通り。セインに遊ばれてる」

 

 

 そうだな、とチンクはドクターと同じように苦笑い。

 

 

「教育係となってみて、クアットロを御しているドゥーエの凄さがわかったよ。ものを教えるというのは難しい」

 

「チンク姉も十分凄いと思うよ」

 

 

 あのノーヴェに懐かれているのだから。

 セインに噛みつく(物理的な意味に非ず)ノーヴェを見ていると、本当にそう思う。

 

 

「いや──まだまだだよ、私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、なんだかあたしも教育係してみたくなってきた。ノーヴェ、どう?」

 

「お断りだ!」

 

 

 

 

 

 結局、ジェイル・スカリエッティの懸念は杞憂で終わる。

 No.4を除き、ナンバーズ全員が姉妹愛に溢れた者たちであり、No.4でさえ少しずつ変容してきているのだ。

 

 彼女たちの成長にジェイル・スカリエッティは気づかない。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ドクター、なにしてんの?」

 

「これかい? ふふふ、よく訊いてくれたね、ノーヴェ」

 

 

 ノーヴェの視線の先、私の手元には赤い結晶体──レリックと呼ばれるロストロギア。

 

 私はレリックをキュッキュッと丁寧に磨いている。

 

 

「……詳しいことは知らないけど、それ、ドクターがそんな気安く触って大丈夫なのか」

 

 

 言われてみると確かに魔導師の素養など大して持ち合わせていない私がこんな気軽に扱っていいものなのだろうか? 

 ウーノが何も言わないから気にしていなかった(ウーノが何も言わなかったのはドクターがそんなミスをするはずをないという信頼故である)。

 

 

 だがまあ──

 

 

「問題ないさ。こうして愛を持って接すればね。ノーヴェたちも愛を持って接されて、悪い気はしないだろう?」

 

 

 さり気なく レリック≒ノーヴェたち の式を入れる私は天才なのかもしれない。

 この宝石のようなレリックを娘たちに喩える、ふふふ、私も上手くなったものだ。

 

(※ この世界にはロストロギアに喩えられて喜ぶ女性はいません)

 

 

「……それで何に使うのさ、それ」

 

「魔導炉の代わりにでもと思ってね。少々手こずりはしたが、十分実用可能だ」

 

 

 いやぁ、人数が増えたのもあるけど、残り4人の娘たちの完成を急いでいるからそのために十分なエネルギーが必要だったんだ。

 ちょうどいいロストロギアがあってよかったよ。いやまったく。

 

 

「しかし新しい妹の教育はセインとトーレ、後は誰に任せようか……」

 

「……セインにやらせるの?」

 

 

 嫌そうな表情を見せるノーヴェ(これは先の件でセインに教育係を任せるのが不安のためである)。

 私はそこでピンときた。

 

 

 セインにやらせるの? →セインがとられるの? →セインいっちゃやだ! 

 

 

 ──うん。

 

 

「仲が良いみたいでよかったよかった。だけどセインも姉としての仕事があるんだ、わかってくれ」

 

「……? よくわかんないんだけど」

 

 

 

 

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