数の子って言うな!   作:うた野

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第21回

 新暦0067年

 

 今年は色々と事件があったけれど、中でも最も大きな事件。後に不本意ながらも戦闘機人事件と称される事件。

 それが起きたのは、引っ越しから数日後、一年も終わりに近づいてきた、ある冬の日のことだ。

 

 

 

 

 鼻歌なんぞ歌いながら通路を歩く私。徹夜明けでテンションが高くなっている。

 

「ふーふーふーん……?」

 

 

 一歩進んで二歩下がる。

 下がった先はダイニングルーム。──ふと思えば今の時間はちょうど昼食時。

 ここ3日ほどは引っ越しのゴタゴタで娘たちとご飯も食べられなかった、ついさっきウーノが作ってくれていた昨日の夕食を食べたからあまりお腹は空いていないが、娘たちの顔を見ておきたい。そうと決まれば、と歩を進めるとドアが開く。その先には──

 

 

「──ん? セインとノーヴェだけかい?」

 

「あ、ドクター、おはよー」

 

「……」

 

 

 何故だか水色と赤色の2人しかいなかった。

 はっ、まさか私が目を離している間にグレて……!? 

 ……いや、ありえないな。私の娘たちに限って。

 

 

「ウー姉とドゥーエ姉はメインルームで」

 

「……チンク姉たちは前の研究施設」

 

「今日はあたしたちがお休み〜」

 

 

 力の抜ける笑顔のセインと相変わらずぶすっとした表情のノーヴェ(素直じゃないなぁ、まったく)が私に言う。

 

 

「メインルームの2人はともかく、チンクたちはあっちの施設に何の用があるんだい?」

 

 

 もう必要な物は全てこっちに移したから、あっちの施設には廃棄した例のゆりかごのロボットぐらいしか残っていないはずだが……? 

 

 そんな私の疑問の声に顔を見合わせる2人。

 ん、セイン、スプーンを啣えたままにするのはやめなさい。

 

 

「……ドクターが知らないなら大したことじゃないよ。それに予想されてる襲撃まではまだ時間があるし」

 

 

 ボソッと、ノーヴェが聞き捨てならないことを言った。

 

 

 

 

 

 ────そして、片目を失ったチンクがゼスト・グランガイツとメガーヌ・アルピーノが運んで来たのはそれからすぐのことだ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「っ……?」

 

 

 私の眼下の男が唸り、ゆっくりとその眼を開いた。

 

 

「──やあ、目は覚めたようだね、ゼスト・グランガイツ」

 

「ジェイル・スカリエッティ──!」

 

 

 まだぼんやりとしか見えていないだろうに、よく私だと分かったものだ。

 

 

「ぐっ……!?」

 

「まだレリックが定着していないんだ。暫くはまともに動くことすら出来ないだろう」

 

「レリックだと……?」

 

 

 身動きの取れないゼスト・グランガイツに私は彼の状態を教えてやる。

 死んだこと、実験体としたこと、そして恐らくレリックが完全に定着することはないだろう、ということ。

 

 

「……部下は。俺の部下はどうなった」

 

 

 彼はそれについては何も言わず、自身の部下について私に尋ねた。

 

 

「1人を除いて皆死んだよ。……その1人も生きているとは言い難いがね」

 

「そう、か……一体誰が生きてくれている?」

 

「メガーヌ・アルピーノ。紫の髪の女性だ」

 

 

 ゼストは何も言わず、天井を仰いだ。その心中は私の察するところではない。

 

 

「──俺とメガーヌをどうするつもりだ」

 

「蘇らせた人間を殺しはしないよ。それに、娘が片目を失ってまで連れて来た人間を、無駄にしたくはない」

 

 

 ……ふと、プレシアのことを思い出した。

 もしも彼女が後数年、数年だけ待ってくれていたなら、彼女の娘を蘇らせることが出来たのかもしれない。……今こんなことを思っても仕方ない、それにもしかしたら今頃アルハザードでアリシアとよろしくやっているのかもしれないし、それともアリシアを蘇らせてからこっちに顔を変えて戻って来たのかもしれない。

 

 どちらにしても、今考えることではないな。

 

 

「娘……? あの戦闘機人のことか?」

 

「今ほどウーノに感謝したことはないよ。彼女に流されて娘たちを戦闘を考慮して作っていなければ君に殺されていた」

 

 

 そしてウーノの言葉とチンクが片目を失ってまで連れてきた人間、というのがなかったら私が彼を殺している。

 シリアスはないとか言った気がするけど娘たちが関われば話は別だ、これはそんな言葉で片付けていい話じゃない。

 

 

「──騎士ゼスト、レリックが君に定着するまでは私が君を保護しよう」

 

 

 保護というより拉致監禁? 何にせよ助けてしまった命だ、面倒はみなければね。

 

 

「……」

 

「レリックが定着した後は君の好きにするといい。娘たちに手を出したら承知しないが。ああ、この場合の手を出すというのは傷付けるとかも当然として、もしも、万が一! 娘たちの誰かとフラグを立てるような行動を取ったら……」

 

 

 私の言葉を聞いているのか、ゼストは黙ったままだ。ああもう、寡黙な男とかチンクが好きそうなキャラじゃないか! 

 くそっ、これでチンクに(潰した眼の)責任を取るとか言って言い寄ったりしたら潰してやる……。

 

 

(解せん……この男があのジェイル・スカリエッティなのか……?)

 

 

 もういい、とりあえず今日のところは出直そう。

 培養槽のチンクのことも気になる。……あの娘が眼はそのままでいいと言っているんだ、口は出さないさ。とりあえず残った片目を調整して、視界やら何やらを調整しなくては。

 

 

 やることは山済みだ。

 

 

 ──それに、仮死状態のメガーヌ・アルピーノの娘のこともある。

 資料によると召喚師の素養を持つだそうだ、最高評議会に言って私の下に回してもらわなければならない。

 

 親子は一緒に居るべきなんだから、面倒だが仕方ない。

 それにゼストの部隊の隊員たちも崩壊した施設から掘り返して遺族の下に送り届けなければ。

 

 忙しい忙しい。

 

 

 ああ、そういえば私がプレシアに言ったことだったか。

 

 子供がしたことは何であれ親の責任だと。

 分かってるさ。責任は私が取る。無論チンクのことも私が責任を持って面倒をみる。騎士ゼストになど渡すものか! 

 

 

 

 

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