数の子って言うな!   作:うた野

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第24回

「レリックの本格的な回収を娘たちに頼んでかれこれ一月ほど……それなりの数は揃ってきたが、どう手をつければいいのやら」

 

 ロストロギア レリック。

 少し前に高町なのは嬢やフェイトが集めていたジュエルシードに似た、魔力の塊。尤も魔力の量は遥かにレリックの方が上だが。

 

 なんとなしに集めたレリックがゼストの時には役立ったが、本格的な研究をしていなかったせいでとんだ欠陥を抱えさせたまま生き返らせてしまった。

 メガーヌ・アルピーノはいずれ目覚める可能性が高いが、ゼストは別だ。私が生き返らせた以上、如何に憎くとも責任は取るさ。

 

「──だがまあ、そう急ぐ必要もないか」

 

 不完全な形でのレリックとの融合によって満足に全力を出すことも叶わないゼストだが、寿命自体は無茶しなければ十年程度なら保つ。彼はどうせ無茶するだろうからその半分保てば良い方だろう。

 

「それだけあれば十分。最高評議会に目を付けられない程度に頑張るとしようか」

 

 そして娘たちに「お父さんスゴいっ!」って言ってもらうんだ。ふふふっ。

 

「ふふふっ」

 

「……何ニヤケてるの? ドクター」

 

「うわっ!?」

 

 背後から掛かった声に椅子から転げ落ちそうになるが、父の威厳を保つため何とか踏ん張る。

 

「ディ、ディエチかい」

 

 うん、と頷くディエチ。まったく、ビックリさせないでくれ。

 

「どうしたんだい?」

 

「用がなかったら来ちゃだめなの?」

 

「そんなはずないじゃないか! はははっ! 私はいつ何時でも構わないとも!」

 

 即答。私の反射神経も捨てたもんじゃないだろう? 

 いやぁ、ディエチは物静かなところがあるから、もしかして嫌われているんじゃないかって戦々恐々していたんだ。

 いや、本当に────

 

「……って言えってドゥーエに言われたんだけど」

 

「……ははっ」

 

 渇いた笑いしか出なかった。そうだね、年頃の娘なんて皆、お父さん(笑)だもんね……ははっ。

 

「……? でも、用がないのは本当。ドゥーエにドクターのところに行けって言われたから」

 

 沈んでいる私だが、ディエチの言葉は聞き逃さなかった。ドゥーエが? 

 

「だからドクターが私に何か用があるんじゃないの?」

 

 用がなかったら呼んじゃ駄目なのかい、と言いたいところだが、そんなことを言って「うん」とか言われたら死ぬ。

 自殺して娘たちに保険金を残す。……保険になんて入ってなかった。

 

 とりあえずここは──

 →ルーテシアの様子はどうだい? 

 ウェンディの様子はどうだい? 

 チンクの様子はどうだい? 

 ゼストのあんちくしょうはまだ生きてやがるのかい? 

 私のこと、好きかい? 

 

 

 ふむ……。個人的には一番下を推したいが、ここは父親らしく父親らしく。

 

「ウェンディの様子はディエチから見てどうだい? 稼働時期もだが、ナンバーもディエチより下だからね。少し気になる」

 

 嘘ですかなり気になります。

 ナンバー上では末っ子だったディエチは名実ともに姉。

 しかしウェンディは生まれてまもなくしてさらに下のルーテシアが来たんだ。ひょっとしたら妹として思うところもあるかもしれない。

 ここのところルーテシアに皆付きっきりだからね。

 

「セインに似て、明るい子だよ。ちょっと気難しいところのあるノーヴェともよく話してる」

 

 少しだけ考える素振りを見せた後、ディエチはそう言って「流石にセインみたくトーレにちょっかいは出せないみたいだけど」と続けた。

 

「そうか──それはよかった」

 

 ノーヴェはともかく、トーレはね……。私もふざけたことを言ったら殴られそうで少し怖い。無論、娘として愛してはいるがね。

 

「セインはお姉ちゃんって呼んでくれないっていじけてたけど」

 

 それを言うなら私もお父さんと呼んでくれないっていじけている。お父さん(笑)どころかドクター(笑)……はぁ。

 

「チンク姉と違って尊敬されてるわけじゃない。でもセインは信頼されてる。みんな言葉にしないだけで」

 

「そこがセインの良いところだよ」

 

 ジュエルシード事件の時の映像を見せたら少しは見直してくれるんじゃないか、とセインに提案した時は恥ずかしいからと断っていたからね。

「あの時の私は私じゃないっ!?」……ふふっ、赤面するセインなんて中々見れるものじゃない。

 と、話がズレた。今はウェンディの話だった。

 

「ルーテシアとはどうだい?」

 

「遊び相手になってるよ。チンク姉はハラハラしながら監視してる」

 

「ははっ、ウェンディは少々加減を知らないからね。でも本当に危ないことはしないはずだ」

 

 でもチンクの心労を少し考えてあげてほしい。……本当、チンクには苦労をかける。

 

「でも安心したよ。上手くやれてるようで」

 

「……?」

 

「ああ、ディエチたちが仲違いするはずがないのは知っている。そういうのは関係なしに上手くやれてるようだね、ウェンディは」

 

 クアットロは感情など不要だとよく言っていたが(今でもたまに言う)、他の娘たちもちゃんと人間らしく姉妹らしい関係を築けているようだ。

 そういえばそのクアットロの意見を後の娘たちに取り入れると言ってしまったんだった。……無感情な娘……無口っ娘? 

 と、また話がズレた。

 

「もうすぐ8番と12番の娘も稼働を始める。……ルーテシアもいるから時期を見直そうとも思ったが、やっぱり家族は多い方がいいからね。7番の娘も来年中には稼働できるようにするつもりだ──だからディエチ、姉としてはもちろんだけど、妹としての自分も忘れちゃいけないよ?」

 

 娘としての自分も、と言いたいが、娘たちが自分から私を父と呼んでくれるまで待つさ……。

 

「……はい」

(家族……)

 

「うん。じゃあ私の用はそれだけだ。悪いね、わざわざ来てもらって」

(これで娘たちに私のクローンが組み込まれていなければ言うことなしなんだがなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

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