やあ、ごきげんよう。
私は開発コード 無限の欲望。
最近の趣味はジョギング。戦闘機人の宣伝マン、ジェイル・スカリエッティ。
ドゥーエが生まれてから少し間を置いて新暦0055年。No.3、トーレが稼動を開始した。
ウーノをおねいさん。
ドゥーエをねーちゃんと評した場合、トーレは────
「ドクター、私やこれから製造される姉妹たちの訓練のための戦闘シムのスペースの確保は必須。その設置許可をいただきたい」
──お尻に目がいくおっかない姉御、と言ったところだろうか。
「戦闘なんてまた物騒なことを……」
私の因子が含まれているはずだがウーノといいトーレといい、どうも私の性格が反映されているとは思えない。
「ウーノやドゥーエとは違い、私は直接敵と対峙することが多くなりますから」
敵って誰さ。
一度決めたことに突っ走るあたり、やはり私に似ているのかもしれないな……。
「まあいいさ。運動するスペースは必要だからね」
私も科学者とはいえデスクワークばかりでは体によくない。
この体に衰えなんてものがあるのかは分からないが。
(運動……私の訓練は児戯に過ぎないということか。確かに自分のISに振り回されている今の私ではその程度、だが必ずモノにしてみせる)
「──ところでトーレ」
用件を終えたらすぐに帰ろうとするのはこの子たちの悪い癖だ。
もう少しスキンシップを取るべき、そうするべき。
「此処での生活にはもう慣れたかい? ウーノもドゥーエも、今は自分のことで手一杯であまり話せていないだろう」
「──問題ありません。No.1 ウーノもNo.2 ドゥーエも、志を同じくする仲間であり姉妹ですので」
ふむ……ところでトーレのように背の高く、武人のような性格の娘に敬語で話されると少々気後れしてしまうな。
向き合っていると、我が娘ながらまるでおやじ狩りをされているような感覚に陥る──わかるかね? 全次元世界のおやじ諸君──なのに敬語。
違和感バリバリである。
ついでに言えば父親としての威厳を守るために大仰な手振りに尊大な態度で振る舞っている私にも違和感バリバリである。
正直、研究の時以外は真面目になんてなりたくない。
最高評議会のワケの分からない話などより時折プレシアが話す親馬鹿トークを延々と聞いていたいし、最高評議会の脳味噌などよりも娘たちの成長を眼に焼き付けたい。
最高評議会の嗄れた声よりも可愛い娘たちの声を聞きたいし、くだらない数字の羅列と顔を突き合わせているぐらいなら培養槽に顔をぺったりとくっつけて製造途中の娘と顔を合わせていた方がいいに決まっている。
「姉妹仲が良好なのは結構。私ももう少し顔を出せればいいんだが」
ウーノ曰わく、戦力の充実は急務。
ナンバーズの完成を急ぐと共に、古代ベルカの遺産“ゆりかご”の防衛機構の一つである機械兵器の研究に追われる今日この頃である。
プレシアの持つ時の庭園のようなものが私も欲しくて研究していたのだが、これまたウーノは勘違いしてしまったようで“プランⅠ−A”としてゆりかごの復活に向かって動いている。
ああでも、管理外世界にあるという父の日に娘からゆりかごプレゼント、なんてされてみたいものだ。
「ウーノもドゥーエも──無論私も、ドクターの夢のために動いています。お気になさらず」
「そうかい?」
勘違いが元とはいえ、このように尽くされるのは父親冥利に尽きるというものだ。
よし、おとーさんも頑張っちゃうぞ。
◇◆◇◆
作業記録 新暦0055年 10月3日
我らが創造主 Dr.ジェイル・スカリエッティは和食と呼ばれるものを好む。
私、No.1 ウーノは諸説ある和の発祥地のうちの一つ『地球』の料理への挑戦を決意。
ドクターに満足していただける食事の提供をここに誓う。
また疲れを和らげるマッサージをNo.3 トーレに実行。それなりの評価を得られたのでこれも明日、ドクターの肉体洗浄後に実行予定。
すべてはドクターのため、最高評議会の排除と自由な世界を奪い取るために。
明日も頑張ります。
ウーノ
「ふふふ、君の娘にも負けないこの愛らしさ。やはり彼女たちは私の最高傑作だよ」
『ふん、そんな業務的な記録になんの意味があるのかしら。見なさい、このアリシアのたどたどしい字で書かれた日記を!』
ジェイル・スカリエッティ、今夜もプレシアが根を詰めすぎないようガス抜きをしています。
しかしプレシア、お酒もほどほどにした方がいい────そう言っても、モニター越しではプレシアを止めることは叶わないのだった。
ああ、いつかプレシアが再び娘と笑い合える日が来ればいい。
ついでに私も未だ感情の乏しいナンバーズたちと笑い合える(悪役的高笑いにあらず)日が来ればいいのだが……。