数の子って言うな!   作:うた野

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第9回

「ど どどど童貞ちゃうわ!」

 

 

 そう、全てはドクターのその一言から始まった────なんてことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思っていたよりも早くフェイトを補足できてよかった」

 

『狼の使い魔の結界が厄介でしたが、戦闘機人システムに対応したものではなかったので対処は容易でした』

 

 

 皮肉なものだ、君たちを戦闘機人としてつくったことが役に立つとは。

 

 

『予定通り、発見されぬように監視を続けます』

 

「ああ。よろしく頼むよ────ところでセインはどうしてるんだい?」

 

 

 モニターに映し出されるのはチンクだけで、セインは見当たらない。

 できれば顔を見て、話したいんだが……。

 

 

『セインは────っと、今、終わったようです』

 

 

 ……? 

 

 

『──あ、ドクター。60時間ぶり~』

 

「元気そうだね──洗浄してたのかい?」

 

 

 モニターに現れたセインの頬は上気し、水色の髪には水が滴っていた。

 私の言葉にセインは恥ずかしそうに笑って、

 

 

『IS解除して上がったのが泥の上で……』

 

 

 ぐちゃぐちゃ、と溜め息を吐いた。

 

 

「ふふふ、君らしいな」

 

『……うぅ。どうせあたしはまだ末っ子気分が抜けない駄目姉だよ』

 

 

 そうは言ってないのだが……何処に行ってもいつものセインと変わらないのが嬉しくなっただけだ。

 

 

「まだナンバーズが揃うには時間が掛かる。少しずつ、姉らしい君になっていけばいい。焦る必要はないさ」

 

 

 ゆっくりと。

 決して娘たちに大人にならざるを得ない状況に置きはしない。

 ウーノやトーレも見た目こそ成熟した女性だが、ウーノは年齢でいえば14、トーレはまだ10なのだ。

 まったくそんな彼女たちに私は何を求めていたのだろうか。

 おねいさんが欲しいなどという理由でウーノを生み出して……だが今はどうだ? 状況は一変した。出来たのは姉ではなく、娘。

 

 だがそれでよかったと私は思う。

 娘たちがいなければ私はきっと────

 

 

 

 

 

『おっと、あんまりターゲットから目を離してもいけないや……ドクター、ありがと』

 

「私は当たり前のことを言っただけだよ。根を詰めすぎないで、休む時はちゃんと休むように」

 

『うん──じゃあね、ドクター』

 

 

 チンクにもよく言っておいてくれよ、とだけ伝えて私は通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ。今のはかなり父親らしかったはずだ」

 

 

 思わず笑みが零れる。

 今の私はまさに父親だった。

 これなら腹を痛めて子供を産んだ母親であるプレシアとも対等に渡り合えるはず。

 私の準備も整った……未だに娘たちに父と呼んではもらえないがな! 

 ウーノたちに下の娘のことを頼んだの失敗だったかなあ……全員、私のことはドクターだもんなあ……はぁ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ほとんど休息もとらずにジュエルシードの捜索とは……これでは効率が悪くなるだけだ」

 

 

 嘆かわしい。

 彼女、フェイトが最後に食事を摂ったのは18時間前。

 睡眠は10時間前に30分ほど。

 戦闘機人である我々とて、効率良く動くためにエネルギーは必要だというのに。

 

 

 

 

 

「チンク姉、牛乳買ってきたよ~」

 

「ああ、ありがとう」

 

(あたしたちの身体的成長ってほとんど止まってるし、意味あるのかな……? いやでも食べ過ぎたらあたしたちも太るし、身長ももしかしたら……)

 

 

 うむ、やはり栄養摂取は大事だ。

 あまり長くこちらにはいられないのだから、出来るだけ今の内に飲んでおかなければ。

 

 

「──ところでセイン、ソレはなんだ?」

 

「えへへ、アイスクリーム。しかも三段っ」

 

 

 ……ウーノに叱られそうだな、これは。

 セインのことでクアットロが嘆くわけだ。

 だがこれも個性、よいことなのだろう。

 

 

「ささ、チンク姉、一番上をパクッといっちゃって」

 

「あ、ああ……」

 

 

 初めて見るそれに少し戸惑いながらも少しだけ舐めてみた。

 ──甘い。それに、冷たい。

 

 

(せめてこのアイスぐらい胸に膨らみがあれば……くぅっ、あたしも牛乳飲もうかなぁ……)

 

「あっ、ほらチンク姉、アイスついてるよ」

 

「む……」

 

(……こんなチンク姉、ディエチやこれから稼働する子たちには見せられないかも)

 

 

 姉としたことが……いや、あまりセインを妹扱いし過ぎるのも可哀想か。

 自分が姉らしくないのを気にしているようだしな。

 

 

 

 

「はむ……それにしても頑張るね、あの子」

 

「今朝見つけたのでジュエルシードは漸く一つ。管理局の目を掻い潜りながらということを考えれば大したものだが……」

 

 

 まったく無茶をする……ただの人間の少女でも、母親のためにならここまで頑張れるということか。

 

 

「……ディエチには見せられないね。あの子、こういうのは嫌だと思うから」

 

「──お前も姉らしくなったな」

 

「そう?」

 

 

 姉から見れば、お前もまだまだ可愛い妹のままだが。おそらくそれは永遠に変わらないよ、セイン。

 

 

 

 

 

「だが、まずは頬についたアイスを拭うことからだ」

 

「うっ、不覚……」

 

 

 それにやはりまだまだ一人前とは言えない。

 この任務で少しでも成長できればよいが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 出張任務3日目。

 ターゲットの補足に成功。

 現地のモノに触れる。

 アイスは甘くて冷たい。

 

 

 相変わらず、平和な任務であった。

 

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