紫煙燻る黒狐   作:とろねぎ

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0章:私が死んだ日
私の日常


 

 

初めましての方は初めまして。

 

とろねぎ(狐ジャンキー)です。何でもかんでも狐をぶち込みます。

 

覚悟の準備をしておいて下さいッ!!(発作)

 

 

 


 

 

 

「...ぅ、かふっ...」

 

薄暗い裏路地で、腹部にジンジンとした不快な熱を抱えて倒れ伏すのは...私。

 

ぼやけた世界の中、同じように倒れている人たちを見て自分だけが仲間外れにされていなかったことに酷く喜び、安堵した。

 

それでも私の世界の中心は、目の前に経つ長い銃身のものを持った人だった。

 

その人は、私を一瞥すると背を向け、長く美しい黒髪を揺らしてゆっくりと歩き出した。

 

銃を肩に背負って、ゆっくりと。それはすっかり私への興味を無くしていることの表れだったのかもしれない。

 

「...ぁ、ま...て...」

 

芋虫のように、意地汚く、服に土煙で模様を付けられることも気にせず、這いずり、その人の足を掴む。

 

「...」

 

私を振り返って、黙ったまま見つめるあの人。

 

「まっ...て...待って......!」

 

「...」

 

その気になれば振り払えるものを、氷漬けにされたように動かないあの人。

 

その時。

 

その時初めて。

 

心の底から嬉しいと思った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

...

 

......

 

.........

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリ!!

 

「あーっ!!耳がーっ!!」

 

けたたましく鳴り響くあの憎き非人道的戦略兵器(目覚まし時計)を、手刀で一線。振り下ろすように停止させることで私の一日が始まる。

 

私の人生の中で、唯一の至福とも言える睡眠を邪魔するなんて、非人道的以外の何物でもない。

 

この世界は...残酷だッ...!

 

まあそんなことを言ってたってね、学校があるのには変わりないんだから行きますよと。

 

こうやってウダウダしているだけであったかご飯が出てくるならともかく...まあまあ、そんなことはこっちに置いといてかつ犬の餌にしておいて...

 

ご飯!

 

「今朝は豪勢に...ケーキドーナツぅ〜!」

 

バリッとビニールを破いて...いただきま〜す!

 

うっひょー!サクサクふわふわのドーナツには

 

(中略)

 

あぁ〜美味しかった!こんなに甘味の暴力とも形容すべき揚げ物を、160円程度で頂いちゃって良いんですか!?

 

良いんですか!あぁ素晴らしきかな世界!

 

「...っと、もうこんな時間か。はーあ、もう学校行かないといけない...嫌になっちゃうなぁ。」

 

ダボりとしたパジャマから着替えて、いつもの制服...私の場合はしっかりとした和服に袖を通して鏡の前に立つ。

 

「シワ無し、ホコリ無し、銃よし、髪...よぉし!行ってきまーす!」

 

誰も居ない賃貸部屋に短い別れを告げて学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

私がいつも通っている、そこまで大きくない学校。私はそこの六年生で、もう今年が終われば卒業して中等部に移る...はず。

 

今日はいつもより遅くなっちゃった。まあそれでも朝のHRまでは20分近い時間があるけどね。

 

「それでさーそれでさー」

「きゃはは!なにそれ!」

 

「はー、学校メンドイ...」

「今日休めばよかった。」

 

「食べたら太るのなんでなん?」

「カロリー計算するこっちの身にもなれよって話。」

「うわ、わかりみ。」

 

...教室は賑やかだな。みんな仲がいいようで何より何より!

 

じゃあまあ、こっそり失礼しますよって...

 

扉に手を掛ける。スライド式だから、あとは横にずらせば開く。

 

...のに、どうして動かないんだろう。

 

「はあ...はあ...!」

 

どうして鼓動が早くなるんだろう。手が震えて、水の粒が私の頬を伝って顎から床へ弾けた。

 

おかしいな?おかしいよね?変だな、変だな...どうしたんだろ...

 

「...っく...はあー...よし治った!」

 

パチンと両頬を軽く叩くと、さっきまでが嘘だったように晴れやかな気持ちになった。

 

そしてその勢いのまま扉を開く。

 

「おはよー!」

 

「「「......」」」

 

突如静寂に包まれた教室と、私に向けられる様々な視線。

 

嫌悪、恐怖、忌避...その場の全員が、ピクリとも動かない表情筋で感情表現をしていた。

 

よくもこの歳で、こんなに感情表現豊かになったものだと感心しつつ、自分の机に向かう。

 

乱雑に散らかった机の上を片付けてから荷物を掛け、座る。

 

生憎、私には友人と呼べる人は居ない。

 

じゃあ何のために早めに来たんだよと思うかもしれないが、早めに着いていないと落ち着かない性分だから仕方ない。

 

落書きだらけで見るに堪えないが、それでもここで過ごす分には十分。そう思って、カバンから一冊の本を取り出す。

 

かなり前の休みの日、適当にさまよっていたトリニティ自地区の図書館で、司書さんにオススメされた本。

 

所属してる地区を言ったら驚かれたけど、特別に貸出期間を長くしてくれた。それでも、二週間ちょっとしかないけど...まあそんなことはいいよね。

 

すっかりあそこの品ぞろえに魅了されて、通いつめることになった。週一、もしくは二週間に一回のペースで。

 

この前オススメされたのは、とある十歳の少年が明暗隔てられた世界の間で揺れ動き、やがて自己という殻を割って鳥籠から飛び出す話。

 

人並み、月並みな考えだけど自分を変えるというのは、並大抵のことじゃないのだと思う。

 

それが仮に、自分を外から守ってくれる硬い卵の殻なら、なおさらそれを割って広く気の遠くなるような世界に飛び出そうとは思わないだろうね。

 

...うん、なんやかんや思うところはあるけど、読書は好きだ。座りながらここじゃないどこかに連れて行っていくれるから。

 

というか私は私だけの時間が好きだ。

 

だからこそ、その時間を邪魔するものが嫌いだ。人でも、物でも。

 

「おい!」

 

例えば、こういう...普段は私を蛇蝎のごとく嫌うくせに意味のわからないタイミングで話しかけてくるヤツ。

 

こんなのに反応しても大抵ろくなことにならない。

 

邪魔しないで。

 

「おい!こっち向け!」

 

「...」

 

鬱陶しいな...

 

「透かした態度取ってんじゃ...ないよ!」

 

瞬間、ノイズがする方向から冷たい液体を掛けられる。

 

「...最悪。」

 

ばしゃり、びしゃり。

 

私がこぼした呟きは、ぽたぽたと私の髪を伝って水滴が落ちる音にかき消された。

 

私の嫌いなもの、もう一個あった。

 

物を大事にしない人。

 

「...なに?本が濡れちゃったんだけど、どうしてくれるの?」

 

ようやくまともにノイズの元凶を見た。

 

一本の小さな角と手にバケツを持った、至って普通なクラスメイト。

 

どこにでも居そうなその人は、人混みに一度紛れてしまったら二度と見つかることはなさそうな。そんな感じ。

 

「ちっ...やっと言うことがそれ?...気持ち悪い『ハンザイシャヨビグン』が。」

 

それだけ言って彼女の席に戻って言った。

 

何が気持ち悪かったのだろう。どうして私が水をかけられる必要があったのだろうか。

 

犯罪者予備軍だなんて、どうしてそんなことを言われる必要があったのだろうか。

 

くすくす、くすくす...

 

愉快そうな声が周りから聞こえる。

 

私とお話がしたいなら、もっと優しくしてくれればいいのに...恥ずかしがり屋なのかな?

 

私がトイレの個室にいる時に上から水を掛けてきたり、私の分の給食をお茶でびちゃびちゃにしたり...なんかズレてるんだよね。

 

あ、でも今朝も置いてあった花は綺麗だったな。それは少し嬉しいかも。

 

とりあえず手拭いで本だけでも水気を取る。

 

あそこの司書さん、本を壊したらめちゃくちゃ怖いって聞いたから、それだけは回避しないと...!

 

ガラガラ

 

『皆さんおはようございます!』

 

「「「おはようございます!」」」

 

私がしぶとい水滴に苦労していると、いつの間にかHRの時間になっていたみたいで、いつものロボットの先生が入室しHRを始めた。

 

『はい、今日も皆さん休まず!全員来れてますね。偉いですよ!』

 

...出来た!

 

少しシワになっちゃっているけど、どうにか文字がにじまないように出来た!

 

『それでは今日のお知らせですが......!?』

 

あ、目合っちゃった。ロボットだからどこに目があるか分からないけども。

 

『タマヨさん!?どうしたんですかそんなに水浸しで!?』

 

そして、私の名前を叫んだのか、悲鳴がたまたま私の名前だったのか分からないような声を上げた。

「...これは、さっき...「せんせー!タマヨちゃん、登校中に池に落ちちゃってそのまま来たみたいなんですー!」

 

「えっ?」

 

違うでしょ?さっきあなたにやられたんだけど?記憶喪失にでもなったのかな...?

 

少し心配。

 

『それは大変でしたね。風邪をひくと行けません、保健室で見てもらった方がいいかもしれませんね。』

 

他人の心配してたら自分の心配された!?

 

「大丈夫だよ先生!これぐらいなんともな...くしゅんっ!...えへへ。」

 

くすくすくす...

 

『あぁもうほらほら、早く行ってきた方がいいですよ?健康は失って初めてその大切さに気付くとは言いますが、失わないことが第一なんですから!』

 

「...わかり、ました。」

 

渋々と立ち上がり、教室を出て保健室に向かうことにした。

 

今まで朝は色々な事が起きていたけど、こんなことは初めてだったな...

 

 

 

 

 

保険の先生ロボットからは『濡れていない服に着替えて安静にしておいてみましょうか』と言われ、体操服に着替えてベッドに潜っていた。

 

うっかり眠ってしまい、目が覚めた時にはもう夕日が差し込んでいた。

 

たぶん、今帰りのHRをしているくらいなのかな...

 

「もう戻らないと...」そう言いながら起き上がろうとしたが、どういうわけか私の体が動かなかった。

 

まるで、ベッドの布団が鉄にすえかわったように、戻ろう戻ろうと思う度にそれは重さを増してくる。

 

こうやって体が動かないのも、涙がポロボロと零れ出すのも、風邪の症状だと結論付けた。

 

 

 


 

 

あとがき

 

最初に言っておくと鬱展開は無いです。書けないし、アイデアも浮かばないので...強いて言えばオリ主ちゃんに少しばかり苦しんでもらうだけです。

 

オリ主ちゃんの名前は「タマヨ」ちゃんです。下のは『よっこら少年少女』というキャラメーカーで作ったタマヨちゃん(イメージの姿)です。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

この章は少し...数話ちょっとだけやって本編入りたいですね。

 

とりあえずは、伏線(笑)を張りすぎて読んだ人が何も分かっていない状況なので次回以降はそれを詳しく書いていきたいです。(願望)

この作品に足りないものとは...

  • このままでいいんじゃね知らんけど
  • 銃撃戦が少ねぇ!
  • タマ虐
  • ガチ百合回
  • R-じゅうはt(銃声)
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