古書館の中で
「さて...何やろっかな〜個人でやるにしても事務所とかは必要だし...ウイさんはどう思う?」
「......」
「ウイさん?」
後悔や遺恨なんかのしがらみを抜きにした、純粋な迷走状態。
不安はあるけど、それでうじうじしてる暇は無いと自身を一喝して奮い立たせる。
でも私だけで考えるのにも無理があったから人生の先輩にアドバイスでも貰おうと思ったんだけど...
「...」ブクブクブクブク
「えっあ...うっ、ウイさーん!!」
肝心の人生の先輩は、情報量が多すぎたのか泡を吹いて倒れてしまった。
「どうしようどうしよう...とっ、とりあえずソファに寝かせて......軽っ!?」
この人ちゃんと食べてるの?
なんて健康面の心配をしながらソファに寝かせる。
「えーと、毛布、毛布...」
確かウイさんが使っている毛布がどこかにあるはず。最近使ってるの見た事ないけど...
...
......
「見つかんない!!毛布どこ!?」
よく考えなくても、至る所に本が山積みにされたこの空間で、一枚の布を探し出す方が無理というもの。
「んー...とりあえず私の上着かけとこうかな。たまに地面に引きずるくらいには無駄にデカいし。」
一枚羽織っていたものを脱いで、ウイさんに被せる。なんか思ったよりも毛布っぽいな...?
さて色々どうしようか。あ、でもまずは...服、今度新しいのに変えようかな。動きやすい服に。
何回裾を踏んで転んだことか...
和服の締め付け感は好きだけど、大きいしなぁ...やっぱり私ももっと短いスカートに......やっぱり恥ずかしいからやめておこう。
痣も多いし。
結局今のままでもいいかも。今かけている上着が大きいだけだし、走ったり跳んだりは出来るわけだから。
とりあえずは私も落ち着いて向かい側のソファに腰掛ける。
こ、腰掛け...
「...先客がたくさん...ちょっとどかすね。」
ソファにも山と積まれた本を少しズラして私が座れるスペースを作る。
そこに腰掛けてジッと天井を見上げる。
「さてどうしよう」と心の中で呟く。
お金は...まあカードに送られ続けていた、でもほとんど手を付けていないアレを使わせてもらうとして...
『何をするのか』とか、あと店名も考えないと。
...なんか考えがまとまらないな。
「うぅ...」
「起きた...?」
「たま、よ、ちゃ...」
顔がこっちを向いて、私の名前を呼ぶ。
「起きた?...その、早速だけど色々聞きたいことが「なに、そのかっこう...」
「......?」
変な格好でもしていたのかと不思議に思って自分の体を見るけど...特に変なところは無い...ハズ。私のセンスがおかしくない限りね?
「ばなな、の...きぐるみ...」
「...え?」
バナナの着ぐるみ...?
「やめ、やめてくだ、さい...なに、なにするんですか...!」
ウイさんがあそこまで魘されるなんて...一体どんな悪夢を見ているのだろうか...!
...悪夢?
「ハッピーハッピーって......なにがぁ...!?」
「本当に何されてるの!?バナナの着ぐるみ着た私に何されてるの!?」
「う、うぅ......おおきな、ハート...抱っこしてる...」
「いやわかんないわかんない!何一つとして理解できる要素ないんだけど!?」
「う、うぅぅ...」
「...あ、止まった。」
ピクリとも動かなくなったウイさん。一瞬だけ凄く不謹慎なことを言いそうになった。
さすがに恩知らずだからやめたけど。
「なんか...疲れた...」
ボソリと呟いて懐から取りだしたのは、お姉ちゃんから貰ったキセル。
煙草じゃないから大丈夫。そう頭では思っていてもやっぱり少しだけ抵抗感がある。
でも、せっかくのプレゼント。使わないのもお姉ちゃんに悪い。
今まで散々目に見えないところで助けて貰っておいて、悪いも何もないとかは言っちゃいけない。
「...何事も経験か。」
震えるキセルが段々と近づいて、すぐにでも見えなくなった。
唇に当たる冷たい物。
それを軽く挟むようにして咥える。
「...ぅあ、火...いるんふぁっへ。」
咥えてから気付いたみたいで、なんとも間抜けな声を出して火を探す。
「んー、なひなは、ひはふぁないふぁ...?......!?」
「火が無いなら仕方無い」と諦めて、プレゼントをもはやただ口に咥えるだけの鉄塊にしようとした時、口内にやたらといい匂いのする煙が充満して...
「けほっ!けほ、けほっ!...ひー...」
むせた。
「なん、で火が着いて...?」
先の方を見ると、わずかに赤くなったハーブの中から細く薄い煙が立っていた。
「......まいっか!それにしても、本当にいい匂いするんだねぇ。」
余計な情報を洗い流して、さっぱりとした思考にしてくれる匂い。
こう書くと余計にアブナイ感じがしてくるね...?
気を取り直してもう一度口に含む。
「...すぅっ......」
ゆっくりと吸って...口を離して...吐く。
「ぷあ...」
口の中に清涼感にも似た感覚を残して、紫煙が天へと昇る。
極々少量、雀の涙程度の量のそれは、意外にもかなりの存在感を放っていた。
「...確かにこれは、考え事とか...捗る、かも。」
※あくまで個人の感想です
そう注釈を入れるべきかもしれないけど、少なくとも私は気に入った。すごく気に入った。
吸わなくても、なんなら火がついた状態で置いておいてもいい匂いがするから、やたらと細いインテリアくらいにも使えるかもね。
「さて...私が出来ること、か...何があるんだろう。」
頑丈さには少し自信はあるけど、あくまで一般的なものだろうし...痛いのは嫌だし...
「...くしゅんっ!......うーっ、さぶっ...」
ふとした体温の低下に身体を震わせた。
ウイさんが風邪をひかないようにと上着を被せたが、今度は自分が風邪をひきそうになっている。
「これは...私に毛布がいるな...?」
しかし、一度諦めたものをまた探すことにも辛いものがある。
煙を登らせる火皿を眺めながら、「もういっその事一緒に包まってやろうかな」などと狂ったことを考えていると、煙が揺らいだ。
「...ん?」
揺らぐと言うよりも...伸びている...のだろうか。床とほぼ並行になって、どこかに。
窓も空いてないのだから、煙は天井に昇り弾けるはず。
違和感はあるが、不思議とそれを異常とは思わなかった。
そして、二の腕を服の上から擦りながら立ち上がり、煙が伸びる方へと歩き出すのもまた、おかしな事ではなかった。
火が消えないように持ったキセルから、伸びる煙。
もし運命の赤い糸が実在して、目に見えるとしたらこんな感じなんだろうな。
積まれた本を横切り、開かれた脚立の下をくぐり、辿り続ける。
ふとした時に煙が不自然に途切れている場所に着いた。
「...?......あっ。」
途切れていたのじゃなくて、下に行っていたようで目を向けるとシートのように本の下に敷かれた毛布。
「こんな所で下敷きになってたの...?」
本を持ち上げて毛布を回収、そして今一度来た道を戻る。
「...んん!?」
しばらくしてからようやくおかしなことに気付いた。
「ここもしかして暖房無いの...?」
...ごめん。違ったみたい。
毛布にくるまって、なんかそういう類の妖怪みたいな格好でソファに戻る。
ウイさんは...
「や、やめて...どうしてタマヨちゃんが...わたしの、いちにち、を......!」
またなにかうなされ始めた...
「だ、から...どうして、なにかのコスプレを......ね、ねこ...!?」
どうやら今度は猫のコスプレしてるみたい。
「バナナの次は猫か〜...」
「う、きゅうに......ヤギ......」
「えぇ...」
「なに、いってるんですか...?」
「私も分かんない。」
「べろべろべろべろ...なんですかこのヤギ...?......なんであなたも分かってないんですか...!!」
ヤギの私が猫の私に聞き取れない文句でも言っているのかな、謎の世界観。
まさに夢って感じ...
「...ぴ...ちぴ...」
「...?」
「ちぴちぴ...ちゃぱちゃぱ......ちぴちぴ...ちゃぱちゃぱ...」
...
......起こしてあげよう...
「ウイさん。...ウイさん!起きてー!あとついでに上着返してー!」
「うぐ...うっ...」
「...あ、交換すればいいのか。」
サッと上着を奪い取って、サッと毛布をかける。
よし!ぶかぶか!
我ながらスマートと自画自賛したくなった。いやうん、したくなっただけだけど。
「タマヨ、ちゃ......」
「はぁい、どうしたの?って寝言だろうけど...」
「みみ、四つ...」
「.........へ?」
「きつねと、ねこ...」
「...耳四つって凄く色んな音聞けそうだよね...」
「ふふ、ふふふふふ...!」
今までうなされながら呟くだけだったのに、いよいよ本格的に笑い始めた。
「もふもふ...いいですねぇ...もふもふもふもふ...うふへへへ...」
「......」
公文の表情から一変、某有名RPGのスライムみたいな口をしてよだれを垂らす。
そんなだらしない先輩を見ながら。
「...うわっ。」
軽く手を構えた。
ウイ
「あの......
タマヨちゃん?」
ウイ
「起こしてくれたのはありがたかったです
しかし...」
ウイ
「...なんか頬が痛いのですが」
「しかも両側」
ウイ
「いや...あなたの手の平も、赤くないですか...?」
ウイ
「え、いや、それはムリがありますって
アレだけ真っ赤になっているのに...」
ウイ
「...ハイ」
この作品に足りないものとは...
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このままでいいんじゃね知らんけど
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銃撃戦が少ねぇ!
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タマ虐
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ガチ百合回
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R-じゅうはt(銃声)