数日たったある日...
「...ふなぁ~...」
誰もいない、私だけの部屋の中で...私は干からびかけていた。
「おかしい...もうかれこれ五日は何にも来てないよ~...」
暮らすのに十分な設備を整えて、ちょっと良い感じの茶器とか茶葉とか茶菓子も買って他の人をおもてなしする準備はばっちりなのに...
ウェブサイトはもちろん、ポスターも作って広告もしてあるのに...!
「...まさか!」
住所や電話番号を書いていなかったのかと思い、自分が作ったサイトを確認する。
種類の微妙に違う、狐のフリー素材を多分に使用して作られた小さなサイト。それを確認する。
「...は~...」
...が、何も問題は見られなかった。
「...誰も物失くして困ってないなら良いことなんだろうけどさ...それに報酬金もそこまで高額なものにする予定はないし、成功したら後払いって形式だから軽い気持ちで来れると思ったんだけど。」
自分が気づいていないだけで何か問題があるのかもしれないと思い頭を使う。
部屋の片隅で膝を抱えて、うんうん唸っていると不意にインターホンが鳴った。
「え!?来た!?」
耳をピンと立てて、扇風機のように、千切れんばかりに尻尾を振り回しながらすぐに玄関扉に手を掛けた。
「はい!こちら『黒狐』!何かお探しの物...が...」
出来る限り愛想よくと思って作った笑顔が、目の前に立っている人物を見て崩れ去った。
赤いシャツ、サイズの合っていない大きな白衣を羽織ってつるりとした尻尾を揺らしている人物。
「やぁ妹君!ごきげ「人違いです。」
ばたんと扉を閉めた。
「...うそぉ...?」
一呼吸おいて、もう一度扉を開ける。
「...んよう!」
わざわざ中断したところから挨拶を続けたカスミ...カスミさんを見て天を仰ぐ。
「oh...」
「嘘でも見間違いでもないぞ。あぁ誤解しないでくれ!私は依頼人として来たのだからね?さて、入れてはくれないのか?」
「んんふぅ...!」
「ふんふん...おおよそ、あの後姉君に私と関わらないように忠告されたのだろう?そして今、その忠告を守るべきか破っても良いものか検討している。...そうだろう?」
自信満々に私の心情を推測してなおかつ当てるカスミさん。それでもなお悩む私にささやく。
「あまり繁盛していないのは、始めたてなのもあるだろうが何よりも実績がないからだ。しかしその点、私の依頼は既に有望な場所にはすべて断られるほど困難なもの。それをクリアしたとなれば...君の事務所...あー...事務所?の名も多少なりとも広まるだろうね。必ずだ。」
「断られたのって、あなただからとかじゃ...?」
「...分かった。成功すればその話を拡散しよう。もちろん、情報源が私、鬼怒川カスミだとは漏れないようにね?」
「んん...」
「なに、至極単純な話さ。私はあるものを探したい。君はある程度の知名度が欲しい。そして私の依頼は確実に君の事業に並外れた功績を残す。...どうかな。」
天使と悪魔。
今、私の左右の耳の側で、ウイさんによく似た天使とカスミさんによく似た悪魔が口論している。
『駄目ですよ...こんな、怪しい人...』
『客人に怪しいとは心外だな?話だけでも聞いてみるべきだ!』
『は、話だけでも危ない目に遭うかもしれないじゃないですか...!』
『それなら断ればいいし逃げればいい。簡単だろう?なあ妹君。』
『タマヨちゃん?信じてますからね?』
顔をしかめて考えている私。
ウイさんごめんなさい...!
「...わかった。どうぞ、入って。」
心の中で謝ると、カスミさんを部屋に招き入れて椅子に座らせる。
「お茶とか、いります?」
「いいや、そこまで気遣ってもらわなくて結構。お互いテンポよく行こう。」
「そう?じゃあ前失礼しますよっと...」
私が対面の席に座ると、話を切り出した。
「とある機械の部品を探してほしい。」
なんか思ってたより普通な頼み。
そんなに見つけるのが難しいものなのか、その機械がよほど危ない感じのものなのか...
「えーっと、どこらへんで失くしたか、とかわかる?」
「アビドス砂漠。」
「...え?」
「アビドス砂漠を通って運搬し終えた後に無くなっているのに気付いたからな...十中八九そこだろう。」
「あー...断られた意味わかったかも......はぁ、写真とか見た目がわかるものってある?」
「おや?口調の割にはずいぶんと前向きではないか。感心感心。」
「せっかくの初来客さんだからまあ...少しくらい頑張ろうかなって。それで、見た目とかって...」
「そう焦らないでくれよ。しっかり、隅々までサイトは確認したのだから、用意していない訳が無いだろう?」
一枚の写真が机の上に置かれる。
「...歯車?」
「あぁ。歯車さ!」
「...これくらいだったら他ので代用出来たりは...」
「オーダーメイド品をそこらの店で代用できるなら苦労は無いさ。」
「デスヨネ...ん、じゃあ少し失礼するね。」
「...?...おいおい、君は未成年だろう?いつからそんな非行少女になった?」
「ふぁーぶひゃはら、あんふぃんふぃへ。」
「すまない。何を言っているのかまるで見当がつかん。」
キセルを咥える私への文句に対して、咥えた状態のまま返事する。
でも何を言っているのか分からなかったみたいで残念。とっても。ウン
鼻腔に留まる匂いで落ち着いて、あの見た限り何の変哲もない歯車を思い浮かべて息を吐く。
辺りに充満する匂いで、タバコではないと気付くカスミさんを横目に煙の行く末を眺める。
線が出来ればそれでいいはず...もしこれで普通の歯車に案内されたら笑うしかない
それも丁度、アビドス砂漠みたいにカラッカラのやつ。
「...うん、大丈夫そう。じゃあ私は早速探しに行ってくるから...あー......そうだ!連絡先教えて。終わったら連絡するから。」
「あぁもちろんだとも。それと一つ、なにやら勘違いをしているようだね?」
「え?」
「私もついて行こう。」
「えぇ?」
「そんな顔しないでくれたまえよ。私はその部品の記憶まで落っことしてきたわけじゃないんだ。それにもしそこいらにある歯車を持ってこられては困るからね。」
「えぇっと、それはちょっと...」
「おや、なにか見られたら困るものが?いやしかし、手段は開示しておくことである程度の信頼を得ることも可能にするのだぞ?だいいち、どうして君は姉君の庇護下からわざわざ飛び出すような真似をしているのだね?」
ここぞとばかりにまくし立てられる。
短い、穏やかな歓談のはずだったはず...
ならどうして今、顔を掴まれて私の耳から、ひたすらに脳へ耳触りの良い音を流し込まれているのだろうか...?
「お...お姉ちゃんに、楽、させてあげたかったから...」
「そうだろうそうだろう!ならば、人生の先輩のアドバイスは聞いておいた方が得だぞ?煙で物を探す。最初はきな臭く思われるかもしれないが、その方が噂というのは広まる物...」
「え、えっと...?要するに、一緒に連れていけばいいの...??」
「......あぁそうだとも。」
解放されると共に、ガンガンと酷い頭痛のする頭を抑えて立ち上がる。
私が仕事を始めたと聞き付けて依頼しに来たのはともかく、話を広めるだなんてどうしてこうも私に都合のいい事をするのだろう...?
特段仲が良い訳でもないのに...
「どうしてこうも私が協力的なのか...疑問に思っている顔だな?」
「...まあ?」
「これは言わば...あー、そうだな...投資だ!『災厄』の妹、それだけで成長を促す価値は十分にある!ということだ!」
「...」
「...理解いただけたかな?」
「...うん...?」
話が難しくて分からないけど、とりあえず悪い人ではなさそう。
...あれ?
でもなんでお姉ちゃんは近付くなって...
「妹君っ!さあ行くぞ!」
「え、ちょ、ちょっと!待ってよ!?」
完全に主導権を握り、家主を差し置いて真っ先に扉をくぐるカスミさんを急いで追いかけた。
あとがき
簡単に言いくるめられるタマヨちゃん可愛いね♡
悪そうな輩にもホイホイついて行っちゃって♡
...現段階で悪い人(カスミ)について行ってた...(気付き)
この作品に足りないものとは...
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このままでいいんじゃね知らんけど
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銃撃戦が少ねぇ!
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タマ虐
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ガチ百合回
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R-じゅうはt(銃声)