紫煙燻る黒狐   作:とろねぎ

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心身共にふやけてく

 

 

まっぱだカーニバル

 

 


 

 

 

 

ぽっかりと不自然に拡がった、澄み渡る青空の下。

 

遠くから聞こえる子鳥のさえずりと体を包み込む温かさが心地良くて、ついつい、瞼が重くなる。

 

左にはカスミさん、右にはメグが居て、二人の他愛も無い話が余計に睡魔を増幅させる。

 

あ...もう、だめ...

 

「ぶくぶくぶくぶく.........んぶぇっ!?げほ、げほっ!」

 

「...ぷっ、あははは!うたた寝して溺れちゃったの?」

 

溺死するところだった。

 

念の為お面は外しておいて良かった。

 

まあそのせいで今こうして片目で景色を楽しむ羽目になっているんだけど。

 

「それも仕方あるまい。湯も肝心な要素ではあるが、例え完璧な湯加減だとしても白と黒のオセロのようなタイルに囲まれた部屋では到底良い温泉とは言えないからな。」

 

「やっぱり、露天風呂が一番だよね〜っ...」

 

なんでだっけぇ...

 

なんで私、この二人と温泉入っているの...?

 

今度は溺れないように、かすかに硫黄の匂いのする湯船に口元を沈めた。

 

 

 

 


 

 

 

 

「もー!どうしてこんな遠くまで来ちゃったの部長ったらー!」

 

変わらずかなりの速度で走りながらもカスミさんに愚痴をこぼすメグ。

 

「それに関しては悪かったな。しかしメグよ...一度止まらないか?タマヨの顔が真っ青だ。」

 

「え!?ご、ごめんね〜!」

 

土煙を巻いあげて急ブレーキがかかる。

 

あと私の体にかなりの負荷もかかる。

 

「うぇっ、きゅ、急に止まらにゃいれ...で、出ちゃう、から...乙女の、尊厳っ...」

 

お腹を締め付けられていることもあって本当に危ないと感じた私は一旦地面に下ろしてもらう。

 

「ひい、ひい...あ、立てた。」

 

「おっ!良かったね!」

 

衝撃加えたらまた動き出すって...一昔前のテレビじゃないんだからさ...

 

「タマヨのぎっくり腰も治ったところで私も降ろそうか、メグ。」

 

「ぎっくり腰じゃないって。誰かさんに驚かされたからだよ...」

 

「ハッハッハ!まあもうすぐそこなのだから、歩いていこうではないか?そして私を降ろすんだ。」

 

「それもそうだねー!じゃあタマヨちゃん、行こ!」

 

「私は?おーい。おぉーい...!」

 

担いだままなんだ...

 

「ねえ部長。この子が期待の新人ってどういうこと?」

 

「あ、そうじゃん。それ私も知らないんだけど?それに、今の私にどこかの組織に所属する余裕はないよ。」

 

「なに、ちょっとした手伝いでいいんだよ。」

 

「......まさか、温泉探せって言わないよね?」

 

「...ハハッ!」

 

「嘘でしょ...」

 

「えぇー!?タマヨちゃん温泉探せるの!?凄いじゃん!」

 

「待って、そんなこと一言も言ってない。まず第一にそんなふわっとしたもの探せるわけないでしょ...?」

 

「そうは言うが、君の神p...力には不可解な点が多い。君は当たり前のように目的のものを探し出せるが、それはどうしてだ?煙を吹く時、何を考えている?まずまずもってしてなぜ煙が君のガイドを務める?」

 

凄い捲し立てているが荷物のように担がれた状態でそんなことをされても、絶妙に締まらない。

 

それに、何を考えていると言われても...

 

「探したいものを考えているだけだよ?姿形、触り心地とか、依頼内容の詳細とか!」

 

「それで探せるの?」

 

「つまりはそうだな...想像力とでも言うべきだろうか。つまりだ!」

 

こうやって話している最中にも、歩き続け、やがて奥の方で白い煙が立ち上っているのが見えてきた。

 

「着いたよー!」

 

「え、これって...温泉?」

 

木々の中で、ぽかんと円形に広がった空間。

 

そのど真ん中に硫黄の匂いを発する湯が湧き出ていた。

 

ここを向かっていたんだ。

 

「...あ、そうだ、話を戻すけど、つまり、なにが言いたいの?まさかただの慰安目的ってわけじゃ「おっさきーっ!」今の何?」

 

目の前で上がる水柱に呆気にとられていると、温泉の中からメグが顔を出した。

 

「ん〜!やっぱり気持ちーね!タマヨちゃんも入ろ!」

 

いつの間にか、身につけていたものを全て脱ぎ去ったメグが温泉にダイブしたみたい...

 

「君に良い温泉を探してもらうには、君に良い温泉を知ってもらう必要がある!」

 

「どうしてそうなった?」

 

「ねぇねぇ部長。色々言うよりもさ、入ってもらった方が早いんじゃない?」

 

「えっ?」

 

「......それもそうだなっ♪」

 

「えっ!?」

 

突拍子も無いことを言い出した二人の顔を交互に見ていると、がしりとカスミさんが私の腕を掴んだ。

 

「な、何?何するの?」

 

「うん?服を着たままでは入れないだろう?」

 

「ヒッ」

 

「ほら早く!手伝ってあげるからさー!」

 

「メグは前隠して!?わ、わかった!わかったからちょっと待っ...」

 

「ふむ...姉君と似ているがまた違った装いか。脱がしにくいな...」

 

「勝手に脱がすなぁ!!」

 

 

 

 


 

 

 

 

「...思い出したらなんか余計に混乱してきた...ぶくぶくぶく...」

 

「また沈んでっちゃった。」

 

「そういう年頃なのだろうな。そっとしておいてやろう。」

 

謎の優しさ!

 

あと年頃とか意味わからないんですけど...

 

「...はあ...」

 

「そんな辛気臭い顔しちゃダメだよ〜!笑って笑って!」

 

ハグでもするのかと思うくらい近くに来たメグが私の顔を掴んでムニムニと撫で回してくる。

 

なんか既視感あると思ったらあれだ。大型犬。

 

それもサモエドとか、レトリバーとかの人懐っこい犬種。

 

「......あひょ、もうひょっと、きょりをおいへくらはい...」

 

「えぇー?なんで?どうして?」

 

その抜群のプロポーションが当たってるからだよ!

 

「あっ!」

 

するりと抜け出してから、お面とキセルを掴み、カスミさんの傍に身を置く。

 

「...んん...?おぉ、私の仮説を試してみる気になったか?」

 

「...」

 

なんとなしに首を下に傾ける。

 

...うん、美しい直線だ。

 

前の方で拗ねたような顔をしているメグを見る。

 

......

 

「...ふう、カスミさんの隣って案外落ち着くね。」

 

「褒めても何も出ないぞ?」

 

それもそうかと冗談めかして笑い、お面をつけてキセルを咥える。

 

「やるだけやってみるね。出来なくても文句言わないでよ?」

 

心の奥底から温まるような湯船、青空の中をふつふつと移動していく真っ白な雲、自然の息巻く音...

 

それら全てに集中し、煙を吹く。

 

もくもく立ち上るそれらは、しばらく留まっていたが、やがて空へと昇っていき...

 

遠くの空で、雲と共に旅に出た。

 

「......ダメみたい。ごめんね〜...」

 

煙を全て吐き切ると同時に謝る。

 

...が、肝心のカスミさんはそこまで落胆していない様子。

 

不思議に思い、尋ねてみると意外な一言が飛び出た。

 

「正直に言うと、私は今少しだけ安心しているんだ。」

 

「...安心?」

 

「あぁ。そうだな...簡単な話だ。そう簡単に見つかっては面白くないだろう?源泉を探すのも温泉開発の一環さ。長い時をかけ、地形を把握し予測を立て、そうしてようやく、ようやく発掘作業を開始して初めて結果が分かる。苦しいことばかりだが達成感も一際さ。」

 

「部長話ながーい...」

 

それはちょっと...同意かな。

 

「ふーっ、のぼせちゃうからそろそろ上がるね〜!」

 

メグが一言断りを入れてから温泉を上がると、それを待っていたかのようにカスミさんが再び話を切り出した。

 

「まあ特段落ち込んでいる訳では無い、ということさ。それよりも、他に話したいことがあったんだ。」

 

「他で?」

 

「君は、つい先日不良たちと撃ち合いをした。そうだな?」

 

「...なんで知ってるの?」

 

「なに、監視カメラを少し、ね。その際、ミニガンが弾詰まりを起こした。」

 

「う、うん。」

 

「その映像が、どこか引っ掛かってね。調べさせてもらったよ。...あの弾詰まりは、君が引き起こしたものだ。」

 

「.........はい?」

 

私が...?

 

確かに直前にミニガンを撃ったりはしたけど、そんなので故障するのかな?

 

「彼女の銃は詰まったんじゃない。詰められたんだ。君の弾丸にね。」

 

...ん?

 

今、なんて言った?

 

「六門の銃口全てに弾が入った。だから詰まったんだよ。これは偶然だろうか。」

 

「な、何が言いたいの...?」

 

「君の射撃精度はやけに高い。おおよそ15mは離れた、高速回転する7.6mmの口径六つに弾丸を入れ、しかもそれ以外で銃を撃った際は人に当たっていない。これがハンドガンやライフルなら銃の精度で片付けられただろうが...君のはサブマシンガンだ。もう片方はどの程度かは分からないが。」

 

殺生石の存在がバレてる...!?

 

上手く隠していたつもりだったんだけど...あ、いやぁ...アビドス砂漠でロボット倒す時に使ったな...

 

「でも、そんなの偶然だよ。本当に運が良かっただけで。」

 

「ふむ、一つ思うのだが...なぜ君はものを探す時に煙を使う?煙じゃなくても出来るかもしれない...とは考えないのか?」

 

「...確かに。でも、なんでいきなりそんな話を...?」

 

「君の周りの者だけでなく、君自身もその力について誤解していた気がするからな。まあ...ただ突っつき回しただけだな!」

 

「えぇー...?なにそれ...ふふっ。」

 

会話の終わり際、少し頭がぽうっとするような感覚がして上がることにした。

 

体の水気を拭き取って、衣服を身につけて火照った体を冷ます。

 

段々と体の隅からじわじわと眠気が侵食してきた頃、カスミさんに声をかけられた。

 

「もし君が良ければだが...明日私たちの開発現場に来ないか?」

 

「おー!来てよ!」

 

「...」

 

正直な話、現場というのは少し...いやかなり気になる。

 

でもなんだろう...なんかこう、なんとなくなんだけど凄く...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な予感がするので遠慮します。」

 

カスミさんはそこまで驚いてなかったけど、メグは一昔前のギャグ漫画だったら目が飛び出てるような顔してた。

 

面白かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あとがき

 

NOと言える狐耳美少女を愛でる男ッ!スパイダーマッ!

あ、ガチ百合回はif的なのでやろうかと思います。そっちのが丸いので。

 

余談ですけど、タマちゃんをAI絵で作ってみようとしたんですよね。

片面しかないお面は付けるの諦めて、既にある画像(よっこら少年少女で作ったタマちゃん)を読ませて作ったんですけど...

 

こいつを見てくれ、こいつをどう思う?

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

すごく...ワカモです...

 

片目おかしくなってないし誰だテメェ!?

この作品に足りないものとは...

  • このままでいいんじゃね知らんけど
  • 銃撃戦が少ねぇ!
  • タマ虐
  • ガチ百合回
  • R-じゅうはt(銃声)
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