評価7.77で笑ってしまった。縁起が良い
タマちゃんの射撃精度が良いのは、タマちゃんの力ではあるけどタマちゃんの腕ではありません。
タマちゃんをひっくり返したらキリノになります。
タマちゃんひっくり返したら可哀想でしょ何考えてんの?
「...ふー...」
呼吸を落ち着けてサイトを覗き込む。
狙いをよく定めて、撃つ。
乾いた破裂音の連続が起き、20m先の人型の頭部が穴だらけになった。
「20mも問題ナシ...と。次は25かな。」
こじんまりとした射撃場(それもミレニアムの)でぶつくさと独り言を唱えながら、手元の機会を操作する。
穴の空いたハリボテが地面に飲み込まれていくと、その少し後ろで新品のハリボテが直立した。
わざわざ依頼の片付いた後の、もう帰宅するだけだったはずの時間にこんなことをしているのも一応理由がある。
前、カスミさんに言われたことが気がかりだったから。
確かに私もあの時は死に物狂いで銃撃していたが、それだけで百発百中を決めることなんて出来ないだろうと。
...うん、我ながら苦しい嘘だとは思う。
多分だけど、嬉しかったからだと思う。
久しぶりにお姉ちゃん以外の人に褒められたから、浮かれてるんだと思う。
だから褒められた射撃精度を伸ばそうと、ここに足を運んだ。
「...はあ、単純だなぁ...私。」
ぼやきながらも撃ち、当たっては遠くへ当たっては遠くへを繰り返していると、ついぞ弾丸がハリボテを傷付けない場所まで到達した。
「...あぁ、さすがにこの距離じゃ当たらないか...でも38mはおかしいと思う...」
これには穴が空くどころか、うっすらと凹んでいるだけのハリボテも同意見じゃないかな。
「あっ、そうだ。せっかくならこっちも...慣らしておこうかな。」
無骨な細長い銃口。
十分鈍器として活用できる重量に、正直過剰なまでの火力。
あまりこれを人に向けて撃つことは無いと信じたいけど...一応ね。
「脚。」
爆発音。
「腕。」
再度爆発音。
「頭。」
同じ音の連続で、目の前にあるハリボテが跡形もなく消し飛ぶ。
...あ、やべ壊しちゃった。
内心冷や汗を垂らしながら手元の機械に目を落とす。
「...52m...?しかもまだ威力は残ったまんまだし、当たるだけだった、一体どこまで...ってそうじゃない。」
妲己も殺生石も、ほとんど外さなかった...銃がいいのか私がいいのか...はたまた...
「すうっ......ぷあ...この煙と同じなのかな。」
もしかして私、そういう特別な力があったり...!?
「......なんか恥ずかしくなってきた。『ちゅうにびょー』って言うんだっけ。私中二じゃなくて小六だけど。」
あっまずまず学校やめたから小六ですらなかった。
でもそうなってくるといよいよこの現象がオカルトとしか思えない。
誰かに相談出来ればいいんだけど、こんなこと知っていそうな人なんて...
「......一人、居る...」
思い立ったが吉日。
すぐにモモトークで連絡を取ると、快い返事が返ってきた。
からんからん
扉を押しのけると、それに付いていた鈴が来客の存在を主張する。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
「いえ、友達を待たせています。」
顔と思しき液晶で、顔文字のような笑顔を作り出すロボット店員に答えて席を巡る。
違う、違う...ここも違う...あっ!
一番奥の窓もない、隅っこの席で足が止まった。
「...こ、こんなお洒落なカフェに、わ...私なんかが居て良いんでしょうか...!?」
「おーまーたー...せっ!」
腕を抱いてカタカタ小刻みに揺れている人の対面に勢いよく入り込んだ。
「ひぇあ、ぎゃっっ!?」
あ...頭打った。痛そう...
「......こんにちは。ウイさん。」
「はい...こんにちは...どうしたんですか?話がしたいなんて...人をこんなところに待たせて...」
「人聞き悪いね?確かにカフェでお話したいって言ったのは私だけど、ここ指定したのウイさんじゃん。」
痛い所をつかれたように口篭る様子。
「それは...その......」
「言いにくいんならいいよ。親しき仲にもってやつ。...ウイさん、もうなにか頼んだ?」
ぐぎゅう〜...
「...」
「まだなにも、食べてません......!」
「...じゃあ何か食べよ!私がお金出すからさ!」
「え、いやいやいや!そんなこと出来ませんって、自分で払いますから...!」
「良いから。今お金有り余ってるから使わせて。」
そう、あれはカスミさんの依頼を終えた後だった...
依頼料の話をしようとしたら私のスマホで口座を確認するように言われ、確認すると...
「80万振り込まれてた......私って、特段物欲があるわけじゃないの。だから...ね?」
「い、いやだからって...」
「ね?」
「...では、お言葉に甘えて...」
メニューを開いて二人で覗き込む。
カフェということもあって、目玉であろうドリンクが出迎え、そこからページをめくる事にそれはもう美味しそうな料理がかわりばんこで姿を現す。
「決まった?」とか、「なにかオススメある?」なんて雑談を挟みながらページをめくっていくと、デザートの所で不意に動きが止まった。
「どうしました...?」
「...ウイさん、甘いのって好き?」
「え?あ、まあ人並みには...」
「これ食べよ!どっちも頼んで半分こ!...あ、もう何頼むか決めてた...?」
「これは...はい、いいですよ。二つ頼みましょう。それと...」
「うん、飲み物もね!どんどん無遠慮しちゃって!」
店員を呼び、注文を終えた...
「ふんふふ〜♪たのしみっだな〜っ♪」
耳をぴこぴこ、尻尾をぱたぱた。
感情の機微を如実に表す部位をフル動員して待ち焦がれていると、なにやら妙な顔をしているウイさんが声をかけてきた。
「...あの...」
「なーに?」
「話って、なんなんですか...?」
...
...話?
...
......
「...そうだったね...!?そうだそうだ。ウイさんに聞きたいことがあったんだ。」
「聞きたいこと?珍しいですね。」
「えっと、まず確認なんだけど...私が仕事の時に煙を追っかけるのって...ヘン?変わってる?」
「え?それはそうでしょう...?」
すっごい普通の顔して肯定したね?
寧ろ、『今更気付いたんですか。』とでも言いたげな...
「今気付いたんですか...?」
うん言ったね。言われちゃった。
「あー......うん、まあそうかな。最近ふと思ってね、その...実は自分が、ちょっと不思議な力が使えたり...みたいな?」
「...そうですか。」
「なんか冷たくない?分かるよ?私でも馬鹿なこと言ってるって思ってるもん。」
...でも、短く続ける。
「偶然にしては出来過ぎているというか、これ以上不思議なことは無いんじゃない?ってぐらいでさ。」
「不思議、ですか。不可思議な出来事はそこかしこに転がっているでは無いですか。」
「ウイさん...?」
いつものウイさんからはあまり想像の出来ない、饒舌な、捲し立てるような話し方。
何かを隠そうとしているような...いや、考えすぎか。
「私たちなんて、まさに変わっている存在そのものですよね?ヘイローを始め、翼、動物の耳・尻尾、角...どれも街で見る人たちとはかけ離れた姿です。」
「う、ウイさん?」
「......あ、すいません...なんと言えばいいのでしょうか...そうですね。つまり、私たちと神秘は密接な関係にある...ということでしょうか。」
「神秘...」
普通の言葉のはずなのに、どこか魚の小骨のような引っ掛かりを感じる。
神秘、神秘...意味はなんとなく分かるんだけど、ウイさんの言っているものと私の思っているものは、果たして同じなのか...?
「ねえ、神秘って「お待たせいたしました!こちらアイスオーレとアイスコーヒーミルク、それから『クロノワール』*1と『シロネージュ』*2になります!ごゆっくりどうぞ〜!」
「...わ、わあ〜っ!いい匂いする!......君たちなんかデカくない?」
今この瞬間、私の興味の対象は目の前に置かれた二つの写真詐欺デザートに移った。
片やチョコデニッシュの上にアイスクリームが鎮座したもの。
片や白いバウムクーヘンの上にまたもやアイスクリームが鎮座したもの。
なんとかアイスクリームが崩れないよう、半分に切り分けて...と。
「本当に大きいな!?」
「こ、これが『ヨネダ珈琲店』*3の逆メニュー詐欺ですか...」
「知ってたんなら止めて?おやつのつもりで頼んだのに、ガッツリなやつ来たよ?サラダ頼んだらステーキ来たくらい衝撃なんだけど。」
「なんですかその例え。」
あとがき
話すり替えられているのにも気付かないタマヨチャンもまた可愛いですね...
店名・商品名は完全架空のオリジナルです。
偶然同じ名前のものがあっても、偶然です。
私たちが生まれたという、何億年にも及ぶ偶然に比べれば、こんなこと些細な問題ではありませんか?
この作品に足りないものとは...
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このままでいいんじゃね知らんけど
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銃撃戦が少ねぇ!
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タマ虐
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ガチ百合回
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R-じゅうはt(銃声)