...
......なんか、背中が...柔らかい...
布団の中に入っているみたいな...
...でも...
「...さみしいよ...」
さみしい。
そんなことを一人、暗い部屋のやたらと座り心地のいいソファに丸まって呟いた。
「......ここどこ?」
今更ながらにここが自宅じゃないことに気付いた私は、体を起こして当たりをキョロキョロ見回す。
電気のついていない、どこかのオフィスみたいな...そんな場所。
「ここは?」
「シャーレのメインロビーです。...長い間空っぽでしたが、ようやく主人を迎えることが出来ましたね。」
「だ、誰か来る...!」
動物が眠るように体を丸めて、ソファにうずまる。
がちゃ、ばたん
「そして、ここがシャーレの部室です。ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう。」
扉が開き、閉まる音の後に後ろの方から落ち着いた口調で誰かに説明しているのが聞こえる。
シャーレ?先生?
「私は...何をすればいいの?」
続いて中性的な大人びた声。こっちが先生かな。
「特に何かをやらなきゃいけないということは無いですね。それに、シャーレの権限なら生徒たちを学園の隔てなく入部してもらうことも可能です。」
学園の...隔てなく...?
それって、元いた場所から...百鬼夜行から逃げてきた私も、受け入れられるってこと...?
「わお。何かわかんないけど、たぶん凄いことなんだよね?」
「はい。それに、とても面白いことです。...現在、詳しくは口頭でお伝えできませんが、様々な
「荷が重いね。」
「そう気負わずとも。ようするに、自由に活動してくださって結構、ということです。...では、私はこれで。
「...これ全部?机に座ったら窓の外見えないんだけど?」
「では私はこれで。また会う時を楽しみにしておきますね。先生。」
がちゃ、ばたん
「......」
「......」
説明してた人はどっか行ったけど...いつまで寝たふりしてればいいの...?
「......」
黙って隣に座らないで?なんか言ってよ...
起きてるから!ヘイロー浮かんでるでしょ!?
「...少しぐらいなら...」
え?なに?少しってなんの少し?
もふり
「ひゃんっ!」
「お、起きてたの!?」
「ぅへっ、ヘイロー消えてないんだから寝てるわけないでしょ!それと、いきなり尻尾触らないで!?」
「ごめんねぇ、とても触り心地が良さそうだったから...」と両手を合わせて苦笑いする......
...えっと...
「...先生、でいいの?名前とか...」
「先生でいいよ。思ったよりも元気そうで良かった。」
先生...中性的な声だし、Tシャツとズボンで性別が分かりにくいけど...
若干茶色を含んだ髪をポニーテールにしてたり、Tシャツに凄く控えめだけどちゃんと二つの山が主張してるし...女性だよね?
「ビルの出入口付近で顔を真っ青にして倒れていた時はさすがに肝が冷えたけどね。あははっ。...何があったの?」
顔は笑ってるけど、目が笑ってない。本気で問い詰めてる感じがする。怖い...
「...姉妹喧嘩...かな...」
「喧嘩で失神するまで首を絞めるの?」
「でも本当だよ。私と距離を取りたいお姉ちゃんと、お姉ちゃんと一緒にいたい私の喧嘩。」
「仲悪いの?」
「......わかんない。でも、悪くはないはず......なんで......」
「落ち着いて落ち着いて...そうだ!」
目の端に涙が浮かび出したのを見て焦ったのか、わざわざ私の気を引くような声を出したてから、私の頭に手を置いた。
「仲直り手伝おうか?」
「...はい?なんでそうなったの?」
どうして名案を思いついたみたいな顔してるの?
「いや、今暇だし。シャーレの先生って自由にやっていいみたいだからね。」
「で、でも、だからって私に手を貸す必要は無いでしょ...?ましてや、先生からしたら私は名前も知らない拾った子供...」
「私は先生で、あなたは生徒。これ以上の理由がいる?」
真っ直ぐ私を除き込む双眸。優しく前後に動く、暖かくて細い手。
もしかして、倒れてた私をここに運んだのもそんな理由?
あまりにも裏が無さすぎて、誠実で...
「...大人ってみんなこうなの...?」
「え?」
「な、なんでもない!先生のお手伝いは遠慮しておくよ。まだ私にも、お姉ちゃんにも時間が必要かもだから。」
「...そう。もう帰るの?えっと...」
「タマヨ。うん、もうこれ以上お世話になるのも申し訳ないし。あ、そうだ。何か探して欲しいものがあったら連絡して。探してあげるから。」
モモトークに先生を登録してオフィスから出る。
「困ったら言ってよ?...またね、タマヨ。」
よたよた、震える足でゆっくりアパートの階段を挙がっている真っ最中。
ここまで戻ってくる間に、すっかり外は暗くなっていた。
「...はあー...散々だった...」
「何がー?」
「お姉ちゃんには逃げられるわ拒絶されるわで...」
「うわぁ、それはサイアクだねー?」
「もう...辛い...って待って?」
先程から会話に混ざる明るい声の方に顔を向ける。
青空みたいな透き通る青と目が合ったと思えば、にぱっと笑った。
「やっとこっちみたね!タマヨちゃんっ!」
「め、メグうわぷっ。」
不意に真っ暗になった視界と柔らかい感触。そして大量に取り込んでしまった硫黄と汗の匂い。
「もー、あんまり辛気臭い顔してるせいで不安になっちゃったじゃん!」
「は、はなしてっ...」
「でも、こうやってすると元気が出るって言ってたよ?」
「誰が?」
「部長!」
「カスミさあぁぁぁん...!!」
「あとちょっとだからいくよー!」
「行くって......ちょっと!?歩けるから離して!」
どうにか拘束を解いてしょぼくれてるメグの前を歩く。
どうしてここにメグが...そんなことを考えながら家の扉を開くと、これまた見知った顔が出迎えてくれた...
「...やっ!おかえり!」
「そうだよね...カスミさんも居るよね...」
まさか向こうから会いに来るとは。
「どうして落ち込んだ?食事はもう出来ているぞっ!」
「その袖が有り余ってる服で台所に立たないで?まあ出来てるよね、だってそれ、私が昨日作り置したカレーだもの。」
「美味しかったよ!」
「勝手に食べないで?」
「ちゃんと君の分は残しているとも、安心したまえよ。」
「うーん、恩着せがましい。」
「ふむ...かなり疲れているようだ。メグ!」
「はーい!」
「...なんで私の腕を掴むの?」
「ふっふっふー」
あ...逃げられないやつだこれ...
体の隅々まで洗われた...
...カレー美味しい...
そんな感想をメグのあぐらの上に固定されながら述べた。
「さて......どうだった?」
「なにが?」
「色々だよ。便利屋とか、ワカモとか、先生とか。」
「...じゃあ順番に。なんであの人たちに手紙の依頼したの?郵便とかで良かったじゃん。」
「あの時間に郵便局はやってなかった。...というのは建前でな、君に金を積めばなんでもやる人種の存在を知ってもらいたかったのもあるな。関わらないに越したことはないが、いざと言う時は役に立つ。」
...私、今の所顔見知りがゲヘナの人ばかりなんだけど。
「そうなの。...お姉ちゃんなんだけど、逃げられた。」
「会えたの!?」
「耳元で叫ばないで......うん、会えたよ。でも...」
「まあ、だろうな。それで、先生はどうだった?先生も会えたのだろう?」
どこまで知っているんだこの人?
「先生...なんて言えばいいのか...かなりイッちゃってる人...?」
「「ぶふっ!」」
吹き出す二人を無視して続ける。
「たぶんあの人、個人的な情がなくても先生と生徒って関係だけで、生徒のためなら何でもするよ。」
「ほお...」
「実際それだけで私を職場?に運び込んだし。ちょっと怖いよね...?だって、あの人キヴォトスに来てから一日も経ってないんでしょ。それなのに、当たり前みたいに言うんだよ。」
「それで、その先生とやらは信用出来るのかね?」
「...分からないけど、悪い人じゃないと思う。でもいきなり尻尾触られたし、たぶん変な人だとは思う。」
「変な人...ははっ!そうかそうか!私も先生に会う日を楽しみに待つとしようか。」
それから当たり触りのない世間話をいくらか続けていると、カスミさんたちは「用が済んだ」と言って帰って行った。
先生が来たことで、私の生活にどんな変化が訪れるのかは分からない。
でも今確かなのは...
お姉ちゃんを引き止めるのに、私は弱すぎるということだけ。
「......強く、ならないと。」
あとがき
(たぶん)時間がかっとビングします
......
タマちゃん修羅ルート(SEKIRO並感)とかでも面白そうだな...
タマちゃんの紹介、やるなら
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pixiv風